ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『メモリー・ハッカー』(ドキュメンタリー)

メモリー・ハッカー 〜あなたの記憶が塗りかえられる〜
(2016年・米Little Bay Pictures/WBGH)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

期待を持たせるタイトルだったが物足りない
こっちの期待が塗りかえられてしまった


b0189364_19161165.jpg 人間の記憶についてのあれこれを紹介するドキュメンタリー。
 過去のことをやたら詳細に憶えている人々が登場したり、記憶のしくみが解明されたときの過程が紹介されたりする。ただし全体的に非常に散漫な構成なのが残念。目玉トピックは、タイトルにもなっているように、記憶が第三者によって恣意的に塗り替えられるということを実験で示しているあたりだが、むしろこういう点に絞って1本の番組にするとかした方が良かったかなと思う。この事実は冤罪に繋がったり、あるいは一時期アメリカでブームになった「心理療法」(その結果、子供から親に対して性的虐待の訴えが行われた事例)などとも関連して、深く掘り下げるだけの価値があると思うが、掘り下げ方が浅く、ごく簡単に紹介しましたという程度の内容だったのが実に不満である。ともかく、全体的に少し雑多でテーマが絞り込めていないような印象を受けたのは事実で、そのためか知らんが、終わりの方は眠くなってしまった。期待が大きかっただけに失望感が残るドキュメンタリーだった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『なぜあの人はあやまちを認めないのか(本)』
竹林軒出張所『「金縛り」の謎を解く(本)』
竹林軒出張所『脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ(本)』
竹林軒出張所『ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?(本)』

# by chikurinken | 2017-09-15 07:15 | ドキュメンタリー

『赤い橋の下のぬるい水』(映画)

赤い橋の下のぬるい水(2001年・日活)
監督:今村昌平
原作:辺見庸
脚本:冨川元文、天願大介、今村昌平
出演:役所広司、清水美砂、中村嘉葎雄、ミッキー・カーチス、ガダルカナル・タカ、夏八木勲、不破万作、北村和夫、倍賞美津子

「イマヘイ」ワールドに浸りきる

b0189364_20541798.jpg 今村昌平らしいヘンな映画。リストラにあったサラリーマン(役所広司)が「哲学者」と呼ばれたホームレスの話を信じて能登に行き、そこでやたら潮を吹く女性(清水美砂)と出会って恋に落ちるというストーリー。「やたら潮を吹く女性」が出てきているあたりからして何だか現実感が希薄で、やや不条理な要素が出てくる。しかもアフリカ出身の留学生マラソンランナーだの、神社のおみくじを手書きするお婆さんだの、現実からかなり遠い人々が普通に登場してきて、不思議な世界を形作る。ただしその周辺は日常が普通に進行していて、日常と非日常が渾然一体となって成立した世界である。両者の間にはまったく違和感がなく、ありそうでなさそうな面白い世界ができあがっている。
 主演は役所広司、清水美砂という『うなぎ』コンビであるが、イマヘイ監督「らしさ」はこちらの方が『うなぎ』よりはるかに上を行っている。潮で虹ができるなど、あちこちに散りばめられたバカバカしい笑いもらしいと言える。
 エンドロールで気が付いたが高田渡が出ていたようで、もう一度最初から見直したら、冒頭部分に飲んだくれのホームレスとして登場していることを発見。飲んべえのホームレスとは「らしい」キャスティングである。なお、今回見たのは2回目だったが、交接シーンと魚が集まってくるシーン以外ほとんど憶えていなかった。また交接シーンは多いが、清水美砂は着衣だし、それほどエロさはない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『うなぎ(映画)』
竹林軒出張所『豚と軍艦(映画)』
竹林軒出張所『にあんちゃん(映画)』
竹林軒出張所『人間蒸発(映画)』
竹林軒出張所『ゆきゆきて、神軍(映画)』

# by chikurinken | 2017-09-13 06:53 | 映画

『女が階段を上る時』(映画)

女が階段を上る時(1960年・東宝)
監督:成瀬巳喜男
脚本:菊島隆三
撮影:玉井正夫
音楽:黛敏郎
出演:高峰秀子、森雅之、団令子、仲代達矢、加東大介、中村鴈治郎、小沢栄太郎、淡路恵子

仕事や起業についていろいろ考えた
そういうテーマの映画かどうかはわからないが


b0189364_19294139.jpg これも、『浮雲』同様、ミキちゃんデコちゃん(成瀬巳喜男と高峰秀子のこと)コンビの映画で、しかも森雅之に加東大介まで出ている。ただ内容は『浮雲』とは大分違って、主人公は銀座のバーの雇われママで、その生き様が描かれる。
 前半は、雇われママの仕事ぶりが中心で、成瀬巳喜男は一体この映画で何を描きたいのかなどとつらつら考えていたが、後半になって話が進み始め、作り手の主張がしっかり伝わってくる上々のドラマに仕上がっていた。菊島隆三のオリジナル脚本のようだが、菊島隆三本人がプロデューサーまでやっているところを見ると、脚本家にとってそれなりの自信作だったかと思う。実際よくできたシナリオである。
 何とか銀座で生き残っていこうとする美人ママと、サポートを申し出る金持ちたちの群像劇、と言ってしまえばそういう話なんだが、どこか花街の世界を思わせる話で、見ていて『祇園囃子』を連想したが、そういうのが製作者の狙いでもあるのではないかと思う。菊島の身近にモデルがいたのか(たぶんいたんだろう)よくわからないが、2時間のドラマとしてきっちりまとめ上げられていて、インパクトも残すのは、やはり脚本家、そして監督、さらにはキャストの技量だろう。
 音楽はビブラフォンを使ったジャジーなもので、担当は黛敏郎。基本的に黛敏郎の音楽は好きではないが、この映画については非常に良い味を出していた。絵作りもきれいで、コントラストが効いたモノクロ映像が美しい。地味な作品ではあるが、佳作である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『わたしの渡世日記 (上)(本)』
竹林軒出張所『流れる(映画)』
竹林軒出張所『祇園囃子(映画)』
竹林軒出張所『浮雲(映画)』
竹林軒出張所『稲妻(映画)』
竹林軒出張所『乱れる(映画)』
竹林軒出張所『放浪記(映画)』

# by chikurinken | 2017-09-11 07:29 | 映画

『お葬式』(映画)

お葬式(1984年・NCP、伊丹プロ)
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
出演:山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、奥村公延、財津一郎、江戸家猫八、友里千賀子、尾藤イサオ、岸部一徳、高瀬春奈、笠智衆、藤原釜足、佐野浅夫

b0189364_20262400.jpgセンスが光る写実の映画

 伊丹十三の映画監督デビュー作。「葬式を出す」という実体験を基にした映画である。なんでも伊丹が本当に葬儀を出した際に、皆で火葬場の煙突を見上げたときその様子が「まるで小津安二郎の映画じゃないか」と思ったことが映画を作るきっかけだった、という話を以前どこかで聞いたことがある(おそらく『小早川家の秋』のことを指していると思われる)。そのためか、葬儀の現場を(面白おかしくではあるが)忠実に再現したという類のストーリーである。ただ忠実に再現してもそこに詩情が芽生えるならば、それはそれで一本の作品である。正岡子規のいわゆる「写実」というものに当たるのか。伊丹十三、松山つながりであるいは子規を意識したのかも知れない。発表当時もそういう「写実」のさりげなさが評価されたように記憶している。なお、当時伊丹十三は役者として有名で、前年に出演した『家族ゲーム』の演技でキネ旬の助演男優賞を受賞している。だからその後、映画監督業が活動の中心になっていったのがやや意外だった。もっともどの映画も話題になったし評価も高いので、それはそれで良かったのだろう。とは言ってもどの映画も結局「写実」の域を出ないもので、単調な作品に堕してしまったのははなはだ残念。伊丹がそういう方向に行ったのはこの映画が余りに高く評価されたためだろうが、もちろん当時そういう映画が珍しかったこともある。
 この映画については、起伏は少ないが、非常によくまとまっていてとても監督処女作とは思えない。それになんと言ってもキャスティングが素晴らしい。菅井きんの姑、大滝秀治の親戚の(嫌な)オヤジについては(そもそもが前例のあるはまり役なので)今さら言うまでもないが、江戸家猫八の葬儀屋や笠智衆の坊さん、佐野浅夫の近所の気の良いオジさんなんかも余りにはまっていて、伊丹十三のセンスが光っていると感じる。利重剛と井上陽水もごくチョイ役で出演。葬式関係のシーンは、実際に伊丹十三の別荘が舞台として使われており、かなりの部分はロケではないかと思う。
 途中、モノクロのスケッチ風映像日記が挿入されていたりするのも非常にセンスが良い。この部分は写真家の浅井愼平が撮影しているらしいが、こういう凝った部分も伊丹十三ならでは。それでまたすごく良い映像なんだ、これが。
 とにかく随所に伊丹十三のセンスが光っている映画である。根本敬(だと思われる)作のポスターも良い味を堕していて、これも伊丹のセンスのたまもの。「お葬式」という字の書体も良い。
★★★☆
--------------------------

 以下は、以前のブログで紹介した『小早川家の秋』の評の再録。

(旧ブログ2005年11月5日の記事より)
小早川家の秋(1961年・東宝)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:中井朝一
出演:中村雁治郎、原節子、司葉子、新珠三千代、小林桂樹、森繁久彌、浪花千栄子、団令子、加東大介、山茶花究、宝田明、藤木悠、杉村春子、笠智衆

b0189364_20274582.jpg 松竹の監督、小津安二郎が東宝で撮った映画。
 見るのはこれで二度目で、前回はあまり好印象を持たなかったが、今回は絵の美しさに感心した。きれいな映像というだけではなく、日本の風物、景観が良く表現されていて、懐かしさがこみ上げる。さりげなく撮ったような京都の町並みもはなはだ美しい。今でも京都の花見小路あたりにわりと残っているような風景だが、ここに写っている絵は印象が全然違う。
 それに、登場人物の立ち居のすばらしさ。立ち居については前の『浮草』のところでも書いたが、この映画では単に立ち居が美しいというだけでなく、登場人物のキャラクターにあわせた立ち居が表現されているように感じた。この辺の表現は、ちょっと歌舞伎を彷彿とさせる。そんなわけで歌舞伎役者の中村雁治郎が抜群に良い味を出している。小津の映画で彼が出るのは『浮草』とこれだけだが、大映の役者を東宝まで引っ張ってくるという小津の思い入れがよくわかるというものだ。ひょうひょうとしたおかしみが出ていて、コロコロ変わるえびす顔や怒り顔などの表情の変化も楽しい。
 演出も、他の小津映画以上に様式的である。原節子と司葉子が並んで話をするシーン(いくつかある)なんて、やり過ぎじゃないかと思うくらいだ。この辺も歌舞伎的である。東宝でちょっと実験してみたという感じなのだろうか。
 全編に渡り、登場人物たち(大人)の魅力や懐かしい風景があふれていて、見ている側が子供に帰り大人たちの挙動を目の当たりにしているかのような錯覚さえ覚える。小津映画のローアングルのカメラ目線が子供の視線を表現しているなどと言われることがあるが、この映画ほどそれを感じたことは今までなかった。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『マルタイの女(映画)』
竹林軒出張所『ミンボーの女(映画)』
竹林軒出張所『大病人(映画)』
竹林軒出張所『スーパーの女(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』

# by chikurinken | 2017-09-09 07:25 | 映画

『うなぎ』(映画)

b0189364_20273025.jpgうなぎ(1997年・ケイエスエス)
監督:今村昌平
原作:吉村昭
脚本:冨川元文、天願大介、今村昌平
出演:役所広司、清水美砂、佐藤允、柄本明、常田富士男、倍賞美津子、市原悦子、哀川翔、小林健、寺田千穂、田口トモロヲ

人の善意が心地良い

 一昨日のドラマ(竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』参照)の清水美砂つながりで見た映画。同じ今村昌平監督作品の『赤い橋の下のぬるい水』と同じ主演コンビだが、あの映画みたいな濡れ場はほとんどない。それにあの映画、あるいは初期の今村映画と比べると、割合普通のストーリーで、変なイマヘイ映画を期待していた僕としては少し拍子抜けした(ただし変な要素もあるにはある)。
 人間(女性)不信の刑務所帰りの男が、周囲の人間の善意で立ち直ろうとする話と言ったら良いだろうか。ストーリーは今となってはそれほど珍しいものではないが、しかしやはり世界観は独特と言える。精神障害の母親を登場させたりするのもその独特な世界観ゆえなのか。
 役所広司と清水美砂の好演は言うまでもないが、脇役の佐藤允や哀川翔のいい人ぶりが非常に良い。この映画を見ていると、彼らと一緒に、不器用な生き方をする主人公を応援したくなるような心持ちにさせられるが、ストーリーとしてはなんだかピリッとしない部分もあって、流れの悪さを感じる部分もあった。まあしかし人の善意が伝わってくる心地良い映画であるのは確かである。ただ映画祭のグランプリにふさわしいかどうかは微妙。
第50回カンヌ映画祭パルムドール受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『赤い橋の下のぬるい水(映画)』
竹林軒出張所『豚と軍艦(映画)』
竹林軒出張所『にあんちゃん(映画)』
竹林軒出張所『人間蒸発(映画)』
竹林軒出張所『ゆきゆきて、神軍(映画)』

# by chikurinken | 2017-09-07 07:27 | 映画

『せつない春』(ドラマ)

せつない春(1995年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:山崎努、清水美砂、杉本哲太、竹下景子、柄本明、萬田久子、益岡徹、久米明

テレビ東京製作だけど「山田ドラマ」
タイトル通りの「せつない」話


b0189364_18030296.jpg テレビ東京開局30周年記念ということで製作されたドラマ。テレビ東京の山田ドラマはこれが初ではないかと思うが、この後数年かけて5本製作されることになる。この当時、山田ドラマはかつてほど放送されず、山田太一自体がすでにちょっとした巨匠扱いで、だからと言って視聴率が稼げるというような存在でもなく、微妙な立場になりつつあったように記憶している。そういったわけで、山田ドラマといえば、芸術賞狙いで作られることが多くなっていたため、こういった記念番組でないとなかなかお目にかかることがなくなっていた。テレビ局と視聴者のレベルが著しく下がり始めるのもこの頃かなと思う。
 さて、製作局はテレビ東京ではあるが、ドラマの内容自体はやはり「山田ドラマ」なんであって、TBSやNHKの山田ドラマとほとんど変わらない。おそらく脚本家が多分に口を出しているせいであろうが、しかしそのために常に高水準が保たれることになる。「脚本:山田太一」というレベルではすでになく、「山田ドラマ」になってしまうという按配。しかもキャストも山田ドラマの常連が名を連ねているし、ますますどこの局で製作されたのかわからなくなる。
 山田作品で珍しいキャストといえば清水美砂や杉本哲太あたりだが、彼らがドラマの中で存在感を発揮しているのは、他の山田ドラマと共通である。この頃の清水美砂は非常に魅力的で、このドラマでもその魅力が発揮されている。清水美砂が演じるのは、足に障害を持つ女性だが、その障害のせいで恋愛を諦めかけていた彼女がなかなか素敵な男(杉本哲太)と出会うというなかなかさわやかなプロットが展開される。
 一方で、その父(山崎努)は、大企業で総会屋対策をやっていて、ヤクザ者と付き合ったり結構汚い仕事をやっている。その彼が、総会屋と手を切るという会社の方針のためにお払い箱になり、総会屋からも恨みを買うというような汚い話が同時進行で進む。なかなかよくできたプロットである。ただ偶然の要素がかなり強く、そのあたりが少々興ざめである。また、山崎努と竹下景子が(演技で)自暴自棄になるシーンも(竹下景子については似たようなシーンが『夏の一族』でもあったが)ちょっと湿っぽすぎて、いただけないかなという気がする(あくまでも個人の感想です)。しかし扱われるモチーフが企業の株主総会や総会屋で、テレビ東京らしい題材と言えば言える。こういうあたりでテレビ局側も特色を出しているのかも知れない。2時間を超えるドラマで、力を入れて作られていることもよく伝わってくる。内容も高い水準を保っており、実際にいろいろな賞を受賞している(実際、受賞にふさわしいドラマであると思う)。賞取り作家としての山田太一の面目躍如とも言えるのではないだろうか。
1995年度ギャラクシー賞奨励賞、1995年日本民間放送連盟賞ドラマ部門最優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-09-05 07:02 | ドラマ

『風になれ鳥になれ』(1)〜(3)(ドラマ)

風になれ鳥になれ(1998年・NHK)
 第1話「山からの帰還」
 第2話「加害者たち」
 最終回「ふたり」
演出:黛りんたろう、加藤拓
脚本:山田太一
音楽:川崎真弘
出演:渡哲也、高嶋政伸、田中好子、坂上二郎、富田靖子、山田吾一、小林恵、草野康太、川上夏代、日下武史、梶原善、村井国夫、根岸季衣、倍賞美津子

放送時見たという記憶だけがあった

b0189364_20511246.jpg 全3話構成で、ストーリー設定は一貫しているが、それぞれの話ごとに独立したエピソードが盛り込まれるという『男たちの旅路』方式、あるいは『タクシー・サンバ』方式の山田ドラマ。
 舞台がヘリコプター運用企業というのもなかなか意外で、目の付け所が良いのは山田太一らしい。今のドラマだったらこの舞台設定だけでそれなりのドラマに持っていかれそうだが、山田ドラマではそれだけで終わらない。いろいろな問題をかかえた人がやってきて、いろいろと問題を起こす。受け立つ側、つまりヘリコプター会社側の人々も、それぞれ大なり小なり問題をかかえていて、こういったトラブルメーカーたちとシンクロしていく。非常に良く練り上げられたストーリーで、しかも山田ドラマらしくセリフに説得力があり、また面白さもある。会話劇のようなセリフが多く、セリフがつまらなかったら到底見ていられないが、どのセリフも味わいがあるので、まったく退屈しない。第1話では、日下武史が長ゼリフで老後の生活の絶望状況を滔々と語るが、舞台俳優、日下武史の面目躍如という素晴らしい演技。これに応戦するのは渡哲也で、『男たちの旅路』の吉岡司令補ばりに「語る」。良いシナリオである。脇の山田吾一のセリフも良い。
 第2話は、親子関係などが持ち込まれ、これも重いテーマであるが、(問題が解決するわけではないが)気持ちの良い終わり方をする。かなりいろいろな要素が持ち込まれて、下手をするとゴチャゴチャでとりとめがなくなるが、そつなくまとめているのは脚本家の技量である。
b0189364_20511779.jpg 第3話は、ちょっとばかりリアリティを欠いたストーリーで、少々残念。演出もありきたりで少したわいない感じさえする。さすがに傑作を3話並べるのは難しかったか。とは言え、第3話も決してダメではないんであって、第1話、第2話がよくできているため少々見劣りがするという程度である。
 キャストは、山田ドラマには珍しい面々が多く、渡哲也、田中好子、坂上二郎が過去1、2回出演している程度ではないか。ベテランの山田吾一、日下武史、村井国夫あたりは、実力者であるにもかかわらず今まであまり山田ドラマには絡んでなかったわけで、それを考えるとこの頃になって初めて(かどうかわからないが)出演するというのも逆に珍しい感じがする。とは言え、どのキャストも好演で、演出も素晴らしい。第1話の山のセットは少しチャチだったが。
 ここのところ、CSの日本映画専門チャンネルで、毎週のように山田ドラマを放送していて、定期的に(ビデオではなく)テレビ放送で山田ドラマにアクセスできる環境があるわけだが、これだけのグレードのドラマを毎週見られるという状況を思うと、なんだかすごく贅沢な気分がする。もちろんこれまで結構DVDに撮りためているし、買ったDVDもあるわけで(しかもまだ見ていないし)、そういう想いは少し矛盾していると言えるんだが、それでもしっかりしたドラマを定期的に見られるというのは非常に贅沢だと感じる。それは今みたいなドラマ不毛の時代だからこその感慨なのかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『タクシー・サンバ (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-09-03 06:50 | ドラマ

『ドラマ 東京裁判』(1)〜(4)(ドラマ)

ドラマ 東京裁判 第14話(2016年・NHK)
演出:ピーター・フェルフーフ、ロブ・キング、高橋陽一郎
脚本:ロブ・キング、高木徹、ケース・ファンバイナム、マックス・マニックス
出演:ジョナサン・ハイド、ポール・フリーマン、マルセル・ヘンセマ、イルファン・カーン

東京裁判の判事側の葛藤

b0189364_20270779.jpg 極東国際軍事裁判(通称、東京裁判)で判事を担当した11カ国の法律関係者にスポットを当てたドキュメンタリードラマ。
 東京裁判は、ニュルンベルグ裁判に準じて、戦勝国が敗戦国の首脳を裁いた法廷で、法に準拠して不正を断罪するという建前に立っているが、実際には、1928年のパリ不戦条約(!)あるいは事後法に準拠して個人の罪を裁いたりなど、あちこち矛盾だらけである。目的は、敗戦国への政治的な介入であり、戦争を起こした人々が再び指導者として戻って来れないようにするというものである。したがって、裁判みたいな建前をとっていても始める前から結果はわかっており、基本的に起訴された被告人は有罪という前提に立っている。
 連合国から指名された各判事も当初は連合国側のこのような意向を汲んで、ニュルンベルグ裁判同様、その方向で決着を付ける予定だったが、インドのパール判事やオランダのレーリンク判事がこの裁判の正当性への疑問を提示したあたりから紛糾しはじめ、途中ウェッブ裁判長が帰国させられるなど、いろいろな問題が噴出して、結局結審するまでに2年以上かかってしまう。そのあたりのいきさつをドラマ仕立てで紹介するのがこのドキュメンタリードラマである。主人公はレーリンク判事に設定されている。50分×4回シリーズである。
 法廷のシーンは、実際の映像をカラー化したものが使われており、判事の部分だけがドラマ用に撮影された映像になっている。新しく撮影された判事の映像は、さまざまな視覚効果を加え、実際の当時の映像との違いがわかりにくくするというような心憎い演出も加わっており、法廷シーンはなかなかのものである。
 ただしどうしても判事たちの心境の変化や葛藤を中心に描くため、裁判自体がどのように進行したかがよくわからない。結局判事たちの人間ドラマに終始してしまっている。もっともこれはどこに焦点を当てるかという問題であるため、仕方ないとも言える。
 東京裁判を描いたドキュメンタリーには、小林正樹が監督した『東京裁判』という映画があって、裁判の進行を時系列で描きながら、パール判事の反対意見なども詳細に紹介していて、非常に印象的な優れた作品になっていた。このドラマは、あの作品とは少しアプローチが違うが、しかしそれなりに見所もあり、ドラマとしても面白く仕上がっている。何より一部の判事の法律家としての立場と、戦勝国の人間として政治的な役割を果たすべきとする立場との葛藤がなかなか興味深い(特にレーリンク判事。だから主人公にしたんだろうが)。ドラマの中では、レーリンク判事と(『ビルマの竪琴』の作者である)竹山道雄や在日ピアニストのエタ・ハーリッヒ=シュナイダーとの交流なども描かれて、彼の人間らしさがアピールされている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『昭和史 戦後篇(本)』
竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-09-01 07:26 | ドラマ

『ショージ君の青春記』(本)

b0189364_20434062.jpgショージ君の青春記
東海林さだお著
文春文庫

イタさ爆発……だが
イタいも辛いも酸いも青春


 マンガ家、東海林さだおの自伝。
 女性とうまく行くことばかり夢想し現実がそれに追いついてこないという、かなり恥ずかしい過去を赤裸々に描いている。「かなり恥ずかしい」と言っても、もちろん自分自身も若い頃は似たようなもので、と言うよりかなり思い当たるフシがあることばかりで、思わず苦笑してしまうような内容である。したがって非常に共感できる。
 そういうちょっと痛い(「イタい」と書く方が適切か)高校生時代から、一浪した後何とか引っかかった早稲田の露文(ロシア文学)時代までが描かれる。主人公(つまり著者の分身であるが)の人生は結構場当たり的でしかも楽天的だが、これは若い者に共通の特性でもある。大学生になった後も痛いことだらけで、読んでいてこちらも少し痛ましさを感じる。露文自体、女の子にもてそうというような非常に安易かつ不純な動機できわめて場当たり的(直前まで美術史学専攻予定だった)に選んだため、入ったは良いがロシア文学にもなじめず、ロシア語がいつまで経っても記号にしか見えず「これをどうしろというのだ」と自問する日々。このような暗黒の日々をしばらく送るが、やがて漫画研究会という居場所を見つけ、そこで福地抱介や園山俊二に出会う。その後、マンガ家になる決心をするが、その後もかなり痛い話が続く。
 文体は東海林さだおらしく、ユーモア溢れる柔らかいタッチで、しかも他のショージ君シリーズみたいな、妙なこだわりを発揮するような箇所もあちこちにある。どんどん読み進めるので読むのは苦にならないが、自分自身の恥ずかしい青春時代をほじくられているような気分になることもあるためそのあたりが苦になる。だが青春ものとしては出色の作品ではないかと感じる。でもよくこんな若者がマンガ家としてやっていけるようになったなあとも思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『さらば東京タワー(本)』
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『地を這う魚 ひでおの青春日記(本)』
竹林軒出張所『白土三平伝 カムイ伝の真実(本)』
竹林軒出張所『「ガロ」編集長 私の戦後漫画出版史(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の青春(映画)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…(本)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (7)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (2)〜(4)(本)』

# by chikurinken | 2017-08-30 06:43 |

『さらば東京タワー』(本)

b0189364_20390178.jpgさらば東京タワー
東海林さだお著
文春文庫

ショージ節健在の一冊

 マンガ家、東海林さだおのエッセイ集。第何弾かはわからない。この人、40年ぐらい前からこのテのエッセイを書き続けており、単行本も相当な数になるんではないかと思う。僕も著者のエッセイを読んだのは30年ぶりくらい。本書のエッセイは初出が2010年であるため、初期のものから数えるとかれこれ40年ぐらいか。それのそのはず、著者はすでに79歳。中に老人の性についての対談があり、著者自身は老人の問題を第三者的に見ているフシがあるが、実はど真ん中である。
 お掃除ロボット、ルンバとの接し方や東京タワー訪問記と、ネタは例によってさまざまだが、内容は昔と変わっていない。あれやこれやに対してのコダワリや怒りがユーモラスに表現されていて、ショージ節の健在がうれしい。中でも面白かったのは「オノマトペ大研究」と「相田みつを大研究」の2編で、前者が日本語の擬態語についてこだわり抜いた一編、後者が相田みつをの詩の分析(といっても概ね茶化しているんだが)。
 つまらなかったのは平松洋子という人との対談で、面白味がない上、何が言いたいのかよくわからないと来ている。他の対談(老人の性欲に関するものと、社交ダンスに関するもの)が東海林さだおの特徴が出ていて非常に面白かっただけに、平松対談については数合わせで入れたのかと思わせるグレードの低さだった。それでもまあ、ほとんどは独特の世界観(?)で貫かれており、しかも(やはりというべきか)エンタテイメント的要素も存分に散りばめられているため、十分楽しむことができる。この人みたいに、文章自体で面白さを表現できるという人もそういないんじゃないかな。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『かつをぶしの時代なのだ(本)』
竹林軒出張所『山手線内回りのゲリラ(本)』
竹林軒出張所『日本語ぽこりぽこり(本)』
竹林軒出張所『娘と私の部屋(本)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』

# by chikurinken | 2017-08-28 07:19 |

『成功する人は偶然を味方にする』(本)

成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学
ロバート・H・フランク著、月沢李歌子訳
日本経済新聞出版社

運良く得られた金は
運を与えてくれた社会に還元すべきである


b0189364_20555576.jpg タイトルが示す通り、「成功者」と言われる人は運が良かっただけであるということを示す本。もちろん成功者が、才能があり努力をしてきたのは確かかも知れないが、同じだけ才能があって同じように努力した人が必ずしも社会的に成功しているとは限らない。これは『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する』の主張と同じで、取り立てて珍しい主張ではない。
 この本の目玉は、だから富豪からはしっかり税金をとるべきという主張であり、そのための具体的な方策が示されている点である。具体的な方策とは「累進消費税」というもので、消費額に対して累進的な税金をかけるというものである。著者によると、これを実現すれば無駄に高騰した世の中の贅沢品が適正な料金レベルに落ち着く上、現在なおざりになっている公共事業にも金が回るようになり、しかも投資が増えるらしい。この程度の改革でそううまく行くのかははなはだ疑問だが、ましかし(たまたま運が良かっただけの)金持ちからしっかり税金をとらない今みたいな一人勝ちシステムがいつまでも続くとは思えない。彼らからしっかり累進税をとるための理論的根拠にはなりそうな本である。
 惜しむらくは翻訳で、誤訳ではないかと思える意味不明の箇所が数カ所あった。もしかしたら誤訳ではないかも知れないが、少なくとも一度読んで頭にスーッと入るような文章ではなく、何度か読んだが結局意味不明という箇所が散見される。同じ箇所を何度も読まされる(しかもそれでもわからない)のはあまり気持ちの良いものではない。内容が単純で簡潔なんだから、もう少し読みやすい文章を心がけていただきたいと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する(本)』
竹林軒出張所『天才! 成功する人々の法則(本)』
竹林軒出張所『パーク・アベニュー 格差社会アメリカ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『"新富裕層" vs. 国家 〜富をめぐる攻防〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『EU 租税回避1兆ユーロとの闘い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『銃・病原菌・鉄 (上)(本)』

# by chikurinken | 2017-08-26 06:55 |

『役者なんかおやめなさい』(本)

役者なんかおやめなさい
84歳、日本を代表する名優が語る、60年余の舞台人生

仲代達矢著
サンポスト

b0189364_18430571.jpg仲代達矢の魅力が伝わるが
少々物足りない


 この数カ月間、「日本映画専門チャンネル」で仲代達矢のインタビュー番組を1カ月に1本のペースで都合5回放送されたが(『仲代達矢の日本映画遺産』)、どれも内容が興味深かった上、仲代達矢の魅力が炸裂していた。あの番組を一冊にしましたというような本がこれで、内容は一部あの番組とかぶっている。中村錦之介と殴り合いの喧嘩をした話などはなかなか興味深い。もちろんあの番組のインタビューが全部盛り込まれているわけではなく(そもそもあの番組の書籍化ではないため)、あちらの番組でしか聞けないような話も多い(たとえば『切腹』の撮影中、夜飲み歩いていて明け方旅館に戻ったところ宿に入れてもらえず、路上で寝て一夜を過ごした話とか)。そのあたりをもっと引き出せたらもっと面白い本になっていただろうと思うが、それでも抑えるべきところは抑えている。
 幼少のみぎりから始まり、俳優座養成所時代、出演映画、無名塾について、そして現在と、これまでの半生を語る。仲代達矢の魅力もしっかり伝わってくる。ただ少しインタビュアー(坂梨直子って人)が前に出すぎである。仲代達矢の魅力を伝えるべき本であるにもかかわらず、坂梨直子の魅力も伝えたいという意向なのか。聞き手と話し手の発言が同じ並びで、しかも同じカッコ書きで紹介されているために、ところどころどちらの発言かわからなくなったりする。もう少し工夫があっても良かったのではないかと思う。
 仲代達矢の魅力を本で伝えようという意志は評価するし、内容もまずまずだが、作りについてはいろいろと問題が残った本と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『切腹(映画)』
竹林軒出張所『肉弾(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『他人の顔(映画)』
竹林軒出張所『殺人狂時代(映画)』
竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』
竹林軒出張所『金環蝕(映画)』
竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『姿三四郎(映画)』
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』
竹林軒出張所『上意討ち 拝領妻始末(映画)』

# by chikurinken | 2017-08-24 07:25 |

『プーチンの道』(ドキュメンタリー)

プーチンの道 〜その権力の秘密に迫る〜(2015年・米WGBH)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

怪物プーチンの来し方、行く末

b0189364_18324779.jpg ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がどのように成り上がって、どのような方法で政治を行っているかを紹介、というか告発するドキュメンタリー。
 KGBの職員だったプーチンは、ソビエト連邦崩壊により職を失うが、サンクトペテルブルクで懇意のサプチャーク市長に拾われ、市長が直接手を下せない汚い仕事を引き受けることで頭角を現していく。その後、サプチャークの中央政界進出に伴いプーチンも中央政界に進出。エリツィン大統領の汚い仕事の処理を引き受けたことから、エリツィンにも可愛がられる。
 エリツィンが大統領を退任するにあたり、大統領時代の自身の犯罪行為を追求しない後継大統領としてプーチンを指名するに及んで、プーチン時代が始まる。その後首相に就任したプーチンは、世間的にも認知度が低かったが、ロシア高層アパート連続爆破事件の際にチェチェンの過激派による仕業と決めつけ、チェチェンに対して攻撃を強行したあたりから保守層を中心に支持を集めるようになる。
 このドキュメンタリーでは、この連続爆破事件はFSB(KGBの後継組織)の自作自演で、プーチンが知名度を上げるために仕掛けたものと断定していたが、真相はわからないにしてもかなり怪しいのは確かである。しかもそれを告発した記者や元職員が不当逮捕されたり謎の死を遂げたりしているという事実もある。少なくともこの連続爆破事件とチェチェン紛争で結果的に一番得をしたのは、その後大統領選挙を勝ち抜いたプーチンであるのは確かである。しかも連続爆破事件についての調査も打ち切りにしているなど、怪しさ満載である。
 このドキュメンタリーで描かれるプーチンは、利己主義的な第三世界型の独裁者で、先進国の指導者では断じてない。もっとも先進国とされている米国でも似たようなサイコパスが大統領になっているわけで、先進国の指導者が民主的な存在かというと必ずしもそうではないところが悩ましいところである。米ロの首脳、それから我が国の首相も含め、互いに親近感を感じているように聞くが、そういうのもなんだかわかるような気がする。
インパクトメディア歴史アーカイブ映像部門インパクト賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『暴かれる王国 サウジアラビア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スターリンの亡霊(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドーピング ロシア陸上チーム 暴かれた実態(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『バシャール・アサド 独裁と冷血の処世術(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーで見る 独裁者スターリン(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-08-22 08:08 | ドキュメンタリー

『カメラマン・サワダの戦争』(ドキュメンタリー)

カメラマン・サワダの戦争 〜5万カットのネガは何を語るか〜(1982年・NHK)
NHK総合 NHK特集

人生を駆け抜けた一人の男の軌跡

b0189364_21181994.jpg ベトナム戦争の報道写真で有名になったカメラマン、沢田教一のドキュメンタリー。1982年にNHK特集で放送されたもの。
 学生時代、個人的に報道カメラマンに興味を持ったことから、ロバート・キャパや一ノ瀬泰造などの本を読んでおり、沢田教一についても写真集(『泥まみれの死』)や青木富美子が書いた伝記(『ライカでグッドバイ』)を読んでいる。このドキュメンタリーもどこかで見たというよう記憶があるが、1982年の時点ではまだ沢田教一について僕は知らなかったはず。あるいは再放送を見たのかも知れない。
 この番組は、沢田の13回忌に、奥方の沢田サタさんが教一が戦死した場所(カンボジアの田舎)を訪れるというエピソードをメインに据え、沢田教一の生涯と仕事を追っていくというもの。
 沢田教一は、ベトナム時代、戦場で撮った写真をUPIベトナム支局に売りながら自分の写真を発表していた。報道写真は数年したらネガが処分されるらしいが、沢田は処分前に自らが引き取り、それをサタに送っていた。そのため、当時の他の報道写真家と比べ、ネガがかなり残っていて、サタの手元には5万カットあるらしい。そのネガを追うことで、沢田教一の戦場における足跡や、どのようなものに関心を示したか探る。そして彼の最大の関心事が、戦場における家族や子どもだったということで、実際こういった写真が非常に多いらしい。もっとも彼がピューリッツァー賞を受賞した『安全への逃避』にしても、戦争における家族を描いたもので、こういった点が沢田を他の報道カメラマンと違った存在に押し上げる要因にもなっている。
 沢田の生涯や沢田の写真の特徴を非常にうまくまとめたドキュメンタリーで、古典的な秀作として現在に残っている。DVDは出ていないが、今でもNHKアーカイブスであるいは見られるかも知れない(未確認。一部は見られる)。僕が今回見たのは、今年の6月に『あの日 あのとき あの番組〜NHKアーカイブス〜』という番組枠で再放送されたものである。報道写真家の石川文洋がゲストで、しかも沢田サタさんの今の姿まで映像で登場して(現在92歳!)、サービス精神満点の再放送であった。久々に沢田教一に興味が沸いたんで『泥まみれの死』と『ライカでグッドバイ』をもう一度読もうと思ったが書棚にはなかった。どうやら処分したようだ。僕自身、あの当時から随分日和ったものである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ベトナム戦争関連のドキュメンタリー3本』
竹林軒出張所『フルメタル・ジャケット(映画)』
竹林軒出張所『運命の一枚〜“戦場”写真 最大の謎に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『それでもなぜ戦場に行くのですか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イラク戦争関連の本』
竹林軒出張所『サルバドル 遥かなる日々(映画)』

# by chikurinken | 2017-08-20 07:17 | ドキュメンタリー

『中国映画を支えた日本人』(ドキュメンタリー)

中国映画を支えた日本人 〜 “満映”映画人 秘められた戦後(2006年・NHK)
NHK-BS1 BSプレミアム プレミアムカフェ

中国映画のもう一つの歴史

b0189364_21042266.jpg 太平洋戦争中、中国大陸に建国された満州国は、日本の傀儡国家であったことから日本人が大勢入植し、その日本人向けに満州映画協会という映画会社(いわゆる「満映」)まで設立された。この映画会社、満州人の美人が日本人に恋するという、日本人にとって非常に都合の良いストーリーの映画をたくさん作ったが、同時に李香蘭(山口淑子)というスターまで生み出した。「満映=李香蘭」という図式まである。というか、僕自身はそういう図式でしか満映を知らなかったのだ。
 さてその満映だが、大日本帝国の無条件降伏で戦争が終結すると、当時満映に乗り込んでいた大勢の日本人映画人は、一部帰国したが、その後も当地に大勢残っている。満映自体は、その後乗り込んできた中国共産党が接収し、共産党のプロパガンダ映画を作り始めた。その際、残った日本人映画人は、現地の中国人映画人の指導に当たったり、その後の共産党製作の映画のスタッフとして協力したりしたらしい。この中には内田吐夢などもいたそうだ。当時の中国の映画レベルがあまり高くなかったこともあり、こういった日本人技術者は非常に重宝され、その技術が中国内の映画人に引き継がれる役割を果たしたというのがこのドキュメンタリーの趣旨である。
 僕自身は1980年初期から中国映画を目にしていたが、たまに目にしていた文革時代のプロパガンダ映画の質の低さに辟易していた一方で、1987年の『古井戸』は、そういった映画と異なるレベルの高さを感じてかなり驚いた記憶がある。戦後中国に(特に文化大革命による)映画技術の断絶があったと感じていたため、こういった作品が作れるのかと思い意外性を感じたわけである。なんでもこの映画の主役と撮影を担当したチャン・イーモウ(その後偉大な映画人になるが)は、満映で技術を受け継いだ中国人技術者の弟子筋にあたるらしく、満映の技術を引き継いだ一人ということになる。技術には継承が重要であるということを考えると、これは十分納得のいく話ではある。
 僕にとって、中国映画には韓国映画と違って魅力を感じるものが多いのは事実で、戦前に日本にあった映画技術が継承されたことがその要因なのかどうかはわからないが、もし継承されているのであればそれは中国文化にとってラッキーなことであった。結果的には日本人技術者を引き留めた中国共産党の勝利ということになるのか。なお、その後日本人技術者たちは、中国に種をまいた後、無事帰国を果たしたようである。このドキュメンタリーによると、多くの技術者たちが、満映時代、その後の共産中国時代について、映画人としての彼らにとって素晴らしい時代だったと感じている模様である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『証言 日中映画人交流(本)』
竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』
竹林軒出張所『単騎、千里を走る。(映画)』

# by chikurinken | 2017-08-18 07:02 | ドキュメンタリー