ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『プーチンと西側諸国』(ドキュメンタリー)

プーチンと西側諸国
第1回 ロシアの“裏庭”で

第2回 アラブの春への反撃
第3回 ウクライナ侵攻への道
(2023年・英Brook Lapping Productions/Zinc Television)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

21世紀の歴史を振り返る際の重要な史料

『プーチンと西側諸国』(ドキュメンタリー)_b0189364_08354868.jpg 2010年頃から2023年頃に至るまでの西側諸国(NATO加盟国)とプーチン・ロシアとの攻防を描く、全3回シリーズのドキュメンタリー。
 第1回がロシアによるウクライナ領クリミアの併合、第2回がリビアやシリアなどのアラブの春、第3回がウクライナ侵攻に至るまでがそれぞれテーマになっており、それぞれの事象に関係した人々のインタビューとドキュメント映像で構成される。インタビューについては、西側諸国の当時の首脳が(大統領や首相クラスの人々も)大勢登場し、当時実施された会談の内容や当時の状況などが(彼らの視点から)赤裸々に語られるため、その当時の状況がよくわかるようになっている。もっとも出てくる関係者の多くは西側の人間であるため(ロシア政府の関係者も出てくるが)、全体的な視点はNATO側からのものと考えた方が良い。そのため大筋では、プーチンの所業が周辺諸国を脅かす侵略者のそれという印象に映る。
『プーチンと西側諸国』(ドキュメンタリー)_b0189364_08355328.jpg だが、実際のところもそれに近いものだろうし、どのような理由を付けてもプーチンの侵略行為が許されるわけではないのは確かだ。むしろ、今回の一連の過程が第二次大戦前夜のヒトラー対西側諸国と非常によく似た構図にも思える。ウクライナが攻勢をかけている現在の状況もナチスの末期の状況に似たものに見えるが、いずれにしてもプーチンが、大勢の民間人を無差別に殺しており、世界の平和に敵対した存在であるのは間違いない。その点、ヒトラーやスターリンに例えても差し支えあるまい。これは単なる好き嫌いの問題ではないのである。
 2000年以降のロシアの周辺状況を(西側からの)歴史的な視点でまとめたドキュメンタリーという印象で、多くの首脳が自身の言葉で当時の状況を語っていることから、今後、21世紀の歴史を振り返る際の重要な史料となるかも知れない。そういう点で、何度も見返すことができるような優れた映像記録であると言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『第三次世界大戦はもう始まっている(本)』
竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチン 戦争への道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『オリバー・ストーンONプーチン(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ワグネル 影のロシア傭兵部隊(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチン政権と闘う女性たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンが恐れた男(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンの陰で(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『未承認国家(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スターリンの亡霊(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『戦時下の大統領 ゼレンスキー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『軍事侵攻・緊迫の72時間(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『バシャール・アサド 独裁と冷血の処世術(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『メルケルが残したもの(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2024-09-06 07:35 | ドキュメンタリー

『プーチンの“オオカミ”たち』(ドキュメンタリー)

プーチンの“オオカミ”たち
バルカン半島にくすぶる火種

(2023年・仏SlugNews)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

バルカン半島を火薬庫にしたい人々

『プーチンの“オオカミ”たち』(ドキュメンタリー)_b0189364_09004499.jpg セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナに存在する反イスラム・親ロシア勢力を取材したドキュメンタリー。
 登場するのはナイト・ウルヴスというオートバイ集団で、見るからに暴力的な雰囲気を漂わせている一団。このナイト・ウルヴスの活動に密着して、彼らの背後にある考え方にアプローチしようとする。
 彼らは、反イスラムの態度をあからさまにしており、イスラム系住民に対する敵意を示す。ボスニア・ヘルツェゴビナ内のセルビア人地域であるスルプスカ共和国の独立を画策しており、同時に親ロシア的な思想を持ち、プーチンに対しても親近感を持つ(というより崇拝に近い)。親露の保守的なセルビア正教会とも考え方が近く、セルビア国内の保守主義、排他主義を体現する存在である。
 一方のロシアもこの地域に対して経済的・政治的な影響力を持っており、ガスプロム(ロシアの政府系エネルギー企業)がセルビアの国営エネルギー企業、NISを(超低価格で)買収して、同国のエネルギーを支配下に置いている(同国内の石油精製所も支配)。言わばこういう地域(セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナ)もロシアの衛星国になりさがっているわけで、この地にはいまだにソ連時代の亡霊が残っているということもできる。そういう点でモルドバの沿ドニエストル共和国やジョージアのアブハジア自治共和国(竹林軒出張所『未承認国家(ドキュメンタリー)』を参照)と同様の存在であり、強権ロシアが存在する限り存続する、しかもそれがバルカン半島地域の火種にもなっているという現実がある。
 旧ユーゴスラビアの現状はなかなか日本に伝わってこないのが現状で、僕自身もこう言った状況についてほとんど知識がなかったが、プーチン・ロシアがこの地にも巧妙に網を張り巡らせていることが、このドキュメンタリーを通じてわかった。バルカン半島がいまだに火薬庫のままになっているのは、強権政治の存在と関係していたということもできそうである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『未承認国家(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ゆらぐモルドバ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『潜入 ベラルーシ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンと西側諸国(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2024-09-04 07:00 | ドキュメンタリー

『未承認国家』(ドキュメンタリー)

未承認国家
“親ロシア派”地域にくすぶる火種

(2023年・仏Ligne de Front)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

抑圧的なソ連の亡霊がくすぶり続ける

『未承認国家』(ドキュメンタリー)_b0189364_12172682.jpg ロシアの周辺国には、ロシア以外のほとんどの国が承認していない「国」がある。共通しているのは、どの「国」も、ソ連解体後に独立した旧ソ連独立国家の中にあり、しかもロシアがその地に軍を派遣してロシアの影響力を依然とどめながら独立を画策しているという点。言って見ればロシアが、傀儡政権を周辺国の中に作って、その周辺国に揺さぶりをかけているわけである。
 ロシア側からすると、同地は親ロシアの地域で、それぞれの独立国家から圧力をかけられている親ロシア住民を保護するという名目があるわけだが、実際には、この方法論はロシアが(ソ連時代から)周辺国に勢力を拡大しようとするときに使う常套手段である。そのことは、今回のウクライナ侵攻に先だって行われたクリミア半島併合やウクライナ東部4州(ドネツク、ルガンスク、サボリージャ、ヘルソン)への軍事侵攻、その後のロシアによる住民投票、独立宣言の過程を見ればよくわかる。
 このドキュメンタリーで紹介されるのは、このウクライナのケースの他、モルドバの沿ドニエストル共和国とジョージアのアブハジア自治共和国で、それぞれの地に実際に赴き、当地の状況が報告されている。共通しているのは、どの土地にも、ロシア風の武力主義的でマッチョな勢力が存在し、彼らの中にはともすればソ連時代を懐かしむという風潮が感じられる(このドキュメンタリーの映像から受ける印象である)。当然、その地域内にも「独立」に反対している人々もいるが、彼らに対しては全体主義的な圧力がかかっているようにも映る。
『未承認国家』(ドキュメンタリー)_b0189364_12174579.jpg ソ連を懐かしむマッチョな方向性はロシアのプーチンと共通するものであり、プーチンがこういう「国」を支援し、独立を画策しているというのも納得がいく。こういう一国内に存在する独立「国」が正しいのかどうかにわかに判定できないが、多分に政治的に成立させられたような印象を受ける上、少なくともロシアの支援がなければ存続しえないのは確かである。プーチン・ロシアが崩壊したら、こういった地域の「独立」状態も終わるんじゃないかと感じたが、いずれにしても強権ロシアの存在が存続の鍵となっているのは確かである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ゆらぐモルドバ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンの“オオカミ”たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『潜入 ベラルーシ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンと西側諸国(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2024-09-02 07:17 | ドキュメンタリー

『クリック・ベット』(ドキュメンタリー)

クリック・ベット
欧州 スポーツ賭博のワナ

(2023年・仏Arte France/Magneto)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

何も生み出しませんが
収奪だけさせていただきます


『クリック・ベット』(ドキュメンタリー)_b0189364_08210480.jpg インターネットを介したスポーツ賭博がヨーロッパで盛んになって大きな問題になっていることを訴えるドキュメンタリー。
 スポーツ賭博というと、大谷翔平の通訳をやっていた水原一平氏のことを思い出すが、あのケースをイメージすると全体像が掴みやすくなるかも知れない。一旦始めてしまうとやめられなくなるというのがネット賭博の特質で、インターネットを介していつでも利用できるという手軽さもそれに貢献している。
 こういったスポーツ賭博を事業として展開する業者がヨーロッパ中で幅を利かせており、しかも急成長しているらしい。その上、彼らはEU議会にしきりにロビー活動を行い、自分たちにとって有利な法律を通そうとするなどということも行っている。
 そういう活動が功を奏してか、スポーツ賭博業者がますます幅を利かせ、それにあわせてスポーツ賭博で大金を失う被害者が激増しているのが現状という。そもそもどのようなものであっても、博打は必ず胴元が儲かるようになっており、それに参加する側は一時的に儲かることがあっても長い目で見ればほとんどの人間は金を巻き上げられて終わる。このドキュメンタリーで扱われるスポーツ賭博業者については、常に大損をするような客を上級顧客として優遇し、博打で勝つ傾向にある客については退場を促すようなこともやっていて、売上(というより巻き上げ金)を伸ばしている。『クリック・ベット』(ドキュメンタリー)_b0189364_08205949.jpgそのためほぼすべての「客」は大金を巻き上げられ、しかもやめることができないため、あるいは借金しあるいは家庭崩壊しという結末に辿り着く。潤うのは賭博業者のみで、それ以外の誰も幸せにならない事業である。早い話が詐欺または窃盗の類の行為であり、こういうものが野放しになっていること自体が問題なのであるが、実際にはこういう業者がスポーツチームやイベントのスポンサーになって広告を出しているため、スポーツ関連事業者にとって認めざるを得ない側面があるのだという。
 ただ、このドキュメンタリーで扱われているスポーツ賭博業者のやり口は相当悪どく、先ほども言ったように、市民の金を収奪する以外に何の事業も行わず、(娯楽を含め)何ものをも生み出さない行為である。禁止してすべての財産を差し押さえ被害者に返すなどの措置を早々に取るのが、行政の役割ではないかと思うが如何。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『オンラインカジノ 底知れぬ闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『私、パチンコ中毒から復帰しました(本)』
竹林軒出張所『天使の入江(映画)』
竹林軒出張所『ミモザ館(映画)』
竹林軒出張所『僕らはそれに抵抗できない(本)』
竹林軒出張所『スマホ脳(本)』
竹林軒出張所『スマホ依存から脳を守る(本)』
竹林軒出張所『性犯罪をやめたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『「教えて★マーシー先生」って……』
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』
竹林軒出張所『飲んで死にますか やめて生きますか(本)』

# by chikurinken | 2024-08-30 07:20 | ドキュメンタリー

『オンラインカジノ 底知れぬ闇』(ドキュメンタリー)

調査報道・新世紀 File4
オンラインカジノ 底知れぬ闇

(2024年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル

ネットゲームと同じ感覚で接すると身の破滅

『オンラインカジノ 底知れぬ闇』(ドキュメンタリー)_b0189364_07444055.jpg インターネットがあまりに身近になったため、従来であれば一般人の手の届かないような犯罪や博打でさえ身近になり、簡単に関われてしまうようになった。こういう状況は決して野放しにしておいて良いはずはないが、対策が打たれるまでの間に、それを金づるにする勢力とその犠牲者が大量に現れる。特にインターネットは変化があまりに急激で、無法地帯化が進んでいるため、実社会の方がそれについて行けていないように映る。そろそろインターネット自体の規制が必要な時期に来ているのではないかと感じてしまう。
 このドキュメンタリーで取り上げられたオンラインカジノなどもまさしくその一例で、存在してはいけないものの1つである。ネット詐欺や特殊詐欺同様、被害者から金をむしり取るだけの目的で存在しているが、その問題性に対する認識が広く行き渡っていないことから世界中に業者が蔓延しているという状態になっている。
 日本ではこの手のカジノは禁止されているが、国内で禁止されていても簡単に海外のサイトにアクセスできるのはインターネットならではで、そのために日本からも米国やモナコのカジノを利用することができる。一方でカジノなどの博打は、依存性がきわめて高く、一旦始めてしまうとやめられなくなるという特徴を持つらしい。カジノ業者側もそのあたりは巧妙で、新参者の顧客については最初勝たせて、その後、破産するまで限りなく金を搾り取るという手法を採る。被害者は世界中に広まっており、中には日本人をターゲットにしたサイトもあり、日本人ディーラーが画面に現れて接客するらしい。日本人が画面に現れてカジノ風の演出をやったみせたところで、画面の向こうでどのような操作が行われているかわからないわけであり、本来であればまったく信用に足るものではないのだが、賭けている側は、いつか勝つことを信じてどんどん金を注ぎ込んでしまうものであるらしい。実際に裏では恣意的な操作が行われていて、利用者は一方的に金を巻き上げられるだけなのである。
『オンラインカジノ 底知れぬ闇』(ドキュメンタリー)_b0189364_07444445.jpg このドキュメンタリーでは、そういった現状が紹介されるだけでなく、実際にモナコにある日本人コミュニティに潜入して、オンラインカジノで働いている日本人たちにも接触し、カジノ業者の実態を探ろうとしている。実際には本丸まで迫ることはできていないが、カジノサイトの運営をウェブ製作業者みたいなところが行っており、多くの日本人がそこで雇用されて日本人向けのサイトが運用されているというところまでは判明した。
 またオンラインカジノにはまって全財産を失った(挙げ句に家庭も崩壊しつつある)サラリーマンや、その救済活動を行っている市民にも密着する。こちらはNHKらしいアプローチである。
 全体的にかなり力を込めて作ったドキュメンタリーという印象で、「調査報道」と名うっているだけのことはあると感じる。ここ数回放送された『NHKスペシャル』は内容が割合充実していて、見る価値のあるものが多かった。この10年で確立された『NHKスペシャル』のポンコツなイメージを払拭することができるか、今後に注目していきたいところである。それは行政によるインターネットカジノ対策(ひいてはインターネット規制)についても同様で、今後の行方に注目していきたいものだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『クリック・ベット(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『私、パチンコ中毒から復帰しました(本)』
竹林軒出張所『盗撮・児童ポルノの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『天使の入江(映画)』
竹林軒出張所『ミモザ館(映画)』
竹林軒出張所『僕らはそれに抵抗できない(本)』
竹林軒出張所『スマホ脳(本)』
竹林軒出張所『スマホ依存から脳を守る(本)』
竹林軒出張所『性犯罪をやめたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『「教えて★マーシー先生」って……』
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』
竹林軒出張所『飲んで死にますか やめて生きますか(本)』

# by chikurinken | 2024-08-28 07:43 | ドキュメンタリー