銃・病原菌・鉄 第2話 二つの世界の衝突
銃・病原菌・鉄 第3話 アフリカへの旅
(2004年・米 National Geograhic)
原作:ジャレド・ダイアモンド
出演:ジャレド・ダイアモンド

ジャレド・ダイアモンドのピュリッツァー賞受賞作『銃・病原菌・鉄』をナショナル・ジオグラフィックが映像化したもので、全3巻の第2巻と第3巻。
第2巻はいよいよ、原作のハイライト(?)、ピサロのインカ帝国侵略である。1532年、退役軍人ピサロが率いる160名あまりの集団が、数万人の兵士を擁するインカ帝国を滅ぼした。このあたりの事情を、後世のヨーロッパ人たちは人種的な優位性を基に説明することが多かったが、実は人種間に優劣の差はなく、単なる偶然の結果に過ぎないのだというのが『銃・病原菌・鉄』の主張である。つまり、それが、銃と病原菌と鉄であり、鉄、銃、馬を持ち、当時武力で優越していたスペイン人が、そういうものを持っていなかった先住民を征服したに過ぎないということ。その差が生じたことも、単に地理的な偶然にすぎないということを著者(ならびにこのDVD)は主張している。さらにそれに加え、ヨーロッパ人がインディオにもたらした副産物として病原菌がある。ピサロの侵略後、インカの人々の間に天然痘が大流行し、なんでも住民の95%が死んだという。この天然痘はピサロ一行がもたらしたもので、当時ヨーロッパ人の多くは天然痘の免疫を獲得していたため、その差も文明の破壊に貢献したらしい。
第2巻では、このピサロとインカの対決を再現ドラマで描いており、ちょっとした映画みたいで非常に面白かった。映像もすばらしい。非常に見応えがあり、同時に著者の主張がストレートに伝わってくるもので、演出面でも申し分がなかった。
第3巻は、ヨーロッパ人のアフリカ侵略の話である。こちらはアメリカ大陸のケースと異なり、逆に病原菌(マラリア)にヨーロッパ人が苦しめられたケースを扱う。同時にヨーロッパ人によって破壊された人々の生活、ヨーロッパ人の都市設計のためにマラリアに苦しめられるようになった現地の人々(かつては住民のマラリアに対する抵抗力に加え、蚊の発生しにくい高地に居住地を構えるなどの対策でマラリアに対峙していた)の実情などが紹介される。
今回、これを機会に書籍版にも当たってみたが、全体的にこのDVDは書籍版のダイジェストみたいなものになっている。書籍版の主張を前面に出し、それに基づいて映像を構築しているため、書籍版とあわせて見ると面白いと思う。
第1話を見たときに感じた「考察のいい加減さ」については、書籍版でしっかりと検討されているようだ。書籍版は全2巻、600ページにも及ぶ大著で、内容もぎっしり詰まっていると思われる。もっともまだ読んでいないので、このあたり本当のところはよくわからないんだが。評判も高く主張もしっかりしているんで、機会があったら読んでみようとも思うんだが、ほとんどDVDとかぶっているんで今さらという気もする(ただし先ほども言ったように内容の密度は違う)。その辺少し微妙である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『銃・病原菌・鉄 第1話 文明の始まり(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『銃・病原菌・鉄 (上)(本)』竹林軒出張所『銃・病原菌・鉄 (下)(本)』