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竹林軒出張所

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今月のCD カツァリスのベートーヴェン

今月のCD カツァリスのベートーヴェン_b0189364_14442087.jpg シプリアン・カツァリスというピアニストが、1983年から1990年にかけてベートーヴェンの一連の交響曲(リストによるピアノ編曲版)を録音した。「ベートーヴェンの交響曲」も「編曲モノ」も大好きな僕としてはこれに飛びつかないわけにはいかない。というわけで、カツァリスのベートーヴェン交響曲第7番ピアノ編曲版というCDを購入した。今から20年くらい前の話である。当時僕はもっぱら輸入盤ばかりを買っていた(安かったから)のだが、なかなかこのCDの輸入盤というのが見つからず、店で見つけたときは宝物を見つけたかのようにうれしかったのを憶えている。そんなに欲しいなら国内盤を買えばいいじゃないかと思うかも知れないが、国内盤もほとんど絶版状態だったのだ。この輸入盤の価格は、当時2800円くらいだったような気がする。
 ベートーヴェンの第7交響曲は、今ではドラマの『のだめカンタービレ』で有名になったが、ベートーヴェンの中でも僕の好きなレパートリーである。それをピアノだけで演奏するなんてすごいじゃないか。企画の勝利だ。早速家に持ち帰って聴いた。で感想はというと、ウームという感じであった。なんというか、あたりまえなのだが、ピアノだけで総譜(の代わり)を演奏しているので、とてももの足りない感じが残る。気の抜けたビールのような、要はエッセンスだけという感じで、迫力も何もあったものではない!というのが当時の感想である。見つけたときはお宝のようにうれしかったのに、実際に聴いてみるとかなり拍子抜けしたのであった。
 ま、それでも何度か聴いていると、面白い要素は見つかるものである。オーケストラの演奏をCDで聴くとどうしても音が一緒くたになって聞こえてしまう。すばらしいオーディオ・システムで聴けば話も違うのかも知れないが、ヘッドフォンで聴くようなレベルだとどうしてもそうなってしまう。それがピアノ版だと、音の分離が割とよくわかるんで、オーケストラ演奏の場合に背後に隠れるような音でも聴き取れることがある。だからオーケストラのような音の厚みとか迫力とかは期待できないにしても、別の楽しみ方ができるにはできる。それにピアノ・ソナタみたいな感じで聴くこともできる。こういうわけでこの盤がまずまず気に入ったこともあり、その後、第9番(合唱)と第3番(英雄)も買ったのである、第7番の購入後しばらく経ってからであるが。つまりカツァリスによるベートーヴェンの交響曲のCDは、現在、手元に3枚あることになる。
 さて、時は経ち、今やネット時代。絶版CDもネット上で調べられるようになった。カツァリスのベートーヴェンの交響曲はときどき目にするが、さすがに食指も以前ほどは動かずそのままやり過ごしていたんだが、少し前にクラシック・ファンの人と話をしていてこのピアノ版のベートーヴェンの交響曲が話題になった。それからというもの、ちょっと意識するようになって、全集が出ていることや4番、8番が入手困難であることもわかってきた。全集は輸入盤で5000円くらいの値段で売られており、それでも以前に比べると安いが、すでに3枚あることだし5000円も出してまでと思っていた。ところが先日、この同じ全集が2700円で売られているのを知って、いろいろ考えた末ついに注文したのである。3枚分(全集では2枚半分)すでに持っているから、僕にとっては実質2枚半の価値しかないが、それでもこの値段は格安である。これが2カ月前の話。その後、入荷が遅れているとかで結局届いたのは数日前であった。それにしても前に7番のCDを買ったとき1枚2800円だったものが、今や5枚で2700円で売られているというんだからデフレにもほどがあるというもんである。
 昨日からひととおり聴いてみたんだが、やはり印象は第7番を初めて聴いたときとあまり変わらない。悪くはないが目を瞠るほどのものでもない。ただやはりピアノ版ということでそういう面の面白さがある。特に初期の交響曲(1番、2番、4番)が若々しさがあって良かった。どれも騒々しくないので、仕事のバックで聴くには最適とも言える。ま、ま、お気に入りのCDになりそうである。
 それより今手元にある3枚のCDを処分するかどうするかで迷うところである。3枚1000円くらいで引き取りたいという奇特な方はどこかにいないだろうかね……?
by chikurinken | 2010-04-27 14:46 | 音楽
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