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竹林軒出張所

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タグ:倉本聰 ( 26 ) タグの人気記事

『川は泣いている』(1)〜(4)(ドラマ)

シリーズ・街 川は泣いている (1)〜(4)(1990年・テレビ朝日)
演出:雨宮望
脚本:倉本聰
出演:東幹久、岩城滉一、横山めぐみ、いしだあゆみ、築山万有美、円浄順子、三木のり平、堀内孝雄、森本レオ

「泣いている川」とストーリーの本流には
関係があったのだろうか


b0189364_22484640.jpg 1990年にテレビ朝日で放送された倉本聰作の全4回のドラマ。テレビ朝日と倉本聰というと少し珍しい組み合わせのように感じる。それにテレビ朝日が「シリーズ・街」などというNHK風のタイトルを付けているのも奇異な感じがする。時代か?
 ストーリーの中心となるのは、葬儀屋の息子(東幹久)の青春ターニングポイントで、出会いと別れ、生と死などがテーマになる。途中『愛と死をみつめて』みたいな話も出てきて、いろいろなものがてんこ盛りされた、サービス精神溢れるドラマと言える。ただし取って付けたようなエピソードもありそのためにリアリティを少々欠いてしまった部分もある。
 堀内孝雄が伝説の歌手みたいな役で登場し、彼が劇中で歌う「川は泣いている」という歌がこのドラマのテーマ曲にもなっているが、この歌が演歌調で少々辛気くさい。エンドロールで流されるんだが、サスペンスドラマみたいな雰囲気を醸し出して(しまって)いる。ここだけ見ると、いかにも(かつての)テレビ朝日という感じになる。倉本ドラマとしては少し異色な演出と言える。
 主人公の独白がしきりに入る「北の国から」スタイルは倉本ドラマらしいが、このナレーションが必要以上に説明的であるためかなりうるさく感じる。ドラマの流れを少しぶちこわしている部分もある。説明のために入れているのであればセリフの半分以上は不要である。
 総じてそれなりのドラマという感じもするが、それでも昨今のドラマと比べると内容の密度、テーマ性などは段違いである。多少の古めかしさはあるものの、今見ても十分楽しめる作品である。
 なお「川は泣いている」というタイトルは、主人公の趣味であるカヌーとの関連だが(カヌーに乗っていると日本の川の破壊され具合が身にしみ、川が泣いていると感じるということ)、このテーマはストーリーとは直截結びつかず、なんのためのカヌーの設定かわからない。単に作者が川のことを主張したかっただけなのかと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』
竹林軒出張所『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『玩具の神様 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-07-04 06:47 | ドラマ

『ライスカレー』(1)〜(13)(ドラマ)

ライスカレー (1)〜(13)(1986年・フジテレビ)
演出:杉田成道、河毛俊作
脚本:倉本聰
音楽:宇崎竜童
出演:時任三郎、陣内孝則、中井貴一、藤谷美和子、布施博、ガッツ石松、北島三郎、風吹ジュン、室田日出男、田中邦衛、佐藤慶、三木のり平

b0189364_20471328.jpg青春、出会い、別れ

 倉本聰が『北の国から』で大ヒットを飛ばし一番名前が売れていた頃の作品。『北の国から』と同じフジテレビ作品で、フジテレビも『北の国から』以来の倉本作品ということで、カナダで8カ月間ロケを敢行するという力の入れようだった。残念ながら視聴率は奮わず、フジテレビとしては誤算だったかも知れない。しかし内容は『北の国から』に迫る、あるいは超えると言って良いほどのグレードである。再放送もあまりなかったようで、永らくDVD化されることもなく、なんでこれほどの作品を眠らせておくのか僕には皆目見当が付かなかった。僕は古本のシナリオを買ったりしたが、ともかく世間的にはずっと評価が低かったようである。そういう状況が変わったのが2011年で、DVDがとうとうフルセットで販売された。僕は速攻で入手したが、結局見ることもなく、そのまま野積み状態で今日まで至ったのだった。手に入ってしまうとすっかりそれで満足してしまって見なくなるということはよくあることである。
 放送時に見たときは非常に心に残って、先ほども言ったように倉本聰の最高傑作だと思ったほどだが、今回通しで見てみてその思いを新たにした。主役は時任三郎、陣内孝則、中井貴一で、時任三郎と中井貴一は『ふぞろいの林檎たち』の主役2人だが、まったく異なるキャラクター、まったく異なる関係性を巧みに演じている。陣内孝則はほぼドラマ初登場だが、非常に個性的な役柄を演じていて会心の演技である。初めて見たときは「これ誰?」と思ったほどの存在感。後は概ね倉本ドラマの常連が脇を固めている。北島三郎は特別出演という枠で初回と最終回のみの登場である(回想シーンでたびたび出てくるが)。
 ケン(時任)、アキラ(陣内)という2人の若者が、地元の先輩、次郎(北島)の(カナダでライスカレーの店を始めるから手伝いに来いという)大風呂敷に乗ってカナダまで行ってしまうが、その先輩が失踪していなくなっていたというのが振り出し。このケンとアキラ、高校では野球に明け暮れ英語はからっきし、コミュニケーションにも困る有様で、とりあえず次郎を探したりするが、見つからず、方々をさまようことになる。その後、いろいろな人々と出会い、そして別れを迎える。まさに青春の1ページである。出会いや別れは、彼らの地元、銚子の人々との間でも起こり、カナダ、銚子の二層構造がドラマに重厚さを与えている。
 あちこちに倉本作品らしい恥ずかしい表現も一部あるし、悪ノリのシーンも結構多いが、いろいろな細かい部分にリアリティがあり、それぞれの登場人物に魅力があって、ストーリーに無理がない。そのため、自分を登場人物と同じ境遇に置くという見方ができる。こういう点は、最近のドラマに著しく欠けている部分である。それに最近のドラマみたいにやけに人が死んだりということもない。人の死は、言うまでもなく現実世界では重いものである。ドラマの中であっても軽々しく扱ってしまうと、極端にリアリティがなくなってしまう。人の死はやはり重いものでなければならない。その辺の表現も実に良い。決して完璧なドラマではないが、(特に若い頃の)人との出会いや別れについて思いを馳せることができる作品である。見た後は、良い作品に接した後の爽快感が残る。
★★★★

追記:
 今見ると、当時の日本人のガイジン・コンプレックスが発揮されていて、見ていて痛々しい感じがする。特に時任演じるケンが、英語がわからず終始愛想笑いしているのがはなはだ痛ましい。ただし演技という視点で見れば最高である。

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様 (1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-05-29 06:46 | ドラマ

『玩具の神様』(1)〜(3)(ドラマ)

玩具の神様 (1)〜(3)(1999年・NHK)
演出:石橋冠
脚本:倉本聰
出演:舘ひろし、中井貴一、永作博美、かたせ梨乃、小林桂樹、根津甚八、佐藤B作、美保純、きたろう、ミッキー・カーチス

面白いものが書けていた頃の倉本作品

b0189364_21072968.jpeg 倉本聰がシナリオを書いたNHKのドラマ。
 『安らぎの郷』同様、主人公は脚本家(二谷:舘ひろし)。視聴率競争にばかり明け暮れる昨今のテレビ・ドラマに疑問を感じ始めていて、ドラマ・シナリオを書くことも以前ほどうち込めず、そのせいか締切も遅れがち。そんなとき、ニセモノの二谷が現れ、方々で詐欺行為を働いているという情報が、本物の二谷の元に入る。同時に二谷には妻の不倫騒動まであり、シナリオが書けない二谷はそのエピソードまでドラマ化するなど、なんだかしっちゃかめっちゃかな状態。一方、ニセ二谷(中井貴一)はよろしくやっていて、しかも弟子までとっているという有様。本物の方が何となく冴えないが、このあたりは倉本聰の自虐ネタも入っているのか。そうそう、当然のことながら、この二谷は、脚本家自分が(ある程度)モデルになっている。この頃、実際にニセ倉本聰が現れ、倉本になりすまして詐欺行為を働いていたということで、そのエピソードをシナリオ化したのがこの作品なんである。
b0189364_21073315.jpeg ドラマは主人公周辺、詐欺師周辺が並列で進行し、しかもそれぞれの周辺にいろいろなエピソードが盛り込まれているため、結構長いドラマではあるが、非常に面白く見ていてまったく飽きない。倉本聰もこの頃は、これだけ面白いドラマが書けていたということがわかる。しかもドラマの低レベル化を随所で嘆いていたり、視聴率至上主義のテレビ界を批判していたり、いろいろな主張も盛り込まれている。こういう部分は、ある程度時間が自由になるテレビ・ドラマだからできることで、実にドラマ的な部分とも言える。あまりにいろいろなものが盛り込まれているため、少々雑多な印象もあるが、これもテレビ的で、さほど気にならない。いかにもテレビらしい、ドラマらしいドラマと言えるかも知れない。
 ただし、山田ドラマのような強烈なテーマはなく、見た後で肩すかしを喰らわされたような印象は残る。とは言え、人間の善意や信頼などが最後まで貫かれているため、見た後は気分の良さが残る。そういう点でも「良いドラマ」だと思う。
 キャストはどれも非常に好演で、演出もなかなか見事に決まっている。堺雅人がエキストラ並みのチョイ役で出ていたようだ(おそらくAD役)が、はっきりとは確認できなかった。
第17回ATP賞2000優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『安らぎの郷(ドラマ)』
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-05-27 07:05 | ドラマ

『やすらぎの郷』(1)〜(5)(ドラマ)

やすらぎの郷 (1)〜(5)(2017年・テレビ朝日)
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
脚本:倉本聰
出演:石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、八千草薫、藤竜也、ミッキー・カーチス

まだ5回だから何だが
すっかり枯れてしまっている


b0189364_19290211.jpg 倉本聰の新作ってことで少しばかり期待したが、本当に後ろ向きで枯れきっているという印象のドラマである。
 第5回目までに関してだが、セリフが説明的で、ナレーションも過剰である。しかも設定があまりにも不自然。短編小説とか1時間ドラマだったら耐えられるかも知れないが、これから約3カ月間も付き合うのはちょっと大変そうな気がする。ドラマの中に、先へ先へと進めるだけのダイナミズムがないため(1回あたり12〜13分のドラマだが)見続けるのも苦痛を感じる。
 もちろんまだ5回目だし、今後なんやかんやエピソードが入ってきていろいろと展開するんだろうが、そもそも舞台になっている、テレビ業界人だけが招待されるという(しかも入居者の費用がほとんどかからない)豪華老人ホームの設定があまりにリアリティがなさ過ぎで、その段階でもう見ていてアホらしくなる。なお付け加えると、入居者は(元大女優を含む)元大スターが多く(消息がわからなくなっていた大スターたちが実はここに住んでいたというようなことになっている)、そこにかつてシナリオライターだった主人公が新しく入居してくるというストーリーである。しかもその上、ここにかつてのスターたちが入っていることは世間には完全に秘密にされているという嘘みたいな設定にもなっている(今後つじつまがあわなくなりそうな予感さえする)。
 こういう設定を聞くと、倉本聰の夢想をそのまま描いたのかとも思ってしまうが、こういう設定で話を進めるとなると、スターさんたちの過去の栄光が物語の中心にならざるを得ないような……つまり(作り物の)過去および懐かしさ中心に話を展開することになるんじゃないかと推測されるが、こういうふうに懐かしさが物語の中心に鎮座してしまうと、本当に精気が無い抜け殻のような枯れたドラマになるんじゃないかというふうに危惧する。今後精気が盛り込まれるかどうかがこのドラマの唯一の注目点だが、本当のところあまり関心が湧かない。
 キャストは超豪華だし、石坂浩二と浅丘ルリ子の共演なんかもう二度とないだろうから、それなりに見所もあるんだろうが、こんな枯れつくしたような作品が世間に受け入れられるのか、そのあたりは疑問である。「シルバータイムドラマ」などと名うっているんで年寄り向けなんだろうし、初回放送で視聴率が健闘していたなどという話も聞くが、個人的には大して興味が湧かず、これからも見続けるかどうかはわからない。
★★☆

追記:
 ドラマでは登場人物の背景(出演作品とかその人のエピソードとか)がいろいろ出てきて(ほとんどはナレーションで説明される)、こうやって登場人物の背景を設定するのが倉本聰のシナリオ流儀らしく、つまりドラマに直接関係ない人物史を描き、それを随時拾い上げて使うというのが倉本流らしいんだが、これがもうとてもわざとらしくてうるさい感じがするのである。倉本作品を見ると、ときどき居心地の悪さを感じるんだが、おそらくこういうのが原因なんだろうな……ということに今回やっと気が付いた。物語の表に出てこない部分はないことにして良いんじゃないかと思うし、むしろそういう部分の処理の仕方が文学やドラマの醍醐味であり面白さではないかというのが僕の考え方である。

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-04-09 07:28 | ドラマ

『赤ひげ』(19)(ドラマ)

赤ひげ 第19回「ひとり」(1973年・NHK)
演出:中山三雄
原作:山本周五郎
脚本:倉本聰
出演:小林桂樹、あおい輝彦、仁科明子、黒沢年男、浜木綿子、小鹿敦、柳生博

落ち着きのある『赤ひげ』

b0189364_20364455.jpg 山本周五郎の『赤ひげ診療譚』のドラマ化作品。『赤ひげ』は過去何度も映画化、ドラマ化されているが、これは72年から73年にNHKで全49回に渡って放送されたドラマで、おそらく『赤ひげ』のドラマ化では最高のものと言えるのではないかと思う。「赤ひげ先生」に小林桂樹、「安本」にあおい輝彦という配役で、奇を衒ったところもなく端正に仕上げられたドラマである。小林桂樹の「赤ひげ先生」もなかなか良いものであるが、どことなく同時期に製作された映画(およびドラマ)『日本沈没』の田所博士を思い出させるような人物像であった。
 脚本は倉本聰だが、ドラマの内容自体は、時代劇でありながら結構現代風。「権利」などという言葉が出てきたりして、思わずツッコミを入れたくなるような部分があちこちにあるが、時代考証を脇に置いて純粋にドラマとして見れば、割合よくまとまっている。『赤ひげ』と言えば黒澤明の映画が思い出されるが、あの映画みたいに気恥ずかしい演出があるわけではないので、安心して見ていられる。
 なおこのNHK版『赤ひげ』だが、実はほとんど映像が残っておらず、唯一公式に残っていたのがこの第19回である。患者が求める限り医者は自分の生活より患者を最優先すべきというテーマの1本で、芸術祭に参加したせいかこの1本だけが残されている。他の作品が残っていないのは、当時カラービデオが貴重だったために消去して繰り返し使ったためだろうと推察されるが、ただ放送された映像を録画したものが一部で残っているらしいので、他の回もそのうち出回るかも知れない。この第19回についてはDVD化もされており、割合目に触れやすいんではないかと思う。
第5回テレビ大賞優秀番組賞、第28回芸術祭優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『それぞれの秋 (1)-(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2017-03-04 07:36 | ドラマ

『日曜劇場 幻の町』(ドラマ)

日曜劇場 幻の町(1976年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
出演:笠智衆、田中絹代、桃井かおり、北島三郎、室田日出男

b0189364_8315139.jpg「幻」尽くしのドラマ

 東芝日曜劇場1000回記念ドラマで、同時に評価も高いある意味「幻」のドラマである。田中絹代にとっても最後の主演作で、本人がこの脚本をいたく気に入って、出演に消極的な笠智衆を自ら説得したというエピソードもある。
 戦前樺太の真岡という都市に住んでいた老夫婦(笠智衆、田中絹代)が、記憶を頼りに真岡の地図を作ることをライフワークにしていて、その地図を完成させるため、かつて樺太在住だった知人を訪ね歩く旅をしているという、かなりユニークな背景を持つストーリーである。老夫婦は、小樽にかつての知人の話を聞きにやって来たが、その知人はすでに亡くなり、その肉親の若い女性(桃井かおり)にそのあたりの事情を聞くというシーンから話が動き出す。老夫婦の過去や、若い女性の今の生活、それぞれの思いが絡み合い1本のドラマになるという寸法である。
b0189364_8321636.jpg 老夫婦の人生がテーマなんだろうが、老夫婦がキスするなど話がちょっと妙な方向に進んで、このあたりからあまり共感できなくなっていった。むしろ小樽の若いカップル(桃井かおりと北島三郎)のエピソードの方が、ちょっと『前略おふくろ様』を連想させるようなもので、リアルで面白かった。旅をする老人が若いカップルと関わり合うドラマといえば、山田太一の『冬構え』を思い出すが、テーマのリアルさという点では『冬構え』に軍配が上がる。この『幻の町』は、詩的なというか抽象的な方向に流れすぎて、なんだか訳がわからなくなってくる。ちょっと「幻」みたいなストーリーになっているのは作者の意図だかどうだかわからないが、世評は高くとも、どちらかと言うと(倉本作品にありがちな)やり過ぎで企画倒れの部類に入るドラマのような気がする。
第31回芸術祭優秀賞、1976年度芸術選奨文部大臣賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
by chikurinken | 2016-12-24 08:33 | ドラマ

『日曜劇場 りんりんと』(ドラマ)

日曜劇場 りんりんと(1974年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
音楽:冨田勲
出演:田中絹代、渡瀬恒彦、原知佐子、黒木進、大滝秀治

b0189364_847113.jpg現代版楢山節考

 倉本聰脚本、北海道放送製作の日曜劇場。
 東京で同居していた(と思われる)老いた母(田中絹代)をフェリーで北海道の老人ホームに送り届ける息子(渡瀬恒彦)の話。母は、少しばかり認知症の症状も出ているようだが、基本的にこの息子、およびその兄弟姉妹は母を老人ホームに入れることには反対で、ずっと同居したいと思っている。ただ母の方が自ら知り合いの老人ホームへの入居を勝手に決めたため、しようがなく母を送ることになったという設定である。
 こういうストーリーから容易に『楢山節考』との類似点が思い付くが、テーマもほぼ一緒で、年老いた親を持つ身としてはものすごく身につまされる。
 この作品を書いた頃は倉本聰自身も若く、主人公の方に近いし、また母親に対して似たような経験を持っているという話なので、あくまでも親を送る側の視点だが、老いに対して非常に厳しい見方をしていると言える。たとえば母親が息子に「私が生きていて良いの?」などとサラリと言うセリフなど、これはやはり子供側の視点としか思えない。子供側にとっては、言われると恐ろしいリアリティのあるセリフかも知れないが、老人側にとっては、思考がそういう方向に行くことは(自分自身が年を取ってきた今となっては)あり得ないように思える。このあたりは山田太一が書いた「老い」三部作(竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』を参照)と同様、老いに対して見方がシビアすぎるように感じる。まだまだ自らの老いを現実的に捉えていない者の見方であるように思う。もちろんだからと言って作品の価値を損なうことはなく、特に送る側のいろいろな思いが濃密に表現されていて、そのあたりは共感できる部分である。このドラマも佳作と言って良い。
 音楽は冨田勲で、『田園交響楽』と同じく、『惑星』風のシンセサイザーを駆使していて、効果を上げている。序盤のシーンは、セリフもなく周囲の雑音だけが流れる(少々うるさく感じるが)というなかなか斬新な音使いも見られる。小野武彦が黒木進という役で登場しているのも別の見所かな(細かったため、気が付かなかったけど)。なおタイトルの「りんりんと」は、三好達治の「乳母車」という詩の一節「轔々と私の乳母車を押せ」から取ったもの(ドラマの冒頭で紹介される)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 幻の町(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-12-23 08:47 | ドラマ

『日曜劇場 田園交響楽』(ドラマ)

日曜劇場 田園交響楽(1972年・北海道放送)
演出:守分寿男
原作:アンドレ・ジッド
脚本:倉本聰
音楽:冨田勲
出演:木村功、仁科明子、山本亘、久我美子、下条正巳

音楽が特に目を引くドラマ

b0189364_853117.jpg アンドレ・ジッドの『田園交響楽』を翻案したドラマらしい。『田園交響楽』自体読んだことがないのでよく分からないが、原作にかなり近い話のようだ。
 盲目の少女(仁科明子)が手術を受けて、視力を取り戻すところから話が始まる。彼女の育ての親である牧師(木村功)と妻(久我美子)、息子(山本亘)は、視力を回復した少女を温かく迎えるはずだったが、牧師が少女に抱いていた恋愛感情が視力回復をきっかけとして家族の間で明らかになったため、嫉妬やなんやかんやで家族の間にややこしい問題が起こるというストーリー。
 ストーリー自体はやや大げさで芝居がかっていて、個人的にはあまり好みではないが、1時間ドラマとして考えるとなかなか意欲的な作品ではある。音楽は冨田勲が担当しており、後の同氏の作品『シンセサイザー 惑星』を思わせるようなシンセサイザー音楽が随所に散りばめられていて、こちらも非常に意欲的である。当時冨田はシンセサイザーを購入したばかりで、(このドラマの製作年である)1972年という年はおそらく実際に音楽製作にシンセサイザーを使用できるようになって間もない頃ではないかと思う。冨田勲がシンセサイザー音楽の第一人者であり、彼のごく初期のシンセサイザー作品が使用されたドラマであることを考えると、このドラマは現代音楽史の視点から見ても貴重である。また他に岡林信康の「私たちの望むものは」が随所に流されていて、こちらも目を引く。地味だが、あちこちに見所があるドラマである。ただしやはりストーリー展開は作りすぎの感じがして、あまりいただけない。もっともこれは原作に由来するもののようだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ナマ冨田勲が出た!』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 幻の町(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-12-22 08:07 | ドラマ

『日曜劇場 ばんえい』(ドラマ)

日曜劇場 ばんえい(1973年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
音楽:冨田勲
出演:小林桂樹、八千草薫、大滝秀治、中村たつ、中村まなぶ

回想を交えた、とある1日の風景

b0189364_737874.jpg タイトルの「ばんえい」とは、輓曳競馬(サラブレッドではない作業馬が1トン近くの荷橇をひいて、砂地の直線200メートルを走る、北海道独特の競馬)を表す。年老いた作業馬が若い馬たちと競って走る姿に主人公の中年男(小林桂樹)が自身を投影するなど、これがドラマの重要なモチーフとして活用されている。
 主人公は、役所勤めを長年続ける不器用な男で、家庭をないがしろにすることや家族に当たり散らすことを家族から暗に責められ、しかもその後高校生の息子に組み敷かれて、その上妻(八千草薫)に助けてもらうという(本人にとって屈辱的な)経験をして自身の衰えを感じるようになる。その一方で自分の来し方にそれなりの思い入れがあり、それを簡単にないがしろにすることはできない。「まだまだ俺だって」という気持ちが強いのである。そんな男のある1日の話がこのドラマのストーリーで、役所をずる休みして妻と輓曳競馬を見に行くというのがストーリーの柱になる。例によって間にさまざまな回想が挿入されるという、倉本日曜劇場の常套手段が使われる。テーマが明瞭であり、これも佳作と言って良い。
 出演は小林桂樹、八千草薫の他、倉本作品常連の大滝秀治が登場。息子役は中村まなぶという少年である。この少年であるが、どこかで見た顔だと思っていたら、後の中村梅雀であることが判明した。道理でね。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 幻の町(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-12-21 07:37 | ドラマ

『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部』(ドラマ)

日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(1979年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
出演:八千草薫、池部良、下元勉、桜むつ子、大竹しのぶ、佐々木すみ江、三田村邦彦

女は無神経な言葉で男を傷つける

b0189364_18334371.jpg アラスカのアンカレッジに住んでいる中年女性、サエコ(八千草薫)が、アンカレッジ空港でかつての恋人、ゴロウ(池辺良)を見かけ、それをきっかけに再び交流が始まるというストーリー。ただの恋愛ドラマかと思っていたら、2人の過去に確執があったという話。
 第一部、第二部の二部構成になっていて両方合わせると2時間枠になるため、ちょっとした映画と考えることもできる。第一部はほとんどアンカレッジが舞台、第二部はほとんど小樽が舞台になるなど、同じ倉本作品の『ライスカレー』を思わせるような構成である。
 第二部では舞台が小樽に移り、ゴロウがサエコに傷つけられた過去が明らかになる。同時にゴロウの娘(大竹しのぶ)と恋人との関係にも似たような関係性が出てきて、つまるところ女の気安い無神経な言葉がどれほど男を傷つけるかというテーマ(だと思う)に収束していくという仕掛けである。他にも仕事仕事で家族を顧みない、しかも上司の目ばかりを気にする当時の日本人サラリーマンの姿があぶり出されたりもする。
 かつてのメロドラマにつきもののすれ違いもあちこちにあって、恋愛ドラマとしてもそれなりによくできている。バックに流れるブラームスの交響曲3番第3楽章(映画『さよならをもう一度』で使用されたもの)も雰囲気を盛り上げている。偶然に頼り過ぎているのがドラマとしては少々難。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 幻の町(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2016-12-20 06:32 | ドラマ