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竹林軒出張所

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『長良川ド根性』(ドキュメンタリー)

長良川ド根性(2012年・東海テレビ)
監督:阿武野勝彦/片本武志
撮影:田中聖介
ナレーション:宮本信子

死にかけた川と土着の民の物語

b0189364_20102559.jpg 「その手は桑名の焼きハマグリ」で有名な三重県桑名市の、ハマグリ・シジミ漁師の戦いの物語。
 この地は、長良川、揖斐川、木曽川の三川が流れる地域で、特に長良川、揖斐川ではハマグリ、シジミ漁が盛んに行われていた。あの河口堰ができるまでは。
 長良川の河口堰は、すでに必要性もなくなっているにもかかわらず官僚のゴリ押しで無理矢理に作られたという施設で、当時相当な反対運動があったにもかかわらず、建設を強行し、1995年に強制的に運用を始めたといういわく付きのものである。当時から環境に対して深刻な影響を与えるのではないかと危惧されていたが、案の定、河口堰周辺はヘドロが溜まって生物が住めなくなってしまった。かつてはハマグリの漁場だったにもかかわらずである。この河口堰の運用に最後まで反対したのが赤須賀漁協で、折れてしまった他の漁協からもしきりに叩かれたりして、結局は河口堰の運用を認めることになるのだが、その際、その見返りとして、建設省に対して近隣地域に干潟を作らせることに同意させるなど、生き残りをかけた現実策を選択した団体である。現在では、河口堰周辺は漁ができなくなってしまったが、このときに作った干潟は良質な漁場になっているというのだから、彼らの先見性は注目に値する。
 このようにおろかな行政に翻弄されながらも、自らの生活を守っていく漁師の戦いを描くのがこのドキュメンタリーである。その後、河口堰は愛知県知事の意向で、実験的に堰を開放することになるが、その際も漁師の意向はほとんど反映されず、勝手に行政が話を進めていく。その構図は、無用の長物を作った当時とまったく変わっていない。川にもっとも近い人々がないがしろにされて、勝手な都合で推し進められていく日本の行政の姿が浮き彫りにされていくというのがこのドキュメンタリーで、同時にこのドキュメンタリーの魅力でもある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』
竹林軒出張所『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-02-06 07:09 | ドキュメンタリー

『ふたりの死刑囚』(ドキュメンタリー)

ふたりの死刑囚(2016年・東海テレビ)
監督:鎌田麗香
撮影:坂井洋紀
ナレーション:仲代達矢

検察の独善が生み出す犠牲者

b0189364_20444659.jpg 「名張毒ぶどう酒事件」(1961年に三重県名張市で農薬が入ったワインを飲み5人が死んだ事件)で逮捕され死刑判決が出された死刑囚・奥西勝と「袴田事件」(1966年に静岡県清水市で起こった強盗殺人放火事件)の死刑囚・袴田巌を取り上げたドキュメンタリー。
 どちらの事件も、被告人の自白が有力証拠でありながらその後被告が否認し、しかも説得力のない物的証拠しか残されていないという点で共通しており、冤罪の可能性が非常に高い事件である。そのため、弁護士グループから再審請求がたびたび出されており、「袴田事件」の方は、2014年に再審開始が決定し袴田死刑囚は釈放された。一方の「名張毒ぶどう酒事件」の方は、再三の再審請求にもかかわらず、奥西死刑囚は2015年に獄死した。
 釈放された袴田氏も、数カ月にわたって拘禁症状が出続け外出ができない状態になっていたが、精神面、体調面は徐々に回復しており、その様子も紹介される。一方検察側はその後も拘置停止に反対して抗告している。
 どちらの事件も、普通に考えれば検察のでっち上げであり、何のためにしきりに抗告を繰り返しているのかよくわからない(おそらくはメンツのためだろう)が、物的証拠に説得力がないことは明らかで、しかも検察側は多くの(おそらく不利な)証拠を開示していないとくれば、これは意図的に犯罪者をでっち上げていると言われても仕方がない所作である。犯罪を解明し再犯を防ぐための機関が、冤罪を作って犠牲者を生み出すという犯罪を犯し、しかも真犯人を野放しにしているという失態も演じている。自分たちの利益にこだわったりしないで、弁護側と共同で真実を解明しようというアプローチをとっても良いんじゃないか……とそういうことを考えさせられるドキュメンタリーである。
 ナレーションは、同じ東海テレビ製作の『約束 名張毒ぶどう酒事件』のドラマ部分で奥西勝を演じた仲代達矢であるが、少々仰々しく感じる。ただしあちらの番組を見ていれば、奥西氏の忸怩たる思いみたいなものが反映されていてむしろ良いと感じる。あちらの番組とセットで見たい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-02-04 07:44 | ドキュメンタリー

『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(ドキュメンタリー)

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(2013年・東海テレビ)
演出:齊藤潤一
原作:東海テレビ
脚本:齊藤潤一
出演:仲代達矢、樹木希林、天野鎮雄、山本太郎、寺島しのぶ(ナレーション)

検察と裁判所に正義はないのか

b0189364_1837856.jpg 名張毒ぶどう酒事件をテーマにしたドキュメンタリー・ドラマ。
 1961年、三重県名張市葛尾地区の集会で、住人たちが振る舞われたワインを飲んで中毒を起こし、5人が死んだ。警察は、住人の一人である奥西勝が犯行を自白したとして逮捕した。ただしその後の公判で、この自白には信憑性がないということでいったんは無罪判決が出されたが、控訴審判決で一転、死刑判決が出る。
 この事件については、証拠が十分なく、自白だけが有力な証拠であり、そのため検察の筋書きにはあちこちに破綻がある。そのため、通常であれば無罪と見るのが正しいが、検察の面目や裁判所の都合のためか、度重なる再審請求はことごとく却下され、奥西氏は死刑囚として拘置所内で毎日刑の執行に怯える日々を送っている。
 こういったいきさつをドラマ化したのがこのドキュメンタリーで、これまでの過程が非常にわかりやすく説明される。またなぜ裁判所が再審請求をことごとくはねつけるのかも、裁判官が出世するには過去の裁判結果を踏襲することが必要になるためとわかりやすい説明をしている。それを裏付けるかのように、この事件で再審請求を認めた地裁の裁判官がその後裁判官を辞め、再審請求を却下した裁判官が高等裁判所に栄転しているという事例も紹介している。
 いずれにしても奥西死刑囚、この番組の放送時点で、身体が非常に衰弱している。奥西氏の支援団体は何とか生きているうちに釈放されるよう全力を尽くしている状況である。
 ドラマ部分は、奥西死刑囚に仲代達矢、母に樹木希林という豪華なキャスティング。ドキュメンタリーであるため、わかりやすさ重視のストーリー展開であるが、奥西死刑囚の忸怩たる思いや恐怖感は仲代達矢の演技から伝わってくる。硬派の優れたドラマ、というかドキュメンタリーで、大変好感が持てる、と同時に大いに勉強になる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-02-03 06:41 | ドキュメンタリー

『平成ジレンマ』(ドキュメンタリー)

平成ジレンマ(2010年・東海テレビ)
監督:齊藤潤一
撮影:村田敦崇
ナレーション:中村獅童

戸塚ヨットスクールの今

b0189364_885154.jpg 1980年代に脚光を浴びた戸塚ヨットスクール。体罰も辞さない教育で、不良少年を更正させ不登校児を立ち直らせるという評判が立ち、全国から大勢のスクール生を集めたが、生徒の中に死者と行方不明者(スクールを逃亡しようとしたため)が出たことから、自体は一変する。当初戸塚ヨットスクールに好意的だったマスコミは、こぞって戸塚を叩きまくり、悪の権化のごとく言う。結果的に戸塚校長の責任問題に発展し、あげくに校長やコーチが逮捕されるという事態になった。刑については裁判で争われたが、戸塚校長には結局6年の実刑判決が出た。この事件をきっかけに、日本の教育の現場では体罰が完全に禁止されることになった。
 しかしその戸塚ヨットスクール、実は今でも活動している。このドキュメンタリーでは、現在の戸塚ヨットスクールに密着し、どのような教育が行われているかを間近で捉える。
 現在では、不良少年はあまりいず、ニートや不登校児が生徒の中心である(らしい)。家庭内で暴れたりするため、親が藁にもすがる思いでこのスクールに連れてきたというケースが多いようだ。中には成人のスクール生もいるが、こういったニートの成人については、このスクール以外、現在どこにも対応する機関がないというのが実態らしい。戸塚校長は、彼らは他に行き場(行かせ場)がないからここに連れてくるのだと語る。本来であればもっと年齢が低いときに矯正すべき問題をいつまでも放置するから成長できないまま大人になった人間が多くなるのだというのが校長の持論である。
 戸塚ヨットスクールの過去の映像も紹介されるが、その頃の体罰はそれは凄まじい。しかし戸塚校長はそれはわかった上でやっているのだという。もちろん戸塚ヨットスクールのやり方が正しいとは言えないが、だからと言ってマスコミで言われていた(いる)ように彼らが悪に凝り固まった人間であるようにも見えない。それは、カメラがヨットスクールの内部を照らし出しているせいでもあるだろうが、マスコミが外からいろいろ言っていることが、内情を把握していない非常に身勝手でステレオタイプな見方であることは、このドキュメンタリーを通じて徐々に見えてくる。このあたりはオウム真理教の映画とも共通するが、結構新鮮である。
 現在の戸塚ヨットスクールにもいろいろと問題があり、戸塚校長の言っていることが絶対的に正しいとは思わないが、少なくとも彼の経験から導き出された信条に従って教育を行っていたし今も行っていることはわかる。このドキュメンタリーを見ると、教育のあり方などについても思いを馳せることになる。また一面的で画一的な見方が欺瞞に満ちていることもわかる。いろいろと考えさせられるドキュメンタリーである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『A(映画)』
竹林軒出張所『A2(映画)』
# by chikurinken | 2017-02-01 08:09 | ドキュメンタリー

『ホームレス理事長』(ドキュメンタリー)

ホームレス理事長(2016年・東海テレビ)
監督:土方宏史
撮影:中根芳樹

教育、理想、事業などに思いを馳せる

b0189364_20284283.jpg 中途退学の元高校球児たちを集めて、彼らが野球を続けながら高卒資格を取れるような組織を作ったある中年男の話。この男、山田豪という人だが、中途退学で行き場がなくなった高校球児を救おうという情熱を持ち、彼らの受け皿になるNPO法人「ルーキーズ」を作る。とは言うものの、現実は甘いものではなく、毎年1千万円以上の赤字を出しており、経営は思わしくない。金策に翻弄する毎日だが、それに密着して、理念だけではなかなかうまく行かない現実の厳しさを伝えるドキュメンタリー。
 ドキュメンタリーでは、一方で、生徒側、あるいは監督らのスタッフにも密着し、さまざまな方向からこのNPOに迫る。それぞれの当事者にそれぞれなりの思いがあることがわかり、多面的なアプローチが非常に新鮮に映る。
 野球部の監督には、監督として甲子園に出場しながらその後暴力事件で高校野球界を追放された池村英樹を抜擢するなど、スタッフもかなりユニークな顔ぶれ。生徒の方も、突然カメラに向かって襲いかかってくるやつなどいて、正直こういった状態で大丈夫かと心配になる。
 このルーキーズ、案の定、生徒の数もその後あまり増えず、野球チームの状態も芳しくない。生徒側もやる気のなさをもろに出しているような者もおり、先行きはかなり不安。しかも山田豪理事長は、この組織の内部状況にはあまり関与せず、もっぱら金策に走り回るという有様で、前途ははなはだ心許ない。やがて破綻するのが目に見えるようで、正直直視できない状況が続く。そういう意味では非常にストレスのかかるドキュメンタリーではあるが、いろいろな人間の思いが交錯するこの法人の現場をうまく捉えていて、そういった人間模様を中心にこの組織の姿があぶり出されている。手法としては見事である。
 先月、今月と日本映画専門チャンネルで東海テレビ製作のドキュメンタリーがまとめて放送された。今回その放送をたて続けに見たわけだが、前に見た『死刑弁護人』、先日見た『ヤクザと憲法』など、どれもきわめてユニークな上、アプローチの仕方も真摯で非常に好感が持てるもので、日本の放送界の現場もまだまだ捨てたもんじゃないと思わせる魅力がある。この『ホームレス理事長』についても、見ながら疑問に感じてしまうことに対して、非常に良いタイミングで回答されるような技巧的な巧みさもある。もちろんテーマもユニークで、取り上げられる題材はどれも面白すぎるくらいである。あまり内容については触れない方が良いと思うので細かく語らないが、この作品も(他の東海テレビ作品同様)ドキュメンタリーの傑作であるのは間違いない。
 なおこの東海テレビのドキュメンタリーだが、製作側の方針でDVD化はあえてされないということなので、見る機会があればそのときに見ておくのが良いと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『ドキュメント 高校中退(本)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-01-31 07:28 | ドキュメンタリー

『ヤクザと憲法』(ドキュメンタリー)

ヤクザと憲法(2016年・東海テレビ)
監督:土方宏史
撮影:中根芳樹

ヤクザに人権はないのか

b0189364_7554324.jpg 大阪のヤクザ組織、清勇会の事務所に入り込み、長期に渡って密着取材を続けるという前代未聞のドキュメンタリー。『死刑弁護人』でお馴染みの東海テレビ製作である。
 内側から見てみると、ヤクザ組織ではあるが、そこらあたりにある普通の組織とあまり大きな違いがあるように見えない。拳銃や日本刀がそこかしこにあるというわけではなく、事務所があり、若い見習いが共同生活する大部屋がありという、ちょっと見たところ相撲部屋を思わせるようなたたずまいである。組員たちも、実のところはわからないが割合、普通の関西のオッサンという感じで、感じが良い人もいれば怒鳴り散らす人もいるという印象である。
 こういったヤクザ組織は、暴力団対策法が施行されて以来、一定の条件に当てはまれば指定暴力団に指定され、警察や検察にさまざまな圧力をかけられ続けている。結果として、組員はあちらこちらで「不当」と言えるような扱いを受けている。このドキュメンタリーでも、車の傷を保険会社に請求しただけで、保険会社を脅迫したという罪状で家宅捜査を受けるという場面が紹介されていた。その際、捜査関係者(おそらく刑事)が、この映画の撮影者を恫喝ならびに脅迫するなどという行為もあり、どちらがヤクザ者かわからないような場面もある。
 また、指定暴力団の組員であればそれだけで銀行に口座を作れないことから、組員であるという事実を隠して口座を作ったところ詐欺容疑で逮捕されるという事例も紹介されていた。とにかく組員に対する締め付けは異常で、反社会的な行為をしていようがしていまいが、一律に排除するという構図が見て取れる。さらに組員の子どもの幼稚園への入園が拒否されるとか、ヤクザ組織の顧問弁護士が不当逮捕されるとか、彼らを取り巻く世界は異常以外のなにものでもない。こういった状況は明らかに行きすぎで、実際そのためか組員の数は減少しているが、しかしそれで元組員たちが反社会的な行為をしなくなるかというとそれはまた別の話なのである。なんせ彼らを受け入れる余地が堅気の社会にはないため、結局は表に出ないように形を変えて不法な活動を続けるというケースも多いらしい。それを考えると、暴力団対策法や暴力団排除条例が本当に有効なのかもよくわからなくなる。少なくとも今のように、組員というだけで、必要以上に彼らの生活に制限を加えることが正しいのかは疑問である。とにかく排除しさえすればよいとする考え方は、オウム真理教の事例などと同様、一種のヒステリーみたいなもので、実は共存する道を模索するという考え方もあるのではないか……そういうことを考えさせるドキュメンタリーである。結論はなかなか難しい部分があるが、いずれにしてもテーマといい方法論といい非常に画期的な作品である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『A(映画)』
竹林軒出張所『A2(映画)』
竹林軒出張所『「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔(本)』
# by chikurinken | 2017-01-30 07:57 | ドキュメンタリー

『脳は奇跡を起こす』(本)

b0189364_20132134.jpg脳は奇跡を起こす
ノーマン・ドイジ著、竹迫仁子訳
講談社インターナショナル

神経可塑性の可能性

 神経可塑性について紹介する本。
 従来、脳細胞は一定の年齢になると成長しないで衰えるだけと考えられてきたが、実は必要に応じて変化していくというのが神経可塑性という考え方である。たとえば脳障害のために動かなくなった部位がその後動かせるようになったケースの場合に、詳しく調べると実は通常と違う代替の脳部位が使われるようになっていたことが判明するなどというのがその実例である。脳が回路を作り替えていたわけである。
 著者は精神科医で、この本では神経可塑性についての最新の知見が紹介される。脳障害だけでなく、これまで不治の病とされてきた病気も、神経可塑性を利用することで回復する可能性があることも記述されている。自閉症やPTSDまでがその対象になる。紹介されている実験も面白いものが多く、被験者にテーブルが腕の一部であるかのように認識させると、テーブルを叩いたときにその被験者が痛みを感じるなどのケースはユニークで興味深い。
 ただ、この著者は基本的に精神科医でフロイトの考え方を踏襲しているらしく、少し疑わしい内容のものもあった。フロイトの理論について神経可塑性で説明している部分はそれなりに説得力があるが、ホンマかいなという感情も最後まで残る。
 またネットポルノ中毒についても1章を割いて解説しているが、これも結構怪しい。やや独断的な見方が少々気になるところだが、従来信じられていた局在論(脳の機能が特定の脳領域に固定されているとする考え方)に対抗する1つの解答がここにあるのも確かである。必要な部分だけ読んで吸収したら良いだけのことだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『奇跡の脳(本)』
竹林軒出張所『再起する脳 脳梗塞が改善した日(本)』
竹林軒出張所『壊れた脳 生存する知(本)』
竹林軒出張所『よみがえる脳(本)』
竹林軒出張所『タッチ・ザ・ミュージック(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-01-28 07:12 |

『塾講師にだまされるな!』(本)

b0189364_20402383.jpg塾講師にだまされるな!
黒い講師著
主婦と生活社

教育もブランド化

 中学受験塾の講師が、この手の塾の内情を暴いた本。
 実際に担当している生徒の例を具体的に紹介しながら塾講師の日常を描くという内容で、元々はブログだそうだ。塾講師が親をどのように乗せて金を使わせるかという戦略が紹介される他、生徒の親が現状を適確に把握できず、子どもに無理な難関校を目指させるような状況も描かれる。親に金を出させる(つまりは個別授業を増やす)方法は、見方によってはあくどいとも言えるが、あちらもビジネスであるから、第三者的には別に問題あるとは思わない。それよりも、見栄のせいか知らないが親が異常に子どもの中学受験に肩入れする姿が、端で見ていてあまりにバカバカしく感じられる。多くの親が名門中学入学がゴールのように考えているフシがあるのもどうかと思う。中学なんて公立で良いだろうと思うが、親、そして親からいろいろと吹き込まれた子どもが、極度の学校ブランド志向になっているのか、かなり異常な世界が展開されている。試験直前になると親たちが異常な姿を見せ始めるのもはなはだ奇異で、目も当てられない状況に映るが、そういう状況を世の中に紹介しているという点で、意味のある本かも知れない。
 ただ、「バカ親」とか「バカ生徒」とか、差別的な表現が多く、読んでいて結構不快な気分になる。確かに愚かな人々ではあるが、こういった高飛車な態度で臨むのが正しいのか、少なくとも公の場でこういう表現を使うことが良いことなのか、考えた方が良いんじゃないかと思うが如何。読んでいてなんだかこちらが「バカ」だと言われているような気がしてならないが、そんな俺がバカなのか? それにどことなく、いろいろな問題点を前にして著者が開き直っているような感じも受ける。そういうわけで、この著者にもこの本にもシンパシーは感じない。
 それはさておき、中学受験周辺のおかしくももの悲しい様子がよくわかって、それについては収穫と言える。関係者もいい加減こんなくだらない状態から脱却したら良さそうなものだが、一方でこういう傾向を助長する著者みたいな立場の人がいるのも事実。まあ、受験サービスの利用者も、その利用者を利用する受験サービス側も持ちつ持たれつの関係ってことなんだろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『督促OL 修行日記(本)』
竹林軒出張所『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。(本)』
竹林軒出張所『オタ中国人の憂鬱(本)』
# by chikurinken | 2017-01-27 07:39 |

『ドミトリーともきんす』(本)

ドミトリーともきんす
高野文子著
中央公論新社

こちらが読みたいものと大きく異なる

b0189364_7542432.jpg 高野文子のマンガということになると非常に期待してしまうが、この作品は面白くない。朝永振一郎、湯川秀樹、牧野富太郎、中谷宇吉郎の4人の著作を紹介していくというコンセプトのマンガだが、マンガにする必然性があまりないため、マンガ的な面白さは皆無である。
 「ドミトリーともきんす」という名前の寮にこの4人が若い学生として住んでいて、寮母のとも子、その娘のきん子と関わり合うという設定で工夫は見られるが、なにせ紹介される著作がかれらのエッセイみたいな本であるため、その本の内容自体が面白いと感じない。それが最大の難点である。著者自身がかれらの著作を気に入って、それでマンガ化を試みたということらしいのだが、面白さはまったく伝わってこなかった。
 残念ながら、高野文子らしい繊細な感性もなければ、絵としての面白さもあまりない。個人的に非常に好きな作家だけに、次回作には期待したいと思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『火打ち箱(本)』
竹林軒出張所『夏休みが終わります』
# by chikurinken | 2017-01-25 07:54 |

『21世紀少年 (上)(下)』(本)

b0189364_17494486.jpg21世紀少年 (上)(下)
浦沢直樹著
小学館

ハリウッド映画のような虚しさ

 『20世紀少年』の続編、つまり後日談。連載時の事情は知らないが、たぶん『20世紀少年』から引き続きそのまま連載が続いた、つまりタイトルの付け替えだけが行われたんじゃないかと思う。『20世紀少年』の時点で一応は決着が付いたが、依然として謎を残したままで、その謎が『21世紀少年』で明かされる。つまり世界大統領の「ともだち」の正体が明かされ、地球の滅亡が回避されるといったような内容。
 個人的には「アホクサ」の状態が続いていたため、内容については正直どうということはないというのが僕の感想。『20世紀少年』の全体像が見えた、謎解きが終わったという単にそれだけの結果で、ハリウッドのアクション映画のように、読み終わった後は虚しさだけが残った。
★★★

参考:
竹林軒出張所『20世紀少年 (1)〜(22)』
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-01-24 07:08 |

『20世紀少年 (1)〜(22)』(本)

20世紀少年 (1)(22)
浦沢直樹著
小学館

キミは著者の大風呂敷に付き合えるか

b0189364_7372970.jpg 15年以上前のマンガで、当時結構人気があったように記憶している。映画化もされ、テレビCMで放送される映画の予告編が不気味だったことを憶えている。
 内容も、おそらくオウム真理教の一連の事件をモチーフにしたであろうストーリーで、全編に不気味さが漂う。
 70年代に少年少女時代を送った主人公たちが成長し、その同級生の中に数々の怪事件の首謀者がいるということがわかり、かつての仲間たちを集めてその究明に乗り出すというストーリー。やがてそこに不気味な宗教団体の存在が明るみに出て来てしっちゃかめっちゃかになるというふうに話が進んでいく。
 主人公たちは、概ね僕と同世代で、使われる懐かしグッズも概ね知っているし、ノストラダムスの世紀末に関する予言なども身近だったため、このマンガで扱われている世紀末の恐怖感なども身近には感じる。実際オウム真理教も、あの予言からもたらされた不安を心の中のどこかに持っていた信者が中心だったというし、モチーフとしては面白い。ただし話が進んでいくうちに、物語の空間的な広がりがあまりにないことがだんだん見えてきて少々しらけてくる。もちろん、この著者は、画力がある上、見せ方が非常にうまい(先が非常に気になる終わり方をする)ため、どんどん読み進めることはできるんだが、ストーリーがやはり安直であると感じてしまう。大風呂敷を広げてはみたが、どうしようもなくなったという感じもあるし、何より死んだことになっている登場人部が実は生きていてその後大活躍するなどというストーリーもちょっと受け入れがたい。ご都合主義的と言わざるを得ない。
 これくらい画力、表現力がある作家であれば、もう少ししっかりしたストーリーならば良い作品ができるんじゃないかと感じたりする。そういう意味では、この作家にとっては原作ものの方が良いんではないかと感じる。実際この著者の『マスターキートン』なんかよくできていて面白かった。とりあえず『20世紀少年』については、ストーリーが稚拙過ぎるという評価に尽きる。語り口があまりにうまいため22巻までひたすら引っ張られてしまったが、途中からアラが見え始め、最後の方ではアホクサという見方をしていたことをここに明記しておく。
★★★

参考:
竹林軒出張所『21世紀少年 (上)(下)(本)』
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-01-23 07:38 |

『隣の女』(映画)

隣の女(1981年・仏)
監督:フランソワ・トリュフォー
脚本:フランソワ・トリュフォー、シュザンヌ・シフマン、ジャン・オーレル
出演:ジェラール・ドパルデュー、ファニー・アルダン、アンリ・ガルサン、ミシェル・ボームガルトネル

激しい恋の風に巻き込まれたら最後さ

b0189364_1834297.jpg 隣に引っ越してきた夫婦の若妻がかつて自分が愛した女だったという、昨今の安っぽいドラマやAVにありがちな設定の映画。今となってはよくある設定だがその元祖かも知れない作品である。
 「一緒では苦しすぎるが、ひとりでは生きていけない」というこの映画のキャッチフレーズ通り、激しい激しい恋愛が展開されるが、ちょっと狂気がかってきてだんだん見るのがきつくなる。もう少しのんびりした映画かと思って見始めたが、ちょっと当てが外れた(勝手な思い込みではあったが)。同じ監督の『アデルの恋の物語』を思い出させるような激しさである。激しい恋に憧れる人やそういう映画を見たい人にはピッタリかも知れないが、一般的な倫理観を持つ人にとっては、少々気分が悪くなる作品かも知れない。僕なんか年を取ったせいか、『暮れ逢い』の時と同様、こういう映画を目にすると「なんでわざわざアブない道を選ぶかな」という視点で見てしまう。我ながら面白味のない人間になってきた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『暮れ逢い(映画)』
竹林軒出張所『華氏451(映画)』
竹林軒出張所『レ・ミゼラブル (1)〜(4)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2017-01-21 07:03 | 映画

『ベルリン・天使の詩』(映画)

ベルリン・天使の詩(1988年・独仏)
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、ペーター・ハントケ
出演:ブルーノ・ガンツ、ソルヴェーグ・ドマルタン、オットー・ザンダー、クルト・ボウワ、ピーター・フォーク

「天使、コロンボ、ブランコ」をお題にした
三題噺のような作品


b0189364_20443793.jpg 88年当時のベルリンの社会を天使の目で描いた映画。空中ブランコや刑事コロンボ(ピーター・フォーク)が登場するなど、やや混沌とした風景ではあるが、映像は最初から最後まで、概ねモノクロ(一部カラー)の落ち着いたものである。ストーリーも分かりやすくはなっているが、伝えられる情報が著しく少ないため、見方によっては退屈する、あるいは眠くなる。余裕のあるときにゆったりした気分で見れば良いというタイプの映画である。
 映画の中では事件らしい事件もなく、悪人も出てこず、そういう意味ではどことなく小津映画を彷彿させる要素がないわけではない(小津映画との類似性はあまりないが)。もっとも監督のヴィム・ヴェンダースが小津ファンであることも有名で、この映画の最後にも「安二郎、フランソワ、アンドレイに捧ぐ」と字幕が出るほどである。この映画にほのぼのした味わいがあるのは、あるいは小津映画の影響かも知れない。
 ストーリー自体は、少々とってつけたような感がなきにしもあらずで、さながら三題噺であるかのような話である。タイトルにも示されているが、全編「詩」的なフレーズが語られるため、文学的な趣味のある人には堪らないかも知れない。
1987年カンヌ国際映画祭監督賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『小津安二郎・没後50年 隠された視線(ドキュメンタリー)』
# by chikurinken | 2017-01-20 07:44 | 映画

『ドラゴン怒りの鉄拳』(映画)

ドラゴン怒りの鉄拳(1971年・香港)
監督:ロー・ウェイ
脚本:ロー・ウェイ
出演:ブルース・リー、ノラ・ミヤオ、ロバート・ベイカー、ジェームズ・ティエン、橋本力

見所はブルース・リーのアクションのみ

b0189364_7431018.jpg 上海日本人租界で日本人に虐げられている中国人が、不当に虐げる日本人を成敗するという復讐譚。
 中国人の武術道場の師範が殺され、その事件に日本人の武術道場が絡んでいることが後にわかり(しかもこの道場、自らの犯行を誇示しているかのように、ご丁寧に中国の道場をやたら挑発する)、そこへ中国道場に所属する武術の達人(というより超人)チェン(ブルース・リー)が1人で殴り込みをかけ、全員を大虐殺するというストーリー。言ってみれば、昨今中国でよく放送されているという抗日ドラマの類のストーリーで、内容は荒唐無稽。しかも背景が正確に描写されていないため、状況がよくわからない。ウィキペディアで調べてみると、1909年清朝末期の話だということで、租界では外国人が治外法権みたいなものを振りかざして好き勝手に振る舞っていたらしい。こういう事情については、香港の観客は公開時にすぐに理解できたのかも知れないが、外国で上映する上ではある程度の説明を最初に入れておくなどの工夫が必要だと思う(入るには入っていたようだがしっかりした説明になっておらずよくわからなかった)。
 ストーリーとか細部の演出は低レベルで、唯一の見所はブルース・リーの格闘シーンであるが、これはそれなりに面白くはある。僕は劇場公開時にこの映画を見たんだが、そりゃあ当時の子どもはみんなブルース・リーの真似をしていたもので、特にヌンチャクを使ったアクションは秀逸で、おそらくこの映画が元祖ではないかと思われる。ただし格闘シーンは、日本の大衆時代劇でも同様だが、主人公中心に世界が廻るようなものでリアリティがまったくなく、見ているうちにあほくさくなる。主人公が超人でも良いんだが、そこには何らかの説得力がないと結局子供だましで終わってしまう。で、この映画も、こちらが老成した今見ると、結局「子供だまし」で終わっていることがわかるのだ。
 今回、ブルース・リーの映画は他にも何本か見る予定だったが、どれもストーリーは似たようなものだし、もう見なくて良いだろうという結論に達した。なお、この映画には、若き日のジャッキー・チェンが端役とスタントで出演しているそうだ(まったく気が付かなかったが)。また悪い日本人の親玉、鈴木を演じるのは、大魔神俳優(大魔神の着ぐるみの中に入っていた役者)の橋本力である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』
竹林軒出張所『昭和残侠伝 死んで貰います(映画)』
竹林軒出張所『ザ・ヤクザ(映画)』
竹林軒出張所『大魔神甦る』
# by chikurinken | 2017-01-18 07:43 | 映画

『免許がない!』(映画)

免許がない!(1994年・光和インターナショナル、日本テレビ)
監督:明石知幸
脚本:森田芳光
出演:舘ひろし、墨田ユキ、西岡徳馬、片岡鶴太郎、江守徹、中条静夫

b0189364_7394835.jpg実にたわいもない映画

 昨年必要に迫られて自動車の運転免許を取った。50過ぎになって今さらの話ではある。話には聞いていたが鬱陶しい教官がいたりして、それに何しろ周り(他の生徒)は若いやつばかりだし、特にはじめの頃は教習所に行くのも嫌になるぐらいだった(後で聞いたところによると他の若い教習生も同じようなものだったらしい)。しかしこちらも徐々に慣れてくると不快に感じることも少なくなり、(時間はかかったが)無事に運転免許が取れた。ただ、元々自動車自体が嫌いだし、運転できることに伴う嬉しさなどはまったくない。むしろ教習所に行かないで良くなったんでホッとしているという感じが近い。
 さて、教習所に通っているときにいつも頭にあったのがこの映画のことで、教習所通いに当たって参考のために見てみようかなと思いつつ、結局教習所を卒業した後に見ることになった。
 脚本が森田芳光ということで多少は期待していたんだが、残念ながら90年代の映画らしく、多少バブルな雰囲気が漂うきわめてバカバカしい映画であった。ストーリーも安直な上、演出もチープである。
 40過ぎの有名アクション・スターが、突然運転免許を取りたくなり(このあたりの描写も物足りない)、主演映画の撮影を中断して合宿で免許を取りに行き、無事に免許を取得するという実にたわいもないストーリーで、クスリとするような場面もあるにはあるが、本当に「たわいもない」という言葉がピッタリ来るような映画である。プログラム・ピクチャーみたいな映画だが、実際は単発上映だったようで、こういう映画をロードショーでやっていたあの時代のことを思うと、そりゃ映画産業も斜陽になるわなと思う。
 ちなみに脚本の森田芳光だが、この頃『バカヤロー!』シリーズの製作とか『愛と平成の色男』みたいな駄作の監督とかもやっており、一種の低迷期だったのかと思う。ただ、森田芳光については、傑作もあるが駄作も多い監督で、企画の時点で頭をひねりたくなるような作品が多いのも確かである。あまり仕事を選ばない人だったんだろうかとも思う。この映画の監督は、森田芳光の助監督に付いていた人らしく、この人についてはよく知らないが、この映画が一番ヒットした映画のようだ。
 教習所通いをした今見ると確かにあるあるネタはあるが、本当にどうと言うこともない、テレビ・ドラマでやってもあまり話題にならない類の映画である。もっとも公開当時は結構話題になったんで、不思議と言えば不思議である。何が流行るかわからないもんだと思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『森田芳光の映画、3本』
竹林軒出張所『武士の家計簿(映画)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(映画)』
竹林軒出張所『断定する人』
竹林軒出張所『39 刑法第三十九条(映画)』
# by chikurinken | 2017-01-17 07:40 | 映画