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竹林軒出張所

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タグ:映画 ( 566 ) タグの人気記事

『本日ただいま誕生』(映画)

本日ただいま誕生(1979年・新世映画新社)
監督:降旗康男
原作:小沢道雄
脚本:下飯坂菊馬、千田由治
音楽:八木正生
出演:植木等、宇津宮雅代、川谷拓三、中村敦夫、室田日出男、山口いづみ

日本の映像界には「幻」が多い

b0189364_19433265.jpg 小沢道雄という人の同名タイトルの自伝を映画化したもの。この人、曹洞宗の坊さんだが、実は第二次大戦のときに凍傷のため両足切断という憂き目にあった。復員してからも、両足がないことで大変つらい思いもしたが、出家することで自分というものを確立し、新しい生き方を見つける。その波瀾万丈の生き方を映画化したのがこの映画。
 実はこの映画、永らく幻の作とされていたらしい。というのは、原版フィルムが残っていなかったためで、それが近年渡辺プロの倉庫で発掘されたという。そもそもこの映画、資金不足で撮影が中断されたが、植木等が事務所社長に懇願して完成した(『映画.com』より)といういわく付きの作品である。その割にはスタッフもキャストも一流で(しかもクレージーキャッツの面々が友情出演している)、こういう映画をお蔵入り化あるいは幻化させてしまうのが当時の日本映画界のレベルを反映しているとも言える。
 映画としては割合よくできていて、後半はやや面白さを欠いてくるが、決して消えて良い作品ではないと思う。ただ前半登場していた重要なキャラクターが後半出てこなくなるみたいな部分があって(資金不足の影響かも知れない)、完成度の低さは若干感じられる。
 結局原版フィルムは復元されたらしいが、他にも日本映画(あるいはドラマ)にはこういう埋もれた作品がたくさんあるんだろうなと感じてしまう。なんとか復元していただきたいものだが、本来であれば文化庁あたりが取り組むべき事業じゃないんだろうかなどと考える。
★★★

参考:
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (6)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『忘れられた皇軍(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『同棲時代(ドラマ)』
竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』

by chikurinken | 2017-04-07 07:43 | 映画

『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』(映画)

日本の熱い日々 謀殺・下山事件(1981年・俳優座映画放送)
監督:熊井啓
原作:矢田喜美雄
脚本:菊島隆三
出演:仲代達矢、山本圭、隆大介、井川比佐志、平幹二朗、浅茅陽子、中谷一郎、岩崎加根子、神山繁、大滝秀治

b0189364_20571772.jpgノンフィクションをそのまま
劇映画にするのは無理がある


 1949年、当時の国鉄総裁だった下山定則の轢死体が常磐線で発見された。自殺説、他殺説、GHQの謀略説、共産党の謀略説などいろいろな説が飛びかったが、結局迷宮入りし、いまだに真相は藪の中。これが世に言う下山事件で、その後起こった国鉄関係の事件(三鷹事件、松川事件)とあわせて、今でも物議を醸しており、折に触れて取り上げられている。
 当時朝日新聞社の記者をしていた矢田喜美雄は、独自の取材を通じて他殺説を確信し、1973年に『謀殺・下山事件』を出版した。それを俳優座が映画化したのがこの映画である。
 原作がノンフィクションだけに映画もドキュメンタリー調で、全編引き締まったモノクロ映像。著者の矢田喜美雄(映画では矢代)を仲代達矢が演じる。ただ映像は引き締まっているが、全体的には少々弛緩気味で、結局謎解きで終始しているため、謎解き以外の面白味はあまりない。謎解き大好きのミステリーファンなら楽しめるかも知れないが、劇映画としてはかなり物足りない印象である。ドキュメンタリー作品のような迫真性もない。
 俳優の演技も演劇風で作り物的な雰囲気になっているのはマイナス点。俳優座の役者ばかりなので演劇的になったのかはわからないが、演出レベルでもう少し何とかしたかったところである。脚本も過剰に説明的で、わかりやすいという点では評価に値するかも知れないが、そのあたりが映画が演劇的になった原因かも知れないとも思う。ノンフィクションをそのまま劇映画にしたらこうなったという類の映画で、見ているこちらは、あちらの意図と違ってあまり「熱く」はなれない作品になっている。またこの映画で展開されている推理も少々無理やりな部分が残っており、この映画を見た後でも矢田の下山他殺説を100%受け入れる気になっていないということも付記しておく。
★★★

参考:
竹林軒出張所『奇子 (上)(下)(本)』
竹林軒出張所『日本テレビとCIA(本)』
竹林軒出張所『戦後70年 ニッポンの肖像 (1) 高度成長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『忍ぶ川(映画)』

by chikurinken | 2017-04-05 06:56 | 映画

『青春の門 自立篇』(映画)

b0189364_20453902.jpg青春の門 自立篇(1982年・東映)
監督:蔵原惟繕
原作:五木寛之
脚本:高田宏治
出演:佐藤浩市、杉田かおる、桃井かおり、渡瀬恒彦、風間杜夫、平田満、萬屋錦之介、城戸真亜子、西川峰子、火野正平、中島ゆたか

作り物の青春

 東映版『青春の門』の続編。続編であるためキャストは一貫しているが、渡瀬恒彦については別の人格として再登場していた。なぜそんなことをしたか理解に苦しむ。
 郷里でいろいろな経験を積んできた主人公の伊吹信介が、その郷里を離れ東京に出てきてからがこの『自立篇』である。早稲田大学に入学し、東京でもいろいろなことを経験していくというストーリーである。ただしこの映画、最初のシーンから一貫して「作り物」風で、まったくもって感情移入できない。そのため、信介を取り巻くいろいろなネタ、たとえばボクシングとか娼婦とか、あるいは基地反対運動とかにまったく必然性が感じられず、幼なじみの織江が東京に出てくるというのもあまり必然性が感じられない。ましてや織江がやけっぱちを起こして娼婦になろうとするとか、嘘っぽくて安っぽくていけない。登場人物を動かそうとしてはいるが全然動かずという感じで、最初から最後まで退屈きわまりない映画になってしまった。
 そういうわけで僕は途中から用事をしながら見たんだが、それでちょうど良いくらいの映画であった。前作も大したことはなかったが、それより格段に落ちる。劇場で見ていたらさぞかしつらかったろうという類の映画である。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『青春の門 (東映版)(映画)』

by chikurinken | 2017-04-03 06:45 | 映画

『FAKE』(映画)

b0189364_2151755.jpgFAKE(2016年・「Fake」製作委員会)
監督:森達也
撮影:森達也、山崎裕
編集:鈴尾啓太
出演:佐村河内守、森達也

バッシングされる側の論理

 ゴーストライター問題で大バッシングを受けた「作曲家」、佐村河内守のその後(バッシング後)を追うドキュメンタリー。
 かつては「現代のベートーヴェン」などと持ち上げられるだけ持ち上げられた佐村河内、その後、当の「ゴーストライター」であった新垣隆が『週刊文春』のインタビューに答え、そのときの『週刊文春』の記事が佐村河内が詐欺師であるかのように告発するものであったため、とたんに佐村河内は世間からペテン師みたいに言われ始めた。マスコミの豹変ぶりは毎度のことながら呆れるばかり。
 佐村河内があの記事のように、本当は耳が聞こえ、音楽作品もほとんどが新垣隆作であるのかは正確にはわからないが、確かなことは佐村河内が世間に徹底的に叩かれたということである。日本の場合、マスコミもネット社会も、弱っている者を見るとここぞとばかり徹底的にいじめ抜く点で共通しているが、真相がどうであるかに関係なく、叩かれた者は「悪者」のレッテルを張られてしまう。そうするとその人のことや事件のことを知らない人間までが「悪者」という目でその人を見ることになって、「悪者」になったものは居場所がまったくなくなる。空恐ろしいもんである。
 そういう「悪者」に対して真実はどうなのか問いかけるのが、この映画の監督、森達也のいつものアプローチで、マスコミで徹底的に叩かれていた佐村河内を取り上げたというのも森達也らしい選択と言える。この人の基本姿勢はどちらの側にも与しない、自分に見えたままを映像化するというもので、そういう点ではドキュメンタリー作品として信頼できるのではないかと思う。少なくともこの作品を見ると、見たなりにいろいろと感じることはある。たとえば、佐村河内側の主張がほとんどマスコミに取り上げられないこと、反論の機会がほとんど与えられないこと、大衆にとって何が真実かはあまり関係ないこと(要するに情緒的な部分で気に入るかどうかが問題)、その結果バッシングの対象となる人間の生活が著しく制限されることなど、映像を見ながら膚で感じることができる。脅迫まがいの嫌がらせをする人間も例によって現れる。こういう点はバッシング問題の共通項であり、真実を知ろうとせず情緒に流されるのが危険である、ということが暗に示されていく。これはこの映画のテーマでもある。
 ちなみに監督の森は、文春の記事を書いた記者と新垣隆にもインタビューを申し入れたらしいが、断られたらしい。彼らのスタンスをこのように描くことで彼らを悪者にしようとしているという見方もありうるだろうが、僕はこの映画を見ているときに彼ら側の言い分も聞きたいと感じていた。結果的に今回のこの騒動で一番得をしたのは彼らであるようにも思えるし、そもそもが最初から一方的に(佐村河内の悪を)断罪するというアプローチを取ってきたわけで、そうすると彼らも(この映画で提示されている彼らに対する)反論に対して自分の口でいろいろと語る、少なくとも正当性を主張するだけの責任はあるんじゃないかと思う。もちろんこの映画を通じてでなくてもかまわないが。だが攻撃の種をまいてそれでおさらばでは、バッシングされた側から見れば納得いかないんじゃないか……などとつらつら考えたのであった。
 いずれにしても、報道のあり方についていろいろ考えさせられるドキュメンタリーであることは間違いない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『A(映画)』
竹林軒出張所『A2(映画)』
竹林軒出張所『「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔(本)』
竹林軒出張所『アは「愛国」のア(本)』
竹林軒出張所『死刑(本)』
by chikurinken | 2017-03-18 07:04 | 映画

『クロムウェル 英国王への挑戦』(映画)

クロムウェル 英国王への挑戦(2003年・英)
監督:マイク・バーカー
脚本:ジェレミー・メイヒュー
出演:ティム・ロス、ダグレイ・スコット、オリヴィア・ウィリアムズ、ルパート・エヴェレット、ジェームズ・ボラム

歴史の流れがあまり見えてこない歴史映画

b0189364_20245591.jpg 1649年の英国ピューリタン革命を指導し、国王を処刑してその後護国卿の地位に就いたオリバー・クロムウェルとその同志であるトーマス・フェアファクスの関係を中心に、ピューリタン革命を描く歴史映画。
 この映画のハイライトになっているのが国王の処刑とクロムウェル暗殺未遂あたりだが、全体的に焦点がぼやけ気味で、何となく歴史を辿りましたというような大河ドラマ的な作品になっている。なぜクロムウェルが台頭したかとか、議会派と王党派間の戦闘の推移とかも入っていればもう少し面白味も増したのかも知れないが、フェアファクスの家族の葛藤が映画の焦点になっていることもあって、そういう歴史的な流れはあまり見えてこなかった。邦題は「クロムウェル」だが「フェアファクス」とする方が内容的には正しいような気もする(オリジナルタイトルは『To Kill a King』)。当時の風俗が描かれていた部分が魅力と言えば言えるが、映画としては平凡な印象である。
 クロムウェル関連の映画には他にも『クロムウェル』というタイトルの映画があって、本当はこちらの方を見たかったのだが、これはまた別の機会にということになる。
★★★

参考:
竹林軒出張所『わが命つきるとも(映画)』
竹林軒出張所『ブーリン家の姉妹(映画)』
竹林軒出張所『冬のライオン(映画)』
竹林軒出張所『エリザベス(映画)』
by chikurinken | 2017-03-16 07:19 | 映画

『プロミスト・ランド』(映画)

プロミスト・ランド(2012年・米)
監督:ガス・ヴァン・サント
原案:デイヴ・エガーズ
脚本:ジョン・クラシンスキー、マット・デイモン
出演:マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、ローズマリー・デウィット、ハル・ホルブルック

『ガスランド』を劇化したような映画

b0189364_20581734.jpg シェール・ガス開発会社で、地権者から掘削権を得る仕事をしている遣り手のビジネスマンが、やがて自分の仕事に疑問を感じるというストーリーの映画。
 以前放送されたドキュメンタリー、『ガスランド』を地で行くようなストーリーで、『ガスランド』で紹介されたような事例(水道水に火が付く、水を飲んだ家畜が謎の死を遂げるなど)が、登場人物によって語られる。内容は、シェール・ガスに対して非常にネガティブなもので、環境保護運動の一環として作られた映画かと錯覚するほど。そうは言うもののハリウッド映画であるため、映画として完成度が高いのは言うまでもなく、ドラマとしてもよくできている。ただし字幕のせいかも知れないが、終わりの方の種明かしがなんだかよくわからず、最後は非常にモヤモヤした。そこまでストーリー展開がうまく進行していたため、かえすがえすも残念である。
 主演のマット・デイモンと助演のジョン・クラシンスキーが製作、脚本を行った映画であるため、基本的には彼らが主導で作った映画と見なすことができる。彼らの演技はもちろん一級だが、それだけにとどまらず、こういった類の映画を製作できるという点を考えあわせると、彼ら演技者とハリウッドの懐の深さは計り知れないと言わざるを得ない。大したもんである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ガスランド(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『岐路に立つタールサンド(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『シェールガス開発がもたらすもの(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『脱原発。天然ガス発電へ(本)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』
by chikurinken | 2017-03-14 06:57 | 映画

『ロンゲスト・ヤード』(映画)

ロンゲスト・ヤード(1975年・米)
監督:ロバート・アルドリッチ
原案:アルバート・S・ラディ
脚本:トレイシー・キーナン・ウィン
出演:バート・レイノルズ、エディ・アルバート、マイケル・コンラッド、ジム・ハンプトン、エド・ローター

後半は試合を楽しんでください

b0189364_854763.jpg アメリカンフットボールの元花形プロ選手が、とある罪状で刑務所に入れられ、そこで囚人チームを編成して看守チームと闘うことになるという、かなり荒唐無稽なストーリーの映画。
 2時間の映画で後半はほとんどフットボールの試合になる。友情とか正義とか、いろいろな要素は盛り込んでいるが所詮は作り話という、どこかハリウッド的な映画である。アメリカンフットボールが好きならば試合のシーンは結構楽しめるが、時代が70年代ということで現在のフットボールに慣れた目からはコスチュームに多少違和感がある。それでも試合のシーンは、いろいろな(ギリギリの)プレーを非常にうまく再現しているためリアリティがある。どこかの大学のチームが協力して撮影しているのだろうなどと考えるが、それでも質が高いので驚く。スポーツ好きにはそれなりに楽しめる映画にはなっているが、ストーリーのリアリティは皆無で、しかもストーリーが予定調和的なのはいかにもハリウッド映画といった感じである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『天国から来たチャンピオン(映画)』
by chikurinken | 2017-03-12 08:06 | 映画

『マルタイの女』(映画)

マルタイの女(1997年・伊丹プロダクション)
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
音楽:本多俊之
出演:宮本信子、西村雅彦、村田雄浩、高橋和也、津川雅彦、江守徹、名古屋章、山本太郎、近藤芳正、あき竹城、伊集院光

笑いとサスペンスがほどよくブレンド

b0189364_75425.jpg 伊丹十三の「〜の女」シリーズの一作にして伊丹の遺作。「マルタイ」とは護衛対象者を表す警察用語で、主人公が殺人事件を目撃したことから犯人につけ狙われることになったために、警察によって護衛されることになるというストーリーの映画である。
 製作段階から三谷幸喜が関わっていたためか、あちこちにコメディの要素が散りばめられていて、隅から隅まで楽しめる。映画の内容自体はかなり殺伐としており、殺人も辞さない謎の宗教団体(オウム真理教を意識したもの)が不気味な影を落としていたりするが、コメディ要素が散りばめられているために、途中で滅入ってしまうようなことはない。
 伊丹十三自身がかつてヤクザに襲われマルタイになった経験が活かされているらしく、方々に経験者でなければわからないようなリアルな表現があるのも好ましい。マルタイだった伊丹は、この後、次回作のために某宗教団体と暴力団との関わりを追っていて、それが原因で殺されたようだが(公式には自殺になっているが)、死んだことが非常に悔やまれるくらい、この映画はよくできている。『マルサの女』や『スーパーの女』みたいに、珍しいものをお見せしますというレベルを超えた映画的な映画で、伊丹作品ではもっとも良いものの1つである。
 何よりキャストがどれもはまっていて、120%活用できている点に伊丹の才能を感じる。三谷幸喜が関わっているせいで、東京サンシャインボーイズのお馴染みのメンバーが多いが、中でも西村雅彦の快演は光る。村田雄浩とのコンビも絶妙で、名古屋章の刑事(管理官)は『刑事くん』を彷彿させるキャスティングで、これはもしかしたら三谷の嗜好なのか。
 伊丹十三の作品に三谷風コントを散りばめたような映画で、伊丹と三谷のコラボレーションがうまくいった作品と言える。過剰に(くだらない)笑いを取ることに走るのでもなく、非常に良い塩梅で仕上がっていて、笑いとサスペンスがほどよくブレンドした良い味わいの映画であった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ミンボーの女(映画)』
竹林軒出張所『スーパーの女(映画)』
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』
by chikurinken | 2017-03-10 07:54 | 映画

『ミンボーの女』(映画)

ミンボーの女(1992年・伊丹プロダクション)
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
音楽:本多俊之
出演:宮本信子、宝田明、大地康雄、村田雄浩、大滝秀治、三谷昇、伊東四朗、中尾彬、小松方正、柳葉敏郎

b0189364_20185646.jpg革新的「ヤクザ映画」

 伊丹十三の「ヤクザ映画」。といってもそこいらのヤクザ映画とはひと味もふた味も違うのは伊丹十三らしい。ヤクザ組織による民事介入暴力(民暴)を扱っており、その手口や撃退方法を紹介する(もちろん)ドラマ仕立ての映画である。内容からは、警察庁が民暴関連の講習会で上映する教材みたいにも思えるが、ドラマとしてもよくできていて、特に民間人がヤクザと関わるシーンは非常に緊迫感がある。
 伊丹の「〜の女」シリーズはどれもあまりにできすぎで、言ってみれが先が見えてしまうという難点を抱えているが、この映画については予定調和的な要素があまり目立たず、良い具合に収束している。
 実際この映画が社会的にヤクザ組織に与えた影響は、公開直前に施行された暴力団対策法と相まって小さくなかったように思う。日本の大企業などの組織は、街宣車を使ったゆすりや恫喝の被害にかなり遭っていたようだが、昨今はそういう話も少なくなってきたように感じる。だがこの映画の直後に、伊丹十三自身がヤクザ者に襲われ大けがを負うという事件が起こったし、その後結局伊丹は謎の死を遂げることになった。こういったきな臭いエピソードがつきまとうため、この映画にはこれまで、あまりお近づきになりたくない雰囲気があった。だがこういう題材の映画ができたことは、日本の映画界および社会にとって画期的であり、社会に大きな影響を与えたという点でも十分評価に値する。映画自体も、先ほども言ったように非常にデキが良いもので、90年代を代表する映画と言って良いと思う。ただしそれが芸術面でなく社会面の意味あいが強いという点が少々残念な部分である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『マルタイの女(映画)』
竹林軒出張所『スーパーの女(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
by chikurinken | 2017-03-08 07:18 | 映画

『スーパーの女』(映画)

スーパーの女(1996年・伊丹プロダクション)
監督:伊丹十三
原作:安土敏
脚本:伊丹十三
出演:宮本信子、津川雅彦、金田龍之介、矢野宣、六平直政、高橋長英、三宅裕司、あき竹城、松本明子、小堺一機、伊東四朗

b0189364_745539.jpg「それなり」の映画……

 近所にできた安売りスーパーの安売り攻勢で疲弊したスーパー、正直屋を、主婦が立て直すというストーリーの映画。伊丹十三の映画らしく、スーパーマーケットの裏側が暴かれて興味深い上、映画としてもよくまとまっていて、お気楽に楽しめる作品に仕上がっている。とは言え、なんだかいかにも予定調和的なのも、同じ監督の『マルサの女』と共通する特徴で、見た後少々物足りなく感じる。公開当時結構話題になったが、個人的にはこの頃の伊丹映画にはあまり期待していなかったし、こんなもんだろうという印象もある。「それなり」の映画……などと言ったら製作者たちに失礼かも知れないが、お気楽で「予定調和的」という言葉がピッタリ合う映画ではある。
第20回日本アカデミー賞優秀作品賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『マルタイの女(映画)』
竹林軒出張所『ミンボーの女(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』
by chikurinken | 2017-03-06 07:46 | 映画