劔岳 点の記
(2008年・東映)
監督:木村大作
原作:新田次郎
脚本:木村大作、菊池淳夫、宮村敏正
音楽:池辺晋一郎
出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、小澤征悦

いろいろな映画で撮影監督をやっている木村大作が、初めてみずから監督したという山岳映画。
監督がカメラマン出身というのが納得できる映画である。映画は、映像、ストーリー、会話の密度、役者の演技などいろいろな要素で構成されている。この映画は、映像は確かに美しいが、その他の部分は実にありきたりで、特に会話や演出はきわめてステレオタイプだ。下手なテレビ・ドラマを見ているかのように、様式的というか通り一編である。
また演出面でも、登頂が困難を極めるというシーンが繰り返し画面に出るんだが、撮影が大変だったんじゃないかという以上の感想を持てなかった。「困難な登頂」の演出としてはもの足りない気がする。
僕は原作も読んでいて、登頂実現に至るまでに、確か長次郎(香川照之が演じる役)が冬に一度単独で登ってみたんじゃなかったかと記憶している。実はこの部分が登頂成功の鍵になるんで一番印象的な部分だったんだが、映画ではそれがそっくり抜け落ちている。困難を極めた劔岳登山がこれで一気に解消に向かうという大事なポイントがないんで、なぜ登頂が不可能から可能に変わったかが映画ではよくわからなくなっている。
というわけで、映像以外あまり見るべきところがない映画だったと言わざるを得ない。ただし劔岳の映像は非常に美しい。山好きの人にはお勧めである。
★★★参考:
竹林軒出張所『八甲田山(映画)』竹林軒出張所『花園の迷宮(映画)』