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竹林軒出張所

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『煙突の見える場所』(映画)

煙突の見える場所(1953年・新東宝)
監督:五所平之助
原作:椎名麟三
脚本:小国英雄
出演:上原謙、田中絹代、芥川比呂志、高峰秀子

b0189364_8533532.jpg 映画雑誌『キネマ旬報』が毎年洋画と邦画のベスト10を発表する「キネマ旬報ベストテン」という企画がある。映画関係者、映画評論家などがそれぞれその年のベスト10を決めて、それを集計したものが「キネマ旬報ベストテン」になるわけで、おおむねその年に評価が高かった映画が上位に来ることになる。そのため、映画をよく見るようになった頃、これを参考にして上位の映画から集中的に見るようにした。たとえば自分が生まれる前であれば、どういう映画が良いかなんてことはまったくわからないので、(しかも当時予備知識もなかったこともあって)ひとつの指針として利用したのだ。実際、現在日本の映画で評価の高い、黒澤明、小津安二郎、成瀬己喜男、木下恵介、今井正などの作品はおおむね上位に来ているので、このベストテンもあながちいいかげんとは言えない。つまり当時の評価をわりとよく反映しているのではないかと思えるわけだ。で、1953年の「キネマ旬報ベストテン」は、1位、にごりえ(監督:今井正)、2位、東京物語(監督:小津安二郎)、3位、雨月物語(監督:溝口健二)ときて、4位がこの「煙突の見える場所」で、名だたる名画に続いて高い評価を得ている。そういうわけで、この映画はタイトルしか知らないにもかかわらず、長い間気になっていたのだった。
 で、このたび機会ができて、見てみたんだが、正直何が評価されているのかよくわからないのである。ストーリーも凡庸で、途中から(序盤で)大体筋が見えてしまった(『狐の呉れた赤ん坊』などのバリエーション)。演出もあまり見るところがない。実ははじめの方で見るのをやめようかと思ったんだが、中年夫婦の夫(上原謙)と間借り人の女(高峰秀子)の間に特殊な関係があるかのような演出があり、見るこちらも少し張り切ってしまって、結局最後まで見てしまった。でも実際には何もなかったわけで、ちょっとこんな演出ないんじゃないのと突っ込みたくなるところだ。
 というわけできわめて凡庸な映画であるにもかかわらず、当時は評価が高かったようで、こういう「なぜかわからないが当時評論家受けした作品」というのが「キネマ旬報ベストテン」には割に多いのも事実である。この映画もそういった映画ではないかと思う。
 もちろん、人情の機微というか、赤ん坊が入ることで生じる夫婦間のきしみみたいなものも表現されてはいるが、インパクトは弱い。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『五重搭(映画)』
竹林軒出張所『マダムと女房(映画)』
竹林軒出張所『にごりえ(映画)』
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえった「東京物語」』

by chikurinken | 2010-08-18 08:54 | 映画
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