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竹林軒出張所

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『キンドルの衝撃』(本)

『キンドルの衝撃』(本)_b0189364_19112951.jpgキンドルの衝撃
石川幸憲著
毎日新聞社

 アマゾンが発売した電子式読書マシン、キンドルの画期的特性をうたった本、かと思いきや、ほとんどは新聞社の将来についての話だった。
 アマゾンが現在発売している電子端末、キンドルは、書籍のみでなく、新聞などの定期刊行物を読む手段としても人気上昇中らしい、アメリカで。なにぶん日本で、電車の中でキンドルを使っている人というのはほとんど見かけたことがないんで、アメリカでヒットしていると言われてもピンと来ないんだが、ともかくよく売れてるらしい。で、キンドルの特徴の一つに定期刊行物に対応しているということがあるらしい。新聞などが朝自動的にダウンロードされるということで、そうするといつでもキンドル上でその日の新聞記事を読めるようになるという。こういう契約を1月あたり10ドルとかで新聞社と結ぶんだそうだ。キンドルは1回充電しておくと2週間くらいは持つらしく、しかもノート・パソコンやケータイのモニターと違って電子インクを使っているとかで目に優しいらしい。そういう意味で、現在、収益減で困っているアメリカの新聞社の生き残る道が、こういった方法にあるんじゃないかというのがこの本の主張である。主張についてはよくわかったが、アメリカの新聞業界やアマゾンの企業としてのあり方なんかは、もう少しはしょっても良かったんじゃないかと思う。相当退屈した。もっともキンドルだけで1冊書くというのも相当難しいのも事実。正直新聞広告でこの本について知ったとき、キンドルで1冊書けるのかと思ったほどである。そういうわけで冗長かつ(一見)無駄な記述が多くても、それはそれでしようがないとも言える。
 ただこの本が出たのが今年の1月で、アップルがiPadを発表する前である。おそらくキンドルはいずれ消え、iPadなどの携帯端末が主流になるんではないかと個人的には思う。ただしキンドルが今実現している、新聞配信などのビジネス・モデルは、携帯端末に引き継がれていくんだろう。結局今の音楽業界と同じような図式が、新聞業界や出版業界で進んでいくと考えるのが普通だろう(本書の主張も同様である)。そういう意味でiPadには大きな可能性が秘められていると思う。やっぱりアップルの一人勝ちみたいになるんだろうな……。おっとiPadじゃなくキンドルについての本だった。キンドルの味方をすれば、画面表示と電池持続時間は非常に魅力的である。iPadなどとどういうふうに棲み分けが進むかは今後の動向に注目といったところだろう(個人的には消えるんじゃないかと思うが)。ちなみに、iPad発売前であるにもかかわらず、著者もここらあたりについてはしっかり考察している。とは言っても、全体にくどく冗長であることには変わりない。それにむやみにカタカナ語が登場するのも少しウザイ(例:「ジャーナリズムの社会的ミッションを損なわない形でマネタイズすることは、21世紀のチャレンジである」)。アンタはルー大柴かって言いたくなったよ。

★★★
by chikurinken | 2010-03-07 19:14 |
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