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竹林軒出張所

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ドラマ雑記(ドラマから伝記、そしてまたドラマ)

 見ていないにもかかわらず永らく気になっていたドラマというのがいくつかある。だが、レンタル・ビデオ/DVDやCSチャンネル(スカパー)などが普及して、こういったドラマも目にできる機会が増えてきた。喜ばしい限りである。
ドラマ雑記(ドラマから伝記、そしてまたドラマ)_b0189364_1022513.jpg かつてTBSで1980年に放送された『天皇の料理番』というドラマは、当時1回も見ていないんだが、最近までずっと気になっていた存在である。原作は杉森久英の同名の小説であるが、この原作本を書店や図書館で目にするたびに忸怩たる思いがこみ上げてきていた。
 だが、例によって、CSのTBSチャンネルで再放送されることになって、この機会にと思い録画して見ている。脚本は鎌田敏夫で、第1回目は映画監督の森崎東が演出していた。ものすごくできが良いというドラマではないかも知れないが、しかし面白い。原作の面白さも大きいのだろうが、トンカツを食べて感動しそれで料理人を目指すというエピソードがなかなか豪快でよろしい。こういう破天荒な出世話は、それ自体が興味をそそるものである。この頃のドラマは質が高かったんだなとあらためて思う。
 原作者の杉森久英は、伝記小説で有名になった人だが、彼の作品に『天才と狂人の間―島田清次郎の生涯』がある。島田清次郎は、僕の学生時代(精神分析の対象として)非常に興味を持った作家だが、当時すでにこの本は絶版で、古本屋を探し歩いてやっと見つけたものである。内容は非常に面白く、島田清次郎に(精神分析の対象として)恐怖を感じるほどリアルで、鬼気迫るものであった。そんなこともあり、今度は島田清次郎の出世作『地上』を読みたいと思うようになり探し歩いたが、これも絶版というより、当時から過去数十年以内に出版された形跡すらなく、永らく読むことができなかったのだ。で、市立図書館で図書目録を一生懸命検索して、古い本が置かれていることを知り、やっと読むことができたのだった。内容は、非常に稚拙な感じがあって、『天才と狂人の間』の方が断然面白いと感じた。杉森久英の才能を感じた次第である。ちなみに今どちらの本も入手可能なようで(『天才と狂人の間』が94年、『地上』が95年にそれぞれ再発されたようだ)、検索もAmazonで簡単にできる。便利な時代になったものだ。その後、杉森久英の太宰治の伝記『苦悩の旗手―太宰治』なども読んで、杉森久英の書き手としての才能をあらためて認識した。
ドラマ雑記(ドラマから伝記、そしてまたドラマ)_b0189364_1025112.jpg 僕の場合、太宰治といえば石坂浩二を思い出すのだが、これもかつてのドラマの影響である。『冬の花火 わたしの太宰治』(1979年・TBS)というドラマがあって、こちらも当時見ていないにもかかわらず永らく気になっていたのだ。見ていないにもかかわらず「太宰治=石坂浩二」という図式がずっと僕の中で長い間続いていたわけだ(もっとも、これも、杉森久英の著書をはじめとする本を読んでいくうちに印象は変わってきたが)。それはともかく、このドラマも現在TBSチャンネルで放送されている。こちらも録画して見ているが非常に見応えがある。当時のドラマは今よりはるかに質が高いと、ここでも実感させられる。企画力なんかも大きいのだと思う。ちなみに『天皇の料理番』はTBSでリメイクされている(93年)。また太宰治の伝記ドラマも4年前に作られている(これがリメイクなんだかどうだかはちょっとわからないが)。そもそもリメイクという発想自体が企画力のなさを示しているのだ。良質のドラマを作れないんだったら、いっそのこと、新しいドラマを1本作る予算で、過去のドラマを地上波で2本再放送してみてはどうだろうかね。「TBSアーカイブス」とかなんとかいうタイトルにしてさ。あ、もうNHKがやってるか……。

参考:
竹林軒出張所『天皇の料理番 (1)〜(19)(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『涙たたえて微笑せよ(ドラマ)』
竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』

by chikurinken | 2009-09-05 10:05 | 放送
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