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竹林軒出張所

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『経世済民の男 松永安左エ門』(ドラマ)

経世済民の男 松永安左エ門(2015年・NHK)
演出:柴田岳志
脚本:池端俊策
出演:吉田鋼太郎、萩原聖人、伊藤蘭、國村隼、うじきつよし、高嶋政伸

主人公の豪放磊落さをやたら押し出した平凡なドラマ

b0189364_8412098.jpg 『経世済民の男』シリーズの最後は松永安左エ門。僕自身はこの人のことをまったく知らなかったが「電力の鬼」という異名を取った財界人らしい。
 戦前電力会社の経営者になった松永だが、戦時中、産業が国家統制されることに反発し、所沢に隠居したらしい。戦後になると、そういうことが評価されてか、電気事業再編成審議会の会長に抜擢される。この会だが、要は戦前日本の電力を牛耳っていた企業、日本発送電会社を分割民営化するための審議会である。ところがここでも「抵抗勢力」の反対に遭い、分割民営化に失敗。結局はGHQの鶴の一声で分割されることになるんで、なんのための審議会だったかわからないところだが、ドラマではそのあたりを逆転劇として美談に仕立て上げている。
 松永自身は反骨の正義漢として描かれていて、なかなか胸のすくような快男児ではあるが、正直なところ実像はわからない。この回は1時間構成(高橋是清と小林一三は2回シリーズでそれぞれ2時間構成)で短く、テーマがピンポイントで定められていることもあって、シリーズの中では一番わかりやすく明解ではあるが、ドラマとしてはそれなりという感じである。主人公を演じる吉田鋼太郎はなかなか好演で、抵抗勢力の國村隼(日本製鉄社長、三鬼隆)も、頑固そうでなおかつ腹に一物抱えているような人物を巧みに演じていて良い。ただ伊藤蘭が婆さん役(主人公の奥方)を演っていたのがちょっとショック。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『経世済民の男 小林一三(ドラマ)』
竹林軒出張所『経世済民の男 高橋是清(ドラマ)』
竹林軒出張所『神様の女房 (1)〜(3)(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-09-30 08:41 | ドラマ

『経世済民の男 小林一三』(ドラマ)

経世済民の男 小林一三(2015年・NHK)
演出:梛川善郎
脚本:森下佳子
出演:阿部サダヲ、奥田瑛二、瀧本美織、井上芳雄、草刈正雄

主人公のユニークさをやたら強調した平凡なドラマ

b0189364_8132230.jpg 阪急グループの創設者、小林一三の伝記ドラマ。
 うだつの上がらない銀行員時代から始まり、岩下清周の影響を受けながらも岩下に取り立てられて電鉄事業に関わる。やがて自身で電鉄事業を起こして、それを成功に導き、政界にまで入るという生涯がややコミカルに描かれる。小林一三を演じるのは阿部サダヲで、やや軽いイメージで小林を演じる。こういった軽さは昨日の高橋是清版と共通。
 小林一三のことは方々で語られて入るが、僕自身はあまり知らなかったので勉強にはなったが、結局はサクセス・ストーリーで終始するのがこの類の伝記ドラマの限界と言えるかもしれない。そう言えば以前、猪瀬直樹の『ミカドの肖像』を読んだときに、小林の阪急が西武や東急のビジネス・モデルと書かれていたような記憶があるが、あるいは別の本だったかも知れぬ。いずれにしても、郊外の住宅地とターミナル駅を結ぶ路線を作って、不動産販売を手がけたり、娯楽施設を沿線に作ったり、あるいはターミナル駅に百貨店を作ったりというのは阪急が最初だったようだ、このドラマによると。
 こちらのドラマも『高橋是清』のドラマと同じく平凡だが、結婚後の奥方の豹変ぶりが非常にリアルで面白かった(意図的なものかどうかわからないが)。ところどころ笑いの要素が入っているのは大阪局製作だからか知らんが、それなりに楽しく仕上がっていた。
★★★

参考:
竹林軒出張所『経世済民の男 高橋是清(ドラマ)』
竹林軒出張所『経世済民の男 松永安左エ門(ドラマ)』
竹林軒出張所『神様の女房 (1)〜(3)(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-09-29 08:13 | ドラマ

経世済民の男 高橋是清(ドラマ)

経世済民の男 高橋是清(2015年・NHK)
演出:田中健二
脚本:ジェームス三木
出演:オダギリジョー、谷原章介、壇蜜、ミムラ、藤本隆宏、草笛光子

主人公をやたら持ち上げた平凡なドラマ

b0189364_8391842.jpg 第20代内閣総理大臣にして5度の大蔵大臣経験者、高橋是清の生涯を描く伝記ドラマ。高橋是清のドラマといえば1979年に森繁久彌主演でTBSが製作した『熱い嵐』という3時間ドラマが思い出される。見てはいないが。他にも高橋是清のドラマがあるようで、それを思うと高橋是清って人気あるのかなと思う。経歴は確かに魅力的ではある。
 若い頃横浜でボーイをしてその後アメリカに渡り、奴隷として売られそうになったなどというエピソードは有名。帰国してからは大学予備門などで教員をしたりしていた(このエピソードはドラマにはなかった)が、やがて農務省に招かれ、経済の専門家として活躍。貴族院議員や日銀総裁を務めた後、1913年山本権兵衛内閣で大蔵大臣になり、政治家のキャリアが本格的に始まる。経済通として信頼を集め、大蔵大臣、農商務大臣、商工大臣などを務めるが、二二六事件で凶弾に倒れる。
 そういう話を前後編、合計2時間のドラマにしたのがこの番組だが、表面をなぞっただけという印象はぬぐえない。飄飄とした高橋是清をオダギリジョーが演じていて、もちろんこういう演出もありだとは思うが、あまり似合っていないという感じは最後まで消えなかった。
 シナリオがジェームス三木だからか、セリフ回しも少々古い印象があり、そういうのをうまく処理できる俳優であればまあ言うことはないんだろうが、壇蜜なんかがこういうセリフを言うとわざとらしく聞こえて興ざめである。
 ドラマとしてはきわめて平凡で、高橋是清の生涯を勉強できるという以外、あまり取り柄のないドラマであった、と思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『経世済民の男 小林一三(ドラマ)』
竹林軒出張所『経世済民の男 松永安左エ門(ドラマ)』
竹林軒出張所『「坂の上の雲」のドラマ版を見た』
竹林軒出張所『神様の女房 (1)〜(3)(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-09-28 08:39 | ドラマ

『ロリータ』(映画)

ロリータ(1962年・英)
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ウラジミール・ナボコフ
脚本:ウラジミール・ナボコフ
出演:ジェームズ・メイソン、スー・リオン、シェリー・ウィンタース、ピーター・セラーズ

セラーズとキューブリックの関係は
この映画から始まった?


b0189364_8384421.jpg ロリータ・コンプレックスという術語の元になったナボコフの小説『ロリータ』の映画版。監督はなんとスタンリー・キューブリック。この映画を見たのは別に僕がロリコンであるためではなく、キューブリックつながりからである。念のため。現在あちこちの劇場でキューブリック作品を上映しているため、それにあやかって僕も何本か見てみようと思った次第。で今回『アイズ ワイド シャット』と本作を見たというわけ。
 いい年をした男が少女(原作では12歳)に恋し、その関連でいろいろと起こるという、まそういった話だが、映画ではその少女が高校生の設定になっているため、あまりセンセーショナルな要素はない。製作時にさすがに問題あるだろうということで少女ロリータの年齢を上げ、しかもセックスシーンは描かなかったという話のようで、なんだか食い足りない。ただの痴情話で終わってしまったのは少々残念である。腰が引けてしまうとろくなものが出来ないという良い例である。
 主人公のハンバートを演じるのはジェームズ・メイソン、ロリータを演じるのは、これがメジャーデビューとなったスー・リオン。スー・リオンが演じるロリータはどちらかというと小悪魔的というよりクソガキ的で(個人的には)魅力をあまり感じない。キャスティングでは何よりピーター・セラーズが「天才」作家を怪演しており、セラーズらしく複数の人間を演じ分けている(厳密には複数ではないんだが)。ホテルのバルコニーでのメイソンとセラーズの会話は奇妙奇天烈で、この映画の見所の一つ。異才、キューブリックの演出が光るシーンである。この映画の後、キューブリックは『博士の異常な愛情』を撮るが、主演がピーター・セラーズで、3役を演じているのはこの映画からの流れではないかと推測される。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アイズ ワイド シャット(映画)』
竹林軒出張所『博士の異常な愛情(映画)』
竹林軒出張所『フルメタル・ジャケット(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
by chikurinken | 2015-09-26 08:39 | 映画

『アイズ ワイド シャット』(映画)

アイズ ワイド シャット(1999年・米)
監督:スタンリー・キューブリック
原作:アルトゥール・シュニッツラー
脚本:スタンリー・キューブリック、フレデリック・ラファエル
出演:トム・クルーズ、ニコール・キッドマン、シドニー・ポラック、トッド・フィールド、マリー・リチャードソン

b0189364_8182492.jpgキューブリックが描く夫婦

 スタンリー・キューブリックの遺作となった映画。
 夫婦となった人間の性欲を探求した映画ということになっているが、正直よくわからない。ニコール・キッドマン演じる嫁が突然夫のトム・クルーズに自分の不倫願望を告白したりするのも理解できないが、そういう嫁が夫の行動に怒るのもおかしいんじゃないかと思ってしまう。そういう自分の理解を超えた行動があって、こういうのはリアリティに直結する問題なので個人的にはかなり気になるが、ストーリーとしては破綻はない。謎めいた展開で何が真実かわからない部分、どこに連れて行かれるのかわからない部分というのはキューブリックらしい演出で、「胡蝶の夢」を思わせるストーリーである。
 主演の夫婦は、当時実際に夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマン(その後しばらくして離婚)。夫婦で夫婦(しかも妙な問題が出てくる夫婦)を演じるというのもすごい話だが、2人とも新境地を開拓したのではというような味を出している(当時の状況は知らないが)。
 R-18指定がついていて随所にエロなシーンが出てくるが、エロな感じはあまりなかった。出てくる男女の裸や性行為のシーンもなんだか野生を思わせるようなもので、そういう点が、テーマと思われる「性欲」に直結していないため、なんだか食い足りない感じが残ったのではないかと推測する。もっとエロエロした方がダイレクトに人間の性を描くというテーマに沿っていたような気もする。
 映画監督で有名なシドニー・ポラックも役者として登場している。元々俳優だったようで、他にも結構出ているらしい。知らなかった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フルメタル・ジャケット(映画)』
竹林軒出張所『博士の異常な愛情(映画)』
竹林軒出張所『ロリータ(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『NINE(映画)』
by chikurinken | 2015-09-24 08:18 | 映画

『アパートの鍵貸します』(映画)

アパートの鍵貸します(1960年・米)
監督:ビリー・ワイルダー
脚本:ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:アドルフ・ドイッチ
出演:ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ、レイ・ウォルストン、デヴィッド・ルイス、ジャック・クラスチェン

b0189364_9354995.jpgコメディの鑑借りました

 ニューヨークを舞台にした小粋な恋愛コメディ。
 シナリオが非常に良くできていて、遊びの要素は散りばめられているが、ストーリーにまったく無駄がない。てっきり舞台かなんかの話が元になっているのかと思ったが、オリジナル脚本のようだ。結局はなるようになるというハリウッド的なストーリーではあるが、十分起伏があって、予想外の展開になったりする。セリフも非常におしゃれでウィットに富んでいる。
 キャストもまたすばらしく、あの主人公はジャック・レモンでなきゃ演じられないだろうという見事さ。若いシャーリー・マクレーンも華麗で良い。僕がこの映画を初めて見たのは30年くらい前だが当時すでにシャーリー・マクレーンはものごっつい豪傑おばさんになっていて、人(女)ってのはこんなに変わってしまうものかと驚いたものだ。それからラフマニノフを思わせるようなテーマ音楽も良い。
 ビリー・ワイルダーの映画はどれも外れはないが、中でもこの1960年前後の『アパートの鍵』と『お熱いのがお好き』の2作は傑出している。この映画については、派手さはあまりないが、俳優、ストーリー、セリフ、音楽など映画的な楽しさがふんだんに盛り込まれていて、サービス満点である。ハリウッド・コメディ映画の代表作で、コメディ映画の鑑と言って良い。邦題タイトルも良い。
1960年アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞他受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『フロント・ページ(映画)』
竹林軒出張所『昼下りの情事(映画)』
竹林軒出張所『麗しのサブリナ(映画)』
竹林軒出張所『第十七捕虜収容所(映画)』
竹林軒出張所『ココ・シャネル(映画)』
by chikurinken | 2015-09-22 09:37 | 映画

ジュリはアイドル

浜田朱里『GOLDEN J-POP/THE BEST 浜田朱里』
1. さよなら好き
b0189364_8355569.jpg2. あなたに熱中
3. 青い花火
4. 青い嫉妬
5. 黒い瞳
6. 18カラットの涙
7. 夏の指定席
8. 芽ばえ
9. 想い出のセレナーデ
10. みずいろの手紙
11. 魔法の鏡
12. 何故に二人はここに
13. 夏を忘れた海
14. 時には母のない子のように
15. 旅立ち
16. 悲しみは駈け足でやってくる

 かつて浜田朱里という女性歌手がいて、僕も同時代なんで存在は知っていたが、歌はほとんど知らず。山口百恵が出演して人気が出ていたTBS金曜9時の大映ドラマ「赤い」シリーズ(『赤い魂』)に出ていたことは知っている。とにかく地味だったという印象しかない。顔も地味目だし何となく翳りを感じさせるしで、アイドルらしい華やかさはあまり感じない。何でも「ポスト百恵」として将来を嘱望されていたらしいが、この地位は結局、松田聖子がかっさらっていった。
 今回、カバー好きの僕の目に止まったのは、その浜田朱里の4枚目のアルバム『想い出のセレナーデ』で、例によってソニーのオーダーメイドファクトリーで目にしたのが最初である(オーダーメイドファクトリー『想い出のセレナーデ』参照)。このアルバム、10曲中8曲がカバーという、アイドルのアルバムとしてはかなり思い切った構成になっている。この頃発表された浜田朱里の7枚目のシングルが、カバー曲である「想い出のセレナーデ」だったため、こういう企画が出たんではないかと想像するが、それにしても……と思う。所属プロダクションおよびレコード会社は彼女にあまり期待しなくなっていたのだろうか。
 曲のラインアップは、

1. 想い出のセレナーデ(天地真理のカバー)
2. みずいろの手紙(あべ静江のカバー)
3. 魔法の鏡(荒井由実のカバー)
4. 何故に二人はここに(Kとブルンネンのカバー)
5. 夏を忘れた海(天地真理のカバー)
6. 時には母のない子のように(カルメン・マキのカバー)
7. 芽ばえ(麻丘めぐみのカバー)
8. 哀・私小説(8枚目のシングル『悲しみは駈け足でやってくる』のB面曲)
9. 旅立ち(松山千春のカバー)
10. さよなら好き(浜田朱里のデビュー・シングルA面曲)

b0189364_8364614.jpgというもの。実は8枚目のシングル曲『悲しみは駈け足でやってくる』もアン真理子が1969年に発表した曲のカバーである(この曲はこのアルバムには未収録)。カバーで通すんなら、いっそのことこのアルバムにも「悲しみは駈け足でやってくる」が入っていてしかるべきではないかと思うが入っていない(B面の曲は入っている)。デビュー曲が入っていたりもしているし、コンセプトが見えてこないアルバム、言い換えると製作者側の力が伝わってこないアルバムである。そういったことを考え合わせると駄作かと思うのが筋だが、実際聞いてみると1つ1つのカバー曲がどれもこれも素晴らしい出来映えなのである。
 まず「想い出のセレナーデ」で驚かされる。この歌は天地真理が歌ってヒットしたので、当時子どもだった僕でさえよく知っている歌なんだが、歌詞の内容についてはまったく意味がわからずにいた。今回浜田朱里の歌を聞いて別れた人を思う歌だったことがわかったのだった。振り返ってみると天地真理は朗々と歌うタイプであるため、内容がストレートに伝わってこなかったんだろうと思う。一方の浜田朱里の場合は、語るように歌うというか情感を込めて歌うので、しみじみと伝わってくる。2曲目の「みずいろの手紙」も同様で、あべ静江も「朗々型」であるため、雰囲気がまったく伝わってこなかったが、「情感型」の浜田版は心に染みてくる。
 「何故に二人はここに」と「旅立ち」については、元歌は個人的に少々気持ち悪さを感じていたのが、浜田朱里の歌の場合、せつなさが伝わってきて良い。3曲目の「魔法の鏡」は、ユーミンのオリジナルとほとんど同じような編曲でありながら、ユーミン版と違って「女の子っぽさ」が伝わってきてこれも魅力的。「時には母のない子のように」の編曲もオリジナル版に近い。全体的に編曲が非常に優れているのもこのアルバムのポイントである(カバー曲の編曲はすべて若草恵という編曲家が担当)。例外は「芽ばえ」で、ややアップテンポで妙に明るい編曲になっているのがマイナスである。元歌の情感が欠如していて、浜田朱里の歌唱がまったく活かされていないのが残念。
 ともかく、浜田朱里がどの歌も自家薬籠中のものにしているという印象があって、まさに古い曲の再発見になっている点を大いに評価したい。といってもこのアルバム自体1982年発表のもので古いアルバムであるのは間違いない。ま、僕にとっては意外な発見だったわけだ。もっとカバー曲を出してくれていたら良かったのにと今さらながら思うのである。
 なお、今回僕が買ったのは『想い出のセレナーデ』ではなく、冒頭に紹介した『GOLDEN J-POP/THE BEST 浜田朱里』である。『GOLDEN J-POP』には、『想い出のセレナーデ』のほとんどの曲が収録されており(「哀・私小説」以外すべて)、しかも『GOLDEN J-POP』には「悲しみは駈け足でやってくる」まで入っているのでお買い得感が高い(他にシングル曲も6曲付属)。ただこのベスト・アルバム自体もなんだかやっつけ仕事みたいでコンセプトが見えてこない。普通ベスト盤だったら、シングル盤のA面曲を集めるとかしそうなもんだが、ほとんどが『想い出のセレナーデ』からの抜粋になっている。このベスト盤を企画した人が、この『想い出のセレナーデ』が最高傑作だと信じてこういうラインアップにしたというのであれば、その先見の明を称賛したいところではある。で、『GOLDEN J-POP』であるが、Amazonでは現在中古品がアホみたいに高価な値段で売られているので、興味のある方は『GOLDEN J-POP』の方ではなく、オーダーメイド・ファクトリーで復刻版をお求めになる方が良いのではと個人的には思う。こちらも少々高価ではあるが定価であるため、ぼられた感は少ないと思う。

参考:
竹林軒出張所『カバー曲にまつわるあれこれ』
竹林軒出張所『讃岐裕子の「ハロー・グッバイ」』
竹林軒出張所『山崎ハコ「十八番」(CD)』
竹林軒出張所『遊佐未森「スヰート檸檬」(CD)』
竹林軒出張所『朝倉理恵ファンに重ねて朗報! 「あの場所から」が出た』
by chikurinken | 2015-09-20 08:38 | 音楽

ヒジからチューチュー

 たまにこのブログの過去の記事なんか読み直したりするんだが、あんまり病気の記事がない。前に貧血で苦しんだのが2012年1月だからかれこれ3年近く健康体だったということになる。そう言えばたまに背中と腰が痛くなって整体院に行って直してもらうのも3年に1回程度で、割合元気な方だよなーと思う。同年代の知人たちがあちこちに不調があるみたいな話をしているのを聞くにつけ、ありがたい話だと思う。考えてみると人間の健康状態なんていうのも綱渡りみたいなもんで、健康に生きていられるのも奇跡と言って良いかも知れない。もっともこれからの世の中、大病しようもんなら生活破綻してしまうというアメリカ的な状況にもなりかねないので、注意が必要である。
 そういう健康体な僕ではあるが、先日自分のことで病院に行ったので、その話を少し。
b0189364_8121635.jpg 少し前から、左肘が妙にブヨブヨしだして、違和感を感じるようになった。大して痛みはないんだが、気持ち悪いったらない。よく膝に水が溜まるなどという話を聞くが、おそらくあれに近い感じではないかと思う。何かが肘に溜まっているというのはわかる。ほっといて治るもんならほっときたいが、ネットで調べると「水ぬかなきゃなんねー」みたいなことも書いてある。
 原因をいろいろ考えてみたんだが、肘を強打したりとかいうことはまったくないし、ピッチャーじゃないんで投げ込みすぎなどということもまったくない。確かに数週間前から肘の汚れが気になって風呂でごしごししていたが、ただあんなことだけで、肘が腫れたりするのか疑問である。そうやってつらつら考えているうちに、自転車に乗っているときに左肘に痛みを感じたことが過去たびたびあったことを思い出した。この自転車ってのは、2012年に買ったモノだが、長時間乗ると左肘だけに妙に違和感が出る。しようがないのでグリップを握りしめなかったりして工夫していたんだが、あれが原因ではないかと思いはじめた。おそらく風呂のゴシゴシとの相乗効果でこういう症状が出たのではと自分で勝手に結論を出した。
 とりあえずまず治療を受けようということで以前「ひょうそ」のときにお世話になったクリニックに行った(竹林軒出張所『ひょうそ譚』参照)。例によってあのユニークな医師が対応してくれて、相変わらずわかったようなわからないような受け答えをして癒やしてくれる。とりあえず水だけ抜いとくかという話になって、注射器を使ってチューチューやってもらった。「血が混ざってるやろ」みたいなことを言って見せてくれるのもなかなか楽しい。
 「あんまり治らんようだったら血袋を切らんといけん」みたいなことを言われるが、重大という感覚でもなさそうである。そもそも血袋というのもピンと来ない。
 「ほっといて治るようなものではないのですか」と僕の方から聞いたところ、「治ることもあるし治らんこともある」とこちらもわかったようなわからないような回答であった。
 今回も「ひょうそ」のときと同様「ひどおなったらまたおいで」と言われてクリニックを後にすることになったが、今回も病院に来てから帰るまでわずか30分で、相変わらず手際の良い病院である。ただしチューチューの度合いがやや遠慮がちだったため、晴れは小さくなったが、その後もある程度の大きさのブヨブヨが残ってしまった。
b0189364_8155059.jpg 一方で自転車の方だが、ブレーキレバーの位置が左右で違うということに気が付いた。ハンドルに変速コントローラがついている自転車では一般的なんだが、右側は変速機があるせいでブレーキレバーがやや右に寄っているため、左右対称の位置になっていない。少なくとも右肘に痛みは感じないので、これが原因と断定して、左側のブレーキレバーを内寄りにした。つまりグリップとブレーキレバーの間に2〜3cmの隙間を設け、左右対称の位置にブレーキレバーを配置したわけ。
 で、結論から言うと、これが功を奏したようで、治療後も残っていた肘の腫れが少しずつ小さくなり、自転車に乗っていても以前のような肘の痛みを感じることが一切なくなったのだ。つまりビンゴだったということになる。そもそも肘に痛みを感じた時点で対策を講じるべきだったんだろうが、ひどくならないとやらないという、ものぐさな性分のために少々遠回りをしてしまったわけである。
 なお自転車は、すでに走行距離が8500kmを超えるほどフル稼動しており、タイヤも先日前後とも交換した。この肘問題以外、まったく問題がないよくできた自転車であることを付記しておく。

参考:
竹林軒出張所『ひょうそ譚』
竹林軒出張所『自転車を買う(その1)』
竹林軒出張所『自転車を買う(その2)』
竹林軒出張所『年頭の所感2014 〜五十にして老先を知る〜』
竹林軒出張所『整体院に行った話』
竹林軒出張所『貧血記』
by chikurinken | 2015-09-18 08:16 | 日常雑記

ひょうそ譚

2004年12月10日・記
 左手の人さし指が腫れ、ズキズキし出した。ズキズキというより、ドックンドックンという感じか。脈を感じる。
 最初はしもやけかと思ったが、やがて痛みが出てくるに及んで却下。状況としては、蜂刺されに似ているが、虫に刺された記憶はない。数日経っても腫れは引かず、むしろ大きくなっているようでさえある。もしかしてリウマチや糖尿病かも……と考えると少し心配になってきた。
 それでインターネットで調べてみた。Googleで「指 腫れ 虫刺され」などと入力して検索する。リウマチとか関節炎とか、さまざまなページが出てきて、1つ1つ当たってみるがどうもしっくり来ない。つまり、自分のケースに該当しない。で、やがて「ひょうそおよび爪周囲炎」について書いているページを見つける。そしてその症状が、ぴたっと当てはまる。しっくり来るというやつ。この感覚が大事だ。
 で「ひょうそ」について調べてみた。不勉強ながら「ひょうそ」についてはまったく知らなかったのだ。後でいろいろな人に「ひょうそ」のことを話したらほとんどの人が知っていたので常識の部類に入るのだろう。ともかく私は知らなかった。
 どうやら「比較的よく発生する病気であるが、放置すると一部の組織が壊疽し、大変な手術が必要になることもある」というようなことらしい。爪付近の傷から黄色ブドウ球菌などの細菌が入り炎症を起こした結果、体内に膿が溜まり、そのために腫れるということなのだ。ガッテンガッテン! b0189364_8422150.jpg「指に膿が溜まる」……まさにそんな感じだ。
 なかなか原因がわからなかった現象でもその原因がわかると至極当然な印象を受けることがよくある。因果関係が単純に割り切れると言うべきか。今回がまさにそれだ。原因は深爪やささくれ、指先のけがという。そういえば何日か前にささくれをむしったなと思い当たる。
 で、早期治療ができれば大事に至らないが、爪の周辺を切開して中の膿を出さなければならないということらしい。つまり手術! 生まれてこの方、手術など経験がない私は少し武者震いした(ウソ)。まあ要するに指を少し切るだけだ。このくらいのことは、トゲが指に入ったときに自分でやってるさ。
 というわけで翌日病院に行くことにした。自分のことで病院に行くなど20年ぶりだ。
 行ったのは近所のクリニックで、内科と整形外科がある。5分ほど待つとすぐに呼び出された。小児科の町病院や大病院で1時間2時間待たされることのある私は、これだけでびっくり。診療室に入ると、気さくな老医師が出迎えてくれ、「こりゃ、ひょうそじゃ」と一言。
 「ちょっと切らにゃあいけんなあ」ということで即手術が決まる。
 「かなり切るんですか」
 「どこまで切るかが問題じゃ。足りんとまた切り直さんといけんし深すぎても痛えしなあ」などとのんきなことを言う。
 ベッドに寝て局部麻酔。親指と人さし指の間に一発、人さし指と中指の間に一発打たれる。体内に麻酔剤が流れ込むのが分かり気色悪い。
 しばらくして医者は「麻酔が効いたかどうかちょっと刺してみるから痛かったら言うてくれ」と言い、なにやら指にぶすっと刺した。私は思わず「イテテテッ」と言ってしまうが、大して痛くなかったのにもかかわらずオーバーだったかなと反省する。医者も「そんなに痛え痛え言われたら切れんなあ」となどと言っている。やがて、私の指にハサミが入る。メスではなくハサミね。ブッツンブッツンという感じで切っていく。痛みはほとんどない。どういう案配になっているか見ていると、医者はにっこり笑って局部を私の方に見せ、「こんなに膿が入っとった」と言う。緑色の膿が玉のように輝いている。その後、チャッチャッチャッと包帯を巻いて、私の初手術は終わることになった。
 「消炎剤出しとくけど、痛み止めはいるかな?」
 「かなり痛みますか?」
 「いやあ、そうでもなかろう」
 「そしたらいりません」
 などというのどかな会話の後、「明日来れたら、また来て見せてみて」ということで、診察室を出る。この間20分程度。病院で30分足らずで用事が終わったのは過去にないんじゃないかと思う。とにかくこの病院は、患者の流れが早く、待合室にも10人弱の人が常にいるのだが、どんどん回転しているのだ。どこの病院もこういうふうにやってほしいものだ。
 医者に親近感を持ったのも初めてだ。以前、まだ乳児だった子供が夜中に泣き続け、夜間診療に子供を連れていったときに、「なぜ今まで放っていたんだ」と医者に怒鳴られたことがあった(厳密に言うと怒鳴られたのは妻)。しかも机をバンとたたきながらだ。この医者も目が充血していたので、夜間診療にうんざりしていたんだろうが、ちょっと人間性を疑う行為だ。こっちは病院嫌いだが、子供が体を少し震わせて泣くので、しようがなしにタクシー飛ばして、遠方の病院まで行ったのだ。しかもさんざん待たされた揚げ句だ。ちなみに病名は口内炎。オイオイ……
 話はひょうそに戻る。翌日病院に行くと、件の医者は私の包帯を取り、様子を少し見た後、「バンドエイドでええ?」と尋ねて、バンドエイドを貼ってくれた。
 「ひどおなったらまたおいで。問題なかったらもう来んでいい」
 私は(心から)礼を言って診察室を出た。病院に来てから診察が終わって外に出るまで10分。素晴らしい。
 手術から4日後の今は、傷口に少し痛みがあるだけで、ほとんど普通に暮らしている。大体手術後でさえ、大して痛みはなかったのだ。手術前の方が痛かったくらいだ。
 ともあれ、いろいろ考えさせられる数日であった。

結論1:医者も接客業なんだから愛想の悪いヤツは前線から退場してほしいものだよ。
結論2:病院も接客業なんだから大名商売してるトコロは閉鎖してほしいものだよ。
 医師をやたら優遇するからこんなひどい状況になったのだ。自分の学生時代を振り返って医学部の同級生を思い起こすと、人間性に問題のあるヤツがやけに集まっていたことを思い出す。ぜひ、自然淘汰されて欲しい。以上!
by chikurinken | 2015-09-16 08:43 | 日常雑記

『日本まんが 第壱巻』(本)

日本まんが 第壱巻 「先駆者」たちの挑戦
荒俣宏編著
東海大学出版部

b0189364_7484112.jpg日本マンガ史の一級資料

 マンガ・オタクの荒俣宏が、日本マンガの歴史を辿るため、マンガ作家や収集家などにインタビューしてまとめた本。かなりマニアックで、著者も言っているように一般受けするような類の本ではない(出版できるかどうかが危ぶまれていたらしい)が、資料的な価値は非常に高い。
 本書では、日本にマンガがどのように取り込まれ、それが発展したかについて考察するが、そのためにまずマンガ研究家の清水勲に話を聞く。この本の特徴でもあるが、インタビューの内容をかなり忠実に再現していて、さながら現場に居合わせているかのような臨場感がある。したがって非常に読みやすいし、語られている内容も専門的ではあるがわかりやすい。
 清水氏の話もかなりマニアックだが、日本のマンガが北斎漫画の時代を源流として、その後明治期に(ビゴーで有名な)ポンチ絵や、アメリカで流行していた新聞漫画(コミック・ストリップ)などの影響を受けてきたという流れがわかる。この影響により日本でも部数獲得のために新聞でマンガが発表されるようになった。こういうものが子どもたちに受け、やがて子ども向けの絵物語が売られるようになる。一方で新聞媒体を中心とした時事漫画も勢力を維持するという時代が戦後に至るまで続く。
 戦後になると、手塚治虫が現れ、それまでの子ども向けの絵物語的なマンガを一気に近代化した。そうして手塚の影響を受けたマンガ家たち(トキワ荘グループなど)が次々に登場して、マンガ週刊誌の隆盛と共に現在のような地位を築くことになった。一方時事漫画の方は、「漫画集団」というやや閉鎖的なグループが主導権を取り、こちらも一つの潮流として永らく地位を保っていた。
 歴史的にはこういう流れだが、その中で具体的にどのように時代が動いてきたかは当事者でなければわからない。そこで、当事者たちの話を聞くことで、埋もれてしまっているミクロ的な歴史を掘り起こそうというのが、本書の趣旨である。で、トキワ荘グループからは水野英子、漫画集団からはやなせたかし、トキワ荘グループからはやや離れた位置付けとしてちばてつや、貸本漫画から水木しげるという具合にさまざまなジャンルの第一人者から話を聞くということになるわけだ。
 それぞれの作家たちが非常に興味深い話をしていて、ま、トキワ荘グループや水木センセイは他でもよく語られるんで、それほど目新しさはないわけだが、それでも面白い話はふんだんに出てくる。何よりあの水野英子が、今マンガで食べていくことができないというのが驚きであった。マンガを描いていないわけではなく、長編ものを描き続けているのだが、どこの出版者も出版、掲載してくれないらしい。出版社が過剰に商業主義に走っているため、売れそうにない硬派なものは端から避けられるらしいんだな。それを思うと、日本のマンガの将来も暗いという気がする。
 ちばてつやの若い頃の話も非常に面白い。ちばてつやは、デビュー当時、『ちかいの魔球』(『巨人の星』への影響も大きかったという)という野球マンガを出していたんだが、本人は野球のことをまったく知らなかったらしい。それを考えると、当時のマンガ界というのも実にいい加減な世界だったと言えるが、そういういい加減さを伴っている業界だから面白かったのかもしれない。なんでも杓子定規に経済性ばかり考えるようになるとつまらなくなるのは、今の放送業界や出版業界を見れば一目瞭然。せめて水野英子に発表の場を与えるくらい、融通の利く業界になったらどうだと思う。もっとも、そういう部分はこの本ついても言えるわけで、こういう流通に乗りにくい地味な本がなかなか出版されないというのも問題である。それを考えると東海大学出版部はエラいと言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『白土三平伝 カムイ伝の真実(本)』
竹林軒出張所『「ガロ」編集長 私の戦後漫画出版史(本)』
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道(本)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の青春(映画)』
竹林軒出張所『地を這う魚 ひでおの青春日記(本)』
by chikurinken | 2015-09-14 07:50 |