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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『北齊』(映画)

北齊(1953年・青年ぷろだくしよん)
監督:勅使河原宏
脚本:吉川良
出演:加藤嘉(ナレーション)

歴史認識に違和感

『北齊』(映画)_b0189364_09591309.jpg 葛飾北斎の作品を紹介する教養映画。これもなかなか見ることができない作品だが、現在YouTubeで公開されている。
 なかなか見れない作品には違いないが、見る価値があるかはまた別の話。勅使河原宏の初監督作品ということで興味を惹かれたが、内容は至って単純で見どころはないに等しい。しかも「武士階級に虐げられる庶民」という歴史観で一貫しており、失政続きの幕府政治にあって葛飾北斎が人間不審になったなどという「独断的な」解釈まで施されている。そういう点で歴史認識にかなりの違和感を感じる。製作当時の時代的な背景もあるので致し方ないところではあるが、どうにも身勝手な歴史観に不愉快さを感じる。
『北齊』(映画)_b0189364_09591716.jpg 映像は、北斎の作品をアップで映したものばかりがランダムに続き、なぜか知らないが、時代がかなり異なる芭蕉の句まで画面に大きく映し出されて読み上げられたりもする。画面に映し出される北斎作品は面白いものが多いが、モノクロで画面が荒い上、後ろで流される独断的なナレーションが腹立たしく感じる。正直、今改めて見るほどの価値はなかったなと思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『ホゼー・トレス(映画)』
竹林軒出張所『おとし穴(映画)』
竹林軒出張所『砂の女(映画)』
竹林軒出張所『他人の顔(映画)』
竹林軒出張所『利休(映画)』
竹林軒出張所『豪姫(映画)』
竹林軒出張所『北斎漫画(映画)』
竹林軒出張所『北斎漫画を読む 江戸の庶民が熱狂した笑い(本)』

# by chikurinken | 2025-01-17 07:58 | 映画

『ホゼー・トレス』(映画)

ホゼー・トレス(1959年・勅使河原プロダクション)
監督:勅使河原宏
撮影:勅使河原宏
音楽:武満徹
出演:ホゼー・トレス、井川比佐志(ナレーション)

捉えどころがないドキュメンタリー

『ホゼー・トレス』(映画)_b0189364_09062236.jpg 当時注目されていた黒人ボクサー、ホセ・トーレス(映画の中ではホゼー・トレス)のジムでの練習風景、試合の風景、試合後の風景をスナップショット風に撮影した短編ドキュメンタリー。コントラストが効いたモノクロ映像は多少のインパクトがあるが、全体的に主張がまったく感じられない映画で、淡々とホセ・トーレスの姿を淡々と追いかけていく。そしてそれに終始する。見どころがどこにあるかもわからない。武満徹の音楽は、鋭さがあって非常に良い味を出しているが、映像ともう一つ結びついていかない。正直、捉えどころがない映画であった。
『ホゼー・トレス』(映画)_b0189364_09054927.jpg この映画は勅使河原宏が監督しており、めったに目にすることができなかった作品で、僕はタイトルと武満徹のテーマ音楽ぐらいしかこれまで知らなかったのだ。今回この作品がYouTubeで公開されていることをたまたま知ったため、喜び勇んで見てみたわけだが、正直かなり期待外れだった。勅使河原作品は劇映画の方がはるかにできが良いとあらためて感じた次第。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『北齊(映画)』
竹林軒出張所『おとし穴(映画)』
竹林軒出張所『砂の女(映画)』
竹林軒出張所『他人の顔(映画)』
竹林軒出張所『利休(映画)』
竹林軒出張所『豪姫(映画)』

# by chikurinken | 2025-01-15 07:05 | 映画

『釈迦』(映画)

釈迦(1961年・大映)
監督:三隅研次
脚本:八尋不二
音楽:伊福部昭
出演:本郷功次郎、チェリト・ソリス、勝新太郎、市川雷蔵、山本富士子、川口浩、中村玉緒、京マチ子、山田五十鈴、杉村春子、東野英治郎、中村鴈治郎、市川壽海

『大魔神』的な勧善懲悪的スペクタクル

『釈迦』(映画)_b0189364_21271716.jpg テレビのカラー放送が始まった頃に大映によって作られた超大作である。テレビに危機感を持った大映社長の永田雅一が、テレビと違うスケール感を出すために70mmフィルムで製作したという話で、そのためかセットもかなり大がかりである。事前に内容についていろいろと取り沙汰された模様だが(ビルマやセイロンから外交ルートで内容に対して抗議があったらしい)、結果的にそのことが話題性を呼んだこともあって、興業としては大成功だったという(ここら辺の情報はすべてウィキペディアによる)。
 今回、こういった事前情報は何も持ち合わせることなく、この映画を見てみたわけだが、テーマが宗教であり、いくら特撮を交えていると言っても釈迦が主人公では抹香臭い作品にしかなるまいと思っていた(実際途中までは『奇跡の丘』の仏教版みたいな展開だった)ところ、結構なスペクタクル作品で、なかなかの娯楽大作に仕上がっていた。僕自身、釈迦の生涯についてはまったく無知であったこともあり、ダイバ・ダッタとの確執などもまったく知らなかったため、非常に勉強になったし、最後の大スペクタクルもそれなりに楽しめた。ただ、総じて娯楽大作で終わっているのは確かで、演出もステレオタイプ、ストーリーも通り一遍という印象であった。製作者側は『ベン・ハー』『スパルタカス』などのハリウッド大作を意識していたのかも知れないが、同じ大映の『大魔神』に全体的な雰囲気が非常に似ており、結局この作品が『大魔神』、『ガメラ』への流れを作ったのかと感じ入った次第。
 キャストは豪華絢爛で、さながら顔見世興行のようであった。大映の看板女優である京マチ子までもがチョイ役という有り様である。悪役のダイバ・ダッタを演じた勝新太郎が存在感を見せていたが、他のキャストは平凡。この映画の見どころはやはり、『大魔神』的な勧善懲悪的スペクタクルである。芥川龍之介の『邪宗門』も映画化したらこんな感じになるのかな、などとふと感じた。
★★★

参考:
竹林軒出張所『大魔神、大魔神怒る、大魔神逆襲(映画)』
竹林軒出張所『地獄変・邪宗門・好色・藪の中(本)』
竹林軒出張所『ベン・ハー(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『奇跡の丘(映画)』
竹林軒出張所『空海(映画)』

# by chikurinken | 2025-01-13 07:27 | 映画

『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜』(1)(ドラマ)

べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜 (1)(2025年・NHK)
脚本:森下佳子
演出:大原拓
出演:横浜流星、高橋克実、渡邉斗翔、小芝風花、安田顕、渡辺謙

見続けるかはかなり微妙

『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜』(1)(ドラマ)_b0189364_08270014.jpg 江戸寛政期の版元、蔦重こと蔦屋重三郎が主人公の大河ドラマ。
 蔦重が主人公ということで少し興味を持って見てみたが、何とも面白味のないストーリー展開で、しかも作りすぎで興が醒める。それに役者たちも一律にオーバーアクトで、見ていて鼻につく。NHKの江戸時代劇に見られるような奥行きのなさで、みていて辟易した。
 先日、NHK-BSの『英雄たちの選択』で蔦重を特集していたのを見たが(あれも相変わらずくだらない演出が多くて、見続けるのに苦労するが)、勉強のためにはあれだけで十分な気もする。このドラマについては、1年間見続けるかどうかはかなり微妙というのが、目下の印象である。深夜に放送される5分間のダイジェスト版で十分かなと思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『広重ぶるう(ドラマ)』
竹林軒出張所『北斎漫画(映画)』
竹林軒出張所『北斎漫画を読む 江戸の庶民が熱狂した笑い(本)』
竹林軒出張所『風と雲と虹と 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『光る君へ(ドラマ)』
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『草燃える 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『平清盛 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (2)〜(48)(ドラマ)』
竹林軒出張所『太平記 (4)〜(27)(ドラマ)』
竹林軒出張所『黄金の日々 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『麒麟がくる』(6)〜(44)(ドラマ)』
竹林軒出張所『どうする家康(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『徳川慶喜 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『獅子の時代 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2025-01-10 07:26 | ドラマ

『日曜劇場 サハリンの薔薇』(ドラマ)

日曜劇場 サハリンの薔薇(1991年・北海道放送)
脚本:市川森一
演出:長沼修
音楽:小林靖宏
出演:役所広司、マリーナ・ウィヤキナ、那須佐代子、ブライアン・マチ・ユル、ミハエル・マーリシュヴァ、ガリーナ・マーリシュヴァ

『ワーニャ伯父さん』とシンクロしている……
のかな……


『日曜劇場 サハリンの薔薇』(ドラマ)_b0189364_08243456.jpg 北海道放送製作の日曜劇場でありながら、サハリンのユジノサハリンスクでロケを敢行した大作。なんでも北海道放送創立40周年記念作品ということらしい。
 密かに妻を安楽死させた医師、矢吹(役所広司)が、生前妻と訪れることを約束していたサハリンを訪れ、滞在先のホテルでウェイトレスをやっている現地の女優志望の若い女、マーシャ(マリーナ・ウィヤキナ)と出会う。矢吹は、かつてチェーホフの『ワーニャ伯父さん』を舞台で演じたことがあるほどチェーホフ好きで、ロシア語はからっきしだが『ワーニャ伯父さん』のセリフであればロシア語で語ることができる。マーシャの方も、俳優志望だけに『ワーニャ伯父さん』関連で意気投合し、2人が関わり合うようになる。
 矢吹の方はずっと葛藤を抱えたままで、一方のマーシャもオーディションに落ちたりして失意に沈むが、やがて矢吹はマーシャの身体の異変に気づき精密検査をするよう、知人の医師に頼み込む。マーシャは白血病であることが判明するが、治療のために必要な薬剤が現地ではなかなか調達できないと言われる。そこで矢吹は、その薬剤を日本から送ることを約束して帰国する覚悟を決めるというようなストーリー。
『日曜劇場 サハリンの薔薇』(ドラマ)_b0189364_08243836.jpg 随所に『ワーニャ伯父さん』のセリフが出てきて、矢吹とマーシャの関係もどこか『ワーニャ伯父さん』風に進むんだかどうだか、この小説を読んでいないためよくわからないが、多分シンクロしているんだろう。そのあたりがこの話のスパイスになっているのではないかと思う。
 製作者側の力がかなり入っているドラマで、さすがに記念作品だと思わせるが、全体的に少し詰め込みすぎのような印象もある。そのために、終わりの方でストーリーが唐突に完結するような印象も受ける。ただ役所広司がさりげなく演じているため、それが自然な印象を与え、ゆったり見ることができる点は評価に値する。東芝日曜劇場としては、秀作の部類に入ると思う。
第7回文化庁芸術作品賞受賞、第29回ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 春のささやき(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 林で書いた詩(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ダイヤモンドのふる街(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 天使を乗せたタクシー(ドラマ)』
竹林軒出張所『私が愛したウルトラセブン(ドラマ)』
竹林軒出張所『グッドバイ・ママ (1)〜(11)(ドラマ)』

『日曜劇場 サハリンの薔薇』ED主題曲



# by chikurinken | 2025-01-08 07:24 | ドラマ