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竹林軒出張所

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ブッチャーとシン

凶悪健在!ブッチャーvsシン両者反則負け(nikkansports.comより)

b0189364_1062540.jpg いやあアブドーラ・ザ・ブッチャーとタイガー・ジェット・シンがまだ現役だってのも驚いたが、相変わらず大暴れしているというのもびっくりだ。
 ブッチャーが68歳、シンが65歳だそうで、同じ時期に一緒にやっていたジャイアント馬場とジャンボ鶴田が鬼籍に入り、アントニオ猪木やザ・ファンクスがとうに一線を引いていることからもそのすごさがわかろうというもの。
 僕がプロレスをよく見ていたのは70年代後半だからすでに30年前だ。その当時全盛だったこの2人がいまだに健在というのも感慨深いものがある。

 僕は藤波辰巳(現・藤波辰爾)が出てきた頃からプロレスをよく見るようになって、佐山聡がマスクをかぶって出てきた頃から一切見なくなった。見始めたのは藤波辰巳の華麗で美しい技に魅了されたからで、見なくなったのは環境が変わってプロレスを見れなくなったためである。タイガー・ジェット・シンもそのころ新日本プロレスのマットによく出ていたが、あの狂乱ファイトがイヤで、心情的にはどちらかというと疎遠な存在であった。逃げまどう観客に襲いかかるわ、リング内でも何をやらかすかわからないわで、そういった恐怖感、嫌悪感が先立っていたのだと思う。なんであれ一定の調和がなければことは始まらない。スポーツであればルールがあるし、舞台であればさまざまな決まり事がある。規則や約束事を破るというのは、確かに一時的には面白い要素が出てくるかも知れないが、見る側にとってはおおむね不快なものである。なんでもかんでも破壊してしまうアナーキーさは、本当のアナーキーさを感じさせられる限り、多くの場合受け入れられないのではないかと思う。そういうわけで、一定の範囲内で無茶をするブッチャーは受け入れられても、何をしでかすかわからないという、ある種の狂気性をはらんだシンは、精神的に受け付けなかった。
 だが数年前、ミスター高橋著『流血の魔術 最強の演技』という本を読んで、シンのあのアナーキーさがすべて計算され尽くしたものであったことを知ったとき、本当に驚嘆したのである。もちろんプロレスが真剣勝負だとは思っていなかったが、ここまで周到に用意されたものであったは思わなかった。ましてやあの「ルール無用の悪党」が本当は心優しい紳士であったなどまったく想像が及ばなかった。そういう意味でも、当時の新日本プロレスの演出はすごかったと言わざるを得ない。
 この項を書くに当たって、タイガー・ジェット・シンアブドーラ・ザ・ブッチャーについてWikipediaで調べてみたのだが、彼らの魅力的な人間性ばかりが書かれていて、リングはあくまでも舞台にしか過ぎないのだということをあらためて認識させられる。
 タイガー・シンは今でも観客を追いかけ回しているんだそうだ。あの人をくったような「ハッスル」の舞台で、狂乱ファイトを繰り広げるとはなかなか爽快である。他の選手のスタイルとかみ合っているのか少々心配ではあるが。やはりまともにあのスタイルを相手できるレスラーといえばブッチャー・クラスでなければダメなんだろうな……などと感じるのである。まあ実際に見たことがないので、実際にどんなことが行われているか本当のところはよく分からないんだが。
# by chikurinken | 2009-08-01 22:21 | 日常雑記

フィリップ・モーリッツ銅版画展

b0189364_19531249.jpg 岡山のギャラリーグロスで、フィリップ・モーリッツというお方の銅版画展をやっている。幻想的というか少し不気味な銅版画で、技法的にはともかく、あまり好きになれないタイプの絵だったため、そのままやり過ごしていた。期間中、何度もコーヒーを飲みに行っているのでたびたび絵は見ていたのだが、モーリッツの世界にあまり興味も湧かなかった。
 エングレーヴィングという技法を使っているので、技法的にはすごいんだが、技法なんてものは銅版画マニアでなければ特に気にも留めないだろう。ちなみにエングレーヴィングというのは、彫刻刀のような道具(ビュランという)を使って銅を彫っていく技法で、上手がやるとさながら木を彫っているがごとく削り進めていくのだそうだ。僕もやってみたことはあるが、思い通りの線を彫るのは困難をきわめる。面白いには面白いが、継続的にやろうという気にはならなかった。非常に難しいので。
 そういうわけで、どういう彫り方をしているのかが気になって、目を近づけて見るばかりで、絵自体にはあまり関心を払わなかった。
b0189364_19564271.jpg で、今日、グロスで「かかし」という作品を何気なく見ていたところ、どうも男女の性器が描かれているような気がしてきたのだ。別に僕がいつもスケベ心でいるというわけではないのである。そう見えるのだ。おそらく意図的にそう表現しているのだろうと思う。というのは、この版画、他の多くの作品同様、どうも終末世界を表現しているようで、70年代という時代背景も影響しているのだろうが、つまり死の世界を表現しているのだ、おそらく。性は生に通じる(生殖は誕生に結びつくからね)ので、死と生という対比なんだろうと自分で納得した。
 この「終末世界」をキーワードとして他の作品も見てみると、何となくその絵画世界が理解できるものも多い。60〜80年代は米ソ冷戦下で、いつ終末世界が体現されるかまったくわからない「不安の時代」だった。それを思うと、モーリッツの「終末世界」もなかなかリアリティが出てくるのである。「12年後」という作品も同じく「終末世界」を表現しているが、中央の骸骨の股間に鳥が巣を作っている。人類亡き後の平和な世界を暗示しているのだろうか。
 「フィリップ・モーリッツ銅版画展 エングレーヴィングの世界」は明日まで。

「フィリップ・モーリッツ銅版画展 エングレーヴィングの世界」
ギャラリーグロス(岡山市北区富田町)
2009年7月17日〜8月1日

12年後(エングレーヴィング、1978年)

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# by chikurinken | 2009-07-31 20:02 | 美術

『仙人の壺』(本)

b0189364_9423352.jpg仙人の壺
南伸坊著
新潮社

 先日紹介した『李白の月』は、本書の続編である。ということは、本書がオリジナルというか第1号である。
 内容は『李白の月』と同様。マンガ(7〜8ページ程度)16本と、各編の後の4ページのエッセイ(「蛇足」というタイトル)で構成されている。中国の怪異談が題材になっている。
 ただし、『李白の月』よりこちらの方が洗練されており、話自体も面白い。仙人話が多いというのも僕好みである。マンガのできもこちらの方がはるかに良いと思う。単純な線でありながら女性が非常になまめかしく……ヨイ。
 同じような内容、装丁でありながら、それぞれの本の版元が違うというのもなかなか変わっていて面白い。

★★★☆

なまめかしい女性……(本書収録「二本の帚」より)

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生々しい女性……(本書収録「二本の帚」より)

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# by chikurinken | 2009-07-30 22:49 |

将棋中継の聞き手

 以前、将棋解説者の善し悪しが将棋中継の面白さの大部分を決めると書いたことがある(参照)が、同じく聞き手も重要である。ほとんどの場合、プロの女流棋士がこの役を務めることになるが、こちらも性格や将棋に対する熱意によって将棋中継が面白くなったり、今一つになったりする。もっとも解説する棋士との相性などもあり、一概にどの聞き手がすばらしいとは言えないかも知れないが(これは解説者の方にも当てはまる)。
b0189364_2037723.jpg 現在、NHK将棋トーナメントでは、矢内理絵子女王(この「女王」っていうタイトル名、何とかならんかね)が聞き手(本人は番組の最初に「司会」を名乗っている)を務めているが、さすがにタイトルホルダーだけのことはあり突っ込みが鋭く、その割におごった感じもなく、好感度が非常に高い。4月に中倉宏美女流二段から交代したのだが、矢内理絵子になるという話を聞いたときはゲーッと思ったものだ。それまで僕の中で非常にイメージが悪く、いつもムッとしている印象しかなかったためである。しかし将棋指しが対局中に怖い顔をするのは当然で、それまで対局でしか見たことがなかったため印象が悪かっただけなのだった。ときどき目にするきつそうな人が、話してみたら意外にいい人だったという感じである。
 NHK将棋トーナメントには、女流棋士が毎年一人参加するんだが、今年は矢内女王が予選を勝ち抜いて参加することになった。出場者が聞き手を務めているというわけで、当然出場する回は別の人が聞き手を務めるんだろうと思っていたところ、今週の放送ですでに矢内女王ではなく千葉涼子女流三段が出ていた。ちなみに矢内女王の対局は来週である。来週も千葉女流らしいから、もしかして将棋トーナメントは2回撮り?と勘ぐってしまう。
 そんなことはどうでも良い。で、以前の将棋解説者ベスト5と同じように、聞き手のベスト5も選んでみようと考えた。おそらく世界初の試みではないかと思う。対象となったのは、銀河戦中継(これがメイン)とNHK将棋トーナメント、囲碁将棋ジャーナル、さまざまなタイトル戦中継などである。

1. 矢内理絵子女王
2. 山口恵梨子女流一級
3. 鈴木環那女流初段
4. 貞升南女流一級
5. 本田小百合女流二段

 将棋ファンでもあまり知らないような名前が出ているが、そこはそれ。
 意外なのは2位に入れた山口恵梨子で、銀河戦で2回見ただけなんだが、18歳にして堂々としており、しかも熱心さ、真摯さがいかんなく伝わってきて、好感度ナンバーワンである。昨年度までNHKに出ていた中倉宏美さんも癒し系具合がとても心地良かったが、うまい聞き手の人がたくさんいたため外れてしまった。この分野、将棋解説者部門よりも激戦である。ベスト10をやっても良いくらいだ。
 このランキングも暫定ということで、今後更新する(かも知れない)。別にしなくても良いって? まあそう言わず……。

お花畑の女王様……

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# by chikurinken | 2009-07-29 20:39 | 日常雑記

マジですか?と聞き返したくなるようなニュース

「「鉄人28号」神戸の街に立て! 震災復興のシンボル」(asahi.comより)

b0189364_915118.jpg マジですか?と聞き返したくなるようなニュースで、しかもそれに対して好意的な報道姿勢も「マジですか?」である。
 僕自身としてはマニアックなものが好きな方で、リアル鉄人を作るという話を聞けば面白そうと思うタイプだ。ただしそれはマニアが集まる場所でやるという前提である。
 ジブリ美術館にある天空の城のロボットなども面白いと思っているし、マッハ号を再現したとかいうのも好意的に感じている。だが、公共の場所に固定するとなれば話は別である。これは、価値観、しかも非常に特異な価値観の押しつけであり、景観に対する冒涜でもある。被災者を元気づけようというコンセプトらしいが、こんなもので元気が出るのか、被災者の皆さんは……。こんなもの作るくらいなら金をくれという感じではないのか(僕であればそう感じる)。要するに僕は、公共の場にこういうマニアックなものを作るということに対して疑義を呈しているわけだ。
b0189364_9154980.jpg 神戸でやるんだから別にいいじゃん、あんたには関係ないじゃんという声が聞こえてきそうだが、そう、これだけで終われば、アホやな、神戸……で終わる話なのだ。だが全国にはおっちょこちょいの首長や金持ちが大勢いるわけ(今の首相見ればわかるでしょ)で、あっちで受けてるようだからうちではマジンガーZを作ろうとか、うちはジャイアントロボだとか言い出す輩がきっと出てくる。間違いない。で、置き場がないから公共の場所に……という発想になる。鉄人くらいならまだ許容範囲だが、そのうち巨大キティちゃんとか巨大セーラームーンとかが現れて街のランドマークになった日には、いずれ住民の頭の中はアルコール発酵することであろう。
 実際、かつて大仏ブームというのがあって、全国で次から次へと菩薩や如来が林立していったことがあった。同じような状況が起こる可能性は高い、日本人の習性から考えると……。であるからして、マスコミをはじめこれを目にした人々は「趣味が悪い」と一蹴していただきたい。変な先例になることだけはご免被りたいものである。

参考:
竹林軒出張所『やっぱりそうなっちゃいます?』
# by chikurinken | 2009-07-28 09:19 | 日常雑記

『李白の月』(本)

b0189364_843285.jpg李白の月
南伸坊著
マガジンハウス

 中国の古典の中から不思議な話を選んでマンガ化したもの。それぞれのマンガは7〜8ページ程度で、その後に「蛇足」というタイトルの4ページのエッセイが付いている。
 奇妙奇天烈な世界が展開され、こういう不可思議な世界が好きな人であれば存分に楽しめるのではないかと思われる。何とも変な世界で、この本自体も独特の雰囲気を放っているような気さえしてくる。マンガは非常によくできていて、絵も美しい。マンガでなければこういう世界に触れることもなかっただろう。
 何度も言うが、めくるめくような変な世界が展開されていき、こちらとしては面白いのかどうか、楽しんで読んでいるのかどうかさえ分からなくなってくる。中国の奥深さを実感させられる。

★★★
# by chikurinken | 2009-07-27 21:50 |

武満徹の「うた」

b0189364_9325779.jpg 武満徹といえば、(難解な)現代音楽で有名であるが、一方で非常にわかりやすいポップソングも相当な数作っている。
 以前は「武満ポップソング」のCDもあまり出ていなかったが、最近では年に1枚くらいのペースでCDが出されており、ファンとしても楽しみが増えたところだ。
 別のところでも書いたが、武満ソングのマイ・フェイバリットCDは、石川セリの『翼 武満徹ポップ・ソングス』というアルバムで、これはなかなか覆ることはないが、新しいCDが出たと聞くとやはり聴いてみたくなる。昨年は林美智子という声楽家が『地球はマルイぜ〜武満徹:SONGS〜』というアルバムを出しており、これも聴いてみたかったんだが、なかなか聴くチャンスがなかった。が、今回、レンタルする機会ができ、喜んでゲットしてきた。
 で、感想なのだが、良いか悪いかは別にして、やはりポップソングは、ポップソング的な歌唱で聴くのが一番じゃないかということ。林美智子という人は、オペラ曲集も出しているソプラノ歌手で、武満ソングも当然のことながら歌曲として歌っている。悪くはないんだが、やはり少し違和感が残る。こういう歌い方をするのであれば、もっと声楽色を弱めて歌った方が、楽曲のコンセプトに合っているんじゃないかと思う。そういう意味で、声楽調歌唱版の武満ソングのアルバムは、僕の中では
 1. 波多野睦美『アルフォンシーナと海』(2曲のみ)
 2. 唐澤まゆこ『なつかしい未来〜日本のうた』(4曲のみ)
 3. 保多由子『見えないこども』
 4. 林美智子『地球はマルイぜ〜武満徹:SONGS〜』
という順になる(ドミニク・ヴィスのアルバムはまだ聴いていない)。うまいとか下手とか、録音や編曲が良いとか悪いとかいうレベルではなく、ポップソング風かどうかという基準である。自然に口ずさむような歌い方が一番合っていると思う。そういう意味でも、僕の中では石川セリ版の牙城は崩れないのだ。

参考:
竹林軒出張所『武満徹・音楽創造への旅(本)』
竹林軒『CDレビュー 武満徹の愛した小品』

# by chikurinken | 2009-07-26 09:38 | 音楽

特別展「建仁寺」……そしてロビーでの皮算用

b0189364_10372836.jpg 先日、岡山県立美術館特別展「建仁寺 -- 高台寺・圓徳院・備中足守藩主木下家の名宝とともに --」に行ってきた。てっきり巡回展かと思っていたが、どうやらここだけで開催ということらしい。いつもはしょぼい展示ばかりでなんだろなーという感じなんだが、今回は随分気張ったようだ。山陽新聞社の130周年記念事業ということらしい。
 とりわけ、建仁寺方丈の大壁画を掛軸にした海北友松の「雲龍図」、「琴棋書画図」、「花鳥図」の3点(8+6+7幅の計21幅)が圧巻。他にも、「なんでも鑑定団」でお馴染みの曽我蕭白や伊藤若冲の軸もある。有名な「豊臣秀吉像」や俵屋宗達の「風塵雷神図屏風」も来る。ただし「風塵雷神図」は最後の1週間だけらしく、まだ展示されていなかった。展示予定の場所には複製が置かれていた。この絵は以前京都で見たしそのときも対して感慨がなかったから、僕としてはなくても別にかまわない。ともかく、県立美術館としては相当がんばった展覧会のようである。
 こういう展覧会の場合は大抵そうなんだが、ほとんどのお客さんは、最初の展示物から順路に従って見ていくので、順路の前の方(つまり最初とその次くらいの展示室)がやけに混んでいる。一般的にこの辺に目玉作品が展示されることはないので、こういうところはスルーして、お目当ての作品の前に早々と移動するのがよろしい(そっちの方が空いていたりする)。今回の展覧会は休日ということもあって意外に混んでいたことだし。

 そういうわけで十分堪能してからロビーに出た。ロビーには例によってお土産物屋というか記念品ショップがあり、普通であれば展示物関連の絵はがきなんかが売られているんだが、今回は単独展示だったせいもあるのか、展示品関連の絵はがきはほとんどなかった。大量に売れ残っても困るからしようがないんだろうが、何点か買おうと思っていただけに残念。
b0189364_10425741.jpg 絵はがきはなかったが、壁に現代作家の(複製ではない)本物の版画が何点か掛けられて、展示販売されていた。ほとんどが木版画とリトグラフで、平山郁夫のなんかもあったんだが、値段に驚嘆しながら見ていたわけだ。もちろん買う意志なんかまったくないから見るだけだったんだが、なんだか展示販売担当の男性店員から話しかけられそうな感じで嫌だなと思いつつ、彼からは少し距離を置くようにしていた。その店員の傍にデッサン風の絵があって、なかなかよく描けているんで(失礼!)少し興味をおぼえていたんだね。で、店員が他の客と話をしている隙にちょっと盗み見(ってほどのもんじゃないけど)していたわけだ。東某という作家で、どうやらリトグラフのようだ。単色なのでたぶん一版なんだろう。値段は8万数千円で、すでに売約済みであった。「51/158」という版番号が書かれている。
 盗み見していたら、会話が終わった店員がいきなり僕に話しかけてきた。セールス・トークになったらかなわないなと思いながら彼の話を聞いていたんだが、すでに売れていたせいか販売の勧誘は一切なく、どちらかと言うと、美術好き、話し好きのおやっさんという感じで、印象は良かった。
 彼によると、何でもこの作家さん、中国で活躍している人気作家で、東京の某デパートの個展では、ほとんど完売だったという。店員は、この作家がいろいろな賞を取っているということもしきりにアピールしていた。この作品は、版番号は51だが、それまでの50点は、中国各地の美術館などに寄贈しているということで、51が最初の版になるらしい。これはすでに売れているので、今から買うということになると「52/158」です、もう初版は売れましたからね……とうれしそうに語っていた。まあこっちには買う気なんかないんだがね。しかし僕にはそんなことよりこの「/158」というのが気になる。これは158枚プリントしたことを表すんだが、通常は50とか100とか切りの良い数字を使うものだ。で、それを訊いてみたんだが、なんでも「158」というのは中国で縁起の良い数字らしく、それで、中国に関係の深いこの作家は「158」にしているんだということ。
 いやしかし、下賤な話だが、たとえば売値の半分が作家に行くとして(その後あるギャラリーのオーナーに話したらもっと行くだろうと言っていた)、予定の108枚が売れたら400万円以上の金額が作家の元に入ることになる。見たところ、6号程度のデッサンで、もしかしたらデッサンをコピーしてリト板に転写しているんじゃないかというような作品である。僕自身もこの技法をよく使っているんで、余計この作品に興味があったんだが、この程度のデッサンであれば描くのにせいぜい2時間、製版に1時間程度である。刷りは他人に(もちろん実費で)やってもらうわけで、そういう風に考えると、大変効率的な商売であることには違いない。
 先述の「ギャラリーのオーナー」にこの話をしていると、彼は「許せませんね」とポツリと言った。

特別展建仁寺 -- 高台寺・圓徳院・備中足守藩主木下家の名宝とともに --
会場:岡山県立美術館
期間: 2009年7月17日(金) -- 2009年8月23日(日)
# by chikurinken | 2009-07-25 10:47 | 美術

『マネー資本主義第4回』(ドキュメンタリー)

マネー資本主義第4回 ウォール街の“モンスター” 金融工学はなぜ暴走したのか
(09年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

b0189364_8382795.jpg リーマン・ショックに端を発する経済破綻の原因を究明しようとするシリーズの第4回。金融工学の導入によってどのように投資市場が拡大し、これがどのように経済破綻につながったかについて解明を試みる。
 このドキュメンタリーでは、「金融工学」を原子爆弾になぞらえて、開くべきではないのに開いてしまったパンドラの箱のようなものとして描いている。つまり正しく活用すべきものでありながら人間の手を超えた巨大な存在としての「金融工学」である。僕としてはそのあたりにすこし違和感を感じた。「金融工学」はそんなに立派なものなのか。これを科学と呼ぶことができるのだろうか。どんな現象でも数学的に解明できるなどという発想自体が非常に傲慢で、本来的な意味で科学的でないんではないか。見ながらそういう疑問を感じるのだが、それに対する答えはなかった。このドキュメンタリーで描かれる人々、つまり「金融工学」に群がって熱狂する人々が、新興宗教関係の人のように見えて仕方がなかった。

★★★
# by chikurinken | 2009-07-24 08:24 | ドキュメンタリー

おとこごころをくすぐる歌

b0189364_1212939.jpg少女期

歌:森田つぐみ
作詞:千家和也
作曲:大野克夫

(あなたにあえて 何かが わかりかけました
何かを つかみかけました)

あなたの前に 出る時だけは
飾りや嘘の ない娘でいたい
涙に濡れた くちづけの中
みつけたものを 大事にしたい
難しい事は 分からないけれど
好きなんです 心から愛しています
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです

あなたの胸に 抱きとめられて
静かに夢を 見る娘でいたい
小鳥が羽根を 休めるように
その手の中で 眠っていたい
恥じらいも何も 忘れそうなほど
好きなんです 何処までも信じています
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです

 またまたアイドル歌謡で恐縮です。
 森田つぐみって人はリアルタイムではほとんど知らなかった。最近、『ベスト歌謡曲100』というアルバムで初めて歌を聴いたんだが、この『少女期』は詞がなかなか男心をくすぐる。「女の子に生まれたこと あなたを知ってから誇りなんです」だと。ちなみに作詞者は千家和也というオッサンで、当時の森田つぐみみたいな乙女が作ったかと思ったら大間違い。残念!
 この千家和也という人、他にも麻丘めぐみの『めばえ』、山口百恵の『ひと夏の経験』や『ささやかな欲望』など、男心くすぐりまくりの乙女歌を作詞している。奥村チヨの『終着駅』なんかもこの人らしい。なかなかの実力派です。
 森田つぐみの歌唱は非常に素直で丁寧。レコード・ジャケットの写真や歌い方から総合すると、優等生タイプの女の子をイメージしているのかなという感じだ。この歌詞に非常に合っていて、一つの表現として見てもかなり質が高い。
 僕の記憶の中には「森田つぐみ」という名前以外ほとんど残ってないので、あまり売れなかったのだろうか。iTunesに入れて1カ月半で30回近く聴いているので、僕にとっては相当フェイバリットな部類に入るんだが。少女期を歌う森田つぐみの映像も見てみたいものである。

参考:
竹林軒出張所『森田つぐみ登場!』
# by chikurinken | 2009-07-23 12:03 | 音楽

讃岐裕子の『ハロー・グッバイ』

b0189364_1030426.jpg 讃岐裕子というアイドル歌手が歌った『ハロー・グッバイ』という歌を聴きたくて音源がないものか探しているんだが、CDも現在出ておらず、なかなか手に入れることができない。この歌は、もともとアグネス・チャンのシングル・レコード『冬の日の帰り道』のB面の歌(1975年、タイトルは「ハロー・グッドバイ」)で、それを77年に讃岐裕子がカバーしたもの。さらにその後柏原芳恵が再びカバーしてヒットしたようだ(81年)。柏原芳恵バージョンについては、ほとんど知らない。当時テレビも見ていなかったし、歌謡界にもまったく興味がなかったから。ただ、柏原カバーについては印象が悪い。当時、アイドル歌手がカバー曲を(さも自前の歌であるかのように)シングルで出すというのがちらほらあったが(『まちぶせ』(81年)、『素敵なラブリーボーイ』(82年)など)、そのどれもがこちらの気持ちを踏みにじるようなもので、とても気分が悪かった。それに企画が安直すぎるっちゅうの。
 まあ、そんなことはどうでもよい。『ハロー・グッバイ』だ。讃岐裕子の『メリー・ゴーラウンド』という再発CDがあって、これが出回っているにはいるんだが、なにぶん復刻されたのが10年以上前でとうに絶版状態。入手するのはほぼ不可能である。『ハロー・グッバイ』が単独で入っているCDも『Jアイドルアンソロジー』(EMIミュージック)というコンピレーションで出てはいるが、まったく買う気にはならない。6枚組15,750円というもので、しかも他の曲(約100曲)はほぼ不要だもんで。
 僕の場合、基本的にiTunesやiPodに入れて聴きたいんで、音質はどうでもいいからなんとかMP3(またはAAC)形式で入手する術はないかということで、iTunesストアなどでもチェックしているんだがまったく出てこない。カセット・テープに入っているものでも残っていれば、変換する術もあるというものだが、それすらすでになくなっている。
 ところが、先日YouTubeに『ハロー・グッバイ』が登録されていることが分かった。歌の再生中、画面にはシングル・レコード・ジャケットがずっと表示されるという、ビデオとしてはどうかなと思うような動画ではあるが、こっちは音楽だけが欲しいので最適と言えば最適。で、これをなんとかMP3に変換する方法はないかいろいろ調べていたところ、flashビデオから音だけを抽出するソフトがやはりあるようで、それを使ってみた。iExtractというソフトがそれで、インターフェイスがものすごくわかりやすく、抽出作業が当たり前のように完了した。おかげでiTunesに『ハロー・グッバイ』を加えることができたのだった。iExtractの作者さん、『ハロー・グッバイ』をアップロードしてくれたお方、ありがとう。
 讃岐裕子の『ハロー・グッバイ』、さわやかな歌声がとても良い。

注1:当方MacOS X環境です。
注2:こういうものには著作権法上の問題が常につきまといますが、著作権うんぬんと言い張るなら、売り手の責任としてちゃんと継続的に発売しておくべきじゃないかと、1ユーザーとして思っております。
注3:讃岐裕子版の『ハロー・グッバイ』もカバーですが、B面からのカバーということで、意味合いはまったく違うと思います。当時僕はアグネス・チャンのシンパでしたが、彼女の『ハロー・グッドバイ』は讃岐版が出た後に知ったくらいです。

参考:
竹林軒出張所『讃岐裕子、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!』
竹林軒出張所『ゆけゆけ裕子、どんとゆけ!』
竹林軒出張所『復刻終結宣言 またはメリー、メリー・ゴー・ラウンド』
# by chikurinken | 2009-07-22 10:26 | 音楽

『ケンとカンともうひとり』(本)

b0189364_8171093.jpgケンとカンともうひとり 松下竜一 その仕事27
松下竜一著
河出書房新社

 松下竜一の子ども向けの小説で、自身の家族、子どもたちをモデルにしたもの。自然に親しむ優しさにあふれた家族が子どもの視点から描かれており、自分の子ども時代を懐かしく思い出した。子どもたちを見つめる作者の目も慈しみに満ちていて優しい。
 文章にちりばめられた情景描写が非常に美しく、まさに珠玉のような名編である。
 童話作家としてもそのポテンシャルを示した松下竜一会心の著。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『暗闇の思想を(本)』
竹林軒出張所『明神の小さな海岸にて(本)』
竹林軒出張所『ルイズ 父にもらいし名は(本)』
竹林軒出張所『あぶらげと恋文(本)』
竹林軒出張所『五分の虫、一寸の魂(本)』
竹林軒出張所『潮風の町(本)』
竹林軒出張所『小さなさかな屋奮戦記(本)』
竹林軒出張所『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記(本)』
# by chikurinken | 2009-07-21 07:59 |

リニューアル・オープン

b0189364_930052.jpg 介護ライターの野田明宏氏のホームページがリニューアルしました。僕も製作に一枚かんでおります。BiND(ホームページ作製ソフト)とID(フラッシュ動画作成ソフト)というソフトを使って作りました。とっても使いやすいソフトで感覚的にホームページを作ることができます。ただしその分あまり融通が利きません。どこで折り合いを付けるかという問題ですね。まあ、ご覧くださいませ。
 リンク:野田明宏ネット

 リニューアル関連でもう一つ。大分県別府市にあるラクテンチがリニューアル・オープンしたということ。といっても、2004年にいったん縮小リニューアルしており、しかもその後休園しているため、今回が二度目のリニューアル・オープンということになる。
 asahi.com記事「別府の老舗遊園地「やめないで」声受け新装オープン」
 「ラクテンチ」と言えば、九州東部で子供時代を過ごした人にとってはまさに楽天地で、初めて訪れたときは楽天地ならぬ驚天動地であった(かなりオーバーではあるが)。それまで、デパートの屋上が最大の遊戯施設であった当時の僕は、本格的な遊園地に行ったのはこれが初めてで、しかもラクテンチには動物園まで併設されていて、それはそれは(本当の意味で)パラダイスであった。ケーブルカーというものに乗ったのも初めてであった(ラクテンチはケーブルカーでアクセスする)。リフトを初めて見たのもここである(なぜかリフトがあったのだ)。象に乗ったのもここが初めてである(というより後にも先にもそれっきり)。
 それが数十年経って(ナイトスクープ的な意味で)パラダイス化していると聞いて、寂しさもあったが、時代の趨勢でしようがないという気もしていた。それでも復帰に対する要望が多数あったということで今回リニューアル・オープンの運びとなったらしい。おそらくわれわれの世代が懐かしさから要望を出したんだと思う。しかしやはり、大規模で豪華なテーマパークが日本中のあちこちにあって比較的簡単にアクセスできる今となっては、生き残るのは難しいんじゃないかと思う。懐古趣味だけで運営していくのは無理だろう。よほどの吸引力を作り出さない限り、近い将来パラダイス化するのは目に見えている。パラダイス化してしまうと、寂しさどころではなく、悲しみや哀れみを誘うようになる。「懐かしい」で終わっているうちが華ではないかと思うんだが……。
 リンク:別府ラクテンチ

懐かしのケーブルカー。これに乗ってアクセス……

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象の花子さん。乗せていただきました……お世話になりました……僕は大人になりました

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「別府ラクテンチ」のホームページより引用

# by chikurinken | 2009-07-20 09:27 | 日常雑記

『ブックカフェものがたり』(本)

b0189364_19243189.jpgブックカフェものがたり
矢野智子、今井京助ほか著
幻戯書房

 これも、とばし読みするつもりで借りて全部読んでしまった本。
 ただしこれは、ムックに近い本で、雑誌感覚で読むべき本だと思う。
 今はやりのブックカフェ9店舗について、その開店のいきさつや利益を生み出す方法などを当事者から聞き出している。ブックカフェなどの開業を考えている人が読めば大変役に立つと思われる。ちなみに僕は一切そういうことは考えていない。それでも、それぞれの店の歴史はそれなりに面白いものである。
 終わりの方にブックカフェ開業講座があるが、これもあるブックカフェのオーナーによる経験談で、前半部分の続きと考えることができる。このタイトル(「ブックカフェ開業講座」)を見ても分かるが、やはりこの本の対象は、ブックカフェ開業を夢想している人になるんだろう。ちなみに僕はまったくそういうことは考えていない。あ、さっきも言ったか……

★★★
# by chikurinken | 2009-07-19 19:26 |

カバー曲にまつわるあれこれ

b0189364_12572049.jpg 最近、カバー曲のCDが多い。
 おそらく、金を持っている中高年層のサイフを当て込んでいるのだろうが、安易と言えば安易である。
 僕はカバー曲が結構好きで、聴くチャンスがあれば、借りたり買ったりしてよく聴いているのだが、さすがにこれだけ出てくると、ひどいものも出てくる。うまい人が歌えばカバーも別の味わいが出たりして面白いのだが、あまりうまくない人というか表現力が欠如している歌手が歌うと、これは完全にカラオケになってしまう。下手なカラオケは聴きたくないもんね。
 個人的な印象では、カバー曲ブームの走りになったのが中森明菜の「歌姫」シリーズではないかと思う。最初の『歌姫』が1994年、その後『歌姫II』(2002年)、『歌姫III』(2003年)、『艶華』(2007年)と続いて、2008年には『フォーク・ソング〜歌姫叙情歌』が出た。このシリーズの中森明菜は、声がくぐもって歌詞が聴き取りにくいのだが、最初の『歌姫』と『歌姫II』は、別解釈ということでそれなりに面白くもあった。
 だがしかしこれだけ立て続けに出せば、うまく歌えない歌も歌わなければならなくなるわけで、昨年出た『フォーク・ソング』に至っては無惨なものである。声は出ていないし何も表現できていないし、ホントにカラオケになってしまった。鼻歌みたいなものまである。人に聴かせる歌じゃない。しかも、近々また続編が出るらしい。こういうことが続くと、むしろキャリアに傷が付くような気がするがどうだろう。
 カバー集を製作する当事者は、カバー集を出す前にその意義をよく考えた上で出していただきたいと切に思う。

カバー曲集で非常によくできていると思ったもの
原田知世『カコ』『summer breeze』
山崎ハコ『十八番』
高橋クミコ『世紀末の円舞曲』
諫山実生『ハナコトバ〜花心詩〜』
アンジェラ・アキ『ONE』
純名りさ『ミスティ・ムーン』(カバー集というよりスタンダード集ですな、これは)

カバー曲集でよくできていると思ったもの
おおたか静流『恋文』
オムニバス『Queen's Fellows: Yuming 30th Anniversary Cover Album』
原由子『東京タムレ』
中森明菜『歌姫』
岩崎宏美『Dear Friends II』
# by chikurinken | 2009-07-18 13:01 | 音楽