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竹林軒出張所

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タグ:山田太一 ( 73 ) タグの人気記事

『3人家族』 (1)〜(13)(ドラマ)

3人家族 (1)〜(13)(1968年・木下恵介プロ、松竹、TBS)
演出:木下恵介、中川晴之助、川頭義郎、横堀幸司
脚本:山田太一
出演:竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、沢田雅美、三島雅夫、賀原夏子、中谷一郎、菅井きん、遠藤剛、川口恵子、矢島正明(ナレーション)

ザ・ホームドラマ!

b0189364_15514432.jpg 12年ぶりの『3人家族』。
 前回見たときの印象は以前書いたが(竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』を参照)、今回見てみて、改めてその面白さに感心。キャラクターがどれも魅力的で、いかにもホームドラマという優しさ、安心感がある。ド派手な事件はなく、単に2つの家族の日常が描かれるだけだが、しかし我々見る方の現実というのは概ねそういうものである。これこそがリアリティというものだ。ただ、偶然が多いのが少々難点で、主人公の男女の偶然の出会いはまだしも、それぞれの弟と妹が偶然出会うということになると、ちょっと無理がある。いくら双方の家族が横浜に住んでいるとしてもだ。ただこれがないとストーリーが成り立たなくなるので、致し方ないといえば致し方ないわけだが。
 それからナレーションがかなりしつこく入ってくるのが、今の感覚からいくと古臭く感じるが(NHKの朝のドラマではいまだにやっているが)、テレビ番組に対する視聴者の集中度が低いことから、意図的に入れたということらしい(竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』を参照)。ナレーションを担当するのは矢島正明で、これは『逃亡者』を意識してのことである(これも脚本家が語っている)。
 メインのプロットは、主人公の美男、雄一(竹脇無我)と美女、敬子(栗原小巻)の恋愛で、そこに男の仕事、女の結婚などが絡んでくる。同時に他の家族の生活も絡んできてそれがサブプロットになる。すべてが自然に展開するので、わざとらしさがまったくない。大変よくできたドラマである。雄一は、仕事でのし上がるために女と付き合ってなんかいられないなどとうそぶいているのだが、敬子の余りの美貌に心が揺れ動いてしまう。ま、相手が栗原小巻なら当然だろう。そのくらい栗原小巻が美しい。また演技も自然で素晴らしい。演技について言えば、どの出演者も一流で、演技していることを意識させられることが一切ない。あおい輝彦が演じる弟、健(たけし)がまた非常に魅力的な登場人部で、現在自宅浪人中だが、家事全般を引き受けていて、家族に対し食について小姑みたいに細かいことを言ったりするが、少々ボーッとしたところもあって、周囲を明るくする。画面に出てくるのが楽しみになるようなキャラクターで、栗原小巻の美貌とあわせてこのドラマの大きな魅力になっている。竹脇無我のクールさが、この弟と好対照をなしているのも良い取り合わせである。好対照と言えばもう一方の家族の妹、明子(沢田雅美)も敬子と対照的で、きわめて現実的な存在であり、コントラストが効いている。名優の三島雅夫、賀原夏子、菅井きんについては今さら言うまでもない。
 他にも画面に登場する、4本足テレビとか編み機とか魔法瓶とかの調度品が非常に懐かしい。電話が引けたと言って喜んでいるような情景も懐かしさを感じる。そういう懐かしさもあって、見ていて暖かい気持ちになるんだろうかとも思う。いつまでも見ていたくなるような優しいドラマである。
 せっかくなので、ストーリーを簡単にまとめておこうと思う。

--------------------------
柴田家(3人家族)
父:耕作(三島雅夫)
長男:雄一(竹脇無我)
次男:健(あおい輝彦)

稲葉家(3人家族)
母:キク(賀原夏子)
長女:敬子(栗原小巻)
次女:明子(沢田雅美)

第1回
b0189364_15515268.jpg 商社の通信部勤務のサラリーマン、雄一が、電車の中で何度か美女、敬子に目を留める。雄一の弟は自宅浪人、父は定年間近であるが先日課長に就任という、男ばかりの3人家族。
 雄一は営業部への配転を希望、同時に会社の留学試験に受かって海外赴任するという夢がある。そのために日夜勉強の日々。ただしこの制度、独身が条件ということで雄一は「女なんか眼中にない」と自分に言い聞かすように言う。そんな雄一だが、ある日帰りに路上でまたまた敬子を見かけ、会釈を交わす。また別の日、出先のレストランでも顔を合わす。雄一は運命的なものを少し感じる。

第2回
 健が近所の祭り囃子に参加。同じく参加している元同級生の女の子(洋子)目当てである。雄一は、勉強を優先すべきですぐに辞めるよう叱る。兄は堅物で実力主義で、健はそのことを批判する。
 一方、敬子の家族。妹と母との3人暮らしであることがわかる。敬子も雄一のことが気になっている。雄一も敬子のことが忘れられない。

第3回
 霞ヶ関インフォメーションセンターに勤務する敬子に、強引に迫る男の客が現れる。写真家の沢野(中谷一郎)で、突然敬子を食事に誘う。
 健は結局、父の勧めで祭の宵夜に行く。その夜酔っ払って「洋子さーん」などと叫ぶ。翌日家政婦(菅井きん)が臨時で呼ばれる。この家政婦、少々出しゃばりで見舞いに来た洋子と健を取り持とうとするが、洋子の方はつれない。
 一方、沢野はたびたび敬子を誘う。夜、帰りの電車で雄一と敬子、再び顔を合わせる。

第4回
 雄一の家に旧友が彼女を連れてきて、婚約したと言う。「俺は今それどころではない」と自分に言い聞かせる雄一。
 例の家政婦が仕事でもないのにまた柴田家にやってくる。柴田家が気に入ったようだ。

第5回
 朝の満員電車で雄一と敬子が出会う。いきなり体が接するぐらい近くになり、軽く口を利く。ところが駅を出たとたん、雄一は気のないそぶりで敬子を残して去っていく。「女と付き合っていてはいけない」という考えのためだが、敬子はかなりムカッとする。

第6回
 雄一を忘れようとする敬子。一方、「付き合っていてはいけない」と思いつつ敬子のことが頭から離れない雄一。
 予備校の後期課程に申し込みに行った健が、同じく申し込みに行った明子と出会って、意気投合する。日曜日に江ノ島に行こうという話になる。同じ日、雄一は留学試験。

第7回
 健と明子のデートに、敬子もやってくる。健は敬子の美しさに参ってしまい、写真をとりまくる。明子は不機嫌。敬子は2人に気を利かせて、その場を去り、鎌倉の昔の友人に会いに行く。その友人から結婚、子育てで気が滅入っていると聞かされる。「よほどいい人じゃないと結婚しちゃダメ」などと言われる。

第8回
 柴田家に電話が引ける。
 健、江ノ島で撮った敬子の写真を兄に見せる。写真を見て驚く雄一。「誰だ、この人は」と言ったまま、外に出て行く。動揺を隠せない。

第9回
 引けた電話がやっと開通して、健はうれしい。父の職場、兄の職場に用もないのに電話をかけて、顰蹙を買う。その後、雄一が家にかけ直し、ついでを装って、敬子の名前や職場を聞き出す。
 その後、雄一が敬子の職場に「健の兄」として電話し、デートの約束を取り付ける。やっと2人でデート。喫茶店で会って食事し、同じ電車で帰る。言葉少なではあるが、心地よさを感じる2人。

第10回
 敬子はその後雄一をデートに誘うが、雄一は忙しいということで断る。一度は会わないことにした雄一だが、敬子の妹の明子からたきつけられるようにして、再び敬子を食事に誘う。その席で、今は結婚できないなどと語って敬子の反感を買う。
 沢野の元恋人が敬子の職場にやってきて、嫌がらせをする。その後、付き合っていた男2人とも(つまり雄一と沢野)失ったような気がして味気なさを感じる敬子。だが、沢野はその後も敬子の元にやってきた。

第11回
b0189364_15514862.jpg 健は、クリスマスにかこつけて洋子に告白するが体よく断られてしまう。その後、明子から自宅のクリスマス・パーティに誘われ、傷心の状態で赴く。兄の雄一も誘われたが、仕事の付き合いで行けない。敬子はガッカリする。一方で沢野から高価な花が敬子の元に届く。
 後で雄一は、健からその話を聞いて、心が動く。沢野は敬子に再び会いに来て、真剣に付き合いたいと言う。

第12回
 敬子が雄一をお茶に誘う。結婚について話をする。
 雄一、一次試験に合格する。

第13回
 二次試験の準備で勉強に邁進する雄一。敬子とも会わず。敬子の方は何だかモヤモヤする。そういう折に、13年前に失踪した敬子の父親が母親に会いに来る。母親は怒って追い返すが、敬子の職場にも顔を見に来る。敬子は結局会わず。

 続きは、また機会がありましたら。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2017-11-21 06:50 | ドラマ

『本当と嘘とテキーラ』(ドラマ)

本当と嘘とテキーラ(2008年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:佐藤浩市、夏未エレナ、柄本明、樋口可南子、山崎努、塩見三省、戸田菜穂、益岡徹、六平直政

山田太一の教育論が反映されたドラマ

b0189364_06412175.jpg テレビ東京最後の山田ドラマ。同時に山田作品としては最後の花火みたいな作品でもある。翌年の『ありふれた奇跡』以降は迷走状態である。
 企業の研修や不祥事の後始末などのコンサルタント業を行っている男(佐藤浩市)は、常に本音を隠して顧客に接するよう指導している。合い言葉が「テキーラ」で、これを口にすると口角が上がって笑顔になるため、接客のキーワードとして常にこの言葉を意識するよう指導する。企業の不祥事についても、不都合な部分を隠し通して建前だけで通すのが彼のやり方である。
 そんな折、自分の娘の同級生が自殺し、それに娘が絡んでいることがわかってくる。娘や遺族との関わりの中で、本音を隠して建前だけで生きていく「テキーラ」主義で良いのかという疑問が沸いてくるという流れで話が進んでいく。
 このドラマも芸術祭参加作品であること(同時に受賞作品であること)を考えると、賞狙いの作品と言える。内容は娯楽性を持っていて面白い作品ではあるが、芸術指向が強いのは確かで、この頃の他の軽薄なドラマとは明らかに違う。テレビ東京の山田作品は概ねそういう傾向がある。ただしそのためかかなり力が入っている作品で、テレビ東京には今後もこういった重厚な作品に取り組んでほしいと感じる。松原信吾の演出も手堅くて良い。
 キャストは、今回は常連組で固められている。柄本明は、『せつない春』『小さな駅で降りる』と同じく、騒いで周囲に波風を立てるちょっと不気味な(その後好人物に好転する)存在を好演している。山崎努もテレビ東京版山田ドラマにはよく出てくるが、今回も(セリフは多いが)特別出演くらいの短めの登場。樋口可南子は、『小さな駅で降りる』と違い、これも周囲に波風を立てる存在。ひどく取り乱す演技が素晴らしい。夏未エレナという女優は今回初めて見たが、落ち着いた良い演技をしている。
 作者の主張が随所に出てくるのも、このドラマを良いものにする要因である。山田太一の教育論は、『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』でもわかるが、まったく押しつけがましくなく、しかも納得する部分が多いんだが、このドラマにも同様の主張が出てきて、ドラマに味を添えている(「学校での多少の問題は、子どもにとってむしろ乗り越えるべき課題になる」などというセリフが出てくる)。全体的に少々小ぶりではあるが、見る者をグイグイ引っぱっていくような部分は山田ドラマ健在と言えるもので、よくまとまった良いドラマと言える。
2008年日本民間放送連盟賞最優秀受賞、文化庁2008年度芸術祭優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-10-01 06:41 | ドラマ

『香港明星迷』(ドラマ)

香港明星迷(2002年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:薬師丸ひろ子、室井滋、山本未來、山崎努、イーキン・チェン、堺雅人、岡田眞澄、徳井優、クリステル・チアリ

山田ドラマらしく題材がユニーク

b0189364_08020920.jpg 『せつない春』『奈良へ行くまで』『小さな駅で降りる』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第4弾。これも放送時見たんだが、あまり良い印象を持っていなかったドラマである。今回見たら、それなりにインパクトのある作品で、やはり山田作品は侮れないと感じた次第。
 フランスの有名靴ブランドの日本支店で、営業部長をやっている女性(薬師丸ひろ子)が主人公。この主人公、イーキン・チェンという香港の歌手に入れ込んでおり、たびたび香港に行っている。ところが実は彼女自身、会社のマーケティング方針を変える(どうしても変わらなければ自ら新ブランドを立ち上げる)という野望を持っていて、そのために香港に渡ってあれこれと画策していたのだった。しかしこのことが明るみに出て、しかもこれは本社の意向に反することであり、両者の間に確執が生まれるというストーリー。他に、香港で知り合うイーキン・チェン・ファンの女性(山本未來、室井滋)との関係(友情や裏切り)もサブプロットになっており、プロットは重層的である。見た後もそれなりに心地よさが残る。
 キャストは山田ドラマとしては珍しい俳優が多い。常連の山崎努は特別出演扱いである。遣り手営業部長役の薬師丸ひろ子は当時38歳で、なかなか魅力的である。また1999年製作の『玩具の神様』ではチョイ役だった堺雅人は割合重要な役で出ている。このあたりから顔が売れるようになったのではないかと思われる。
 受賞歴もなく比較的地味な作品ではあるが、テレビ東京作の前3作にひけをとらない快作で、2時間飽きさせないのはさすがと言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-30 08:02 | ドラマ

『小さな駅で降りる』(ドラマ)

小さな駅で降りる(2000年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
音楽:久石譲
出演:中村雅俊、樋口可南子、堤真一、牧瀬里穂、奥貫薫、根岸季衣、柄本明、佐藤慶、山崎努、前田亜季

仕事が大変なら辞めたら?というメッセージが新鮮

b0189364_08132373.jpg 『せつない春』『奈良へ行くまで』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第3弾。これもテレビ東京らしくビジネスに関わる話で、テレビ東京製山田ドラマのひとつの特徴が確立されているようで大変よろしい。
 社長直属の新しい部署に起用され、仕事に忙殺される管理職(中村雅俊)とその部下(堤真一)の話。この部署、若社長が単独で行ったリストラの責任を負わされるなど、負の役割を負って社内でうとまわれはじめているだけでなく、立ち上がってから何の実績も上げていないため、メンバーたちは何とか実績を上げようと躍起になっている。そのために彼らは残業も厭わず、仕事に追われまくる日々を送っている。そこにこの2人の妻たち(樋口可南子、牧瀬里穂)が動き出し、彼らを激務から解放させるために仕事を辞めさせようと画策するという展開になっていく。過労で潰れるくらいならさっぱり辞めてしまえという山田太一のメッセージが強く打ち出されたドラマである。内容を考えると、逆にテレビ東京らしくないとも言えるか。
 もちろん現実的にそうは簡単に行かないもので、このドラマでもそのあたりで一悶着あるわけだが、会社人間にならずに人間らしく生きよう、「小さな駅で降り」たらどうだというメッセージは新鮮である。
 このドラマも放送時見ているが、内容についてはほとんど憶えていなかった。ただ、男が牛に追われまくるスペインの祭りの映像に対して、樋口可南子が「こういうことをやるのは男だけよねぇ」とコメントするシーンははっきりと明確に憶えていた。お説ごもっともで、このドラマのテーマにも重なる部分である。
2000年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-29 08:14 | ドラマ

『奈良へ行くまで』(ドラマ)

奈良へ行くまで(1998年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
音楽:本多俊之
出演:奥田瑛二、安田成美、村上弘明、佐藤慶、山崎努、石橋蓮司、篠井英介、石丸謙二郎、小倉一郎、平泉成

なぜ奈良なのかは最後までわからなかった

b0189364_18511052.jpg 『せつない春』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第2弾。これも経済のテレビ東京らしくビジネスに関わる話で、建設会社の談合をあぶり出した意欲作。副題に「夫が汚職に踏み切る時」というタイトルが付いていてセンセーショナルだが、結果的に見てられないほどの悲惨な状況には陥らない。建築談合については非常に面白い扱い方で、素材がはなはだ新鮮である。もっともそれだけで終わるとドラマとしては奥行きがない浅いものになってしまうが、そこはやはり山田太一、しっかり夫婦のあり方、友人との関係なども描かれて、重層的で奥行きを感じさせるものに仕上がっている。不倫を匂わせる『岸辺のアルバム』みたいな要素まで出てくるし、途中、夫が美人妻を自分の仕事のために妻に言い寄っている友人の元に行かせるなど、AVみたいなストーリー展開もあって(エロシーンはありません)、人間の関係性を描かせたら山田太一の右に出る者はないなとつい感じてしまう。ただし、なぜ最後に奈良が出てくるのかはわからない。なぜ奈良なのか、なぜタイトルにまで使われるのか、俳句みたいに直接関係のない別物を並べてそこに味を出したのではないかと推測するが、それでもなぜ奈良なのかはわからない。別に奈良でも良いし実のところそれほど気になるわけではないが、こういう使い方については随分思い切ったなーとは思う。
 今回見るのは二度目だが、内容についてはまったく憶えていなかった(この後のテレビ東京版山田ドラマ『小さな駅で降りる』『香港明星迷』『本当と嘘とテキーラ』については部分的に憶えている)。しかし内容はかなり濃密で決して侮れない作品である。なんと言っても、政治家役の山崎努、怪しいジャーナリスト役の石橋蓮司のタヌキぶりがすごい。タヌキぶりと言えば、主人公に汚職をそそのかす同僚役の佐藤慶は、これはもう放送史に残るような名演で、数ある佐藤慶出演作品の中でも屈指のタヌキキャラクターではないかと思う。また安田成美の美しさも群を抜いている。主人公のエリート同級生(村上弘明)が参ってしまうのも仕方がないという見事なキャスティングである。山田ドラマの常連が揃っている上、うまい役者が勢揃いしていて、ストーリーと言いキャスティングと言い、申し分のない贅沢なドラマである。
1997年度ギャラクシー賞奨励賞、1998年日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-28 06:50 | ドラマ

『せつない春』(ドラマ)

せつない春(1995年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:山崎努、清水美砂、杉本哲太、竹下景子、柄本明、萬田久子、益岡徹、久米明

テレビ東京製作だけど「山田ドラマ」
タイトル通りの「せつない」話


b0189364_18030296.jpg テレビ東京開局30周年記念ということで製作されたドラマ。テレビ東京の山田ドラマはこれが初ではないかと思うが、この後数年かけて5本製作されることになる。この当時、山田ドラマはかつてほど放送されず、山田太一自体がすでにちょっとした巨匠扱いで、だからと言って視聴率が稼げるというような存在でもなく、微妙な立場になりつつあったように記憶している。そういったわけで、山田ドラマといえば、芸術賞狙いで作られることが多くなっていたため、こういった記念番組でないとなかなかお目にかかることがなくなっていた。テレビ局と視聴者のレベルが著しく下がり始めるのもこの頃かなと思う。
 さて、製作局はテレビ東京ではあるが、ドラマの内容自体はやはり「山田ドラマ」なんであって、TBSやNHKの山田ドラマとほとんど変わらない。おそらく脚本家が多分に口を出しているせいであろうが、しかしそのために常に高水準が保たれることになる。「脚本:山田太一」というレベルではすでになく、「山田ドラマ」になってしまうという按配。しかもキャストも山田ドラマの常連が名を連ねているし、ますますどこの局で製作されたのかわからなくなる。
 山田作品で珍しいキャストといえば清水美砂や杉本哲太あたりだが、彼らがドラマの中で存在感を発揮しているのは、他の山田ドラマと共通である。この頃の清水美砂は非常に魅力的で、このドラマでもその魅力が発揮されている。清水美砂が演じるのは、足に障害を持つ女性だが、その障害のせいで恋愛を諦めかけていた彼女がなかなか素敵な男(杉本哲太)と出会うというなかなかさわやかなプロットが展開される。
 一方で、その父(山崎努)は、大企業で総会屋対策をやっていて、ヤクザ者と付き合ったり結構汚い仕事をやっている。その彼が、総会屋と手を切るという会社の方針のためにお払い箱になり、総会屋からも恨みを買うというような汚い話が同時進行で進む。なかなかよくできたプロットである。ただ偶然の要素がかなり強く、そのあたりが少々興ざめである。また、山崎努と竹下景子が(演技で)自暴自棄になるシーンも(竹下景子については似たようなシーンが『夏の一族』でもあったが)ちょっと湿っぽすぎて、いただけないかなという気がする(あくまでも個人の感想です)。しかし扱われるモチーフが企業の株主総会や総会屋で、テレビ東京らしい題材と言えば言える。こういうあたりでテレビ局側も特色を出しているのかも知れない。2時間を超えるドラマで、力を入れて作られていることもよく伝わってくる。内容も高い水準を保っており、実際にいろいろな賞を受賞している(実際、受賞にふさわしいドラマであると思う)。賞取り作家としての山田太一の面目躍如とも言えるのではないだろうか。
1995年度ギャラクシー賞奨励賞、1995年日本民間放送連盟賞ドラマ部門最優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-05 07:02 | ドラマ

『風になれ鳥になれ』(1)〜(3)(ドラマ)

風になれ鳥になれ(1998年・NHK)
 第1話「山からの帰還」
 第2話「加害者たち」
 最終回「ふたり」
演出:黛りんたろう、加藤拓
脚本:山田太一
音楽:川崎真弘
出演:渡哲也、高嶋政伸、田中好子、坂上二郎、富田靖子、山田吾一、小林恵、草野康太、川上夏代、日下武史、梶原善、村井国夫、根岸季衣、倍賞美津子

放送時見たという記憶だけがあった

b0189364_20511246.jpg 全3話構成で、ストーリー設定は一貫しているが、それぞれの話ごとに独立したエピソードが盛り込まれるという『男たちの旅路』方式、あるいは『タクシー・サンバ』方式の山田ドラマ。
 舞台がヘリコプター運用企業というのもなかなか意外で、目の付け所が良いのは山田太一らしい。今のドラマだったらこの舞台設定だけでそれなりのドラマに持っていかれそうだが、山田ドラマではそれだけで終わらない。いろいろな問題をかかえた人がやってきて、いろいろと問題を起こす。受け立つ側、つまりヘリコプター会社側の人々も、それぞれ大なり小なり問題をかかえていて、こういったトラブルメーカーたちとシンクロしていく。非常に良く練り上げられたストーリーで、しかも山田ドラマらしくセリフに説得力があり、また面白さもある。会話劇のようなセリフが多く、セリフがつまらなかったら到底見ていられないが、どのセリフも味わいがあるので、まったく退屈しない。第1話では、日下武史が長ゼリフで老後の生活の絶望状況を滔々と語るが、舞台俳優、日下武史の面目躍如という素晴らしい演技。これに応戦するのは渡哲也で、『男たちの旅路』の吉岡司令補ばりに「語る」。良いシナリオである。脇の山田吾一のセリフも良い。
 第2話は、親子関係などが持ち込まれ、これも重いテーマであるが、(問題が解決するわけではないが)気持ちの良い終わり方をする。かなりいろいろな要素が持ち込まれて、下手をするとゴチャゴチャでとりとめがなくなるが、そつなくまとめているのは脚本家の技量である。
b0189364_20511779.jpg 第3話は、ちょっとばかりリアリティを欠いたストーリーで、少々残念。演出もありきたりで少したわいない感じさえする。さすがに傑作を3話並べるのは難しかったか。とは言え、第3話も決してダメではないんであって、第1話、第2話がよくできているため少々見劣りがするという程度である。
 キャストは、山田ドラマには珍しい面々が多く、渡哲也、田中好子、坂上二郎が過去1、2回出演している程度ではないか。ベテランの山田吾一、日下武史、村井国夫あたりは、実力者であるにもかかわらず今まであまり山田ドラマには絡んでなかったわけで、それを考えるとこの頃になって初めて(かどうかわからないが)出演するというのも逆に珍しい感じがする。とは言え、どのキャストも好演で、演出も素晴らしい。第1話の山のセットは少しチャチだったが。
 ここのところ、CSの日本映画専門チャンネルで、毎週のように山田ドラマを放送していて、定期的に(ビデオではなく)テレビ放送で山田ドラマにアクセスできる環境があるわけだが、これだけのグレードのドラマを毎週見られるという状況を思うと、なんだかすごく贅沢な気分がする。もちろんこれまで結構DVDに撮りためているし、買ったDVDもあるわけで(しかもまだ見ていないし)、そういう想いは少し矛盾していると言えるんだが、それでもしっかりしたドラマを定期的に見られるというのは非常に贅沢だと感じる。それは今みたいなドラマ不毛の時代だからこその感慨なのかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『タクシー・サンバ (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-03 06:50 | ドラマ

『季節が変わる日』(ドラマ)

季節が変わる日(1982年・日本テレビ)
演出:久野浩平
脚本:山田太一
出演:八千草薫、岡田真澄、小池朝雄、早川勝也、キャロライン、ハナ肇

教育についていろいろ考えるドラマ
なかなかの力作


b0189364_08131479.jpg 不登校の息子をある山間の寄宿学校に入れることにした女性(八千草薫)と、非行の娘を同じ学校に入れることにした男性(岡田真澄)が恋愛関係に陥っていくというストーリー。この学校というのが軍隊式で、子ども達のヤワな根性をたたき直すというコンセプトの施設。おそらく戸塚ヨットスクール(竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』を参照)がモデルだと思われるが、ドラマではこのような施設に対する批判精神も顔を覗かせる。一方で荒れる子どもをお払い箱にした親が見せる安心感なども描かれ、少し辛辣さも感じる。
 これも日テレ製作のドラマで、ややリズム感を欠いている上、ホテルのベッドシーンなんかは(以前の日テレドラマらしさを感じるような)ちょっと気恥ずかしい演出で、ちょっとどうよと思うようなものであったが、先が読めないストーリー展開はさすが山田ドラマである。子どもを寄宿学校に入れて親たちがよろしくやっているということには反撥も感じるが(主人公の口からもそういうセリフが語られる)、しかしこの親たちにしても、不倫ではないわけだし恋愛したって問題はないわけで、こういう(視聴者という)第三者による(一方的で)禁欲的な考え方は理不尽である。本来は。だがまあそういう感慨を持つのも自然といえば自然で、一方でそういう紋切り型の考え方をしてしまう自分が何やらみっともなくもあり、なかなか厳しいところを突かれたという感じが残る。かくのごとく、いろいろ考えるところが多いドラマで、そのあたりも山田ドラマらしいと言える。
 教育の問題は難しいし、特にこのドラマが製作された時代は不登校に対する定見がなかったこともあり、親も社会も手探り状態であったと思う。教育の歪みが校内暴力などという形で現れたのもこの少し前の時代で、教育については難しい問題が山積みであった。答えは簡単に見つからないし、今も正答があるわけではないが、社会が以前より柔軟に対処しているのは実感できる。それは教育に対して真摯に向き合った人々の成果でもあるわけで、こういった問題意識の高いドラマも一役買っていたのではないかと思う。実際山田太一には教育論(『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』)もあり、これも大変興味深い本であった。子どもが提示してくる問題に対しては真摯に向き合うというのが唯一の方策なのかなとも思うが、このドラマでも何となくそういう方向性が示されていたように思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-08-10 08:13 | ドラマ

『ちょっと愛して…』(ドラマ)

ちょっと愛して…(1985年・日本テレビ)
演出:せんぼんよしこ
脚本:山田太一
出演:樹木希林、川谷拓三、和田アキ子、河内桃子、篠田三郎、沢田雅美、小倉一郎

冴えない男女のドラマ……だが
やっぱり冴えてる方が良いような


b0189364_21075742.jpg 山田太一脚本の1985年のドラマ。製作は山田ドラマとしては珍しい日本テレビだが、山田ドラマの味は損なわれていない。このドラマは放送時見ておらず、存在すら知らなかった。日テレ放送だったからか。
 婚期が遅れている冴えない男女(樹木希林と川谷拓三)が、結婚相談所を通じて結婚相手を求めるが、なかなか理想的な相手が見つからず……という展開のドラマ。『想い出づくり。』を作るときに「ドラマだけがね、なんかこう2人の男女のきれいなのがいて、後は奉仕するっていうのは……恋敵とかだってね、恋敵という役にもう固定されてしまうわけでしょ。そんなドラマはね、早晩壊れちゃうだろうって思った」という山田センセイ、それを地で行くようなストーリーである。
 確かに美しい男女があれやこれやあって恋愛関係に陥るという話もバカバカしさを感じるが、でもやっぱり恋愛ドラマは美しい男女の方が良いという気もする。このドラマにはキャストレベルでのリアリティはあるが、出ている人が美形の方が見ていて楽しいし、精神的にも盛り上がるんではないかと感じた。もっとも、それは一般的なつまらない恋愛ドラマでの話で、密度が濃いこういうドラマだと、ちょっと冴えない風貌でもOKかなとは思う。一方で、篠田三郎や河内桃子などの美形男女が出てくると、見ているこっちは安心したりする。なお篠田三郎と河内桃子は結婚相談所の職員役で出てくるんだが、主役の2人を鑑みると、これも少し意地悪な配役だと感じる。
 主人公が勤めるのがデパートの紳士服売り場で、しかも紳士服メーカーから直接派遣されているという立場で、主人公の口から「そういうのがあるんです」と語られるが、僕自身はそういうシステムがあることを知らなかったので、そういうもんなんだと感心した。こういう目新しい職業形態が紹介されるのも山田ドラマらしいと言える。主人公の同僚役を務めるのが和田アキ子で、この役が非常に魅力的である。主人公と仕事面で対抗しながらも、主人公の幸せのために尽力するという存在である。和田アキ子の山田ドラマ出演は『輝きたいの』以来(だと思う)。一方主役の樹木希林も山田ドラマの出演は珍しい。『さくらの唄』以来ではないかと思う。なおこの『さくらの唄』だが、久世光彦演出の水曜劇場だったこともあり、樹木希林(当時、悠木千帆)らの出演陣がやたらアドリブばかりやるんで、山田太一が非常に怒って「アドリブは止めて台本通りにやってくれ」と要求した(こういうこともあり、それ以降久世光彦とは組んでいない)という逸話が残っている。それを考えると樹木希林の主役起用は意外である。
 ドラマとしては、途中まで流れがあまり良くなく少々まだるっこしさを感じるが、途中から良い具合のダイナミズムが出て来た。話のテーマとしては『ハワイアン ウエディング・ソング』に似ているが、どちらのドラマもオリジナルで魅力的な作品であることには変わりない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『輝きたいの(1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ハワイアン ウエディング・ソング(ドラマ)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2017-08-09 07:07 | ドラマ

『いちばん綺麗なとき』(ドラマ)

いちばん綺麗なとき(1999年・NHK)
演出:伊豫田静弘
脚本:山田太一
出演:八千草薫、加藤治子、夏八木勲、多田木亮佑、中嶋ゆかり

短時間、少製作費でもこれだけのドラマができる

b0189364_20042549.jpg 茨木のり子の詩「私が一番きれいだったとき」を思い出させるようなタイトルだが、内容もあの詩と共通する要素がある。また、あの詩と同様、反戦テーマも入っていて、うまいこと練り上げられたストーリーである。
 夫に先立たれた女性(八千草薫)のもとに、その夫が不倫していたという情報がもたらされる。その情報を持ってきたのは、夫の不倫相手の女性の夫(夏八木勲)ということで、不倫された者同士が、それぞれの想いをぶつけ合うという展開になっていく。途中、戦争の引き上げの話がストーリーに絡められ、しかもロードムービー的な味も盛り込まれてなかなか盛りだくさんである。その上、山田ドラマには珍しく、主演の八千草薫と加藤治子の激しいぶつかり合いなどまである。それも、向田邦子作品かと思わせるような激しさである。実際、この2人、(後から思い出したんだんが)向田作品の『阿修羅のごとく』の長女役と次女役で「さもありなん」という感じ。向田邦子へのオマージュだったんだろうか。
 配偶者の死後、その不倫が発覚するというストーリーは『魂萌え!』を思い起こさせるが、発表はこちらのドラマが先である。もしかしたら桐野夏生、このドラマからモチーフを拝借したか。今ではよく扱われるモチーフになったが、もしかしたらこのドラマが元祖かも知れぬ。
b0189364_08141816.jpg 先ほども言ったように、いろいろな要素が盛り込まれた盛りだくさんなストーリーだが、セリフの生々しさ、登場人物の行動様式のリアリティなどは、さすが山田ドラマとうならせるようなものである。夫に不倫されていた妻と妻に不倫されていた夫が、配偶者たちの行動を推測して怒りを感じながらも「(配偶者の不倫の話について)こんな話他の人にできない」などと漏らすさりげないセリフに思わずうなってしまう。
 なおこのドラマ、舞台が名古屋で、京都の舞鶴まで舞台が広がっていく。おそらくNHK名古屋の製作ではないかと思うが、製作に関する詳細な情報がタイトルバックに出なかった。夜9時から1時間15分の『NHKドラマ館』という枠で放送されたらしいが、僕自身は見ていない。この頃はほとんどの山田作品はチェックしていたがこれについてはチェック漏れであった。主演の3人を除くと無名の俳優ばかりで、しかも家の中のシーンまでロケで撮影しているなど(ただしそれはそれで良い効果が出ている)、製作費が少なかったのかと勘ぐったりもするが、作品のグレードは高い。1時間15分枠、しかも少なめの製作費でこれだけのものができるとなれば、今放送されている他の多くのドラマは一体何なんだと感じてしまう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『再会(ドラマ)』
竹林軒出張所『旅の途中で(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-08-08 07:04 | ドラマ