ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

<   2016年 01月 ( 16 )   > この月の画像一覧

『新・映像の世紀 第4集』(ドキュメンタリー)

新・映像の世紀 第4集 世界は秘密と嘘に覆われた(2016年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

疑心暗鬼と欲が世界を混乱させた

b0189364_8154674.jpg 『新・映像の世紀』も佳境に入ってきた。今回は共産圏政府とアメリカ政府がいかに国民を抑圧し、騙してきたかがこれでもかと語られる。
 共産圏が国民に密告を奨励していたことはつとに有名だが、今回は特にアメリカのFBIとCIAによるスパイ活動、破壊活動に焦点が当てられていた。50年に渡りFBI長官を勤めたフーバーは、スパイ活動で大統領を含む政治家たちの弱点を握り、行政と立法に揺さぶりをかけ続けたというし、CIAがリベラルなイラン政府を転覆させるなど非人道的な活動を続けていたことも紹介される。ロナルド・レーガン大統領が当時のソ連を名指しして「悪の帝国」などと批判したが、どちらが「悪の帝国」なんだかわかりゃしない。なおこのロナルド・レーガン自身、若い頃、FBIのスパイだったらしく、赤狩りでハリウッドの映画人を失脚させることに大いに貢献したらしい(結果的に売れない俳優だったレーガンが名前を上げることになった)。この事実は今回初めて知った。
 第二次大戦終了後、ソ連とアメリカがナチスの軍事技術者を引き抜きあったという事実も明らかにされている。つまり米ソはナチスの軍事技術の正当な継承者ということになる。これが核開発競争を誘発して、結果的にキューバ危機を招くことになった。1962年10月28日にはまさに一触即発の事態になったが、ソ連内のアメリカのスパイからもたらされた情報が役立ち危機回避につながったという話は、非常にスリリングである。一方でキューバ危機のときに、ソ連に核先制攻撃を仕掛けろとケネディをそそのかした空軍参謀総長カーティス・ルメイの話も出てくる。あの国の支配者にはまともな思考ができる人が少ないのかと思ってしまうような事実であえる。
b0189364_816438.jpg またアメリカのベトナムへの介入も当然のごとく紹介される。同時にソ連がアフガニスタンに軍事侵攻したこともベトナム戦争のソ連版として扱われており、これが、現在の中東の不安定要素を作ることになったこともしっかり紹介されている。
 全編、大国のエゴで人々が苦しめられてきた歴史が次々に当時の映像と共に披露され、大きなインパクトがある。これまで『新・映像の世紀』シリーズは物足りないと感じてきたが、この第4集は別で、現在に通じる歴史として現代史にアプローチしている点を評価したい。また権力者が自らの欲のために世界を混乱に陥れてきたという現代史の側面をあぶり出しているのも素晴らしい。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第1集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第2集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第3集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第5集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第6集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第5集〜第8集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第9集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史 (5)〜(7)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フルシチョフ アメリカを行く(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『博士の異常な愛情(映画)』
by chikurinken | 2016-01-31 08:16 | ドキュメンタリー

『源氏物語 浮舟』(映画)

b0189364_2154135.jpg源氏物語 浮舟(1957年・大映)
監督:衣笠貞之助
原作:北条秀司
脚本:八尋不二、衣笠貞之助
出演:長谷川一夫、山本富士子、市川雷蔵、乙羽信子、三益愛子、中村鴈治郎、中村玉緒

歌舞伎ばりの大げさな演出と
過剰なセンチメンタリズムに辟易


 『源氏物語』宇治十帖の「浮舟」を映画化したもの。
 薫に長谷川一夫、匂宮に市川雷蔵、浮舟に山本冨士子と大映らしい豪華絢爛なキャスティング。ではあるが、薫の長谷川一夫が年を取り過ぎてはいないか。薫は27歳の設定のはずだが、撮影当時、長谷川一夫は50歳。二重顎の中年オヤジで、どうにも美しくない。一方の雷蔵は当時26歳で、なかなか立派な匂宮である。ではあるが、リアルさを追求したせいか、お歯黒やメークが不気味(これはすべてのキャストに言える)。
 演出はやけに大げさで、歌舞伎と見まがわんばかりである。しかも義太夫並みに湿っぽくて、どうにも辟易する。セットは立派なものをしつらえているが、こちらもどことなく舞台を思わせるもので、映像の中ではあまり見栄えがしない。総じて50年代の日本映画の悪い部分ばかりが前面に出てきているような映画である、そういうふうに感じた。正直、見終わるのに疲れた。
★★

参考:
竹林軒出張所『新源氏物語(映画)』
竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版(1)〜(10)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 (上)(中)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 (下)(本)』
竹林軒出張所『地獄門 デジタル・リマスター版(映画)』
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
by chikurinken | 2016-01-29 07:04 | 映画

『新源氏物語』(映画)

b0189364_7594931.jpg新源氏物語(1961年・大映)
監督:森一生
原作:川口松太郎
脚本:八尋不二
出演:市川雷蔵、寿美花代、若尾文子、中村玉緒、水谷良重、高野通子、市川寿海

キャスティングと時代考証が命だが

 『源氏物語』の「桐壺」から「須磨」あたりまで(全体の1/4程度)を1時間40分にまとめたスーパーダイジェスト版源氏。
 光源氏を演じるのは市川雷蔵で、こちらは申し分ないんだが、源氏が憬れ続ける藤壺は寿美花代が演じる。寿美花代には悪いがまったく華がなく、これはミスキャストである。それから紫上は年を取り過ぎだし、醜女のはずの末摘花がちょっと素敵だったりして(水谷良重)、もう少し原作を踏まえてキャスティングしても良いんじゃないかと思う。時代考証も少々疑問が湧くようなもので、信用して良いものかどうか。こちらももう少ししっかりやってほしかったと思う。
 全体的にはよくまとまっていて、ストーリー的には流れがしっかりできている。登場人物の描きわけもある程度できているし、ダイジェストとして見ればまずまずの『源氏』ではないか。とは言え、物語としては色恋の話ばかりで(僕にとっては)まったく面白味がない。雷蔵が魅力的なこともあり、女性にとっては面白い作品になっているのかも知れない。
 須磨に流されたあたりでストップしているため、まだまだ続編があるのかと思ったが、どうも作られていないようである。あまりヒットしなかったんで続編をやめたのかよくわからないが、まあ正解だろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『源氏物語 浮舟(映画)』
竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版(1)〜(10)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 (上)(中)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 (下)(本)』
竹林軒出張所『炎上(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
by chikurinken | 2016-01-27 08:00 | 映画

『恍惚の人』(映画)

b0189364_824181.jpg恍惚の人(1973年・芸苑社)
監督:豊田四郎
原作:有吉佐和子
脚本:松山善三
出演:森繁久彌、高峰秀子、田村高廣、乙羽信子、篠ヒロコ、伊藤高、市川泉、野村昭子、浦辺粂子、中村伸郎、杉葉子、吉田日出子


森繁の怪演とデコの名演が光る

 有吉佐和子の同名ベストセラー小説の映画化。認知症(映画の中では老人性「痴呆」)を扱った初期の文学作品で、当時非常に話題になった。「恍惚の人」という言葉も流行語になった。同時に認知症を世間に知らしめる役割も果たした作品である。
 小説は1972年に発表され、翌年に映画化されたのがこの作品で、ブームに乗っかったというようなタイミングであるが、作品は非常に硬派な作りで、80年代の角川映画みたいな軽薄な感じはまったくない。
 監督は「文芸映画の巨匠」豊田四郎で、演出は終始手堅い。コントラストの強いモノクロ映像が、ドキュメンタリータッチの味わいを醸し出している。脚本は職人芸の松山善三で、こちらもシンプルで手堅い、引き締まった脚色である。
 この映画の最大の見所は、「呆け老人」役の森繁久彌で、ホンモノかと見まがうばかりの怪演ぶり。また終始振り回される嫁役の高峰秀子もすばらしい演技で、元気な頃自分をいじめていた舅に対して当初は嫌悪感を持って接していたのが、徐々に舅に対して情が移ってくる様子が絶妙に表現されている。
 雨で老人が傘もささずに出歩き、それを嫁が追い駆け回るシーンが非常に多いことから、森繁と高峰はさぞかし苦労したんではないかと思う。それに(低予算だったためか知らないが)やけにロケが多いのもこの映画の特徴で、街中での撮影はさぞかし大変だったんではないかと勝手に推測している。
 老人が突然おかしくなって家族が振り回され、それでも周囲のサポートがなかなか受けられない状況は今でも共通する部分であり、根本的に変化はないが、しかし少なくとも現在では、そういった患者に対して対応する施設が増えているのも事実。また行政が以前より取り組んでいる、あるいは取り組まざるを得なくなっているのも事実で、この映画の時代よりはまだマシになっている気はする。そのきっかけになったのがこの原作小説であることを考えると、価値は高いと思う。原作を見事に映画化したこの映画にも敬意を表したいところである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夫婦善哉(映画)』
竹林軒出張所『雁(映画)』
竹林軒出張所『名もなく貧しく美しく(映画)』
竹林軒出張所『乱れる(映画)』
竹林軒出張所『このところ高峰秀子映画が多いことについての弁明』
by chikurinken | 2016-01-25 08:03 | 映画

『素晴らしき哉、人生!』(映画)

素晴らしき哉、人生!(1946年・米)
監督:フランク・キャプラ
原作:フィリップ・ヴァン・ドレン・スターン
脚本:フランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット、フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・スチュワート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、ヘンリー・トラヴァース、トーマス・ミッチェル

b0189364_22315356.jpgBTF2のネタ元

 「自分なんか生まれない方が良かった」などと考えてしまうのは多くの人に共通する経験だが、実際自分がいなくなってしまうとどうなるかなんてことは誰にもわからない。そのことが具体的に示され、自分の存在価値について思い知らされるなどということがあればそれは確かに良いものだが、自分がいなくなってしまえばそれを確認する術さえないのだから、実際には永遠に知り得ない事象である。
 この映画のストーリーはそのあたりからイメージして作られたんじゃないかと勝手に考える。利己主義の金持ち有力者からさんざん嫌がらせを受けながらも、底辺の人々のために尽力するという「アメリカの理想」を体現したような男が主人公で、その男が例の有力者にいよいよはめられて人生が行き詰まってしまい、「自分なんか生まれない方が良かった」と考えるところから話が急速に動く。そういうストーリーである。
 「アメリカの理想」みたいな高潔な男を演じるのはジェームズ・スチュワートで、『スミス都へ行く』を思わせるようなキャラクターである。しかもこの男、自分のやりたいことを棒に振って家業を継ぐなど自己犠牲の精神もあって、おそらく誰からも愛され受け入れられる人物なのだ。
 ストーリー自体は天国の世界から話が始まるなどSF的であり、一種のパラレルワールドが現れたりする。このパラレルワールドのあたりは、おそらく『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2』の2015年のシーンのネタ元になっていると推測される(まず間違いないだろう)。
 周りの人々を幸せにするような善人が出てくる話はそれ自体心地良いもので、悪者とどう関わらせるかというのがストーリーの要になって、その辺の折り合いをどう付けるかがポイントだが、その辺は非常にうまく処理されている。こういう映画を見ると、人はやっぱり「正しい」ことが好きなんだなと思う。あらためて性善説に思いを馳せる。すがすがしい映画である。
★★★☆

追記:
 画面に映される1920〜30年代の映像が、ノーマン・ロックウェルの絵を彷彿させるようなものばかりで、古き良きアメリカが表現されているのもポイントが高い。

参考:
竹林軒出張所『「バック・トゥ・ザ・フューチャー」2本(映画)』
竹林軒出張所『グレン・ミラー物語(映画)』
竹林軒出張所『ウィンチェスター銃'73(映画)』
竹林軒出張所『ノーマン・ロックウェル アメリカの肖像(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グランド・ホテル(映画)』

--------------------------

 以下、以前のブログで紹介した『スミス都へ行く』のレビュー記事。

(2004年7月12日の記事より)

b0189364_22321355.jpgスミス都へ行く(1939・米)
監督:フランク・キャプラ
原作:ルイス・R・フォスター
出演:ジェームズ・スチュワート、ジーン・アーサー、クロード・レインズ、エドワード・アーノルド

 まず60年前と今の政治状況がまったく変わっていないことに驚く。
 ある環境に場違いな人間が入ってきて引き起こされる騒動は、どのような話でもなかなか面白いものだが、それをアメリカ上院に置いて政治の不正を告発するという展開に持ってきたのは、なかなかである。
 不正を行っている勢力による妨害工作はリアリティがあり、そら恐ろしいものがある。状況が今の日本にもぴったり合うのも嘆かわしい限り。
 不正の告発が頓挫するような結末にすることはもちろんできないだろうが、過剰な理想主義が少し鼻につくのも確かだ。
 しかし、息をもつかせぬ展開、随所にちりばめたウィットやユーモアなど、まったく見る者を飽きさせない手腕はさすがだ。実に映画的な映画である。
★★★☆
by chikurinken | 2016-01-23 07:31 | 映画

『スターリングラード』(映画)

スターリングラード(2000年・米独英アイルランド)
監督:ジャン=ジャック・アノー
原作:ウィリアム・クレイグ
脚本:ジャン=ジャック・アノー、アラン・ゴダール
出演:ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ボブ・ホスキンス、ガブリエル・トムソン、エド・ハリス

b0189364_8204218.jpgリアルな戦場描写がすさまじい
だが恋愛ドラマは必要なのか?


 第二次大戦での独ソ戦(スターリングラードの攻防)を題材にした映画。
 主人公はヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)という狙撃手で、実在の人物でありソ連の英雄でもあるらしい。そのザイツェフの伝説的決闘が話の中核になる。(ソ連側発表の)「事実」を基にしたストーリーであるため、フルシチョフなんかも登場する。
 この映画に限らず、この頃のアメリカの戦争映画はその描写が生々しく、戦闘シーンが非常にリアルに描かれる。もちろんこの映画の戦場描写も秀逸で、まったく容赦がない。冒頭のヴォルガ川の渡河シーンからしてすさまじく、一瞬たりとも目が離せない。持続する緊張感は、この種の映画の中でもピカイチで、終始非常に濃密な時間を過ごすことができる。
 戦争映画の常道で、主人公がいきなり戦場に放り込まれて、見る側もそれを追体験していくという展開だが、これも非常に効果的。リアルな表現が死の重さを感じさせ、決して戦争を美しく描かない点もポイントが高い。
 ただ途中からなぜか恋愛ドラマになってきて、なんだか少ししらけてしまう。果たして戦争映画でそういう要素が必要なのか、この映画に本当に必要な部分なのか、じっくり考えてみたいところだが、つまるところ「まったく不要」と思うわけだ、僕としては。しかもこの恋愛要素のためか、結末が妙な方向に行ってしまって、わけがわからなくなる。結局のところ、恋愛要素がストーリーを台無しにしているというような終わり方になってしまった。全体としての完成度が高い映画なので、こういうところが余計残念に感じる。興行を考えてのことなのか、あるいは単に製作者の趣味なのかよくわからないが、まったく余計なことをしてしまったもんだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『炎628(映画)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』
竹林軒出張所『フルメタル・ジャケット(映画)』
竹林軒出張所『戦争のはらわた(映画)』
竹林軒出張所『地下水道(映画)』
竹林軒出張所『戦火のかなた(映画)』
竹林軒出張所『無防備都市(映画)』
竹林軒出張所『パサジェルカ(映画)』
竹林軒出張所『フルシチョフ アメリカを行く(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-21 08:21 | 映画

『絶景!アルプス大激走』(ドキュメンタリー)

絶景!アルプス大激走 〜イタリア・トルデジアン330km(2015年・NHK)
NHK-BS1

グレート・レースもマンネリぎみ

b0189364_8131635.jpg 昨年に続いてまだまだ出ます、NHKのグレート・レースもの。前にも書いたように僕としては少々食傷気味であるが、それでもまた見てしまった。とりあえずは抑えておきたいという感じか。
 今回は、イタリア北部、アルプス地方をぐるりと回る330kmの山岳レース、トルデジアン(Tor de Geants:最初これを目にしたときは「ツール・ド・ジャイアン」かと思った)。パラグライダーやカヤックは使わず、基本的に最初から最後まで走るトレール・レース。途中チェックポイントがあり、休息場所も提供されているが、休息や睡眠は選手の取りたいときに取ってくれという、自由度が高い放置プレー型レースである。トランス・ジャパン・アルプス・レース(竹林軒出張所『雲上の超人たち(ドキュメンタリー)』を参照)と似たタイプと言える。実際、あのレースの優勝者も参加している。
b0189364_8133437.jpg このレースは、参加者がかなり多く、そのため日本人選手も20人以上参加する。その中で上位争いに多少絡むことができる日本人選手と、実際にトップ争いしている選手に密着するという、NHKお得意のパターンを踏襲している。コースの途中ではマッターホルンやモンブランも臨める絶景コースではあるが、3000m級の峠越えが途中何度もあり、9月のレースではあるが極寒を経験することになる過酷なレースである。
 見所はと言えば、グレート・レースを見慣れている目には特になく、それなりに楽しめるがそれだけである。お正月にゆっくりくつろいで見るようなタイプの番組と言える。
★★★

参考:
竹林軒出張所『雲上の超人たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『激走! 富士山一周156キロ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死闘!コスタリカ横断850キロ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『密着! アタカマ砂漠マラソン(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『激闘!ドロミテ鉄人レース(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『パタゴニア 世界の果ての冒険レース(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『灼熱の大地を疾走せよ!(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絶景アルプスを飛べ!(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-19 08:14 | ドキュメンタリー

『チュニジア民主化は守れるのか』(ドキュメンタリー)

チュニジア民主化は守れるのか 〜ノーベル平和賞と民間団体の苦闘〜
(2015年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

勝ち取るもの、それが民主主義

b0189364_814263.jpg アフリカのチュニジアでは、民主革命(いわゆる「ジャスミン革命」)で独裁政権が倒されたが、その後、それまで抑圧されていたイスラム勢力が力を伸ばし、2012年の制憲議会選挙ではイスラム政党が第1党になった。
 ところが、伝統的なイスラム回帰を主導するこのような勢力と従来のフランス的民主主義を望む勢力(「世俗派」と呼ばれる)の間で対立が起こり、やがて内戦の危機まで孕むようになってきた。
 こういう状況で、さまざまな勢力から代表が集まって結成されたのが「国民対話カルテット」であり、彼らは対立する勢力の間で和解を促す活動を積極的に行い、結果的に一触即発の危機は回避されることになった。多元主義、民主主義の原則に基づき、物事を話し合いで平和的に解決していくといういわば大同団結主義である。このような功績が評価されて、この「国民対話カルテット」は2015年にノーベル平和賞を受賞した。
 これと並行して、彼らの活動に賛同する学生たち(「シビル・ソシエティ」)も独自の活動で民主化を進めている。たとえば議員の勤務評定(議会への出席率などを基に算出)をつけて発表したり、議会の様子をネットでリアルタイムに中継したり、あるいは議会で不正があった場合はそれを告発したりという活動を行うことで、政治の透明性を担保しようとしている(かれらの活動は広く国民に支持されている)。
 脅かされる民主主義を懸命に守ろうとする人々と、彼らの活動によって民主主義が拡大していく様子を見ると、民主主義というものは勝ち取り守っていかなければならないものであるということがあらためて実感される。チュニジアの国内情勢については、経済の悪化やイスラム原理主義者の介入など、依然として予断を許さない状況ではあるが、人々の理知的かつ冷静なこうした活動を目にすると、アラブ社会における民主主義のモデルケースになることが予想される。民主主義について考える上でいろいろと示唆に富むドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『“アラブの春”が乗っ取られる?(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ネットが革命を起こした(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-17 08:14 | ドキュメンタリー

『人種隔離バスへの抵抗』(ドキュメンタリー)

アメリカを振り返る 人種隔離バスへの抵抗(2010年・WGBH)
NHK-Eテレ

無法地帯での公民権運動は命がけ

b0189364_7384735.jpg 2011年に(世界の教育番組に贈られる)日本賞のグランプリを受賞したドキュメンタリー作品。日本賞では質の高いドキュメンタリーが選ばれるため放送があれば毎年録画しているが、この作品については内容が重そうなのでいまだに見ていなかった。今回とうとう見ることになった。
 テーマは、アメリカ公民権運動の一環として実施されたフリーダム・ライダーズの運動である。1955年の「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」で公民権運動は盛り上がりを見せ一定の成果を上げたが、1960年代になってもアメリカ南部では、人々の間の人種差別の感情については言うまでもなく、人種差別の法律さえ依然として存在していた。したがって白人と有色人種は、待合室から水飲み場に至るまで、あらゆる施設が隔離されており、当地の人々にとってはそれが当然のものとしてあった。だがこのような施策(人種隔離法)は言うまでもなく白人優位の思想に基づくもので、米連邦としてはこのような考え方を基本的に認めていない。実際、南部に残る人種隔離法について、連邦最高裁判所は違憲判決を出しているのである。
 そこで、こういった人種隔離法に対抗するため、白人、黒人の学生たちが、人種隔離されている長距離バスに乗り合わせて、そのまま南部を訪れるという運動(フリーダム・ライド)をすることにした。当然南部では反発が予想され、どんな目に遭わされるかはわからない。それでも当時のケネディ政権が公民権法制定に対して消極的だったことから、世間の注目を集め、政権に揺さぶりをかける手段としてこの運動が考え出されたのである。
 で、実際に当初12人の学生(フリーダム・ライダーズ)が決行することになるんだが、南部地域の反発は予想以上で、ある町ではバスの周囲が数百人もの白人至上主義者に取り囲まれ、やがてバスのガラスが割られ、バス内に火が投げ込まれるということまで起こる。逃げ出したフリーダム・ライダーズは大勢の白人に殴る蹴るの暴行を受けてしまう。しかも地元の警察はそれを止めるどころか、傍観しているほどだ。警察のトップや州知事までが白人至上主義者なのである。
 フリーダム・ライダーズたちは病院に収容されるが、そこで運動を中止することは結果的に暴力に屈することになるという理屈で、その後もさらに別の都市を目指して運動を継続することにする。ただこの事件が全国的に報道されると、連邦政府も黙っていられなくなり、それぞれの州知事に対策をとるよう要請する。知事側は扇動者を守ることはできないという理由で一切対策をとろうとしない。
 フリーダム・ライダーズたちは、命がけで(参加者全員事前に遺書を書いていたということで覚悟がわかるだろう)次の町を目指してバスに乗り込む。そしてその町でもまたしても白人至上主義者に襲われる。当事者たちは命の危険を感じていたとインタビューで語っていたが、このドキュメンタリーを見ると南部で公民権運動を展開することがどれだけ危険であるかがわかる。何しろ、警察をはじめとする地方の行政機関、あげくはFBIさえ敵なのである。
 最終的には米国の世論が味方してフリーダム・ライダーズの運動は成功を勝ち取り、これが人種隔離法撤廃のきっかけになるが、その間も、暴行が繰り返され、しかもフリーダム・ライダーズの側が法律(人種隔離法)違反で逮捕されたりもする。また、彼らが集会を行っていた教会が襲われたこともある。その際は、当地を訪れていたマーティン・ルーサー・キング牧師が司法長官のロバート・ケネディに直接電話したため、連邦軍を動員でき事なきを得たらしい。同時にこのときにキング牧師の政治力があらためて見直されたという。また、一連のフリーダム・ライダーズの運動が連邦政府を動かすことにもつながり、その後の公民権運動の進展に寄与したわけである。
 ドキュメンタリーは全編当事者のインタビューで構成され、時系列でこの運動を追っていくという展開になる。インタビュイー(インタビューされる人)として登場するのは、フリーダム・ライダーズの参加者や、当時の連邦政府関係者などで、白人至上主義者の元知事まで出てくる。ただインタビュー自体、登場する人が多く途中から肩書きが書かれていなかったため、インタビューされているのがどういう人なのかわからなくなったりした。
 一方で、画面に出てくる当時のニュース映像や写真は、いかに南部の白人至上主義者の行動が常軌を逸しているかをよく物語っている。中に人が乗っているバスに火をつけて爆発させたら普通は極刑になるだろうが、そういうものが一切処罰の対象にならない。集団で鉄パイプで暴行を加えても不問に付されるような社会がまともかどうかは火を見るより明らかで、当時のアメリカがいかに異常かがよくわかる。少なくとも文明国とは言いがたい。そしてその事実が世界に伝わることが、公民権運動の進展につながったわけで、メディアの力と役割もよくわかるというものである。同時にキング牧師らがこの後推し進めていった公民権運動の価値やその勇気もあらためて思い知らされる、そういうドキュメンタリー映画である。
★★★★
第38回日本賞グランプリ受賞


参考:
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』
竹林軒出張所『キング牧師 vs. マルコムX(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第9集(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-15 07:39 | ドキュメンタリー

『完全版 明治神宮 不思議の森』(ドキュメンタリー)

完全版 明治神宮 不思議の森(2015年・NHK)
NHK-BS1

人工林、明治神宮のあれこれ

b0189364_7453462.jpg 明治神宮の森のあれやこれやを扱ったドキュメンタリー。以前NHKスペシャルで放送された『明治神宮 不思議の森 〜100年の大実験〜』の90分拡大版。
 明治神宮の森は今から100年前に作られた人工林で、しかも常緑広葉樹の原生林に自然に移行するよう設計されたものであるというのが、このドキュメンタリーの大きなテーマになっている。これ自体は非常に面白い話で、本来感心すべきところだが、以前本(『大都会に造られた森 ― 明治神宮の森に学ぶ』)で読んだことがあったため、それ自体、個人的には目新しさがなかった。ただ、明治神宮の森にさまざまな生物が生息していて、現在ほとんど絶滅状態に近い昆虫や植物まで存在するという話は非常に興味深かった。今回明治神宮100周年ということで、いろいろな研究者が実際に森に入って観察したらしい(そしてその様子が撮影されている)が、彼らが驚嘆している様子もしっかり映されていた。こういった生物自体の貴重な(と思われる)映像もふんだんに紹介されていて、貴重な自然ドキュメンタリーになっている。
b0189364_7455491.jpg 確かにコンセプト的には非常に面白い企画なんだが、今回見たのが90分拡大版だったせいか、全体的に間延びした印象があり、途中で退屈したのも確かである。Nスペの50分枠くらいがちょうど良かったんじゃないかと思ったりした。Nスペ版が評判が良かったためこの拡大版が今回放送されたということなんだが、考えようによってはそれも善し悪し。やはり先にNスペ版を見ろってことなんかな。
★★★

参考:
竹林軒出張所『里海 SATOUMI 瀬戸内海(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『菌類のチカラが人類を救う(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-13 07:46 | ドキュメンタリー