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竹林軒出張所

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タグ:山田太一 ( 56 ) タグの人気記事

『夕暮れて』(1)〜(6)(ドラマ)

夕暮れて (1)〜(6)(1983年・NHK)
演出:深町幸男、菅野高至
脚本:山田太一
音楽:山本直純
出演:岸恵子、佐藤慶、笠智衆、米倉斉加年、佐藤浩市、真野あずさ、島田紳助

中年男女の悪あがき

b0189364_20145033.jpg 山田太一の不倫三部作(『岸辺のアルバム』、『友だち』、本作)の1本。不倫三部作というのは僕が勝手につけたもので、しかも本作については不倫は未遂で終わっている。だがそれぞれの作品ごとにアプローチが違うため(それぞれ実行、未遂、意図なし)どれも面白く、見応えがある。このドラマも今回で見るのが3回目である(放送時、CSでの再放送時、今回)。
 本作は、人生も終盤にかかろうとする夫婦(岸恵子、佐藤慶)がそれぞれ、このまま年老いて良いのかと考え、夫は一人暮らしを始め、妻の方は元同級生(米倉斉加年)に誘われるまま不倫に走ろうとする。こう言ってしまうと行動が極端な感じがするかも知れないが、そこまでの過程は非常に自然で、誰でも同じような行動を起こすかも知れないと思わせる説得力がある。
 不倫の方は舅と息子(笠智衆、佐藤浩市)が気が付いて直前で阻止するわけだが(第5回)、そのシーンはきわめて印象的で最初に見たときからはっきりと記憶に残っていた。ただしその後の第6回に何があったかは、見たはずなのにあまり憶えていなかった。要するにこのまま終わってしまって良いのかという焦りが夫婦、不倫未遂相手によって吐露されるという流れになって、視聴者に問いかけが突きつけられることになる。登場人物達は結局元の状態に戻るわけだが、何よりもテーマが非常に明解で、しかも最後まで視聴者を引っぱるだけの緊張感と面白さがあるため、優れたドラマであるのは変わりない。
 キャストはどれも名優揃いで今さら言うまでもないが、米倉斉加年のセリフが少々いやらしく感じられ(このあたりは製作側の意図かも知れない)少し不快。演出も手堅いが、セット(特にアパート)が少し安っぽいのが難点と言えるか。前も書いたが、テーマ曲の「メモリーズ・オブ・ユー」が非常に印象的である。
テレビ大賞優秀番組賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
by chikurinken | 2017-02-11 07:13 | ドラマ

『友だち』(1)〜(6)(ドラマ)

友だち (1)〜(6)(1987年・NHK)
演出:深町幸男、一井久司
脚本:山田太一
出演:倍賞千恵子、河原崎長一郎、井川比佐志、菅井きん、うつみ宮土理、内海桂子、小松政夫、下條正巳

キャラが立ってる

b0189364_21521318.jpg 山田太一の不倫三部作(『岸辺のアルバム』、『夕暮れて』、本作)の1本。不倫三部作というのは僕が勝手につけたもので、しかも本作については不倫かどうかは怪しいところ。だがそれぞれの作品ごとにアプローチが違うため(それぞれ実行、未遂、意図なし)どれも面白く、見応えがある。このドラマは今回で見るのが3回目である(放送時、CSでの再放送時、今回)。
 既婚の中年男女(倍賞千恵子と河原崎長一郎)がふとしたきっかけ(この場合はバードウォッチングだが)で知り合って、家族に内緒で密会するようになるが、女の方が、肉体関係が一切ない状態で友だち関係を維持したいと主張するというあたりがこのドラマのミソで、他の不倫ドラマと大きく異なるところ。そこから双方の家族を巻き込んでいくというストーリーになる。
 考えようによってはちょっと無理があるような設定ではあるが、話の流れが自然でしかも登場人物が魅力的なので、不自然さはまったく感じない。主人公の女性が主張すること(日常の立場から離れて1人の女として見られたい、だからときどきよその男と会いたい、ただし家庭を壊すつもりはない、というもの)は、少し身勝手な感じもするが一応筋は通っている。もちろん筋は通っていても理屈通りに行かないのが人間で、その辺の葛藤がこのドラマのモチーフになる。
 こういう問いかけにはなかなか明確な回答が出せないため、ドラマは最後のあたりは少々うやむやな感じで終わるが、見応えのある力作であることは間違いない。何よりもキャスティングが非常に面白く、それぞれのキャラクターがリアルで個性的である。セリフも山田ドラマらしく大変味わいがある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』
by chikurinken | 2017-02-10 06:51 | ドラマ

『家へおいでよ』(1)〜(6)(ドラマ)

家へおいでよ (1)〜(6)(1996年・NHK)
演出:富沢正幸
脚本:山田太一
音楽:ルシア塩満、都留教博
出演:杉浦直樹、鈴木砂羽、筒井道隆、岸田今日子、小橋めぐみ、マルティン・ラミレス、角野卓造

無駄に不気味さが漂うドラマ

b0189364_1828166.jpg 山田太一脚本のドラマ。親から引き継いだ洋館に1人で住んでいる大学教授が若者たちを自宅に格安で住まわせるという、ヴィスコンティの『家族の肖像』を思わせるストーリー。ただしこの教授は学校で女子学生に乱暴したという噂がたてられており、他の若者もいろいろワケありである。彼らがいろいろ付いたり離れたり、面倒を起こしたりそれを解決したりというさまざまな問題を起こしながら、成長していくというドラマである。
 序盤、住まわせてもらう若者がわがままで厚かましいなど、見ていてかなり不快になる要素がある。このドラマは元々放送時に見ているが、主役の板倉かやの(鈴木砂羽)や土屋礼子(小橋めぐみ)が不気味だった記憶がある。なんせ鈴木砂羽は、少し前の映画『愛の新世界』で女王様を演っていたし、しかもこの映画でもなんだか裏があるような役だったし、ちょっとミスキャストだったような気がする。それに土屋礼子も何かを企んでいるようなふうが見えて、ドラマの本来の意図と違った印象を与えていたように思う。そういった点がかなりのマイナスである。
 ただ杉浦直樹や岸田今日子、途中少しだけ出てくる角野卓造などのベテラン俳優の演技が秀逸で、そういう点で見所は多い。岸田今日子が「私が老婆ならあなたは死体よって言ってやった」というセリフは鬼気迫っていて凄みがあるし、角野卓造が汗だくで地団駄踏むシーンも大変印象的である(この2つのシーンははっきり記憶に残っていた)。
 なんだか無駄に不気味なキャラクターやシーンが多かったが、終わりの方は非常に気持ちの良い終わり方をする。例によってほとんどのキャストが最後に出そろうという大団円で終わるのも山田ドラマらしい。ルシア塩満のアルパによるテーマ曲やタイトルバックの映像も印象的である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『愛の新世界(映画)』
by chikurinken | 2017-02-09 07:10 | ドラマ

『五年目のひとり』(ドラマ)

五年目のひとり(2016年・テレビ朝日)
演出:堀川とんこう
脚本:山田太一
出演:渡辺謙、蒔田彩珠、高橋克実、市原悦子、西畑大吾、柳葉敏郎、板谷由夏

ストーリーがよく練られた質の高いドラマ

b0189364_817192.jpg 山田太一作の新作2時間ドラマ。演出は『岸辺のアルバム』の堀川とんこう、主演は『星ひとつの夜』の渡辺謙で、山田ドラマとしてはベストの布陣である。
 内容は、『キルトの家』『時は立ちどまらない』同様、震災がモチーフで、目下の山田太一のテーマなのか。ただし前2作に比べてはるかにできは良い。
 主人公やその周りの人々との出会いも割合自然であり、主人公が、自分の正体をなかなか見せず周りにとってミステリアスな存在であり続けるという設定も、これまで『深夜にようこそ』などで使われているこなれた手法である。そのためかストーリーが自然に流れる上、先がなかなか見えてこない面白さもある。また最近のドラマのように、ありきたりの表現で終始するような部分もないことから、ユニークさを感じる。そういう意味でも質の高いドラマと言える。
 さらに、主人公が関わる中学生の少女(蒔田彩珠)にも存在感がある他、この兄が面白い役回り(山田作品らしい面白い登場人物:西畑大吾)で、登場人物の面白さはさすがに山田作品と思わせる部分がある。母親(板谷由夏)もやや自己中で非常にウザイ存在で、山田ドラマではちょっと異色ではあるが、これもリアルな存在感がある。
 その他の部分では、市原悦子がドラマの背景や主人公の経歴などをいろいろとセリフで語るのがやや説明過剰になっていたり、中学生たちのセリフに少々違和感があったりしたが、こういうのも許容範囲で、今年の新作ドラマの中では最上位のレベルである。やっつけ仕事を見せることに慣れきっている他の作家も、この作家を見習って工夫して書いてほしいものだと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『やがて来る日のために(ドラマ)』
竹林軒出張所『星ひとつの夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『キルトの家(ドラマ)』
竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』
竹林軒出張所『深夜にようこそ(ドラマ)』
by chikurinken | 2016-12-11 08:17 | ドラマ

『やがて来る日のために』(ドラマ)

やがて来る日のために(2005年・フジテレビ)
演出:堀川とんこう
脚本:山田太一
出演:市原悦子、星野真里、井川比佐志、森下愛子、上野樹里、堺雅人、柄本明、吉田日出子、神山繁、中原ひとみ

家族っていろいろあるよねーと感じるドラマ

b0189364_20583368.jpg 訪問看護師が主人公で、さまざまな患者家族の人間模様を描くドラマ。
 このドラマで扱われる訪問対象の家族は3つで、余命短い18歳の女子(上野樹里)の家族、弁当屋の事業を初めて会社を大きくしたが末期の病に冒された女性経営者(吉田日出子)の家族(夫はかなり年下で子どもはない)、それから余命2カ月の夫とその妻の家族(神山繁と中原ひとみ)。どのエピソードも概ね想像の範囲内で特に目新しさは感じないが、しかしおそらく綿密に取材したであろうことは窺われ、どの話もリアリティがある。したがってそれぞれに考えさせられる部分がある。
 この時代の山田ドラマを見ていると、最近放送されている一般的な(なおかつ陳腐な)テレビドラマとの違いが明らかになってくる。早い話が最近のドラマの特徴として、取り上げるテーマが浅い上掘り下げ方も浅く、しかもありきたりの表現あるいは月並みな表現ばかりということが浮かび上がってくる。こういう点で非常にインスタントな印象を受けるわけだが、そういう事実が、質の高いドラマを見ると逆に照らし出されてくる。(この山田作品のような)優れたドラマに見受けられる真摯さや真面目さを欠いており、結果的に重厚さも欠くことになるのである。
 このドラマはと言えば、上記の3つのエピソード以外にも未婚の母や定年退職後の夫婦のあり方までサブプロットとして盛り込まれており、いろいろなテーマ、問いかけがてんこ盛りで非常に贅沢である。中でも一番印象に残ったのが、18歳の余命短いほぼ寝たきりの少女が自分の通っていた高校とその周辺を見たいと言い出すエピソードで、これはグッと来るものがあった。上野樹里の表情による演技が非常に良かったせいでもある。
 その気になれば(市原悦子の『家政婦』シリーズみたいに)シリーズ化できるようなモチーフではあるが、シリーズ化して陳腐化させないのも作り手の良心というものなのかも知れない。思いが伝わる良いドラマである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『星ひとつの夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『この冬の恋(ドラマ)』
by chikurinken | 2016-11-25 06:57 | ドラマ

『この冬の恋』(ドラマ)

この冬の恋(2002年・フジテレビ)
演出:宮本理江子
脚本:山田太一
出演:田中美佐子、要潤、渡辺えり子、小林稔侍、平岩紙

田中美佐子が魅力的なドラマ

b0189364_21324818.jpg 2002年に放送された山田太一のドラマ。これも放送時に見ているが、恋愛ものでちょっと気恥ずかしいという印象がある。ただしストーリーはよく作り込まれており、ごく自然に流れていく。田中美佐子、要潤、小林稔侍が良い演技をしている(要潤を見たのはこのドラマが最初だった)。
 もう若くないというコンプレックスを持つ主人公の女性が、結果的に好きな男につらく当たってしまうんだが、この辺のやりとりは自然でドラマとしてはよくできたシーンである。ただ見ていて少し痛ましく、あまり良い気持ちはしなかった。ま、そういうのも含めてドラマである。周囲の人々が遠慮しながらもやたらお節介なのは山田作品らしい。ドラマについては、恋愛に終始しているという印象で、あまり山田作品らしい問いかけはなかった。
 演出は、山田太一の娘の宮本理江子で、親子共作ということになるが、どうやら共作はこれ1本きりのようだ。ときおりちょっと恥ずかしい演出が入るのは、当時のフジテレビのドラマらしい。田中美佐子が非常に魅力的に映っていたのも印象的で、38歳独身女性の役がすっかり板についていた(ちなみにこのドラマ当時すでに43歳)。彼女の代表作と言える1本なんじゃないかと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『星ひとつの夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『やがて来る日のために(ドラマ)』
by chikurinken | 2016-11-23 07:31 | ドラマ

『星ひとつの夜』(ドラマ)

b0189364_7213100.jpg星ひとつの夜(2007年・フジテレビ)
演出:田島大輔
脚本:山田太一
出演:渡辺謙、玉木宏、国仲涼子、井川比佐志、赤座美代子、笹野高史、福田沙紀、いしだあゆみ

映画を凌駕したドラマ

 放送時に見て「面白い」とは思ったが、今回見直してみて改めてその完成度の高さに驚いた。
 冒頭から自然にドラマの世界に誘導されて、そのままズッポリ嵌まり込んでしまった。登場人物が恐怖を感じればそれがそのまま伝わってくるし、焦燥感や屈辱感、緊張感も直に伝わってくる。展開が自然で、テーマもしっかりしている上、さまざまな問題提起もある。
 僕自身はなんとなく、2000年代から山田太一の筆力が衰えてきたんではないかと思っていたが、この作品については、有無を言わせないほどの絶品である。登場人物も魅力的で、ワケありの渡辺謙がやけに良い。これは前にも感じた記憶があるが、そのままデッサンしたくなるような良い顔をしている。笹野高史も相変わらず飄々として存在感を示している。渡辺謙が笹野に絡むシーンがまた秀逸で、このシーンは前に見たときからはっきり記憶していたため、今回も楽しみにしていたシーンではあったが、期待に違わず十分堪能できた。このシーンだけでもこのドラマを見る価値がある。
 テレビドラマではあるが、質的に映画のレベルを越えていて、簡単にドラマと切り捨ててしまうのはもったいない作品である。見終わった後も余韻が残る傑作で、脚本家の豪腕が輝きまくっている。シナリオの教科書に載せたいようなドラマである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『この冬の恋(ドラマ)』
竹林軒出張所『やがて来る日のために(ドラマ)』
by chikurinken | 2016-11-21 07:02 | ドラマ

『寺山修司からの手紙』(本)

b0189364_2016541.jpg寺山修司からの手紙
山田太一編
岩波書店

青春が随所にあふれている

 寺山修司と山田太一が、学生時代、親友のようなつきあいをしていたという。意外にも程があるという組み合わせだが事実のようで、その証拠に2人の間で数多くの手紙が交わされている。そして寺山から山田に出された書簡をまとめたのがこの本。
 2人は、早稲田の同窓で、1年生のときから懇意にしていたようだが、特に寺山がネフローゼで長期入院していたときに頻繁に手紙のやりとりをするようになった。なぜ手紙をやりとりするようになったかというと、寺山が入院した頃、山田がいつも病室に言って寺山と話し込んでいたが、寺山の母に、身体に触るかも知れないからあまり来ないでくれと言われたことがきっかけだったという。話したいけど病室に行きづらくなって、それで手紙をやりとりするようになったそうだ(ここらあたりのいきさつについては、巻末に書かれた「手紙のころ」という山田太一のエッセイで紹介されている。このエッセイも傑作である)。寺山の日記によると、山田の手紙を心待ちにしている寺山修司の姿が窺われ、山田太一の方も寺山に友情を感じていたことが、先のエッセイからよくわかる。
 手紙の内容は、よく意味が分からない箇所が多くて面白味はあまりないが、しかし2人とも女性にすぐ惚れていて、しかもそれで逡巡したりしていて、なんだか懐かしい感じがしてくる。学生時代ってそうだったな……などと自分に照らし合わせて思い出す。自分にもこういう手紙が残っていないか探したくなるくらいだ。もっとも残っていたところで恥ずかしくなるのは請け合いだが。ともかく、ちょっと背伸びした感じとか、端から見たらくだらないことに悩んでいたりとか、とても「青春している」のがなんだか嬉しい。それ以上に2人が互いをとても好ましく思っているのが気持ち良い。
 手紙には何人か女性が登場してくるが(2人が恋している女性など)、このうちの1人がその後山田太一と結婚したらしい。紹介されている手紙を割合いい加減に読んだため(内容が分かりづらいから読みにくいのだ)どの人かはよくわからなかったが、何でも寺山が最初に恋していた女性らしい。この辺の事情は、寺山修司の盟友である田中未知が「過去から現在・現在から過去」という、これも巻末のエッセイに書いている。なおこの本自体を企画したのも田中未知である。
 それから2人の若い頃の写真(おそらく高校生時分と大学生時分)も掲載されていて初々しい。2人とも若い頃は男前で、しかもなんだか「青春している」写真である。この写真も含めて、青春が随所にあふれている、初々しさを感じさせる本であった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『書を捨てよ町へ出よう(映画)』
竹林軒出張所『初恋・地獄篇(映画)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-04-06 07:15 |

『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年』(本)

b0189364_8122249.jpgその時あの時の今 私記テレビドラマ50年
山田太一著
河出文庫

戦後のドラマを語り尽くす
山田太一編


 同じ河出文庫から出た山田太一のエッセイ集、『S先生の言葉』は非常に物足りなかったが、同じシリーズのこのエッセイ集は抜群に面白い。
 この本では、テレビ関連、ドラマ関連のネタばかりを集めているが、テレビで長年活躍している著者だけに、そういう話の方が断然面白いには違いない。実際面白いわけで、体調問題からドラマの主演に消極的であった笠智衆をあの手この手で引っ張り出した話や『岸辺のアルバム』を製作するときにあこがれの八千草薫に主演を頼み込んだ話(八千草さんは当初から乗り気ではなかったらしい)は、ドラマの裏話として、ドラマ・ファンにとっては耐えられない魅力がある。特に後者の八千草薫の話(「遠い星の人」:78年『家庭画報』初出)は、内容もさることながら、(著者の照れ隠しなのかも知れないが)文章が躍動していてエッセイとしても素晴らしいデキである。
 また、自身の修業時代(木下恵介に就いていた頃)の話や映画会社時代での話は、かつて放送されたインタビュー番組とも一部内容はかぶるが、青春記としても読める内容でこちらも大変興味深い。
 後半は「自作再見」という副題付きで、過去の作品群について自ら書いたエッセイが集められている。多くは、著者のシナリオ集の巻末エッセイをそのまま引っぱってきたものであるが、それぞれの作品の裏話みたいなものが披露されていて興味深い。正直、本の巻末に載っているエッセイや解説などというものは、大した価値がないと思っていたし、どちらかと言うとありがた迷惑のように感じることが多いが、こうやっていろいろな本から集めてくると別の見方ができ、価値が大いに上がる。これは企画の勝利と言って良い。実際こういう形で読むととても面白い。これは倉本聰の竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』にも共通しているんだが、ある世界で一流の人にはやはりその世界のことについて語ってもらうのが一番……という至極当たり前の結論に達したのであった。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『S先生の言葉(本)』
竹林軒出張所『寺山修司からの手紙(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
by chikurinken | 2016-04-05 08:12 |

『S先生の言葉』(本)

b0189364_811111.jpgS先生の言葉
山田太一著
河出文庫

期待はずれの一冊

 脚本家、山田太一のエッセイ集。いろいろな素材から編集者が集めたという一種のダイジェスト集と言える。
 山田太一は、シナリオ・ライターとしては言うまでもないが、エッセイ作家としても僕はただ者ではないと思っていて、特に『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』は非常に感心し感銘を受けた一冊である。ただ本書で選ばれているエッセイは、それほど鮮烈な印象を受けるようなものはあまりない。中には小説風のものや愚痴めいたものもあってバラエティに富んでいるとも言えるが、著者の鋭い洞察を期待してこの本を買った身としては、少々期待外れだった。
 中には他の人の本に収録された「解説」まであって、これを選ぶ必要があったのか疑問に感じる。それに論点がしっかりしていないようなものもあって、果たして選ばれるべき作品なのかと思ったりもする。著者のポテンシャルを考えた場合、もっと良いものもあったはずだと思うし、もう少し吟味して選んでいただきたかったと思う。
 ただ、これだけ集めると、著者の人柄や人間性が染みだしてきて、人間、山田太一を知るには良い素材だと言える。編集者は一昨年『総特集 山田太一』を担当した人だということだが、要するに同じようなコンセプトの本ということになる。だが実際のところほとんどの読者は、山田太一自身に関心があるのではなく山田太一作品に関心があり、彼が何を物語るかに興味があるわけで、そうするとやはり人間性云々より、その主張や思いなどに接したいと感じるのではないだろうか。そういうものを中心に集めたら、もう少しグレードの高い本になったんではないかという気がする。
★★★

参考:
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
by chikurinken | 2015-11-27 08:11 |