カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記 上
アレクサンダー・ヴェルナー著
喜多尾道冬、広瀬大介訳
音楽之友社
天才という名を恣(ほしいまま)にした伝説の指揮者、カルロス・クライバーの伝記の上巻。
カルロス・クライバーの周辺の人々の聞き語りを中心にクライバーの個人史を編年体で綴った本で、内容が非常に細かく、全編を読み通すというより、むしろ史料として使用するような類の本である。もちろん読み通すことを前提として作られたような本ではあるが、クライバーに相当興味がなければ、最後まで読み通す気にならないと思う。談話などで登場してくる人々も、相当なマニアでなければ知らないような名前ばかりで、しかもこれも相当数登場して、誰が誰だかわからなくなる。おかげでますます読むのに難儀するという具合だ。文章のつながりなども若干おかしい部分があり、読むときに苦労する原因になっている。翻訳に問題があるのか、原文の問題かはわからないが、文章は平易であるにもかかわらず、読みにくい箇所が結構あるのだ。
このように、本の完成度から見ると少々疑問が残るが、ただ、他にカルロス・クライバー関連の本がなく、しかも微に入り細を穿つような記述があることを考えれば、この本の価値は高い。正直買いたいという衝動にも駆られるんだが、なんせ4000円もする。見た感じ2000円くらいのたたずまいなんでますます割高に感じる。よっぽどのファンか、研究機関が公費で買うかなんだろうなと思う。価値はあると思うが4000円はちょっと高すぎるような……。というわけで僕は図書館で借りて読んだのだった。しかも読み終わるのに1ヶ月半もかかった(おかげで何度も延長する羽目になった)。
★★★参考:
竹林軒出張所『伝説甦る……カルロス・クライバーの場合』竹林軒出張所『カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記 下(本)』竹林軒出張所『カルロス・クライバーのドキュメンタリー2本』