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竹林軒出張所

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『熱中時代』(1)、(2)(ドラマ)

熱中時代 (1)、(2)(1978年・日本テレビ)
脚本:布勢博一
演出:田中知己
出演:水谷豊、志穂美悦子、船越英二、池上季実子、草笛光子、音無美紀子、島村佳江、谷隼人、小倉一郎、太川陽介、小松方正、山口崇、尾藤イサオ、風吹ジュン、小松政夫、徳光和夫

等身大の教師像が魅力的

『熱中時代』(1)、(2)(ドラマ)_b0189364_09353106.jpg 70年代にヒットしたドラマ。新米教師が主人公で、学校や周辺で起こるあれやこれやの出来事が題材になる。
 従来、理想化された教師が学校の問題を解決するという類の教師ドラマはあったが、この種の等身大ドラマがあまりなかったこともあり、当時世間で注目を集めて、結果的に高い視聴率を稼ぎ出した。言って見れば、職業としての教師がモチーフになっているわけで、そういう点で視点が目新しいと言える。子どもたちとの関係は言うまでもなく、保護者に翻弄されたり、同僚との関係に振り回されたりする主人公がなかなか新鮮に映る。また主人公が、子どもたちに一生懸命向き合おうとする姿勢にも共感が持たれたのではないかと思う。
 今回第1回と第2回を見たが、あちこちに目を惹きつける展開が散りばめられており、ずっと見続けたくなるような要素がある。いろいろなところで伏線も貼っており、シナリオレベルでもよくできていると感じる。悪役があまり出てこないのも良い。
『熱中時代』(1)、(2)(ドラマ)_b0189364_09353413.jpg 今回見るのは30年ぶりぐらいだと思うが、記憶に残っていたセリフや場面もあって、やはり当時から一定の影響力があったのだろうと思う。水谷豊が演じる主人公の新米教師がまっすぐかつ新鮮な非常に魅力的なキャラクターで、同僚の先生たちも、従来型ドラマの教師像と違って等身大に描かれており、魅力的に映る。
 なおこのドラマ、当時かなりの人気が出たため、その後、同じく水谷豊主演で『刑事編』が作られ、さらに『教師編』の第2シリーズまで作られた。さらに言うと、その後も、水谷豊主演のドラマが同じ枠で続けて放送されたような記憶がある。この金曜日9時の日テレドラマは、水谷豊が大ブレイクするきっかけになったシリーズであり、『刑事編』以降では主題歌も歌うようになって、歌番組にも登場するようになった。最初に『ザ・ベストテン』に登場したときはガチガチに緊張していたのを今でも憶えている。
 このドラマ、現在、BS松竹東急というBSチャンネルで第6回まで放送されている。興味のある方は、第7回から見ても十分楽しめるのではないかと思う。最初の放送時は僕も途中から見始めたような記憶がある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「非常階段」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「路面電車」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「猟銃」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第2部「廃車置場」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第2部「冬の樹」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第3部「シルバー・シート」(ドラマ)』
竹林軒出張所『幸福(映画)』
竹林軒出張所『少年H(映画)』
竹林軒出張所『わたしをあきらめない(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『聖職のゆくえ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ひきこもり先生 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『こもりびと(ドラマ)』

# by chikurinken | 2024-04-24 07:35 | ドラマ

『ありがとう』(5)、(6)(ドラマ)

ありがとう(第1シリーズ) (5)、(6)(1970年・TBS、テレパック)
原作:平岩弓枝
演出:川俣公明
出演:水前寺清子、石坂浩二、山岡久乃、伊志井寛、乙羽信子、長山藍子、児玉清、和泉雅子、沢田雅美、奈良岡朋子、長内美那子、岡本信人

お茶の間の団らんに適したドラマ

『ありがとう』(5)、(6)(ドラマ)_b0189364_11081190.jpg 1970年に放送された『ありがとう』が再放送されたため2本だけ見てみた。
 『ありがとう』は、放送時から非常に人気が出たドラマで、TBSの木曜8時の一連のシリーズの中でももっとも高い人気を誇った作品である。それまで歌手としてしか表に出ていなかった水前寺清子を主役に抜擢したホームドラマで、高い人気を誇ったことからその後シリーズ化された。特に第2シリーズでは視聴率50%超えを果たしたほどで、僕も、親が見ていた関係で、ほぼ毎週見ていた。
 今回50年ぶりに見たわけだが、まず出演俳優の豪華さにびっくりする。それにどの俳優も同じようなテイストで演技をしており、いわば「ありがとう調」みたいな統一感がある。大きな事件もなく、登場人物たちの日常が淡々と描かれ、(どうでも良いような)日常的な会話で構成される。そのため、いかにもホームドラマという安心感があり、見ている方にしてみると、ご近所の様子がそのまま再現されているかのような気安さがある。そのあたりが当時の人気に繋がったのではないかと思う。
 ただ、今見ると、そういう日常風景にあまり面白さも感じず、特段見続けようという気にもならない。こういうドラマがあっても良いが、大変物足りない気がする上、これを見ている時間がもったいないような気になってしまうのは、現代人的なせっかちさが原因なのか。いかにも「お茶の間の団らん」にピッタリ合っている存在であり、やはり当時の時代感覚に合っていたのが人気の最大の原因だったのではないかなどと考察する。
 スポンサーがカルピスだったこともあって、ドラマの中でもたびたびカルピスを飲むシーンがあるのはご愛敬。なおこの第1シリーズでは主人公が婦人警官、第2シリーズでは看護婦、第3シリーズでは魚屋である。僕には『ありがとう』といえば魚屋のイメージが強いが、どのシリーズも似たようなストーリー展開だったため、ごっちゃになるのも致し方ないところではある。
 今回、第5話と第6話のみを見たんだが、登場人物が多く関係性がそれなりにややこしいにもかかわらず、1話だけでほぼすべての背景が掌握できた。そのあたり、連続ホームドラマの脚本としては大変秀逸であると思う。ドラマ作家としての平岩弓枝の力量を感じさせる。
★★★

参考:
竹林軒出張所『寿の日(ドラマ)』
竹林軒出張所『私家本 椿説弓張月(本)』

# by chikurinken | 2024-04-22 07:07 | ドラマ

『ワクチン神話捏造の歴史』(本)

ワクチン神話捏造の歴史
ロマン・ビストリアニク、スザンヌ・ハンフリーズ著、神瞳訳、坪内俊憲監修
ヒカルランド

社会に蔓延するワクチン神話は
歴史や証拠に基づくものではなかった


『ワクチン神話捏造の歴史』(本)_b0189364_08483872.jpg 世間では、感染症を予防すると考えられているワクチンだが、本書では、あらゆるワクチンについて、病気予防の効果があまりないだけでなく、危険性が非常に高いことを訴える。本書の趣旨についてはそのほとんどが「著者によるまえがき」でまとめられていて、本文では、1800年代から1900年代初めの本・雑誌・新聞など(情報源が明確なもの)から引用文を列挙し、本書で展開される主張について裏付けを重ねていくという実証的なアプローチを取っている。
 本書で使用される引用文献は膨大であり、本書の主張が決して良い加減なものでないことはすぐに察しが付く。こういった「エビデンス」を通じて、現在のワクチンに対する信用が実はほとんど(というかまったく)根拠のないものから生み出されてきたということがわかるのである。もちろん、医療関係者や研究者以外の一般市民は、専門性の高い事項については「その道の権威」の言うことを信じるしかないわけだが、実は「その道の権威」も、先代の「その道の権威」の言うことを受け売りしているだけで、真実について大してわかっていないということが、過去の記録からは窺われる。したがって、専門家は当然のことながら、それ以外の一般市民についても、特定の専門家のご託宣を無批判に受け入れるのではなく、批判的な目を向けなければならないということになる。僕自身は、コロナ騒ぎで医療関係者の無知を悟ったため、自分自身でしきりに文献をあさっているわけだが、本書の提供するデータは、膨大にして同時にきわめて貴重なものであって、一般市民がアクセスする上で大きな価値のあるアーカイブであると言える。
 本書で主張されていることは、「恐ろしい感染症がワクチンのおかげで対処できるようになった」という見方に対する疑義であり、実のところ、多くの感染症はワクチン接種が始まる前にすでに激減しており、ワクチンが感染予防や重症化に果たした役割はきわめて少ないかまったくない。それどころか、ワクチンによって引き起こされた病気や障害、あるいは死亡事故がきわめて多いことから、総合的に考えるとワクチンには有用性がないとする見方である。この見方を補強するのが、先ほども述べたようなさまざまな文献の記事で、そこには非常に生々しい同時代的な記述が見出される。
 このブログでは、かつて母里啓子近藤誠のワクチン関連の著書を紹介してきたが、彼らの著書でも、天然痘やポリオなどの一部のワクチンを除いて、ワクチンは効果がなく有害と書かれていた。ところが本書では、天然痘とポリオについても詳細な記事が紹介されており、それぞれのワクチンに効果がなく、それどころか深刻な被害をもたらしていたことが紹介されている。そしてワクチンが導入されていったのは多大に政治的な理由であって、ワクチンの効果を盲信する勢力によってなし崩し的に導入されてきたということも当時の記述から窺える。
 特に、ワクチンの始まりである天然痘ワクチン(つまり種痘だが)についてはかなり詳細な記述があり、その実態は非常に衝撃的である。このワクチンは、19世紀に英国で導入され、その後英国全土に広まっていったが、それにもかかわらず天然痘はたびたび流行し、ワクチン接種が法令で強制されることになったりもしている。一方でそれにあわせてワクチン被害が拡大しただけでなく、むしろ天然痘流行の原因になっていると考える人々も現れた(つまり種痘〈生ワクチン〉を接種することで天然痘に感染していたということ)。こういう状況を背景として、反対の声が特に大きかったレスター市では、英国全土でワクチン接種が義務化されていたにもかかわらず、行政が接種を取りやめ、そのための予算で下水などの衛生施設を改善する方策を採ったところ(レスター方式)、天然痘の発生、そして天然痘による死者数が他の地域より著しく減少したのである。この「実証実験」の結果が、天然痘ワクチンの効果に対する疑問を広げるきっかけになったという。ところが、この「レスター方式」については、その後、各地の行政府がワクチン接種政策を進めていく過程で、徐々に忘れ去られてしまった(おそらく記録から意図的に抹消されたということなんだろう)。そして天然痘の減少・消滅が、種痘によるものという信仰が定説化していったのだという。
 また、ポリオについても大きく紙面が割かれている。元々、ポリオは診断基準が明確でなかったために、農薬や薬物によるものも含め、子どもの身体障害がすべてポリオが原因であると片付けられてきた歴史があった。ところが、ワクチン接種が始まると診断基準が変えられたため、数字の上でワクチンによってポリオが減ったことになったなどという、驚きの事実が明かされる。またポリオについても、天然痘同様、ワクチン接種がポリオ蔓延の原因になったことが窺われる。そういった事実が、過去の新聞記事などによって裏付けられているため、信憑性が非常に高いのである。
『ワクチン神話捏造の歴史』(本)_b0189364_08484200.jpg このように、本書はワクチンの効用に疑問を投げかけるもので、同時にその有害性についても声を大にして訴えている。そしてその多くに、過去の記事や論文などの裏付けがあるため、大きな説得力がある。さらには、現代社会が「ワクチンが感染症に効果を持つ」という神託を無批判に受け入れているために、その結果として多くの悲劇が生み出されている状況が明らかにされる。
 ワクチン信仰がひとり歩きしている現代社会で多くの人が本書のような主張に接することができれば、自身で考えるきっかけになるのではないかと感じる。同時に、「専門家」と呼ばれる人々にはその内容に対して反証を試みてもらいたいと思う。本書の主張と反証のどちらに説得力があるか、一般市民にその判断を仰ぐというのが筋で、それこそが学問的かつ実証的なアプローチになるのではないだろうか。
 なお本書は、スピリチャル関連の本を大量に出している「ヒカルランド」という出版社が版元だが、翻訳本であるため原書((『Dissolving Illusions: Disease, Vaccines, and the Forgotten History』))もペーパーバックで発売されている。こちらのオリジナル版については「ヒカルランド」ほど怪しさがないため、元々の本はしっかりしたものではないかと思うが、本音を言えばしっかりした国内出版社が翻訳権をとって出版してほしかった(そして広範に宣伝してほしかった)本ではある。ただ、この「ヒカルランド」版、どういう理由かわからないが原書より安価であり、その点は評価に値する。ただし例によって誤植が多いという難点がある。翻訳はまずまずである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『もうワクチンはやめなさい(本)』
竹林軒出張所『子どもと親のためのワクチン読本(本)』
竹林軒出張所『インフルエンザワクチンは打たないで(本)』
竹林軒出張所『ワクチン副作用の恐怖(本)』
竹林軒出張所『子宮頸がんワクチン事件(本)』
竹林軒出張所『ワクチン幻想の危機(本)』
竹林軒出張所『コロナパンデミックは、本当か?(本)』
竹林軒出張所『新型コロナとワクチンのひみつ(本)』
竹林軒出張所『新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人(本)』
竹林軒出張所『薬害「コロナワクチン後遺症」(本)』
竹林軒出張所『新型コロナワクチンの光と影(本)』
竹林軒出張所『コロナワクチン失敗の本質(本)』
竹林軒出張所『大丈夫か、新型ワクチン(本)』

# by chikurinken | 2024-04-19 07:48 |

『「非モテ」からはじめる男性学』(本)

「非モテ」からはじめる男性学
西井開著
集英社新書

「非モテ」に横たわるマッチョな思考

『「非モテ」からはじめる男性学』(本)_b0189364_08325909.jpg タイトルから、昨今増えている「卒論みたいな内容の新書」かと思って手に取ったが、あに図らんや、内容が充実した立派な論考の本であった。
 「非モテ」とは、元々は「恋人が欲しいのに、恋人が得られない男」みたいなニュアンスで登場した言葉だったが、やがてその特性(身体的欠陥や低い経済状態)のために恋人や配偶者を持てない者(多くは男)というふうな定義に変わっていった。つまりかつてはシャレで済ませていたような意味の言葉だったものが、現在はもっと深刻な意味に変わっているというのが著者の解釈である。2008年の秋葉原通り魔事件で、加害者が「非モテ」に悩んでいたこともあって、これが一種の社会問題として注目されるようになったという。
 著者自身も「非モテ」で悩んでいた時期があり、同時に「非モテ」現象を研究対象にしたいと考え、「非モテ」で悩んでいる人々に自由に語ってもらう会、「ぼくらの非モテ研究会」を立ち上げた。この会は、参加者自身の経験や思いを自由に語ってもらうというコンセプトで開かれており、参加も不参加も各人の自由であって、非常に緩やかな繋がりの会である。そこでの発見や気付きを元に論考をまとめたのが本書である。
 本書では、「非モテ」で悩む男の代表的なパターンを類型化して紹介している。自分が属するコミュニティ(学校のクラスなど)内に存在する魅力的な集団に加わろうとするが、その集団から排除されないようにするために、場合によっては身体的特徴や(内向的な)性格などをネタにされていじられて、しかもそれを甘んじて受け入れる、そうせざるを得ない状況になるというのが入口だという。ただ、その集団内に居続けようとして、その立場を取り続けるうち(いわゆる「いじられキャラ」)、その集団に内在する価値観、つまり「男らしく立派で(身体的欠陥がなく)女性にもて異性のパートナーを持っていること」(標準的な男性像)こそ正義であるという考え方を強いられることになる。その際に、「異性のパートナーを持つ」ことが絶対的な正義になり、その条件を欠いていることが引け目になって、同時にその人気集団に属する上での資格がないかのように扱われる、つまりいじられたりすることから「モテ」こそ正義で、「モテ」になることが目標になってしまうという。そこでこういった「モテ」経験のない男たちは、なんとか恋人を捕まえようと躍起になって女性にアプローチするが(それは、モテ・グループに通底する「男は押しだ」みたいな価値観を背景としている)、これがマイナスに作用し、ますます女性から遠ざかる結果になって、自分は「非モテ」である、つまり「標準的な男性像」から逸脱した社会的弱者であると思い込んでしまう、というのが現在の「非モテ」現象ではないかと結論付けている。
 だが、そこに横たわっているのは、「標準的な男性像」から逸脱することで生じる迷いであって、そもそも「標準的な男性像」などというものが幻影に過ぎないのであるし、むしろ今後、絶滅する可能性も高い価値観であるのだから、それを認識した上で、真の問題がどこにあるかを考えることが、「非モテ」で苦しんでいる人々にとっての第一歩になるというのが著者の主張である。つまり男権主義的でマッチョな思考から離れ、時代遅れの基準を捨て去って、自分らしく自由に生きれば良いのだとする考え方である。要は、男権主義は女性だけでなく男性に対しても有害であることを認識して、男性学的見地から、従来の凝り固まった思考から自由になるべきという考え方で、そこには新しい男性学的アプローチが見える。
 本書では「非モテ」経験者による多くの語りが紹介されており、僕自身、身に覚えがあるようなことがふんだんに出てくる(他の人でもそうではないかと思うが)。そうすると僕自身が「非モテ」だったということにもなるわけで、「非モテ」なんてものは、状況に応じて誰にでも存在するものであり、本来それほど気にするような事象ではないのではないかと、当事者でない今となっては実感する。凝り固まった考え方を捨てて、ものごとにもっと自由に対峙できたら、はるかに生きやすくなるんじゃないかと、本書の経験談に接してあらためて感じた次第。何でもあまり深刻に捉えず、あるがままに生きるのが最善の策で、ひいてはそれが非「非モテ」に繋がるんじゃないかと思ったりもする。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (2)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ハリウッド発 #MeToo(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2024-04-17 07:32 |

『店長がバカすぎて』(本)

店長がバカすぎて
早見和真著
ハルキ文庫

展開がバカバカしすぎて

『店長がバカすぎて』(本)_b0189364_11291645.jpg 流行りの小説はめったに読まないが、最近Amazon Audibleで本書の朗読版を聴いていたことがきっかけとなって、原作を読んでみた。朗読を聴いているのが途中からまだるっこしくなったので、活字版に当たったというのが正直なところである。
 主人公は、東京の書店員(29歳女性、契約社員)で、鈍感な店長や失礼な客などに振り回される毎日が続いている。いろいろと感じるところや思うところが表明されながらストーリーが展開されていくが、最後の方はミステリー仕立てになるというエンタテイメント作品である。
 ストーリーは割合しっかり作られていて、描写にも破たんはないし、文章も悪くないが、わざわざ買って読むような本だとも感じられない。こういう本が好きな人、たとえばこの小説の主人公みたいな文芸好きな人にとっては良いのかも知れないが、僕と流行小説との間に壁というか齟齬のようなものがすでに(あるいは元々か)存在するせいか、こういう小説に格段の興味が湧かない。最後のオチなんかは何じゃこりゃと思った上、作りすぎで少しばかりバカバカしさも感じたほどで、一生懸命になって集中するようなものでもなかったと今にして思う。
 Audibleでは「本屋大賞」関連ということで推薦されていたが、これまで「本屋大賞」関連では、『天地明察』以外、面白いものに出会ったことがない。そもそも僕自身がエンタテイメント小説が好きではないということもあるのだが、いずれにしても読んだところでどうというような感慨が湧かなかいわけである。本書の前にAudibleで聴いた「くちびるに歌を」もなんだかなあという程度の感想しか湧かなかったが、流行小説自体が、僕にとってそんなものなのかも知れない。くだらないと言うほどではないが、残るものもあまりなかった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『13坪の本屋の奇跡(本)』
竹林軒出張所『私は本屋が好きでした(本)』
竹林軒出張所『天地明察 (上)(下)(本)』
竹林軒出張所『脳の配線と才能の偏り(本)』
竹林軒出張所『世界史とつなげて学ぶ中国全史(本)』

# by chikurinken | 2024-04-15 07:29 |