釈迦(1961年・大映)
監督:三隅研次
脚本:八尋不二
音楽:伊福部昭
出演:本郷功次郎、チェリト・ソリス、勝新太郎、市川雷蔵、山本富士子、川口浩、中村玉緒、京マチ子、山田五十鈴、杉村春子、東野英治郎、中村鴈治郎、市川壽海
『大魔神』的な勧善懲悪的スペクタクル テレビのカラー放送が始まった頃に大映によって作られた超大作である。テレビに危機感を持った大映社長の永田雅一が、テレビと違うスケール感を出すために70mmフィルムで製作したという話で、そのためかセットもかなり大がかりである。事前に内容についていろいろと取り沙汰された模様だが(ビルマやセイロンから外交ルートで内容に対して抗議があったらしい)、結果的にそのことが話題性を呼んだこともあって、興業としては大成功だったという(ここら辺の情報はすべてウィキペディアによる)。
今回、こういった事前情報は何も持ち合わせることなく、この映画を見てみたわけだが、テーマが宗教であり、いくら特撮を交えていると言っても釈迦が主人公では抹香臭い作品にしかなるまいと思っていた(実際途中までは
『奇跡の丘』の仏教版みたいな展開だった)ところ、結構なスペクタクル作品で、なかなかの娯楽大作に仕上がっていた。僕自身、釈迦の生涯についてはまったく無知であったこともあり、ダイバ・ダッタとの確執などもまったく知らなかったため、非常に勉強になったし、最後の大スペクタクルもそれなりに楽しめた。ただ、総じて娯楽大作で終わっているのは確かで、演出もステレオタイプ、ストーリーも通り一遍という印象であった。製作者側は
『ベン・ハー』や
『スパルタカス』などのハリウッド大作を意識していたのかも知れないが、同じ大映の『大魔神』に全体的な雰囲気が非常に似ており、結局この作品が『大魔神』、『ガメラ』への流れを作ったのかと感じ入った次第。
キャストは豪華絢爛で、さながら顔見世興行のようであった。大映の看板女優である京マチ子までもがチョイ役という有り様である。悪役のダイバ・ダッタを演じた勝新太郎が存在感を見せていたが、他のキャストは平凡。この映画の見どころはやはり、『大魔神』的な勧善懲悪的スペクタクルである。芥川龍之介の
『邪宗門』も映画化したらこんな感じになるのかな、などとふと感じた。
★★★参考:
竹林軒出張所『大魔神、大魔神怒る、大魔神逆襲(映画)』竹林軒出張所『地獄変・邪宗門・好色・藪の中(本)』竹林軒出張所『ベン・ハー(映画)』竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』竹林軒出張所『奇跡の丘(映画)』竹林軒出張所『空海(映画)』