ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

鈴木慶江『フィオーレ』(CD)

鈴木慶江『フィオーレ』
1. 私を泣かせてください〜歌劇「リナルド」より〜 (ヘンデル)
2. 知れぬ涙〜歌劇「愛の妙薬」より〜 (ドニゼッティ)
3. 愛の喜び (マルティーニ)
4. 初恋 (詞:石川啄木/曲:越谷達之助)
5. 私のお父さん〜歌劇「ジャンニ・スキッキ」より〜 (プッチーニ)
6. ピエ・イエズス〜「レクイエム」より〜 (フォーレ)
7. アヴェ・ヴェルム・コルプス (モーツァルト)
8. アヴェ・マリア (カッチーニ)
9. 愛の喜び 〜Syn.Ver〜 (マルティーニ)
10. There is a ship (ピーター、ポール&マリー)
11. 私のお父さん 〜美の巨人たちVer〜〜歌劇「ジャンニ・スキッキ」より〜 (プッチーニ)

鈴木慶江『フィオーレ』(CD)_b0189364_1024320.jpg クラシック界もヴィジュアル系が幅を利かせて、ヴィジュアル系クラシックが1つのジャンルにさえなった感がある。クラシックは古典だから、本来商業主義とは相容れないはずなのだが、市場規模から考えるとそうも言ってられないんだろう。特に今みたいに癒し系音楽が流行ると、それと同様の意味合いでこういうジャンルがあってもまったくおかしくない。だからこういう風潮がケシカランというような固陋な考えは、僕はまったく持っていない。要は、いままでのクラシック・アルバムとは別のジャンルだと思えば良いということ。だからかつてのイージーリスニングやヒーリングなどと同じ感覚で聴くのが正しいのである。
 今回選曲に惹かれて図書館で借りてきたが、これもヴィジュアル系クラシックの範疇に入るのだろう……。でもご本人の経歴を見るとかなり本格的。
 「実力派若手ソプラノ歌手“鈴木慶江”が紡ぎ出す、全く新しい歌の世界。それは…クラシックでもポップスでもない、ただ「うつくしい歌」という名のジャンルです。」というコンセプトらしい。このあたりの潔さというか、そぎ落とされた感覚が非常に良い。このアルバムは7年前に出たデビューアルバムで、その後4枚のアルバムが出ている。それぞれ『ニンナ-ナンナ』、『カローレ』、『レガーロ』、『ソアーヴェ』というタイトルで何だかよくわからない。ギターの村治佳織のアルバムみたいなタイトルだ。あちらもヴィジュアル系で売られているから同じような感覚なんだろう。一部で「和製サラ・ブライトマン」などとも言われているらしいが、歌唱レベルではあまり似ていない。ジャンルにこだわらず何でもクラシック的な歌唱で歌うという、そういった方向性が共通しているためだろう(曲も共通しているものが多い)。
 でもこのアルバム、選曲が抜群に面白い。「私のお父さん」や「愛の喜び」なんかは一般的にソプラノで歌われるが、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は本来合唱曲(だと思う)、「人知れぬ涙」はテナーのアリアで、一般的にはソプラノではあまり聴かない。こういう曲でも彼女が歌うと味があって良い感じである。ピーター・ポール・アンド・マリーの「There is a Ship」なんかも歌っている(「Water is Wide」)。つまりは『ただ「うつくしい歌」という名のジャンル』ということで選曲しているんだろう。どの曲も声によく合ってるし、コンセプトはいかんなく発揮されているのではないか。
 「愛の喜び (Syn.Ver)」と「私のお父さん (美の巨人たちVer)」は、バックにシンセサイザを使っていてロック調である。このあたりサラ・ブライトマンを意識してのことなのか。こういったアレンジはあまり好きではないが、それぞれの曲のアコースティック・バージョンも入っているので、お好みに合わせて聴いてくださいということなんだろう(この2曲はボーナス・トラックの別バージョンという扱いではないかと思う)。だから別段不満はない(「愛の喜び」のアコ・バージョンの方は編曲が安っぽいような気がするが)。個人的な感覚では「アヴェ・マリア (カッチーニ)」が、このアルバムのベストである。
 全体的によくできていて楽しめるアルバムではないかと思う。これから他のアルバムも集めてみるつもり。

リンク:鈴木慶江オフィシャルサイト
by chikurinken | 2009-08-10 10:08 | 音楽
<< ジャズヴォーカルもヴィジュアル系 『帝国以後 - アメリカ・シス... >>