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竹林軒出張所

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タグ:ドキュメンタリー ( 528 ) タグの人気記事

『島の命を見つめて 豊島の看護師・うたさん』(ドキュメンタリー)

島の命を見つめて 〜豊島の看護師・うたさん〜(2015年・RSK)
メッセージ RSK地域スペシャル

日本全国の未来予想図

b0189364_20263799.jpg かつて産廃の不法投棄で揺れに揺れた瀬戸内海の豊島。その後、産廃問題は一応の決着を見て、現在では芸術の島として観光客を集めているらしいが、一方で急速に進行しているのが過疎の問題である。島の人口はいまや900人、その多くは高齢者で、日本の高齢問題の縮図のような様相を呈している。
 学生時代そんな豊島に産廃問題の調査で訪れた小澤詠子さん(通称うたさん)という女性が、豊島をいたく気に入り、その後住み続けるようになった。同時に、お世話になった老人たちの役に立ちたいと考え、その後看護師の資格まで取った。現在では豊島に居住しながら、島のお年寄りたちの医療ケアを担当している。
 島では週5日、小豆島の病院から医師が通い、診療所が開いている。診療所が開いている間、うたさんは医療行為に当たっているが、診療時間が終わった後は、島のあちこちを巡って一人暮らしの老人たちの家を訪問する。老人たちに変わった様子がないか確かめるためである。それでも、高齢化が進んでいるこの島では、老人が死んでいきいなくなるという現状がある。そのため、島の住民にとって死は非常に身近である。そういうこともあってか、超高齢の老人たちの中には、早く死にたいなどと真顔で口にする人もいる。うたさんは「この島は生きあい死にあう場所」と語る。
 現在、出張医療は週5日行われているが、これも病院側の経費の問題もあって、週2〜3回に減らされる可能性があるらしい。いつも出張で豊島に来ている医師は、このような現状を「医療崩壊の縮図」と言う。地方の医療が切り捨てられる現状がここにあり、全国の医療問題をこの地が先取りしているということなのだ。
 過疎、医療、介護などのさまざまな問題が凝縮したこの地域で、今も医療に関わるうたさんらの医療関係者は実に見上げたものだが、やがて日本全土でこういった状況が出てくると思うと、無力感ばかりが漂う。実際これはかなり由々しき事態なのではないだろうか。少子高齢化のなれの果てということになるのか。
 声高に叫びはしないが、強烈なメッセージを発するドキュメンタリーで、その価値を物語るように数々の賞を受賞している。僕自身も受賞作品ということで注目したのであるが、そういった賞に値するだけの素晴らしい秀作ドキュメンタリーであると感じた。
「地方の時代」映像祭2016グランプリ、ギャラクシー賞報道活動部門大賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『秩父山中 花のあとさき ムツばあさんの秋(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『地方発ドキュメンタリー(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-12-05 07:26 | ドキュメンタリー

『龍馬 最後の30日』(ドキュメンタリー)

龍馬 最後の30日(2017年・NHK)
脚本:相沢友子
出演:新井浩文、伊藤淳史、宇梶剛士、苅谷俊介、筒井道隆
NHK総合 NHKスペシャル

b0189364_20154270.jpg安いドラマ

 坂本龍馬が、暗殺される1カ月前に福井藩家老、中根雪江に出した手紙が発見された。それに基づいて、坂本龍馬が暗殺されるまでの1カ月間に何をしていたか、なぜ暗殺されたかについて大胆に推測し、ドラマ化したのがこの番組。
 端的に言ってしまえば、坂本龍馬が薩摩、長州、幕府を合体させ、あわせて福井藩主、松平春嶽をトップに据えて、新しい合議体制を作ろうと奔走していたということで、それを土佐藩主、山内容堂が不快に思い、龍馬の暗殺を指示したという内容である。しかもその計画には、坂本と一緒に殺された中岡慎太郎も一枚絡んでいたという。
 事実はまだ判明していないので話半分で見れば良いわけだが、どうも幕末史の世界では、坂本龍馬を必要以上に持ち上げる風潮があって(おそらく司馬遼太郎の『龍馬がゆく』以来の風潮なんだろうが)、このドラマも同じように、坂本龍馬が近代政治を見据えていたかのような扱いになっている。そういう点で、少々あほくさく感じてしまう。もういい加減、龍馬礼賛をやめたらと思うのは僕だけか。
 また、この番組で龍馬が構想したとされている体制は、明治政府で当初から採用されており(ただし総裁は松平春嶽ではなく、その後たびたび制度は改変される)、明治政府の中心的な人々のいわば共通理解だったと考えることもできる。これを龍馬が先取りしていたと見なすのはどうかと思う。
 全編ドラマ仕立てで、NHKスペシャルとしては珍しい構成だが、こういった人気者を素材に使うと視聴率が集まるんだろうなーなどと考えながら見ていた。ただ、坂本龍馬役の新井浩文が何だかパッとせず、随分、華のない龍馬になってしまった。
 この番組もそうだが、最近のNHKスペシャルは当たり障りのないものばかりになってきて、実につまらなくなった。現政権のNHKに対する圧力が功を奏したのかと勘ぐってしまう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『幕末史(本)』

by chikurinken | 2017-12-03 07:15 | ドキュメンタリー

『総書記 遺された声』(ドキュメンタリー)

総書記 遺(のこ)された声 日中国交45年目の秘史(2017年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

b0189364_18283409.jpg胡耀邦の足跡

 1980年代に中華人民共和国共産党の総書記に収まっていた胡耀邦は、作家の山崎豊子と3回に渡って対談しており、その様子が録音されたテープが残っていることが判明した。その録音から、胡耀邦の人となり、思想を探っていこうという歴史ドキュメンタリー。
 胡耀邦は、鄧小平の改革開放路線を踏襲し、中国経済の発展に尽くし、同時に国内の民主化にも尽力した。しかし保守派の元老から批判を受け、1986年に失脚。国内の「過剰な」民主化と親日的な政策が保守派の反感を買い、その責任を取らされたということである。やがて1989年に心労がたたったせいか死去するが、その民主的な態度が若い世代に評価されていたためか、各地で学生による胡耀邦追悼集会が行われ、中でも天安門前広場では10万人が集まった。やがて集会は民主化要求運動へと転換していき、これに不安を感じた当局は武力で弾圧することに踏み切る。これが(中国では存在しないことになっている)世に言う天安門事件である。以後、中国は急速に反民主化路線に舵を切り、国内の愛国教育を重視する方向に転じていく。結果、戦時中の日本軍の行動に対する敵意を若い世代に植え付けることになったのが、その後の中国の反日機運の高まりに繋がっていった。その意味で胡耀邦の死というのは、日中関係史において1つの画期だったとも言える。
 胡耀邦自身は、若い頃、文化大革命で若者に「走資派」というレッテルを貼られ、つるし上げられて自己批判させられ、しかもその後、農村で労働生活に従事させられたという。このような苦労人であるだけに、人格的にも思想的にもバランスが取れていた御仁のようだが、そういう人が保守勢力に潰されてしまうというのは、世界中でよく起こる話。とは言え、胡耀邦体制がそのまま10年、20年単位で続いていたら、中国政府の有り様も日中関係ももっとまともになっていたことが考えられるし、北朝鮮問題も解決していた可能性がある。それだけに彼の死は、東アジア全体にとっても画期であったと言えるのではないか。
 彼が残した言葉が奮っている。「愛国主義を提唱しているのに世界各国の人々に友好的でないなら、これは愛国主義とは言えません。国を誤るという「誤国思想」「誤国主義」です。皆さんには「誤国主義」を防いでほしいと思います」。日本にもはびこる愛国バカに聞かせてやりたい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『中国はなぜ「反日」になったか(本)』
竹林軒出張所『家族と側近が語る周恩来 (3)(4)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『文化大革命50年 知られざる“負の連鎖”(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-12-01 07:28 | ドキュメンタリー

『日中“密使外交”の全貌』(ドキュメンタリー)

日中“密使外交”の全貌 〜佐藤栄作の極秘交渉〜(2017年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

日中国交正常化の「裏」話

b0189364_18184717.jpg 1972年、発足したばかりの田中角栄政権が中華人民共和国との間で電撃的に日中国交正常化交渉を行い、日中共同声明で国交正常化を実現した。
 これまで田中角栄政権単独の業績だとばかり思われていたが、実はその前の佐藤栄作政権から正常化交渉は始まっており、ゴールに近づいていたが、佐藤栄作が首相を退任したため、後の政権に(事実上)引き継いだというのが真相だ、とするのがこのドキュメンタリー。考えてみれば発足して2カ月の政権が、ずっと難題だった外交交渉をいきなりまとめ上げるなどということはできるはずもなく、十分に納得できる話ではある。
 このドキュメンタリーでは、さまざまな手がかりを元に、その情報源を探り出し、当事者にインタビューを試みて、真相を探ろうとする。ちょっとしたミステリー風の構成になっており、スリリングである。
 で、判明した事実は、佐藤栄作首相が極秘裏に(党内に「親中華民国、反中華人民共和国」という政治家が多かったため)、江鬮真彦(えぐちまひこ)という中国政府要人とコネのある人間を香港に派遣し、大陸中国との交渉をすでにかなりの段階まで進めていたということである。実際、この江鬮氏の活動は、佐藤首相の親書を周恩来首相に送るというレベルにまで進んでいた。紆余曲折の末、中国政府もこれに応え、いよいよ正常化交渉が始まりそうという段階になって、佐藤が退陣を決めたため、次の政権担当予定者である福田赳夫にこの仕事を引き継いだというのが真相らしい。ところが次期政権を取ったのは福田ではなく田中角栄だったため、話が少々ややこしくなる。ただ田中派の人間も同じ時期に中国政府要人と会って交渉していたらしいので、中国側は実際のところさまざまなパイプを使って日本側との関係を模索していたというのが実情のようだ。財界が長年かけて中国との間にパイプを構築してきたのも周知の事実で、佐藤政権の活動もそういった関係改善活動の一つだったということになる。とは言うものの政権担当者が実際に動くことで、関係改善が一気に進展するということも十分想像が付くところである。そういった点で、佐藤政権の対中活動も評価に値すると見ることができる。
 結論はあまりセンセーショナルではないが、謎を探っていくという見せ方が非常にうまく、しかも妙にケレンに走ったりすることもなく、我々の取材の結果を見てくれという非常に正攻法な見せ方が印象的であった。2時間弱の番組だが、途中で飽きることもなく、ドキュメンタリー番組として非常に質が高いと感じた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日中外交はこうして始まった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『家族と側近が語る周恩来 (3)(4)(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-11-29 07:18 | ドキュメンタリー

『健さん』(映画)

健さん(2016年・ガーデングループ、レスぺ)
監督:日比遊一
出演:マイケル・ダグラス、マーティン・スコセッシ、ポール・シュレイダー、ジョン・ウー、降旗康男、澤島忠、山田洋次(ドキュメンタリー)

b0189364_20161530.jpg高倉健の追悼映画

 高倉健の追悼ドキュメンタリー映画。生前、高倉健と交流のあった人々によって、高倉健に対する賛辞やエピソードなどが語られ、それをつないだ作品である。
 登場する人々は、マイケル・ダグラス(『ブラック・レイン』で共演したハリウッド・スター)、マーティン・スコセッシ(個人的に付き合いがあったそうだ)、ポール・シュレイダー(『ザ・ヤクザ』の脚本家、『Mishima』で高倉健を起用する話が進んでいたが高倉周辺の反対で結局破談になった)、ジョン・ウー(『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイク版を製作中)、降旗康男(『駅 STATION』などの監督)、山田洋次(『遙かなる山の呼び声』などの監督)などの映画製作者や、梅宮辰夫、八名信夫、中野良子らの俳優、高倉の実の妹、元付き人ら。最初、『単騎、千里を走る。』で高倉健と共演していた中国人俳優がさも案内役であるかのように登場するが、その後、所々に出て来はするものの、「案内役」は立ち消えになったかのように存在感が薄くなってしまう。
 高倉健のフィルモグラフィみたいなものが出てくるわけでなく、高倉健がどんな素敵な人だったかとか、プロ意識が高かったとか、賛辞ばかりが語られるドキュメンタリーで、少しもの足りないが、好きな人が見る分にはこれで良いんじゃないでしょうかという内容である。
 意外だったのは、八名信夫によって語られる「高倉健が現場に始終遅刻してきた」というエピソードで、遅刻するような役者が周囲にいたら「それはちょっと違うんじゃないすか」ぐらいのことを言いそうなイメージが高倉健にはあったが、当の本人が、朝が弱かったということで遅刻が多かったらしい。ただし「高倉健」ということで、現場では概ね許されていたらしいが。
第40回モントリオール世界映画祭ワールドドキュメンタリー部門最優秀作品賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『追悼 高倉健』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『遙かなる山の呼び声(映画)』
竹林軒出張所『単騎、千里を走る。(映画)』
竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』
竹林軒出張所『ザ・ヤクザ(映画)』
竹林軒出張所『君よ憤怒の河を渉れ(映画)』
竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』

by chikurinken | 2017-11-27 07:16 | 映画

『海に消えたプラスチック』(ドキュメンタリー)

海に消えたプラスチック(2015年・仏VIA DECOUVERTES)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

マイクロ・プラスチックは次の「温暖化」か?

b0189364_18161191.jpg 適性に処理されないプラスチック・ゴミが海に大量に流れ出ていることは周知の事実で、現実にゴミ・ベルトと呼ばれる海域には大量にゴミが流れ込んでいる。しかし、地上のプラスチック・ゴミの生成量から考えると、このゴミ・ベルトで見られるゴミは余りにも少なすぎる。では、あるはずだが目に映らないゴミはどこに行ったのか。そういう視点で作られたドキュメンタリーがこれである。
 まず考えられるのは、現時点で人間が容易にアクセスできない海底に大量に溜まっているという状況である。次に考えられるのは、プラスチック・ゴミが細かく砕けて(マイクロ・プラスチック)目に映りにくい形になって海中に漂っているという状況。どちらも可能性が高いが、特に後者については、ある程度状況が把握されるようになっている。つまりかなりの量のマイクロ・プラスチックがすでに存在し、またかなりの量のマイクロ・プラスチックが海洋生物の体内から検出されている。これが食物連鎖を通じて最終的にクジラやヒトの体内に蓄積されることになるのでは……というのがこのドキュメンタリーの主張である。
 なおこのマイクロ・プラスチック、生物の体にどのような影響を及ぼすかまだ完全に判明しているわけではない。したがって、(地球温暖化と同様)ある時点で突然問題化して、人間が右往左往するというような状況も十分起こりうるというわけである。また海底に溜まっていると考えられる大量のプラスチックが今後問題化する可能性だって十分ある。とりあえず無駄なプラスチックは使わないようにする、プラスチック・ゴミは適正に処理する、ぐらいしか対策がないのがじれったいところである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『廃棄家電の悲しき行く末(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-11-09 07:15 | ドキュメンタリー

『ダウン症のない世界?』(ドキュメンタリー)

ダウン症のない世界?(2016年・英Dragonfly Film & Television)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ダウン症胎児の中絶について考えさせられる

b0189364_18062411.jpg 現在、妊娠中に出生前診断を行うことで、胎児がダウン症かどうかが事前にわかるようになってきている。ダウン症であることがわかれば中絶して子どもを産まない選択ができるということなんだが、こうやってダウン症を100%この世から排除することが良いことなのか、今存在しているダウン症の人々は存在してはならない存在なのか、そういうことを問いかけるドキュメンタリー。
 番組の進行役は、ダウン症の息子を持つ女優のサリー。彼女は、ダウン症の息子、オリーについて、ネガティブな感情はまったくなく、この息子がいること自体、幸福なことだと感じている。そのため、出生前診断でダウン症の胎児を中絶するという傾向に対して違和感を感じている。
 こういう状況で、出生前診断の権威の医師や、ダウン症の診断が出た人たちの相談施設のトップなどに話を聞く。ダウン症(ひいてはダウン症患者)が存在すべきでないものであるかのように話す人々もおり、それは(ダウン症の子どもを持つ)彼女にとって、耐えがたく賛同できない話だったりする。本当にダウン症はなくすべき悪なのかという問いを発し、ダウン症の現実(一例ではあるが)も紹介していくという、興味深いが少々重い内容である。ダウン症児の現在の教育体制や、社会で活躍するダウン症の人々も紹介する。ダウン症についてほとんど知識がなかったため、目が見開かれたような気がする。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (6)(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-11-07 07:06 | ドキュメンタリー

『撮影監督ハリー三村のヒロシマ』(ドキュメンタリー)

撮影監督ハリー三村のヒロシマ カラーフィルムに残された復興への祈り
(2015年・WOWOW)
WOWOW ノンフィクションW

『人情紙風船』の撮影監督の秘話

b0189364_19213461.jpg 映画カメラマンの三村明が、敗戦直後、占領軍の依頼で広島の状況をカラー撮影していた。その映像、それから三村明の経歴にスポットを当てるドキュメンタリー。
 三村明は、映画黎明期、ハリー三村という名前で、ハリウッドで撮影助手を務めていた。やがてユニオン(組合)のストライキなどで仕事を失い、日本に戻って撮影監督の仕事に就く。山中貞雄監督の時代劇『人情紙風船』、黒澤明の監督デビュー作『姿三四郎』などが彼の代表作で、ハリウッドで仕入れた技術は、日本の映画人にも重宝されたという。
 その三村が、原爆投下後の広島を撮影していた。そしてその映像は、広島の惨状を生々しく伝えるだけでなく、人に対する優しさにあふれたものだった、というのがこのドキュメンタリーの趣旨である。
b0189364_19213881.jpg WOWWOW製作のドキュメンタリーで、数々の賞を受賞した、評価の高い作品ということである。あまり知られていない事情をドキュメンタリーにまとめたという点で評価に値するしなかなか面白い作品であったが、強烈なインパクトみたいなものはあまりない。
 『人情紙風船』については、全体的にぼやけたような映像が多いなと思った記憶があるが、あれがハリウッド仕込みだったというのが新しい発見か。とは言えあの映画については、スフマートというのかとにかくぼやかしが多かった印象がいまだにあり、個人的には少しやり過ぎだと思っている(映画は非常に良かったが)。三村明についてはその程度の思い入れしかないため、広島の秘蔵映像だと言われてもあまり感慨が湧かなかったというのが正直なところである。
2016年第44回国際エミー賞芸術番組部門、日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『きのこ雲の下で何が起きていたのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『一番電車が走った(ドラマ)』
竹林軒出張所『銀座カンカン娘(映画)』

by chikurinken | 2017-11-06 07:20 | ドキュメンタリー

『行 比叡山 千日回峰』(ドキュメンタリー)

b0189364_20494870.jpg行 比叡山 千日回峰(1979年・NHK)
NHK総合 NHK特集

超人阿闍梨ができるまで

 京都の比叡山に千日回峰という修行がある。1日40km(〜84km)の距離を1000日間に渡って踏破するというもので、途中、9日間飲まず食わず眠らずに過ごす「堂入り」という行まである。鉄人レースどころではない過酷さで、しかも途中で行を続けられなくなったら死ね!と言われているらしく、誰にでも挑戦できる代物ではない。実際に、比叡山でもそれなりの実績を持っている人でなければこの行を行うことができないのであるが、酒井雄哉という高僧が1973年にこの行を達成している。そして、その様子を紹介するのがこのドキュメンタリーである。
 ただしこのドキュメンタリーでは、堂入りまでは紹介されるが、この行が完了する最後の最後まで追っているわけではない。そういう点はやや中途半端で、どうなったかが大変気になるところだが、実際にはこの後無事に行を完遂させ、しかもなんとその後さらにもう一度この行を達成しているという。この(千日×2回の)二千日回峰を達成したのは過去に2人しかおらず、まさに歴史的な快挙だったのである(行われていたことすら知らなかったが)。このあたりは、今回このドキュメンタリーを再放送した「NHKアーカイブス」でしっかりと紹介されていた(僕はこちらを見た)。
 この酒井雄哉氏、堂入りを完遂した時点で阿闍梨になったわけだが、実は出家するまで結構複雑な人生を送っている。戦時中は予科練におり、戦後は事業に失敗して借金に追われる生活を送る。しかも妻が自殺するという憂き目にも遭っている。そういういきさつがあって39歳のときに得度して叡山に入ったのである。親鸞しかり西行しかりで、大きなことを成し遂げる人には、やはりそれを導き出すための動機が必要ということか。
 ともあれ、こういった現場はなかなか目にすることはできず(なにしろ天台宗は密教だし)、これが映像に収められたのは貴重である。なんせ「堂入り」中の堂の中の様子まで小型カメラで収録されている。このきわめて貴重な映像が、今でもDVDで見られる状態になっている(要するにこのドキュメンタリーのDVDが発売されている)というのも素晴らしいことではないか。超人が誕生する瞬間に立ち会えるというものである。こういったまったく知らない世界を紹介してくれたNHK特集に拍手パチパチである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『大峯千日回峰行 修験道の荒行(本)』
竹林軒出張所『NHK特集 永平寺(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『親鸞 (1)〜(3)(本)』

by chikurinken | 2017-10-22 07:49 | ドキュメンタリー

『人生フルーツ』(ドキュメンタリー)

b0189364_16581126.jpg人生フルーツ(2016年・東海テレビ)
監督:伏原健之
撮影:村田敦崇
ナレーション:樹木希林

ロハスな夫婦の贅沢な老後

 建築家夫婦(津端修一氏、90歳、妻、津端英子さん、87歳)のロハスな生活を追うドキュメンタリー。
 2人が住む家は夫の修一氏が設計したもので、家の目の前には、自ら広葉樹を植えて作った雑木林と庭がある。またそのそばには畑もあり、その畑で取れた作物を自ら料理したり加工したりして、のんびりした生活を送る老夫婦。見ていて大変好ましい感じだが、夫の修一氏は少しわがままなように見え、それに合わせている妻の英子さんの方がかえって魅力的に映る。
 彼らの家は修一氏が設計した団地の一郭にあるが、敷地はなんと300坪、生計は月36万円の年金でたてている。彼らの生活自体は楽しそうで、うらやましさもあるが、ましかし、こちらには300坪の土地も月36万円の年金もないので、雑木林を作る余裕もないし、それどころか必死に働かなければならない。こういうロハスな生活を送る余裕は、僕みたいな庶民にはないのであった。
 このドキュメンタリー、東海テレビ作で、今年あちこちの映画館で劇場公開された作品である。その際僕は見逃したが、今回NHK-BSの『ザ・ベストテレビ』で放送されたため、それを見ることができた。優れたドキュメンタリーを作る東海テレビの作品ではあるが、今回見た感じだと、劇場で金を出して見るほどではなかったなと思う。テレビで見ることができて(金を払わずに済んで)満足である。
文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『裁判長のお弁当(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-10-21 06:57 | ドキュメンタリー