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竹林軒出張所

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「もう海には帰れない」の想い出

「もう海には帰れない」の想い出_b0189364_911210.jpg イルカ……といってもフォーク歌手の話だが、イルカがかつて歌っていた歌で「もう海には帰れない」という曲がある。この歌は、ポーラ・テレビ小説『愛の風、吹く』(TBS系)というテレビ・ドラマの主題歌で、少しアンニュイなメロディが印象的……と言えるかどうかわからない。当時はメロディの印象はあまり残っていなかった。『愛の風、吹く』のテーマ曲であるがために記憶に残っていたのである。
 『愛の風、吹く』は、1985年の7月から9月の放送(Wikipediaによる)ということで、ちょうど夏休みに当たっているため、当時学生だった僕は、8月分はほとんど見ていた。このドラマは、テレビ小説であるため月曜から金曜まで毎日放送されていたんだが、とても画期的で、ほぼ1日単位のドラマになっていた。つまり今日の放送分の設定が8月1日であれば、翌日の放送分の設定は8月2日という具合である。もちろんすべてがこうなっているわけではないのだが、おおむねこういう風に展開していたので、見る方と奇妙にシンクロしていた。まさに三一致の法則(時、場所、出来事)を体現する、ある意味実験的なドラマで、おそらくテレビ・ドラマ史上最初にして最後ではなかったかと思う。
 もちろんあまりに実験的なドラマを昼帯で放送しても誰も見ないわけで、内容はいたって普通であった。主演は、当時売れはじめの安田成美で、相手役は冨家規政(名前もよく知らなかったが、今でもご活躍だそうで)。2人とも高校生の設定(たしか高3でなかったかと……)で、男の方(冨家)は野球部に所属しており甲子園を目指している(ちょっと『サード』の永島敏行とイメージが重なっている)。女の子(安田:「鮎子」という名前だそうで←「テレビドラマデータベース」)は彼と幼なじみで、ロシア語を勉強している。たしか富山県の高岡が舞台で、高岡港にロシア船が入港することとロシア語の勉強が関連していたんではなかったかと思う。2人は友達として仲良しなんだが、どうも男の方が一方的に鮎子に恋愛感情を持っているようだ。こういう感じで話が進む。夏休みになり、野球の方は結局予選敗退になって、野郎の方はちょっと喪失感を持って夏休みを送ることになり、鮎子の方は、港に来たロシア船(当時はソ連だが)の若い乗員、セルゲイと何かの関係で知り合い、そして恋をする。そこに野郎が横恋慕するといったような話だったと思う。つまり全体がひと夏の出来事になっているわけだ(たしか9月1日の放送では、新学期のシーンになっていた)。他にも先生役で岡本信人と原日出子が好演していた記憶がある(原日出子は当時初めて見る女優だったが、なかなか印象が強かった)。鮎子がときどき口ずさむロシア民謡「モスクワの夜は更けて」もなかなか良い雰囲気があった。こういうのを総合して考え合わせると、1日単位の設定という以外は、わりに普通のドラマである。もちろん内容は面白いものであったが。実は9月になってからはあまり見ていないので、どういう結末になったかはよく憶えていないのだ。ともかく、日付がシンクロしていたことがすごい印象に残っている。
 その当時僕は大学生で、田舎に帰省していて、ヒマなので毎日のように図書館に通っていた。当時図書館は海辺にあったので、港を横目に見ながら通うことになるんだが、そのときに、『愛の風、吹く』のテーマ曲である「もう海には帰れない」をよく口ずさんでいた。歌詞の内容が海辺を舞台にした失恋話で、港の風景とよく合っていたのである。ちなみに歌詞を書いたのは、まだ「夕焼けニャンニャン」でブレイクする前の秋元康である。
 「夏休み、図書館に通った」という程度で、別にどうということもない想い出ではあるが、妙に懐かしい。今はもうあの頃には戻れない……ということで、「もう海には帰れない」には帰れない……というオチなのである。
by chikurinken | 2010-05-03 09:02 | ドラマ
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