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竹林軒出張所

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『ランドラッシュ』(ドキュメンタリー)

ランドラッシュ 世界農地争奪戦(2010年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

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 将来の食糧危機に備えて、他国から農地を買収したり借りたりすることで農業生産を確保するという動きが、世界中で広がっているらしい。このドキュメンタリーは、現在進行しているそういう動きを紹介し、日本がその動きに乗り遅れていることを訴えている。
 この番組では、韓国、中国、インドなどがロシア、ウクライナ、アフリカなどで土地を買収(または借用)しているというケースが紹介されていた。特に韓国は国策としてこういう動きを推進しているらしく、政府レベルで動いていない日本の企業が、買収(または借用)合戦で負けるというケースが紹介されていた。「オリンピックでもサッカーでも経済でも負けて今度は土地買収でも……」ということを訴えたいのかどうだかわからないが、かなり煽っているような印象を受けた。正直言って、こういう動きがほめられたもんじゃないのは明らかである。現に韓国は、マダガスカルの農地の半分を99年間借用するという契約を現地政府と結ぶという話があったらしく、それが原因でマダガスカル政府が転覆されたらしい。これはこの番組で紹介されていたケースで、番組自体が農地争奪自体を全面的に肯定しているわけではない(と思う)んだが、全体的に「乗り遅れてはいけない」という主張のように感じた。アフリカの農地買収で起こったさまざまな問題も紹介しているんだが、何となく「言い訳」めいた印象を受けるのだ。
 実際のところ、日本の国内自給率は40%程度で、何かことが起こったら食料安全保障が破綻するのは目に見えているわけで、何年も前から大勢の人がそれについて危惧していたわけだ。ただ、それを解消する方法として他国の農地を奪い取るというやり方が良いとも思えない。日本では耕地が放棄されているケースも多く、農業が職業として機能しにくいという現実がある。行政レベルでこれに対する施策をとってこなかったのは明らかで、それならば食料安全保障という観点からそれに対する施策をやれば良い。こういう理由付けをすれば人々も納得すると思うんだが、ここ数十年、経済効率重視で、農業がないがしろにされてきた。番組でもそこらあたりについては触れているんだが、こちらも何となく「言い訳」みたいに聞こえる。
 現在進行しているランドラッシュの事実をまったく知らなかったので、そういう意味では僕にとって役に立つドキュメントだったんだが、煽りの姿勢は大変不快だった。見る側のこちらとしては、こういう動きから距離を置く方が賢明だと感じたんだが、何となく、韓国との競争に敗れる「負け組」というイメージを押しつけられているようで、後味が悪かったわけである。
★★★
by chikurinken | 2010-03-25 22:06 | ドキュメンタリー
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