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竹林軒出張所

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『“くたばれ” 坊っちゃん』(ドラマ)

“くたばれ” 坊っちゃん(2016年・NHK松山)
演出:宇佐川隆史
脚本:武藤将吾
出演:勝地涼、山崎努、瀧本美織、遠藤要、左とん平、大川裕明、西尾塁、弥尋

期待は膨らんだがやはり尻すぼみだった

b0189364_7513372.jpg 「愛媛発地域ドラマ」と名うってNHK松山で製作されたドラマで、最近増えてきたNHKローカル放送局製作ドラマの1本。モチーフになっているのは松山らしく夏目漱石の『坊っちゃん』で、『坊っちゃん』にちなんだ登場人物が登場し、青春ストーリーを繰り広げていく。
 冒頭から目を引くシーンで始まり、しかも面白いセリフがどんどん出てきて久々の傑作ドラマかと心躍ったが、途中から平凡になってきて、終いの方ではまったくありふれた展開になってきた。1時間ドラマという制約を鑑みると致し方ないのかも知れないが、期待が大きかっただけに失望感も大きい。この作品のように幽霊が出てきていろいろ奇跡を起こすというストーリーも、よほどうまく見せなければ月並みに終わってしまう。そういう点も最終的にガッカリした理由の1つである。
 主人公は『坊っちゃん』の登場人物である「赤シャツ」の孫(勝地涼)、アパートの管理人は「野だいこ」本人(左とん平)という設定で、つまるところ『坊っちゃん』の話自体が実話だったという前提で話が進む。だがそれはそれとして、「野だいこ」が実在だとしてもすでに140〜150歳くらいのはずで、なんだか少し腑に落ちない。しかも「坊っちゃん」の亡霊(山崎努)や(話の中だけだが)「赤シャツ」自身まで出てきて、ストーリーがご都合主義に陥ったせいか、つじつまが合わないことばかりで納得がいかなくなってくる。そのため(我々の今の世界と別次元で進行している)一種のパラレルワールドだと割り切って見なければならなくなった。
 『坊っちゃん』自体をドラマで再現した部分なども出てきて、これが結構よくできていたりするんで、一番の問題は演出サイドではなく、脚本サイドにあるんではないかと思うが、大風呂敷を広げたは良いが結局収拾がつかなくなってしまったというようなストーリーは、もっともっと再検討して手を加える必要があったんではないかと感じる。地方の放送局が作ったドラマにしてはいろいろな意味で意欲的だっただけに、その辺が少々惜しい。いっそのこと、『坊っちゃん』をドラマ化しちゃった方が良かったんじゃないのなどと考えてしまった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『夏目漱石の妻 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『無垢の島(ドラマ)』
竹林軒出張所『命のあしあと(ドラマ)』
竹林軒出張所『ラジカセ(ドラマ)』
竹林軒出張所『鯉昇れ、焦土の空へ(ドラマ)』
竹林軒出張所『帽子(ドラマ)』
竹林軒出張所『火の魚(ドラマ) 』
by chikurinken | 2016-09-29 07:52 | ドラマ

『夏目漱石の妻』(1)(ドラマ)

夏目漱石の妻 (1)(2016年・NHK)
演出:柴田岳志、榎戸崇泰
原作:夏目鏡子
脚本:池端俊策、岩本真耶
出演:尾野真千子、長谷川博己、黒島結菜、満島真之介、竹中直人、舘ひろし

10月からの新ドラマの中では唯一期待できそう

b0189364_7545075.jpg 夏目鏡子の『漱石の思い出』が原作のドラマ。夏目鏡子は、言うまでもなく夏目漱石の細君である。家族から見た漱石がどんなであるかよくわかるんで、漱石に関心のある向きには非常に興味深い本であるが、今回NHKがそれを原作にドラマを作った。意欲的である。
 主演の鏡子を尾野真千子、漱石を長谷川博己が演じるが、ドラマ自体は並みの部類かなと思う。ただし原作がやはり強烈であるため、今後漱石の狂気ぶりが描かれるようになると、面白い展開になりそうである。
 第1回目は結婚、そしてその後の熊本時代で、鏡子が自殺未遂を企てるというエピソードも盛り込まれており、なかなか目が離せない。漱石の人間性も良く表現されていて面白くなりそうである。ただし長谷川博己の漱石はどうもなんだかピンと来ない。この人、漱石と言うより尾崎紅葉の方がよく似合ってる(というかよく似ている)と思うがどうだろう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夏目漱石の妻』(2)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『漱石悶々(ドラマ)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『こころ(本)』
竹林軒出張所『三四郎(本)』
竹林軒出張所『草枕(本)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
by chikurinken | 2016-09-27 07:55 | ドラマ

『日本は世界一の「医療被曝」大国』(本)

b0189364_843717.jpg日本は世界一の「医療被曝」大国
近藤誠著
集英社新書

またまた画期的な医療本
今度は医療被曝に切り込む


 これも『成人病の真実』同様、近藤誠の著書。この本では、CTスキャンなどに代表される放射線検査によって引き起こされる被曝について説く。
 元々著者は放射線医であることから、この本で語られる内容もきわめて信憑性が高いと考えられる。実際、放射線を使った検査による被曝については、医者は非常に鈍感なところがある。それは多くの医者が何かというとレントゲンやCTを撮りたがる傾向からも実感として感じられる。しかしCTスキャンについては、確かに便利ではあるが、患者は相当量の被曝を受ける。本書によると、機種や浴びせる放射線によって異なるが、多い場合だと25ミリシーベルトを超えるという。ミリシーベルトという単位にまず驚くが、これだけの高線量であれば年に4回受けると100ミリシーベルトという驚異的な値に達してしまう。ちなみに100ミリシーベルトというのは、原発作業員の5年間の上限値である(これでさえ甘すぎるという議論がある。だが厳しくすると仕事にならないという実情があるため甘めに設定されている)。たしかに命に関わるなどという状況であれば、こういった検査も致し方ないが、現在CTは非常に安易に撮られている。何かというと「念のためCTでも撮っておきましょう」ということになる。患者の側でも「CT撮らなくて大丈夫ですか」みたいなことを言う人がいるらしい(本書によると)。以上のような理由から、医師の側も患者の側も安易なCT検査を止めるべきだ、と著者は主張する。ましてや検診でCT撮影を行うことは無意味を通り越して害しかないというのが著者の主張。
 僕自身、この本でCTによる被曝量を知って驚いたが、日本でCT検査があまりにも安易に使われていることはよくわかった。僕自身は検診を一切受けていないのでCTなど生涯受けたことがないが、気に留めておかないと今後何となくCTを撮られたりすることもないとは言えない。日本は特にCT設置台数が多いらしいし、CT神話も蔓延しているようなので、利用者一人一人が注意しないと行けないということなんだろう。このあたりはがんの外科手術と同じで、うかつなことをしていると病院で危害を加えられるため、防衛策として知識が必要というわけである。
 本書には、実効被曝線量の計算式なども紹介されていて、CT検査を受けたときの被曝量を推定できるようになっているが、実際のCTの線量を病院側から教えてもらうことはなかなかできないため、あくまでもこれは推定値でとどまるというのが残念である。それでも指標があるのとないのとでは大きく違う。望むべくは、病院側がもう少しCTのデータに対してオープンになると同時に、医師の側も患者の被曝について敏感になってほしいという結論になる。
 内容は少々専門的な箇所もあるが、他の著書同様、著者の語り口が非常にうまいため、最後まで一気に読める。これを読んだら、少なくとも読んだ人の意識は大きく変わる。CT検査を過去に受けた人、これから受ける予定の人すべてに読んでほしい本である。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『成人病の真実(本)』
竹林軒出張所『これでもがん治療を続けますか(本)』
竹林軒出張所『がん放置療法のすすめ(本)』
竹林軒出張所『どうせ死ぬなら「がん」がいい(本)』
竹林軒出張所『大往生したけりゃ医療とかかわるな(本)』
by chikurinken | 2016-09-25 08:05 |

『古き良きアンティーク文房具の世界』(本)

b0189364_9361424.jpg古き良きアンティーク文房具の世界
明治・大正・昭和の文具デザインとその魅力

たいみち著
誠文堂新光社

選ばれなかった読者の独白

 古い文房具を収集する著者が、自らのコレクションとそれに対する蘊蓄を披露する本。紹介される文房具は明治、大正期のものや、戦前のものが多く、個人的な懐かしさはまったくと言っていいほどない。
 著者はどうやら古い文房具のデザインなどがお気に入りのようだが、著者のようにそういうものに対する嗜好がなければ、この本はあまり面白いものではないかも知れない。僕自身は古いステープラー(ホッチキス)やパンチ、コンパスみたいなメカニカルなものには多少興味を抱いたが、古い消しゴムだのノートだの便せんだのといったものは、ゴミにしか見えない(失礼)。つまりこの本自体が読者を選ぶ本ということになるのかも知れない。残念ながら僕は選ばれなかったようだ。カラー写真がふんだんに出てくるので眺めていればそれなりに楽しくはある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『日本懐かし文房具大全(本)』
竹林軒出張所『さわの文具店(本)』
竹林軒出張所『ボールペン反見える化計画』
by chikurinken | 2016-09-23 09:36 |

『日本懐かし文房具大全』(本)

日本懐かし文房具大全
きだてたく著
辰巳出版

「懐かし」の代表格、それが文房具

b0189364_801319.jpg 『日本懐かし』シリーズは、『日本懐かしオーディオ大全』をはじめ何冊か読んでみたが、その中で一番よくできていたのがこの本。何より著者が文房具に愛着を持っているのがよくわかるし、それに著者の世代だけでなく、かなり以前の時代から後の時代まで割合まんべんなく網羅して紹介している点も好感が持てる。おそらくいろいろな世代が楽しめるんではないかと思う。
 著者は僕より一世代後だが、僕自身が懐かしさを感じる素材が結構あっただけでなく、後の世代が楽しんでいた文房具についても新鮮な目で見ることができた。文房具が、公然と学校に持って行けるオモチャだったという発想も面白い。
 著者は「多面筆入」(表裏だけでなくいろいろな部分が開く筆入)に特に思い入れが強いようで、多面筆入は6ページに渡って紹介されている。また巻末にも、多面筆入開発者へのインタビュー記事(聞き手は著者)が掲載されており、それぞれ(作り手と使い手)の多面筆入に対する思い入れが伝わってくる。マニアの人が愛着物の話をするのは聞いていて面白いものだが、僕自身は多面筆入とはまったく縁のない世代で、多面筆入の写真、あるいは現物を見ても、著者のようにときめくことはまったくない。だがこの本で紹介されているミッキーナイフやタツヤ強力マグネットなどはドンピシャの世代で、小学校低学年時代に触れたものである。こういったものはすでに記憶の彼方にあったもので、かつての記憶がいろいろと蘇ってきた。つまりこれが「懐かし」の感慨である。
 文房具には、僕もそうだが多くの人にとって特別な思い入れがあって、写真を見たりするだけでかつての想い出が蘇ってくるものである。そういう意味でも「懐かし」素材としては恰好のものであり、「日本懐かし」を代表する素材なんだろうと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『古き良きアンティーク文房具の世界(本)』
竹林軒出張所『さわの文具店(本)』
竹林軒出張所『日本懐かしオーディオ大全(本)』
竹林軒出張所『昭和のレトロパッケージ(本)』
竹林軒出張所『昭和ちびっこ広告手帳(本)』
竹林軒出張所『昭和子どもブーム(本)』
竹林軒出張所『ぼくらの60〜70年代宝箱(本)』
by chikurinken | 2016-09-21 22:59 |

『日本語を作った男 上田万年とその時代』(本)

b0189364_9491481.jpg日本語を作った男 上田万年とその時代
山口謠司著
集英社インターナショナル

無駄に長い!
しっかり推敲していただきたい


 現在我々が文章を書くために使う日本語は、ほぼ話し言葉の口語体であるが、明治期の文学などを読むと、擬古文だったり漢文調だったりすることがあり、現代語とかけ離れているため非常に読みにくい場合がある。ではいつ明治文学が口語体で書かれるようになったかというと坪内逍遙や二葉亭四迷が推し進めた言文一致運動がそのルーツだと一般的には言われている。
 ところが先日新聞を読んでいると、書かれたものが言文一致になったのは坪内や二葉亭の功績ではなく、上田万年という人の功が大きいという記述があって興味を抱いたのが始まりである。そこで紹介されていたのがこの本で、これはぜひ読まなければなるまいと思ったわけだ。
 この本500ページを超える大著で、言文一致体の導入にそれだけのバックグラウンドがあるのかと最初は感心していたが、何のことはない、要はこの本の完成度が低いことが(長尺の)原因だった。とにかく引用がやたら多く、しかも話題があちこちに飛びまくって読みづらいったらない。大きく第1部と第2部に分かれているが、第1部は八割方読み飛ばしてもかまわないというような代物で、テーマに関係ない事項が次から次へと繰り出されてくる。もちろんここで紹介される明治期の文化的背景を知ることは大切ではあるが、読んでいる途中で、次々に新しい事項が現れると、どこに連れて行かれるかわからないような不安感に襲われる。しかもそれが,直接テーマに関係しない出来事であることがわかると、読み続けることに無意味さすら感じるようになる。はっきり言って第5、6、8、10、12、13、14、15、16章はなくてもよいし、他の章も半分くらいに削るべきだと思う。さながら(冗長な先生による)学校の講義であるかのように、テーマがどんどん逸れていくというのがこの本の特徴で、そういう点で「言文一致」を実現する必要もなかろうと思う。観念奔逸のように新しいテーマをどんどん盛り込むんではなくて、本として読ませるんだからテーマを一点に絞るべきで、それが良い本への第一歩である。少なくともそれが読者に対する配慮というものである。
 またよくよくこの本を読んでみると、言文一致運動の功が上田万年にあるなどということはまったくもって言えない。上田万年という人は、東京帝大で言語学を教えていた人で、文部省の国語関係の審議会のメンバーも努めていて、書き言葉を言文一致体にすることを国の標準にするため力を尽くした人であるが、最終的に1908年の臨時仮名遣調査委員会では、(本書によると、森鴎外の強烈な反対によって)上田が進めていた新仮名遣いが不採用になっているし、結局のところ大した実績は残していない。坪内や二葉亭の功績の方がはるかに大きいし、言文一致運動もどうも文学界(本書によると、特に漱石の作品)を中心に進んでいったという印象しか残らない。つまりこれだけの大著を一生懸命読みながら、最後はこれかいというオチで終わってしまうと、読む側としてはかなりの落胆を受けることになり、徒労感だけが残ることになる。「日本語を作った男 上田万年とその時代」というタイトルは、「日本語を作った男たち 上田万年の時代」と改める方が中身を正しく表している。結果、無駄にダラダラ長い本で、拾い読みに適した雑学本という結論に落ち着くのだった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『日本文学史 近代から現代へ(本)』
by chikurinken | 2016-09-19 09:49 |

『イランは変貌するか』(ドキュメンタリー)

イランは変貌するか 〜核合意と経済制裁解除のはざまで〜
(2016年・仏Point du Jour)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー シリーズ「知られざる国々の素顔」

b0189364_958529.jpg目新しさはあまりない

 イランが、核兵器開発をしているという疑いを国際社会から持たれたのが2006年、その後国連決議を経て、各国による経済制裁を受けることになった。
 だが2013年に大統領がロウハーニーに変わると、状況が変わり、この核開発疑惑問題についてイランと欧米6カ国の間で再協議が始まることになる。2015年には、イランが条件付きで核施設への査察を受け入れ、各国はイランへの経済制裁を解除するという合意に達して、一応の決着を見た。
 イラン国内では、保守派がこれに反対しているものの、経済の好転を期待する市民も多い。そういったイランの国内情勢をレポートするドキュメンタリー。ただし内容は、ニュース番組のミニ特集コーナーで使われる程度のもので、目新しさはあまりない。今回は、BS世界のドキュメンタリーのシリーズ「知られざる国々の素顔」の1本として放送されたが、サウジベラルーシと比べると、インパクトが格段に小さい。数合わせで放送されたのかとも思えるようなその程度の番組だった。
 ただ、イランの経済制裁解除後を見据えてヨーロッパの企業がイランに押し寄せている様子は、今回初めて見たもので大変興味を引くものであった。EUに加盟したばかりのギリシャやスペインのバブルの時期を彷彿させるような映像で、こういう映像を見ると、イランにもこの後バブルが起こる(そうしてその後経済危機に陥る)のかしらんなどと考えてしまうのだ。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『21世紀の戦争 サイバー攻撃の恐怖(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『暴かれる王国 サウジアラビア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ベラルーシ自由劇場の闘い(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-09-17 09:59 | ドキュメンタリー

『ベラルーシ自由劇場の闘い』(ドキュメンタリー)

ベラルーシ自由劇場の闘い 〜“欧州最後の独裁国家”の中で〜
(2013年・米Great Curve Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー シリーズ「知られざる国々の素顔」

ソビエト型独裁政治の残滓

b0189364_21582745.jpg 東欧に位置するベラルーシ共和国。かつてソビエト連邦に属していたこの国は、ソ連崩壊後、ルカシェンコが大統領に君臨し、ソビエト型の独裁政治を続けている。2011年の大統領選挙では、ルカシェンコの独裁に嫌気がさした市民が立ち上がり、ついにルカシェンコ政権が終わるかという局面を迎えたが、選挙結果の改竄によってルカシェンコがそのまま大統領の座にとどまった。反発した市民や対立候補はこれに対して大規模なデモで応じたが、デモに対して大弾圧が行われ、逮捕者が続出、民意が力ずくで押しつぶされる結果となった。
 こういう現状を訴え続けている劇団がベラルーシ自由劇場である。2011年の大弾圧事件後、メンバーたちは逮捕を恐れ出国、その後数カ月ニューヨークで活動を続けた。アメリカでは大いに評価を受け、ベラルーシの状況をアメリカ人に伝える役割を果たしたが、帰国したいというメンバーが出てきたため、それを機にアメリカでの活動をやめ、ロンドンに移ってロンドンで活動を続けている、というのがこのドキュメンタリーが作られた時点(2013年)での話。
 ベラルーシの独裁の状況が映像でレポートされ、弾圧の様子もよく伝わってくるが、何よりベラルーシ自由劇場の舞台が素晴らしく、独裁政治下でのやるせなさや絶望感までが見事に表現されている。先の見えないベラルーシ情勢だが(ルカシェンコは2015年にも再選されたという)、こういったドキュメンタリーによって現状が伝えられると、我々にとっても無関心でいられなくなる。今後どうなるかわからないが、現代に残されたソビエト型独裁政治の残滓に注目していきたいと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アレクセイと泉(映画)』
竹林軒出張所『暴かれる王国 サウジアラビア(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-09-15 06:57 | ドキュメンタリー

『暴かれる王国 サウジアラビア』(ドキュメンタリー)

暴かれる王国 サウジアラビア(2016年・英Hardcash Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー シリーズ「知られざる国々の素顔」

サウジは想像以上にアブない国だった

b0189364_818157.jpg サウジアラビアの人権侵害の実態を報告するドキュメンタリー。
 サウジアラビアの一般的なイメージといえば、中東の中ではまとも、というかヨーロッパ的な穏健さを保った国というもので、実際アメリカやヨーロッパ諸国、日本の政府も信頼に足る国として付き合っている。巨大産油国で先進国に必要とされていることもあるが、不安定要素が多かったり反欧米主義があふれている中東諸国の中で、比較的穏健かつ平和でしかも先進国的な余裕がある国という印象がある。
 だがその実態はということになると実はあまり知られていない。それはサウジアラビアが国外のジャーナリストの入国を厳しく管理しているからで、先進諸国のように自由な取材が許されていないため、実情が外に伝わることがあまりないのである。しかし実際には、国内で人権を無視した行動が取られており、言論も著しく制限されているらしい。それがこのドキュメンタリーの主旨である。分かりやすく言えば中東の北朝鮮といったところである。
 この番組では、隠しカメラを使って国内を撮影した潜入取材映像が紹介される。富裕国というイメージが強いサウジアラビアであるが、実は貧しい地域も存在し、国民の1/4が貧困層という話にまず驚く。さらにある活動家が政府の方針に対して批判的な意見をインターネットに掲載したために鞭打ち刑と禁固刑に処されたケース(いまだに収監されていて安否がわからないらしい)や、デモに参加した17歳の少年に死刑判決が出されたケース、スーパーみたいな場所で女性が通りすがりの男に蹴倒される状況を撮影した隠しカメラの映像(女性の人権がないに等しいことを示す証拠映像)など、想像以上の実態が明らかにされていく。
 またサウジアラビア国内では、ワッハーブ主義に基づいて反ユダヤ主義、反キリスト教主義が子どもたちに教え込まれており、これがひいては差別的で反社会的な人間を育成することに繋がっていると主張する。サウジが国家として採用しているこの考え方は差別的であり、9・11の実行犯の多くやオサマ・ビンラディンがサウジアラビア出身であったこともこれを裏付けるとする。またこの考え方はISとも共通する思想で、サウジ当局は体外的にISと敵対していることを表明してはいるが実態はISと思想が非常に近いらしい。
 まさに目からウロコの内容で、近くて遠い国サウジアラビアの実態が透けて見えてくるルポルタージュだった。ものごとの判断をイメージだけに委ねるのが危険であるということをあらためて思い知らされた。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像記録 市民が見つめたシリアの1年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ネットが革命を起こした(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ムハンマドたちの絶望(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チュニジア民主化は守れるのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ベラルーシ自由劇場の闘い(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-09-13 08:18 | ドキュメンタリー

エルキャピでもウィンゲーム

 先日の竹林軒出張所『エルキャピタンって何すか?』のところで書いたように、OSをエルキャピタン(MacOS X 10.11)にしたばっかりに、Mac上でWine経由で動いていたWindowsゲーム(『Age of Empires 2』)が動かなくなった。Wineskinのバージョンが古いことがその原因であることは、『Paul The Tall』というサイトで何とか判明し、またアップグレード方法も概ねわかった(YouTube『How to make your old Wineskin wrappers compatible with OSX 10.11 El Capitan』より)。しかし実際にやってみるとこれがうまく行かない。
 要はこういうこと。

当該サイトおよびYouTubeの映像で紹介されているアップグレード方法
『Paul The Tall』の「THE PORTINGKIT」のサイトからPorting Kitをダウンロードして入手(http://portingkit.com/kit/Porting Kit.zip)
● Porting Kit.appを実行
● 表示されるウィンドウで「Library」タブを選択
● すでにインストールされているゲーム(ウチの環境では『Age of Empires 2』)が表示される
● カーソルをアイコンに持っていくと表示される三角(「Play」)ボタンをクリック
● 「Wineskinのバージョンが古い(2.6.0)、2.6.2にアップグレードするか」というメッセージが出る
● ここで「Yes」をクリックすると、Wineskinが新しいものに自動的に変更される予定

b0189364_8221192.jpg 実際は、この後カラーバルーンがいつまでも回り続け作業が一向に始まらない。1時間近く待ってみたが無駄だった。

 で、今回この不具合を解消するために、直接新しいWineskinを「Age of Empires 2.app」パッケージ内にコピーできないかと思っていろいろやっていたら、次の方法がうまくいったので、備忘録を兼ねてここに記録しておこうと思う。

Wineskin配布サイトからWineskin Winery 1.7をダウンロードする(「Wineskin Winery 1.7(click me to download)」をクリック)
● ダウンロード・ファイルを解凍して、Wineskin Winery.appを起動する
● 表示されるウィンドウの「Wrapper Version」の下にある「Update」ボタンをクリックする
● この操作により、Wineskin 2.6.2がどこかにダウンロードされる模様(ロケーションがどこかは不明)
● ダウンロードが終わったら、Porting Kit.appを再び実行して前と同じ手順を実行する
● 今度は前と違って、Wineskinが2.6.2にアップグレードされ(その過程がウィンドウに表示される)、自動的にゲームが始動する

 これで新しいOSでもWindowsゲームができるようになる。実際チェックしてみると、「Age of Empires 2.app」のパッケージ内にあるWineskinのバージョンが2.6.2になっている。僕と同じように困っている人がいたら、この方法を試してみるとうまくいくかも知れない。

参考:
『Paul The Tall』の「THE PORTINGKIT」サイト
Wineskin配布サイト
竹林軒出張所『MacでWindowsゲームをプレイする』
竹林軒出張所『エルキャピタンって何すか?』
by chikurinken | 2016-09-11 08:26 | パソコン