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竹林軒出張所

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タグ:原発 ( 68 ) タグの人気記事

『原子力大国 アメリカ』(ドキュメンタリー)

原子力大国 アメリカ
(2012年・米9.14 Pictures)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_8221015.jpg本家アメリカの原子力事情

 これも福島第一原発の事故をうけて作られたドキュメンタリーで、これはアメリカ製。アメリカの原子力事情を紹介する。ちなみに原題は『The Atomic States of America』。なかなかふるっている。
 このドキュメンタリーでも、アメリカの原発史が語られる。そのルーツは原子爆弾開発のためのマンハッタン計画である。第二次大戦終結により核開発の必要性がなくなると、関係者は既得の核兵器研究予算を失わないよう、原子力の平和利用というキャッチフレーズを掲げ、なんとか原子力を他の用途で利用できないか模索し始める。当初は珍奇なアイデアがいろいろ出されたが、発電に利用すればよいのではというアイデアが採用され、原子力発電が始まることになる。
 その後、アイゼンハワー政権によって支持されたこともあり、原子力発電は急拡大を遂げ、全米に原発が作られることになる。だがその後、スリーマイル原発で事故が起こり、コントロールが難しい技術であることが判明すると、原発の拡大は停止する。最近になって地球温暖化の問題にあわせて原発の見直しが進んだが、福島原発事故以降、再び増設に歯止めがかかっているというのが現状である。現在アメリカには100基以上の原発があるが、使用済み燃料の処分法はいまだに確立されておらず、最終処分場がない状態である。
 また、それぞれの原子力施設の放射能管理もずさんなところが多く、環境に放射性物質が垂れ流しになっている箇所もある。番組では、ロングアイランドの原子力施設周辺で異常な病気が多発したケース(その後、放射性物質トリチウムの環境への流出が明らかになる)や、軍の核施設のずさんさが一例として紹介される。
 さらに、大都市ニューヨークから数55キロの地点に立つインディアン・ポイント原発は、近くに活断層があることが判明し、しかも製造後40年経っている旧型機であるにもかかわらずさらに20年の継続運転が認可されているという事実が明かされる。マグニチュード7程度の地震により原発事故が起こる可能性がある上、事故が起こると巨大都市ニューヨークに計り知れない影響を及ぼす可能性があるということで、大きな懸念材料になっている。この国もフランスや日本と同じように、大惨事を経験しなければわからないんだろうか。もちろんこういうドキュメンタリーが作られているということは、市民の側にそれなりの危機意識があるということなんだが。いずれにしてもアメリカの場合、大陸的なずさんさがそこここに見受けられ、こんなずさんな方法であんな危険な原子力を管理できるんだろうかとこのドキュメンタリーを見てあらためて不安な気持ちになった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フランス 原子力政策の軌跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-29 08:24 | ドキュメンタリー

『フランス 原子力政策の軌跡』(ドキュメンタリー)

フランス 原子力政策の軌跡
(2013年・仏Morgane Production/Kami Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_813695.jpgフランスの原子力事情

 福島第一原発の事故をうけて作られたフランス製のドキュメンタリーで、フランスの原子力事情を紹介する。
 2011年の福島第一原発事故をきっかけに、世界中の国で原発の見直しが行われ、ドイツやスイス、イタリアのように原発廃止に向けて舵を切った国がある一方で、いまだに原発政策を強行に進めようとする国もある。その代表格がフランスで、フランスが原子力大国であることを考えると無理もないと言えるかも知れない。福島第一原発の汚染水処理にもフランスのアレバ社の技術が採用されたと聞く(全然役に立っていないという話もあるが)。
 実際フランスには60基もの原発があり、高速増殖炉の開発もかなり長いこと進められていた(スーパーフェニックス、今は廃炉)。総電力の70%以上が原子力によるもので、しかも電力の輸出も行っている。原子力に取り組んだのも早く、自前の原子炉もある。アメリカと並ぶ原子力先進国であるのは間違いない。
 元々フランスの原子力への取り組みは、第二次大戦後の核兵器開発に始まったもので、その後第一次オイルショックの際に原子力発電への傾倒が進んでいった。当初は日本と同様、原子力は未来のエネルギーという見方がされていて、負の部分があまり明らかでなかったこともあるが、同時にフランスはキュリー夫妻を輩出した国であり、原子力技術に対してひとかたならぬ思い入れがあることも大きく作用しているんだろう。実際、原子力テクノクラートの力が大きく、政権の中枢部に深く入り込んでいるというのだ。そのために政府レベルで、反・原子力に舵を切ることができないらしい。
 スリーマイル原発やチェルノブイリ原発の事故を経験してからは原子力に対して懐疑的な勢力も増えているが、それでも状況は変わらず。原発の増設まで行われている。現在稼働中の原発が約60基で、アメリカ、旧ソ連に次いで第3位、日本の54基をしのぐということで、統計的に素直に考えると、次に大事故が起こるのはフランスが有力ということになる。日本も、今は多少変わったとはいえ、この間の事故以前はフランスと同様の状況だったわけで、やっぱり愚かしい文明人は自らが大失敗を経験しないと気付かないものなのか。だがヨーロッパ大陸で大事故が起こると、その影響は福島の比ではあるまい。
 こういうドキュメンタリーが、フランス国内でもたびたび作られていることを考えると、世論は原子力政策に対して懐疑的であることがわかるが、いい加減舵を切らないと取り返しがつかなくなるよと老婆心ながら言いたくなる。ま、日本もまったく同じだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原子力大国 アメリカ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-28 08:14 | ドキュメンタリー

『原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜』(ドキュメンタリー)

原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜
(2012年・仏Eclectic Presse/ARTE France)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

続けるのも問題だが、やめるのも大変!

b0189364_7573281.jpg フランス、ドイツ、アメリカでの原子力発電所の廃炉の現実を報告するドキュメンタリー。廃炉作業の問題性を順を追って紹介していく。
 番組では、まず廃炉作業の複雑さが取り上げられる。原発は、操業中に大量の放射性物質を扱うという性質上、原発の多くの設備が放射性物質で汚染される。そのため、通常の発電施設であれば問題なく進むような解体作業も、こと原子力施設ということになると簡単にはいかない。まず第1段階として燃料を取り出し、第2段階では放射性物質と接触していない部品(通常の廃棄物)と原子炉近くの部品(低レベル、中レベル汚染)を撤去する。そして第3段階で、放射線量が非常に高い原子炉自体を解体する。すべてを解体するのに30〜40年、場合によっては60年かかる。ただしたとえ解体作業が終わったとしても、最終処分場がなく廃棄物を処分することができないため、その多くが敷地内に野積みになっているのが実態である。例としてドイツのルブミン原発とアメリカのメイン・ヤンキー原発の状況が示される。
 こういった廃棄物の中でも特に問題になるのは、高レベルの廃棄物で、そのままでは非常に危険な上、現時点でこれを処理する方法は無いときている。かつてフランスでは、高濃度放射性廃棄物を海洋投棄していたが、今では当然こういうことは許されず、どの国も安全な廃棄物処理方法を模索している段階にある。だが現状では、地下深くに埋めるという方法以外見つかっていない。
 ドイツでは40年前、アッセの岩塩鉱山跡(地下500m)に放射性廃棄物を貯蔵するという方法を採った(岩塩の成分が放射性物質を中和するというような理屈だったらしい)が、2004年に地殻変動が原因で貯蔵施設の一部が崩壊。今はその手当てのために奮闘を余儀なくされている。また、フランス、ビュールでも同様の計画が進んでいるが、爆発や火災の危険性があることが指摘されていて、やはりこれはという解決策は見つかっていない。
 さらに作業員の被曝の問題も挙げられる。作業員に放射線についての正しい知識が伝えられないことがあり、それが作業員の放射線被曝を招くことになる。たとえ正しい教育を行っている現場であっても(被曝量の制限のため)作業員が長期に渡って働くことができにくいため、知識や経験が引き継がれにくいという問題もある。
 廃炉はこのように複雑な問題をかかえる作業であるため、廃炉にかかる費用も相当な額に上る。たとえ一定の予算を組んでも、実際にはその何倍もの費用がかかることも多く、今後、大量の原発を廃炉する上で想定される費用は莫大なものになることが予測される。どの政治家がこれにゴーサインを出すのかということも問題になり、結局は厄介な問題が先送りされることになる。しかも、廃棄物の管理方法すらいまだ答えが出ていないという状況である。
 原発は運用するのもいろいろ問題があって大変だが、廃炉作業も一筋縄ではいかず、現在操業中の原発を本当にすべて廃炉できるのかという疑問を提示して番組は終わる。僕自身、このドキュメンタリーを見て暗澹たる気持ちになってきた。だがこういう問題が目の前にあるのも事実で、なかったことにするわけにもいかないだろう。もちろん、これまで原発を推進してきた関係者(および支持者)にはそれなりの責任をとってほしいものだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原子力“バックエンド”最前線(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 (ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『地下深く永遠に 〜核廃棄物10万年の危険〜』(ドキュメンタリー)』
『原発解体』に対する日本原子力技術協会による反論(2009年10月16日)
by chikurinken | 2014-01-27 07:58 | ドキュメンタリー

『汚染水 〜福島第一原発 危機の真相〜』(ドキュメンタリー)

汚染水 〜福島第一原発 危機の真相〜(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

追求することこそが報道機関の責務

b0189364_810469.jpg 過去、NHKスペシャルでは福島第一原発の事故のその後を継続的に放送していて、1視聴者としては非常にありがたいが、この『汚染水』もこれまでの他の番組に劣らず、内容の充実さ、構成の巧みさの2つの点で高く評価できる。
 汚染水流出についてはニュースで何度も報道され、その重大性もわかっているつもりでいるが、具体的にどこからどのように漏れているかピンと来ない上、こういう状況がいつまで続くのか、完全にブロックすることが可能なのか(完全にブロックすることが不可能なのは容易に想像が付くが)なども正直見当が付かない。そのためこの番組で、相当具体的に、しかもCGやモデル(水を使ったモデルが非常にわかりやすかった)を使いながら漏れていると思われる箇所を示し、どういう対策が必要で、現状どうなっているのかが示されていたのは非常に良かった。実際に内部の様子をカメラで捉えた映像もニュースとしての価値が高いし、それに対して適切な解説が加えられていたのも良い。
 結果的に汚染水問題の全体像が示されることになったため、今後、汚染水流出のニュースが出たときに、かなりの程度まで理解できるようになったと思う。こういう番組が作られたのは賞賛に値する。また、今進められているという凍土による土壌カーテン作戦もわかりやすい解説が付いていて、今後の方針が示されていたのも良かった。もっともこの作戦、正直言ってあまり成算はなさそうだが、しかし問題の重大性を考えたらこれは致し方ないところで、これによって原発問題の大変さが逆に強調されることになっている。NHKには、(一部の勢力のように)原発問題をなかったことにすることなく、今後も真摯に追求していってほしいと切に願う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『シリーズ原発危機 第1回(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発事故 100時間の記録(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『調査報告 原発マネー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 (ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『メルトダウン 原子炉"冷却"の死角(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-12-18 08:11 | ドキュメンタリー

『原子力“バックエンド”最前線』(ドキュメンタリー)

原子力“バックエンド”最前線 〜イギリスから福島へ〜(2013年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

b0189364_8354779.jpgもう増設は許されない

 原子力発電で核燃料を反応させた後の核廃棄物の処理を「バックエンド」という。日本では相変わらずバックエンドに真っ正面から取り組もうという機運が見えないが、かつての原子力大国、英国ではすでに大がかりにバックエンドに取り組み、事業を本格化させている。その英国での取り組みをレポートし、福島第一原発の処理の参考として考察しようというドキュメンタリー。
 元々英国でもバックエンドの取り組みはなかなか進まなかったらしいが、20年ほど前から本腰を入れるようになったという。英国では1957年にセラフィールドの各処理施設で火災事故が起こり、スリーマイルクラスのレベル5の核物質放出が起こった。だがその後の処理もおざなりで、ほとんど放置された状態が続いていたという。要は、先送りが限界に達したということなんだろう。
 英国でバックエンド処理の実務を担当しているのは原子力廃止措置機関(Nuclear Decommissioning Authority:NDA)という行政機関で、ここがリードして全国20あまりの原発の廃炉作業に取り組んでいる。中には100年以上の計画で廃炉作業を行っているところもあり、福島原発が30〜40年という楽観的な目標を立てているのとは大違いである。いずれにしても大がかりで大変な作業になるのが核処理であり、相当な長期間に渡って廃炉作業に取り組まなければならないのは言うまでもない。結局のところ発電所建設を上まわる膨大な費用と労力が必要になる。しかもそれは次の世代にすべて託されるというんだから、これほどの利己主義はあるまい。
 とは言うものの、他の国に比べてバックエンド作業が比較的順調に進んでいるのが英国である。だがそれでも、最終処分場はいまだに目途が立っていないという。
 この番組では、英国の比較的進んだバックエンド技術が福島にも役立てられるのではないかという主旨だったんだが、むしろ、バックエンド事業の大変さばかりが伝わってきて、えらいものを背負い込んじゃったなという印象が強かった。日本の場合、原発だけで50基以上あるわけで、しかもそれでも増設しようという勢力がある現状で、まったく恐れ入る。せめて廃炉計画を考えてから建設計画を立ててほしいと思う。「おまえら、ふざけるな。このまま放置したら、どんな事態になるかわかっているはずだ。増設は許されない」というような発言があってもおかしくない。
 いずれにしてもバックエンド事業の現状を詳らかにした貴重なドキュメンタリーになっていた。原子力技術協会の反論が楽しみ(竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』参照)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 (ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-03-18 08:37 | ドキュメンタリー

『メルトダウン 原子炉"冷却"の死角』(ドキュメンタリー)

b0189364_8373740.jpgメルトダウン 原子炉"冷却"の死角
(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

あの事故の検証、第3弾

 NHKスペシャルのシリーズ「メルトダウン」の第3弾。第1弾は『メルトダウン 〜福島第一原発 あのとき何が〜』、第2弾は『メルトダウン 連鎖の真相』で、それぞれ福島第一原発1号機と2号機の事故後の注水の問題について扱っていた。第3弾は、第1弾と重複する部分が約半分(前半)で、後半が新しい部分。
 前半は、第1弾同様、1号機の非常用復水器(イソコン)が動作していなかったことを再現ドラマを交えながら示していく。もっとも、原子炉格納容器の水位が地震後急速に下がったことを考えると、配管系統の破断がどこかであってそこから格納容器内部の水が大量に漏れ出していると考えるのが筋のような気がする。それを考えるとイソコンが動作していても焼け石に水だった可能性は否定できない。ただ、大変危険な物を扱う原子力施設でありながら、非常時のシミュレーションがほとんど行われていなかったことは事実で、それを追求した点は評価に値する。
 今回新しく追加されたのは後半部分で、こちらは3号機の注水の問題である。3号機は、非常用バッテリーが動作していたため、しばらくは冷温停止状態が保たれていたが、やがてバッテリーが切れるとこちらも空だき状態になる。そこで、消防ポンプを使い配管経由で原子炉に注水しようという計画が進められていく。実際に行動に移されるが、結果は芳しくなく、3号機の格納容器が水で満たされることはなく、結局メルトダウンにつながった。これについて検証したのが今回の番組で、格納容器につながる配管に途中、他の箇所(復水器)への分岐があり、そちらに水が流れた可能性があることが指摘された。これは実験でも検証されており、その可能性は大きいと言える。そして、その分岐を確認しないまま作業を行った原因について、それまでこの手の訓練、シミュレーションを一切行っていなかったことを挙げている。つまり原子力産業自体、そういった緊急時対応の取組をほとんど行っていなかったことが示される。しかもこの注水の問題が、事故調査委員会の記録にも残っていない、結果的に他の原子力施設でこの失敗を教訓にする機会を奪っているというのだ。こういうことをすべて考え合わせると、日本の原子力産業のご都合主義的な側面がよく見えてきて、事故が起こっても何らその体質は変わらないということがよくわかる。こういう事実をあらためて指摘したという意味では、なかなか意欲的なドキュメンタリーだったと言える。焼き直しが多かったのは玉に瑕だが。こういった番組作りが、愚かしい政治屋たちに横やりを入れられたりしないよう切に願う。
★★★☆

参考:竹林軒出張所『メルトダウン 連鎖の真相(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-03-16 08:38 | ドキュメンタリー

『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 』(ドキュメンタリー)

"核のゴミ"はどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

いい加減ゴミ問題に向き合いませんか、ねぇ社長

b0189364_904622.jpg 原子力問題を鋭く追求する『NHKスペシャル』。今回のテーマは「核のゴミ」の問題。
 原子力発電所では、ウラン燃料を核反応させて熱を取り出すが、反応がある程度終わると燃料としての機能を果たせなくなって、つまるところゴミになってしまう。この「核のゴミ」、つまり使用済み核燃料は世界中のありとあらゆる原発から発生するわけなんだが、当然のことながらかなりの放射能を含んでいるため、そのままゴミ捨て場へポイというわけにはいかず、要するに現状で処理方法がないため、どこの原発でも溜まりに溜まりまくっている。しかもゴミになってから数年間は熱を出すため、冷却プールに入れて常に温度を管理しなければならないというのだから面倒きわまりない。そのためもあって、この使用済み核燃料、多くの原発で冷却プールに入れたままになっていて、これがどんどん溜まっていくと、当然これ以上入れられない、つまり満杯の状態になるわけで、ただでさえ管理が厄介なものがその管理すらできない状態になるというわけ。日本の原発の場合、冷却プールはどこも満杯に近く、本来であればこれ以上原発を運転することはできないんじゃないかと思うんだが、面倒なことは先延ばしにするのが日本の役人のお家芸、将来的に青森の再処理工場で処分するということにして、使用済み核燃料をどんどん生産しているというのが現状である。
 だが、危険物を原発内の冷却プールで保管するのがいかに危険かは、先頃の福島原発事故で明らかになった。冷却プール内の水がなくなれば熱を持っている使用済み核燃料がやがてメルトダウンし、もうそうなると本当に手が付けられなくなる。福島原発の事故では、ヘリコプターから水を投下したり放水したりといった涙ぐましい努力をしていたが、あれだってイチかバチかに近い方策である。いずれにしてもどこの原発でも、危険な状態は続いているわけで、しかもそれが解消される見込みもあまりないと来ている。
 彼らが頼みにしている青森県六ヶ所村の再処理工場は、いまだ稼動すらしていないし、そもそもここで再処理したところで、単にごくわずかなプルトニウムを取り出すに過ぎないわけで、「核のゴミ」がなくなるわけではない。結局どこかに埋めるなりなんなりしなければならないんで、結局は先延ばし以外のなにものでもないし、しかもこの埋め立て最終処分についてはまったく手がついていないのだ。世界中でこの最終処分場を実際に建設しているのは北欧の2カ国だけで(竹林軒出張所『地下深く永遠に 〜核廃棄物10万年の危険〜(ドキュメンタリー)』参照)、しかも地中深く埋めたところで、それで安全かというとまったくそういうことはない。ちょっとだけヒトの世界から遠ざけたというただそれだけの話だ。とにかくどうしようもないというのが実際の姿である。
 この六ヶ所村の再処理工場にしても、高速増殖炉が機能して初めて意味をなすもので、現実的に高速増殖炉が実現不可能な現状ではまったく意味がない。原発のゴミから新しい資源を取り出し、これを高速増殖炉で燃料として使いながら同時に新しい燃料を生産するといういわゆる「核燃料サイクル」が夢物語であることはすでに多くの人が気付いているにもかかわらず、日本ではいまだに形の上で存続しているが、これについてこの番組では、核燃料サイクルを担当している民間企業、日本原燃株式会社が、みずからの存続のためにロビー活動を続けていることが一因であるとしている。要は、核燃料サイクルが止まったら、日本原燃が銀行から融資を受けられなくなり、現在の負債を処理できなくなるという話らしい。だが、たかだか1企業のためになんでこんな莫大な費用を投じて、危険な実験と環境破壊を続けさせなければならないのか、きちんとした説明はできないだろう。核燃料サイクルはもともと国策として始めているんで、国が責任を持ってこの企業を処理したら済むんじゃないかと思うが。そういうことが正常に進まないのが原子力行政で、都合の悪いことは国民の見えないところで勝手に進められてしまうのが常である。それを考えると、NHKがこういった問題点をあぶり出した点は十分評価に値する。原子力には必ず行政面、政治面の不正が関わるもので、そういう意味でもこういった点を明るみに出したのは斬新で、スクープに近いと思える。
 原発を再稼働させるとかなんとか言う前に、まずはこの核のゴミの問題を考えるべきだとする、きわめてまっとうな主張を全国放送で取り上げたNHK、今回もファインプレーであった。拍手パチパチだ。
★★★★

参考:
六ヶ所再処理工場を扱ったメディア
竹林軒出張所『「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場(本)』
竹林軒出張所『六ヶ所村ラプソディー(映画)』

核燃料サイクルの現状を示したドキュメンタリー
竹林軒出張所『核燃料サイクル 半世紀の軌跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『地下深く永遠に 〜核廃棄物10万年の危険〜(ドキュメンタリー)』

原子力問題を扱った主なNHKスペシャル
竹林軒出張所『調査報告 原発マネー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『シリーズ原発危機 第1回(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『メルトダウン 連鎖の真相』(ドキュメンタリー)
竹林軒出張所『原発事故 100時間の記録(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-03-05 09:01 | ドキュメンタリー

『「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場』(本)

「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場
小出裕章、渡辺満久、明石昇二郎著
集英社新書

名ばかりの危険物処理施設は存在自体が危険

b0189364_841101.jpg 福島第一原発の事故で、さしもの日本の原子力行政も転換するかと思っていたが、いつのまにかまた甦ってきた。まったく懲りない連中がいるもので、人間は失敗から学ぶってことを理解していない愚か者がこの国を牛耳っているのはまったく嘆かわしい限り。日本国が完全に滅びない限り気が付かないんだろう。もっとも滅びてしまったら後の祭りだが。
 そういう昨今の風潮の中、もんじゅも生き返り、そして今また六ヶ所村の再処理工場も何もなかったかのように計画が進んでいる。これが操業を始めた日にゃ、核物質による環境汚染も桁違いだし、それに今度事故が起こったらそれこそ取り返しがつかなくなる。
 この本は昨年の8月に発行された本だが、それ以降、国内の原子力行政の状況が一段と悪化している。こういう状況だからこそ、こういう本の価値も上がるというものである。で、内容であるが、六ヶ所村の再処理工場の問題点を書き連ね(第1章、小出裕章担当)、同時に「地震で爆発事故が発生したら」という想定のシミュレーションが紹介されている(第2章、明石昇二郎担当)。さらにこの再処理工場の下を活断層が通っていることを地震学の専門家が1章を費やして解説している(第3章、渡辺満久担当)。明石昇二郎のシミュレーションは、『原発崩壊 増補版』(竹林軒出張所『隠される原子力・核の真実(本)』参照)同様、被害想定がやや大きすぎるきらいはあるが、ただし再処理工場の場合、よくわからない部分があるので、大きすぎるかどうかはにわかに判断できない。少なくとも、その基となるデータや論拠が示されているため、荒唐無稽なものでないことは確かである。ともかくこの規模の災害が起こったら、日本は沈没間違いなしである。
 もっとも事故が起こらないとしても、環境への核物質排出は桁違いに大きく「原発1年分の放射能を1日で放出する」らしく、それを考えると、存在自体が容認できないのは火を見るより明らか。しかも「核廃棄物の再処理」事態、まったく不要なプルトニウムを取り出すという作業であり、核兵器を作るというのなら別だが、現状ではプルトニウムの使い道さえなく、そう考えると本来まったく不要な作業である。不要な作業のために(本来であれば)不要な不安を抱えたまま、不要な汚染をし続けるという施設で、そもそも必要かどうかという議論をする以前の問題であると思う。この本を読めばそういうことがわかるようになっている。興味のある方は読んでくださいという他ないんだが、一方で、日本人ならこういうものが作られようとしているということぐらい知っておいた方が良いんじゃないかとも思うんだな。そうしたら少なくとも原発を推進するような政治体制が生まれることはなくなるだろうと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『六ヶ所村ラプソディー(映画)』
  (六ヶ所村の今を伝えるドキュメンタリー映画)
竹林軒出張所『核燃料サイクル 半世紀の軌跡(ドキュメンタリー)』
  (日本の核燃料サイクルの現状)
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
  (フランスの核燃料サイクルの現状)
竹林軒出張所『隠される原子力・核の真実(本)』(小出裕章の著作)
竹林軒出張所『原発崩壊 増補版(本)』(明石昇二郎の著作)
by chikurinken | 2013-02-12 09:03

『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(本)

b0189364_9475976.jpg東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと
菅直人著
幻冬舎新書

何が彼を脱原発にシフトさせたか

 福島原発事故当時首相だった菅直人の回想記。
 あの事故以来、さまざまな報道機関でいろいろなことが報道されてきたが、それはあくまでも外部からの目であり、ともすれば独断的な評価が伴うものである。そのため、事故の対処に当たった内部の人間、特に当時最高責任者であった著者からの視点が明かされることは非常に有意義であると言える。
 2011年3月11日、東日本大震災が起こり、それに伴って福島第一原発でメルトダウン事故が立て続けに起こったことはご承知の通り。そしてそれに対して、首相官邸内に緊急災害対策本部、原子力災害対策本部が急遽作られ、事故の対応に当たることになった。そこから、二度の水素爆発、放射性物質の放出などを経て、一定の収束のめどが付くまで、官邸側がどう感じどう動いたかが本書で時系列に述べられている。大筋では、以前NHKで放送された『NHKスペシャル シリーズ原発危機 第1回 事故はなぜ深刻化したのか』(竹林軒出張所『シリーズ原発危機 第1回(ドキュメンタリー)』参照)で紹介されたものと同じだが、それに加えて、なぜ首相が大学時代の友人を参与に任命したかや、なぜ福島第一原発までヘリで視察に訪れたかについても説明がある。そしてそれが、一部のマスコミで批判されているような気まぐれな動機では決してなかったこともわかる。そもそもなぜあれほどのヒステリックな菅タタキが起こったのかもにわかに理解しがたいが(右翼マスコミの誘導によるということぐらいは察しが付くが)、著者が本書内で言うように「私が脱原発の姿勢をはっきりさせ始めた頃から、私に対する攻撃が激しくなってきた」(160ページ)こともあったんだろう。
 原発災害対策に実際に当たった首相の立場として、当時直面した問題点についても率直に述べている。原発災害対策のためのシステムもろくに機能しない上、必要な情報が東電から満足に上がってこないという現実があったらしい。本書の記述からは、現場で災害対策のシステム作りから始めているような印象すら受ける。大学時代の知人を介して東工大の原子力の専門家を呼んだり原発製造メーカーである東芝や日立にも協力を呼びかけたりしたのも、情報の著しい欠如ゆえである。また、自衛隊に指揮権を与えるなど大胆な方策を行っていることも本書で明かされている。こういうことは、部外者にはなかなかわからない部分である。ましかし、いわば参謀本部がそんな状態なので、災害対策が円滑に進むはずもなく、それが被害を拡大させる要因になったようだ。
 そもそも日本に原子力災害に対応するためのシステムがなかったという、信じられない事実が発覚するのも今回の事故がきっかけだった。近接した原子炉が次々にメルトダウンを起こしチェルノブイリ以上の大惨事になる可能性さえあったわけで、著者によると、本当に偶然のおかげでそれを回避できたということなのだ。もちろん現場での決死的な活動があったのは事実だが、しかしもしいずれかの原子炉が破裂していたら、近隣に誰も近づけなくなるため、原子炉破裂と燃料棒プールでのメルトダウンが連鎖的に発生することになる。1つでも暴走すると手が付けられなくなる。そしてそれがたまたま回避できたに過ぎない。そのことが、当時の最高責任者の首相だった人間によって率直に語られる。
 今再び原子力回帰の動きが出てきているが、もう一度、当時の状況を身近に感じることで、日本を崩壊させるポテンシャルを持つ原子力発電所について考えてみるのも良いのではないかと思う。
★★★☆

参考:竹林軒出張所『シリーズ原発危機 第1回(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-01-14 09:50 |

『六ヶ所村ラプソディー』(映画)

b0189364_7551421.jpg六ヶ所村ラプソディー(2006年・グループ現代)
監督:鎌仲ひとみ
音楽:津軽三味線奏者 倭
出演:斑目春樹、小出裕章、土本典昭(ドキュメンタリー)

 核再処理工場が建設された青森県六ヶ所村の現状(といっても2006年の段階だが)を紹介するドキュメンタリー。
 六ヶ所村の核再処理工場は、1980年代に着工が決まり、2004年に約2兆円もの費用をかけて建設された。その間、漁民を中心として反対運動もあったが、結局反対陣営が切り崩されて現在に至る。現在反対を表明している人々は少なくなって、変わり者扱いされ、「アカ」などと呼ばれることもあるらしい。
 基本的には核再処理工場に対して反対の立場を取っている映画だが、一方で積極的賛成派の人々にも話を聞いている。そのため声高に反対を表明するのではなく、淡々と現状を描写するという表現になっている。監督自身、映画の中で推進派の人々を糾弾するような心境になれないと語っているが、そのことがこの映画のスタンスを物語っている。
 とは言え、冷静に考えると、核再処理工場にプラス面はほとんどないわけで、どうしてもネガティブな立場になるのは当然と言えば当然。実際、推進派の人々がよく口にする「雇用を生みだす」という理屈も、結局はせいぜい原発労働者、ひいては内部被曝予備軍を生みだすだけで、「雇用を生みだす」という実態とはかけ離れている。それに一方で、地元の農業と漁業を壊滅させる可能性が非常に高いわけで(実際漁業は壊滅しているようだ)、そうすると「雇用をなくす」作用も大きいことになる。原発労働者にしても、一定量被曝してしまうと、労働力として使い物にならなくなるため、いずれは使い捨てにされるのがオチである。結局、原子力施設は地域社会を徹底的に破壊し尽くすことになるんじゃないだろうか、などとこの映画を見ながら考えていた。映画では農業従事者にスポットが当てられているため、雇用を奪われる立場で語られる言葉が多かった。
 この映画では、六ヶ所村だけでなく、イギリスのセラフィールド(核再処理工場がある)の現状も紹介されるが、これを見ると、将来の六ヶ所村の有り様まで想像できる。核再処理工場が地域にどういう惨状を生みだすかがよくわかる。
 ただいずれにしても、核再処理工場は高速増殖炉がなければ意味がないのであって、しかも高速増殖炉の実現性が困難な現状を鑑みると、そもそも核再処理工場自体必要ないということになる。結局は2兆円も費やして研究者のための巨大な玩具を作ったようなもので、雇用をうむ効果を目指すんだったらもっともっと効率的な方法もあるはずだ。そもそも2兆円も予算があるんなら、変なものを作ったりせずにそのまま村民にばらまいたとしても1億円ずつくらい行き渡るんじゃないだろうか……などということもつらつら考えた。
 声高な主張はなくとも、現状を示されるだけでいろいろなことを考える材料になる。そういう意味でも啓蒙の映画なんだろうなと思う。個人的には、賛成派の人々が3・11以降どういうふうに考えるようになったか興味深いところである。
 なお、『ある機関助士』の土本典昭、『隠される原子力・核の真実』の小出裕章もインタビューを受ける側として登場している。
★★★☆
by chikurinken | 2012-11-14 07:55 | 映画