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竹林軒出張所

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『にごりえ』(映画)

にごりえ(1953年・文学座、新世紀映画社)
監督:今井正
原作:樋口一葉
脚本:水木洋子、井手俊郎
出演:丹阿弥谷津子、芥川比呂志、久我美子、仲谷昇、淡島千景、山村聡、宮口精二、杉村春子


b0189364_1755059.jpg 樋口一葉作の短編小説三編、『十三夜』、『大つごもり』、『にごりえ』をオムニバスで映画化したもの。1人の作家の小説ばかりを集めたオムニバスというのも考えてみたら珍しい。見る前は『たけくらべ』もあるのかと思ったが、残念ながら上記の3本だけだった。
 樋口一葉の短編小説は高校生のときに読んだんだんが、なにぶん文語調であるため、わかったようで内容がよくわかっていなかったんだが、今回映画を見てそのことにあらためて気付くことになった。つまり、どの話もまったく記憶になかったのである。ということで非常に目新しい気持ちで見ることができた。ある意味、ケガの功名である。監督が今井正ということで、どの話もかっちりと作られており、演出面での目新しさはないが、安心して見ることができる。文学座が全面協力ということらしく、文学座の俳優が大挙して出演していた。
 演出面、撮影面ではとりたててどうということはないんだが、なんといっても今回感心したのはストーリーの面白さである。つまり原作の面白さに目を瞠った。特に『大つごもり』のドラマ性は特筆ものである(『十三夜』はもう一つ)。どの話も一葉ワールドの常として、下層社会が扱われており、きわめて暗い。ただ事でないほどの暗さである。それでも密度が濃くストーリーが面白いので十分見応えがあった。今回、映画というわかりやすいメディアを通じて、今まで理解できなかった小説にも触れることができた。これこそ映画のメリットである。『たけくらべ』もぜひ見たいものだ……良い演出でね(もっとも『たけくらべ』は小説を読んだときに大体理解できた……つもりでいる)。
★★★☆

追記:『たけくらべ』は、1955年に五所平之助が映画化しているらしい。なんと美空ひばりが主演だそうな……。面白いんだかどうなんだか、また今見ることができるんだかどうなんだか皆目見当が付かない。

参考
竹林軒出張所『米(映画)』
竹林軒出張所『婉という女(映画)』
竹林軒出張所『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん(映画)』
竹林軒出張所『樋口一葉物語(ドラマ)』
by chikurinken | 2010-04-03 17:56 | 映画
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