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竹林軒出張所

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『戦場から女優へ』(本)

戦場から女優へ
サヘル・ローズ著
文藝春秋

b0189364_1858221.jpg 以前、お笑い番組の『あらびき団』に滝川クリサヘルという女性が出て、滝川クリステルの物まねをしながら自らの悲惨な生い立ちを語るという芸(!)をやっていた。
 イランで生まれ、幼い頃イラクの空爆で家族全員を亡くして、その後縁があって育ての母と来日したという話を、例の斜め45度のカメラ目線で語りながら「このあと日本で壮絶ないじめを経験しますが、続きはまた来週のこの時間で」などと言いながら終わったのだった。内容がリアルで、とても笑えない話だ。その続きが気になるんでその後も『あらびき団』を見ていたが、滝川クリサヘルは二度と出てくることはなかった。出るのは、妙ちくりんな芸人ばかり。
 その後、滝川クリサヘルが、テレビでサヘル・ローズという名前で出ているのを何度か見かけたが「その後のいじめ」について多くが語られることはなかった。
 で、今回のこの本である。「その後のいじめ」のことも極貧生活のことも、それからもちろん生い立ちについてもすべてあますところなく書かれている。
 これだけの経験をして生きてきた人が今の日本にどれだけいるかというくらい、さまざまな不幸な経験をしている。日本も戦後すぐの時期は、こういう人々が多かったのかも知れない。こうして考えてみると、戦争がどれほど市民レベルで不幸をもたらすかがわかろうというもの。
 彼女の場合、肉親の喪失、(父親代わりの男による)虐待、学校でのいじめ、貧困(ホームレスまで経験している)など、今の日本で経験できる不幸をことごとく経験しているかのようである。
 今は、女優の仕事もこなしながら、育ての母(この人もすごい人なんだが)と一緒に、前向きに目標に向かって生きているようだ。彼女の前向きで謙虚な考え方、ものの見方は、生きる上での教訓にもなり、人生の指針として読むこともできる。これだけの不幸を積んできたんだから、今後は幸せを掴んでほしいと切に願う。まあ、まったくの他人ではあるが。
★★★☆

参考:
NHK『旅のチカラ「失われた故郷の記憶を求めて〜サヘル・ローズ イラン〜」』
竹林軒出張所『アフガニスタンの少女、日本に生きる(本)』
by chikurinken | 2009-10-27 18:59 |
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