昨日の山中貞雄の追記。
僕は山中貞雄シンパであり、現存する3本の映画もそれぞれ複数回は見ている。
また、山中貞雄の伝記ノンフィクション(
『評伝山中貞雄―若き映画監督の肖像』)も読んだ。これは非常に面白い良くできた書物であった(お奨め)。さらに、甥に当たる加藤泰が書いた
『映画監督 山中貞雄』も古書で買った。こちらはまだ全部読んでいない(去年復刻されていたようだ……今まで知らなかった)。脚本集(
『山中貞雄作品集 全一巻』)も、高かったけど無理して買った。こちらも全部は読んでいない。
『山中貞雄物語沙堂やん』というマンガまであるらしいが、こちらはまったく目にしたことがない。
書籍『評伝山中貞雄―若き映画監督の肖像』については2004年にホームページで、映画『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』と『河内山宗俊』については2005年にブログで感想を書いているので、ここにそれぞれ再録させていただこうかと思う(一部修正しています)。
『評伝山中貞雄―若き映画監督の肖像』千葉伸夫著
平凡社ライブラリー

『評伝 山中貞雄 若き映画監督の肖像』は、映画監督、山中貞雄の評伝。山中貞雄は、生涯20数本撮影しながら27歳で戦死した映画監督で、その作品は現在3本しか残っていないがそのどれもが傑作という、まさに日本映画界の伝説。この本では、山中貞雄の周囲の人々のインタビューや、雑誌記事、手紙などをモザイクのように組み合わせながら、山中貞雄という人間を生き生きとよみがえらせている。山中貞雄と同時代に生きているかのような錯覚さえ受ける傑作評伝で、山中貞雄の人間的な魅力も十二分に伝えている。こちらも心が洗われるようだ。
★★★★(2004年12月記)
『丹下左膳餘話 百萬両の壺』(1935年・日活京都)
監督:山中貞雄
原作:林不忘
脚本:三村伸太郎
出演:大河内傳次郎、喜代三,沢村国太郎、花井蘭子、山本礼三郎

天才、山中貞雄が監督した、現存する3本の映画のうちの1本。
豪傑丹下左膳が、生活感の漂う、コミカルな役回りで登場する。しかも、当たり役の2枚目スター、大河内傳次郎が演じるというのだから、当時の意外性は、相当なものだっただろう。泉昌之のマンガで、ウルトラマンが女ウルトラマン(ウルトラよしこさんだったか?)とデートしたり、便所できばったりするのがあったが、ああいった感じに近いかもしれない……。
しかも、単に意外性を狙っただけでなく、ストーリーが実によく練られていて、見ていて感心することしきり。『河内山宗俊』もそうだったが、この山中貞雄と三村伸太郎のコンビは、映画のストーリーテラーとしては、日本の映画史で屈指ではないかと思わせるものがある。
沢村国太郎の演技が序盤かなりわざとらしかったが、本物の芸者、喜代三の小唄(?)も入っていてなかなか贅沢。くすぐりも多い。大河内傳次郎の殺陣も迫力があり、スリリングな展開もある。サヨナラ満塁ホームランのような痛快な映画で、山中貞雄の天才がいかんなく発揮された作品。
ちなみに、『丹下左膳』の原作者の林不忘は、この映画にたいそう立腹したそうだ。
★★★★☆『河内山宗俊』(1936年・日活京都)
監督:山中貞雄
脚本:三村伸太郎
撮影:町井春美
出演:河原崎長十郎、中村翫右衛門、市川扇升、山岸しづ江、原節子、加東大介

天才、山中貞雄が監督した、現存する3本の映画のうちの1本。
見るのは今回で2回目だが、前回よりも濃密に感じた。そしてストーリーの密度が高いのにビックリ。出血大サービスのシナリオだ。息もつかせぬ展開で、テンポが抜群に良い。
河内山宗俊のネタは歌舞伎の狂言が有名だが、以前歌舞伎で見たときはどうにも間延びしていて、しかも河内山の悪どさが好きになれなかったが、この映画の河内山は魅力的な人物になっている。あの話をここまで持ってくるという脚本家の力に舌を巻く。そういえば『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』でもこういう翻案をやっていて成功している。
演出のうまいのは言うまでもない。登場人物が非常に魅力的だ。あちこちにくすぐりがちりばめられており心地良い。
貧民窟のようなごちゃごちゃしたセット、夜店の照明の美しさ(モノクロなのに)、和服の着こなし(ちょっとだらしなくてリアル)など、至る所に目を見張る箇所がある。映画としての完成度の高さに感服した。
原節子の演技が少し古くさくていただけなかったが、これもある程度狙った演出なのかも知れない。
★★★★(2005年11月記)
参考:
竹林軒出張所『チトサビシイ(ドキュメンタリー)』