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竹林軒出張所

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『ツチヤ教授の哲学講義』(本)

b0189364_1232314.jpgツチヤ教授の哲学講義
土屋賢二著
岩波書店

 いつも面白い変わったエッセイを書く哲学者、土屋賢二氏による、お茶の水女子大教養部での講義録で、いつもの軽妙なエッセイとは違う(そういうエッセンスはあるけれども)哲学講義である。
 哲学についてわかりやすく説明することは哲学の基本だと(ツチヤセンセ同様)僕も思っているので、その点で非常に共感でき、また中身も難しい内容を非常にわかりやすく説明していて好感が持てる。談話(講義を含め)をそのまま本にすることは、著者や出版社の怠慢だと思っていた(ただしインタビュー本は別)が、この本は語ることの利点を最大限に利用していると言える。先日紹介した『昭和史』も同様。
 ただし、(著者の専門であると思われる)ウィトゲンシュタイン周辺のくだりは共感できない。僕個人として、すべての哲学的問題を言語に還元するということが適切だとはどうしても思えず、その点では共感できなかった。だが、これは説明されている内容に対しての感想であり、「説明内容を読者に届ける媒体」としての本の価値が低下するわけではなく、したがってこれによって本書の価値が損なわれるものではまったくない。それに、僕自身ウィトゲンシュタイン自体よく知らなかったんで、その辺の入口を設けてもらったという点でも評価に値する。大学教養部の授業としては理にかなっている。
 哲学に関心がある人には、恰好の入門書だと思う。

★★★☆
by chikurinken | 2009-06-07 12:04 |
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