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『過激派組織ISの闇』(ドキュメンタリー)

過激派組織ISの闇(2015年・NHK)
第1部 いま支配地域では何が
第2部 世界に拡散するISの脅威
NHK-BS1 BS1スペシャル

「イスラム国」ドキュメンタリーの決定版

b0189364_9214799.jpg NHKスペシャルで放送された『追跡「イスラム国」』を100分に拡大した番組。中東地域やアメリカで100人以上の関係者に取材し、「イスラム国」の実態を明るみに出そうとする。
 「イスラム国」自体は近づくことが難しいためその正体がなかなか見えてこないのがもどかしいが、「イスラム国」に身近で接した人の話を聞ければ、その姿を垣間見ることはできる。そのためこの番組では、「イスラム国」から逃げてきた元兵士や占領地域から逃れてきた住民、奴隷として売り飛ばされた若い女性などにインタビューを試み、その姿を明らかにしようとする。この番組では、前回のNHKスペシャルの取材源(どのようないきさつでインタビューが行われたかなど)についてもある程度詳細に紹介しており、取材源の信憑性が担保されている。
 この番組で明らかにされている「イスラム国」の実態は、恐怖政治、公開処刑、虐殺、暴行、奴隷取引など、人として許せないことばかりで、『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』に書かれていた「イスラム国」のイメージとは正反対である。あの著者が触れていた「市民に対する善政」については、「イスラム国」が作成したプロパガンダ映像で出てきたが、あくまでもプロパガンダなので信憑性はまったくない。むしろ、迫害され逃れてきた市民の証言の方がずっと信憑性があると思う。この番組を見ながら、あの著者はちょっと素朴すぎるんじゃないかなどと感じた。
 さてこの番組だが、第1部、第2部に分かれていて計100時間のずっしり重いドキュメンタリーに仕上がっていた。『そして、兄はテロリストになった』の映像が使われていた他、『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか』の主張も採用されているなど、きわめて包括的にまとめ上げられた番組で、「イスラム国」関連のドキュメンタリーとしては決定版と言える仕上がりである。
 この番組の結論として、世界は今後数十年このテロリスト集団に悩まされることになるという暗澹たる未来が提示されており、ちょっと悲観的に過ぎないかとは思ったが、いずれにしても今後世界がしっかり対峙していくべき問題であるのは変わりない。とりわけ「アラブの春」という民主化運動が結局、狂気の殺戮組織を伸張させたという矛盾については、今後、歴史的な視点からも十分検討していく必要があると思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『そして、兄はテロリストになった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フランスで育った“アラーの兵士”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イスラーム国の衝撃(本)』
竹林軒出張所『イスラム国 テロリストが国家をつくる時(本)』
by chikurinken | 2015-04-29 09:24 | ドキュメンタリー

『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(本)

b0189364_8151535.jpgイスラム国 テロリストが国家をつくる時
ロレッタ・ナポリオーニ著
文藝春秋

肯定的な『イスラム国』観
違和感はかなりある


 『イスラム国』をかなり肯定的に捉えた本。
 イスラム国(本書ではこのように表記している)は、ジハード(「聖戦」などと訳される)の理念を前面に押し出しながら、政治的空白地帯(イラクとシリア)に、領土支配つまり建国を目的に確立された組織だというのが著者の主張で、特に彼らが優れていたのは、洗練されたプロパガンダと、スンニ派対シーア派の図式を明確に打ち出した宣伝戦略、自前の(経済支援に頼らない)資金調達法の獲得などにあるという(中東の政情不安の地域では、さまざまな思惑を持つ周囲の国や機関がさまざまな団体に資金を提供しているのが普通らしい)。一方で支配域の市民に対しても、救済措置を施したりして善政を敷いているというのが著者の見方である。こういったことを著者の専門であるPLOやIRAなどと比較しながら論じていく。
 著者が論じるイスラム国は、現在世間で流布されているイスラム国のイメージと大きくかけ離れていてかなりとまどうが、実際のところ現地に行って取材した人がほとんどいないわけで、どちらが正しいかというのはにわかに判断できない。著者の見方があるいは正しいかも知れないが、方々で行っている(と言われる)大量虐殺や映像に映される残虐行為を目あるいは耳にすると、著者の視点はうがち過ぎではないかと考えざるを得ない。
 本書は全般的に歴史的な視点が強調されており、イスラムの歴史とイスラム国の出現との関連なども歴史的な視点で扱われていてその辺は非常に面白いんだが、なんとなく全般的にマクロ的な視点が目立ち、ミクロ的な視点が欠如しているような印象も受ける。理屈だけですべてを片付けるとものごとの本質を見失いがちになる。証拠を積み重ねたは良いがとんでもない結論が出てしまったということはよくある。この本もどこかそういう印象を受けるが、何しろイスラム国については情報が著しく欠如しているため本当のところはよくわからない。
 一般的なアプローチとまったく異なる視点は斬新だが、突っ走ってしまった頭でっかち本である可能性も大きい……というのが、本書に対する僕の見解である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『イスラーム国の衝撃(本)』
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『そして、兄はテロリストになった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-04-28 08:16 |

『イスラーム国の衝撃』(本)

b0189364_8113256.jpgイスラーム国の衝撃
池内恵著
文春新書

絡み合った糸をほどくように
ISの謎を丁寧に解いていく


 「イスラム国」は、西側世界にとっては、本書のタイトル通りまさに衝撃であり脅威である。なにしろ謎が多い。しかも残虐性をあからさまにし、その上世界征服を企むかのような論を展開している。まるでショッカーである。
 そういうこともあって、「イスラム国」についてはあちこちで語られているが、今後これがどのように展開するかを冷静に分析したものはあまりなかったように思う。本書では、歴史的な観点、イスラーム思想の観点などからイスラーム国(と本書では呼んでいる)を分析し、そのイスラーム国の性格、特徴、今後の予測について語っている。
 イスラーム国は1999年の「タウヒードとジハード団」に端を発し、その後「イラクのアル=カーイダ」、「イラク・ムジャーヒディーン諮問評議会」などと名前と組織を変えながら、現在の形になってくる。大きな特徴は巧妙な広報戦略で、さまざまな演出を駆使してイスラム教徒に語りかける。ときにはドラマチックな演出が盛り込まれた映像をネットで配信して、イスラム原理主義過激派に対して支持を呼びかける。そのせいもあって、世界中にイスラーム国への連帯を表明している勢力が現れている。
 イスラーム国が登場したのは、イラク戦争や「アラブの春」が直接的な原因になっており、イラクとシリアの地に政治的空白地域が生じたためで、それが過激派組織の拡大につながったというのが本書の主張。「アラブの春」で政権が代わった他の国々でも、あるいは内乱状態にあり、イスラーム国のような過激派組織が勢力を伸ばす余地があるというのが著者の主張である。
 イスラーム国が今後どのように展開していくかについても考察があり、一定の勢力を維持し続ける可能性はあるが、世界中に拡大するようなことはないだろうという。だが、政治的空白のためにアラブ各地で、イスラーム国のような過激派組織が勢力を拡大していく可能性はあり、アラブ世界でより混迷度は増すかも知れないというのが著者の主張。非常に密度の濃い本で、随所に渡って丁寧に解説されてはいたが、内容が内容だけに読みづらい箇所も非常に多かった。アラブ世界やイスラム思想に馴染みがないということもその一因である。それでもいたずらに脅威を訴えたりすることもなく、冷静沈着に分析しているのは非常に好感度が高い。良い本であると思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『そして、兄はテロリストになった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホムスに生きる 〜シリア 若者たちの戦場〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イスラム国 テロリストが国家をつくる時(本)』
by chikurinken | 2015-04-27 08:11 |

『ストックホルムでワルツを』(映画)

b0189364_7412880.jpgストックホルムでワルツを(2013年・瑞)
監督:ペール・フリー
脚本:ペーター・ビッロ
出演:エッダ・マグナソン、スベリル・グドナソン、シェル・ベリィクヴィスト、ヴェラ・ヴィタリ

わがままモニカはちょっと新鮮だが
割にありきたりな伝記映画


 スウェーデンの国民的ジャズ歌手(?)、モニカ・ゼタールンドの伝記映画。モニカ・ゼタールンドと言えば、ビル・エヴァンスと共演した『ワルツ・フォー・デビー』が有名……というかこれぐらいしか知らなかったが、北欧以外ではその程度だろうと思う。ちなみにスウェーデンや北欧地域では有名らしい。伝記映画が作られるくらいだからね。
 ストーリーは、電話交換手をやりながらセミプロ歌手をやっていた時代から成功するまでのサクセス・ストーリーで、その間、仕事と育児の両立や、父親との確執、結婚の失敗など、今日的なテーマが繰り出されるが、どれもそれなりで取り立てて目新しい素材はない。それに、ここで描かれるモニカがかなりわがままかつ自己中で、あまり共感できないというおまけ付き。
 ただ音楽映画らしくジャズのナンバーがひっきりなしに登場するんでそういう楽しみはある。また、主演のエッダ・マグナソンの歌が、モニカ・ゼタールンドを彷彿させるようなハイ・クオリティのもので、そういう点、音楽的な楽しみはある。劇中にはトミー・フラナガンやエラ・フィッツジェラルド、そしてもちろんビル・エヴァンスも登場するため(もちろん役者が演じる)、ジャズ・ファンには堪えられないが、ドラマだけを切り離して見るとやはり少々物足りなさを感じる。
★★★

参考:
竹林軒出張所『グレン・ミラー物語(映画)』
竹林軒出張所『ジャズ・ミー・ブルース(映画)』
竹林軒出張所『バード(映画)』
竹林軒出張所『ジャズヴォーカルもヴィジュアル系』
竹林軒出張所『コルトレーン ジャズの殉教者(本)』
竹林軒出張所『マイルスvsコルトレーン(本)』
by chikurinken | 2015-04-25 07:42 | 映画

『冬のライオン』(映画)

b0189364_75635.jpg冬のライオン(1968年・英)
監督:アンソニー・ハーヴェイ
原作:ジェームズ・ゴールドマン
脚本:ジェームズ・ゴールドマン
撮影:ダグラス・スローカム
音楽:ジョン・バリー
出演:ピーター・オトゥール、キャサリン・ヘプバーン、アンソニー・ホプキンス、ジョン・キャッスル、ナイジェル・テリー

舞台風の演出で演技は大げさ
プロットもやや作為的


 イングランド、プランタジネット朝の始祖、ヘンリー2世と、王妃エレノア、息子のリチャード、ジェフリー、ジョンとの確執を描く会話劇。元々はブロードウェイの舞台が原作で、映画もそれに準じた作りになっている。映像化されてはいるが、舞台の再現といっても良いほど演劇的な演出である。
 出演するのもピーター・オトゥール、キャサリン・ヘプバーンと舞台出身者で、出演者の演技も舞台を彷彿させるやや大げさなものである。また、プロットもいかにも演劇的で、途中から舞台を見ているような錯覚に陥る。シェークスピア劇を思わせるような話になっていたのは、脚本家の嗜好のせいか。
 こういう舞台風の映画は好き好きだとは思うが、僕はあまり好感を持てなかった。映画にするんなら誇張を少なくして、もう少しドラマらしいリアリティを持たせるような工夫をしたらどうだと思うんだ。ヘンリー2世、リチャード獅子心王、ジョン王の関係がわかって歴史の勉強にはなったが、それだけという印象である。なおジョン王は、例によって愚かな人間として描かれていたが、実際には必ずしもそうではなかったという話である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『わが命つきるとも(映画)』
竹林軒出張所『十戒(映画)』
竹林軒出張所『熱いトタン屋根の猫(映画)』
竹林軒出張所『麗しのサブリナ(映画)』
竹林軒出張所『第十七捕虜収容所(映画)』
竹林軒出張所『ロープ(映画)』
竹林軒出張所『フロント・ページ(映画)』
竹林軒出張所『メリィ・ウィドウ(映画)』
by chikurinken | 2015-04-24 07:56 | 映画

『ゆきゆきて、神軍』(映画)

b0189364_8171127.jpgゆきゆきて、神軍
(1987年・疾走プロダクション)
監督:原一男
企画:今村昌平
撮影:原一男
出演:奥崎謙三(ドキュメンタリー)

オクザキ、偽善者を打て!

 自称「神軍平等兵」、奥崎謙三の戦友慰霊の旅に同行するドキュメンタリー。公開当時、非常に話題になり、さまざまな賞を総ナメにした異色ドキュメンタリー。
 「戦友慰霊の旅」と言ってもそこはアナーキストの奥崎氏、終戦3週間後に起こった日本軍による組織的な処刑事件(戦友が殺された)の真相を究明するというのがその主旨で、関係者(かつての上官たち)を訪ねるというものである。
 この奥崎氏、右翼の街宣車のような車に乗り回し街宣活動も行うが、決して右翼ではなく、あくまでもアナーキストである。かつて昭和天皇に向けてパチンコを放ったこともある上、殺人、猥褻図画頒布(ポルノ写真に天皇をコラージュしたものを銀座のデパート屋上から散布)などでも逮捕歴がある(この映画撮影時点で前科三犯)。そんな凶暴な奥崎(見たところ普通のおじさん)が、普通の生活を送っているかつての上官たちのところに赴き、どのようないきさつで処刑が行われたか、それに彼らがどのように加担したか執拗に問い質す。とぼけて何も語ろうとしない上官には暴力も厭わず、あらゆる手を尽くして彼らに真相を語らせようとする。軍人時代は上官にも暴力をふるうような勇ましい男で、警察を呼ぶなら呼んでみろとうそぶく。しかし激しく激昂して手を出すというような感じではなく、少しばかり計画的な要素もあり、非常に聡明な男であるという印象も受ける。また、彼がこういう活動を行う動機も純粋(殺された戦友の慰霊であり、二度とあのような悲劇を繰り返さないため真相を次の世代に伝えるべきというもの)であるため、まったく不快感はなく、むしろ爽快感すら感じる。このような奥崎の魅力がこの映画の魅力にもなっている。「私には暴力しかない」という開き直ったセリフもなかなかうならせる。
 この映画は1982年から撮影が始まったらしいが、公開は1987年で、その間さまざまなことが起こっている。そのため、最後の方はかなり意外な結末を迎える。ナレーションは一切なく、ただ奥崎の後をカメラが追いかけるだけという構成の映画だが、それだけで強烈なインパクトが残る。言ってみればドキュメンタリー中のドキュメンタリーである。2015年現在奥崎はすでに死去しているが、生きていたら今の首相のところに言って、開き直ってすっとぼけるヤローに鉄槌を下してほしいと思わせる。まさに快男児、奥崎の真骨頂であった。
ベルリン国際映画祭カリガリ映画賞、毎日映画コンクール日本映画優秀賞他受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『極私的エロス・恋歌1974(映画)』
竹林軒出張所『全身小説家(映画)』
by chikurinken | 2015-04-22 08:17 | 映画

『精神』(映画)

b0189364_893598.jpg精神(2008年・Laboratory X)
監督:想田和弘
撮影:想田和弘
編集:想田和弘
ドキュメンタリー

とある精神科診療所の日常

 岡山のとある精神科診療所(こらーる岡山)に取材し、医師や患者の日常に迫ったドキュメンタリー映画。
 監督は、日本の選挙事情をあぶり出した『選挙』の想田和弘で、前作同様ナレーションは一切入らず、映像だけが流れる。そのため現場に実際に居合わせているような感覚にもなるが、しかし映像の中で大した事件は起こらないため一生懸命見ていると少々退屈する。登場する患者たちは、あるいは躁鬱病、あるいは統合失調症であるが、見た目はまあ普通。話される内容は、破綻した生活だの虐待の話(乳児まで殺したと……)だの、あるいは家族と縁が切れた話だのであまり愉快な話はない。
 こらーる岡山を運営している精神科医師は山本昌知という方で、この人がまた、ほとんど手弁当でこの診療所をやっているような赤ひげ先生。非常に立派な人で、患者や診療所スタッフからも慕われている。この映画で唯一心地良い箇所と言えば、この赤ひげ先生にスポットが当たる部分くらいである。
 監督は映画の中で、精神障害の人々と正常な人々の間にある壁を超えてみたかったと語るが、確かにそれはできているかも知れないが、だからといって映画の内容が充実しているとは言えないのは辛いところ。劇場で2時間半近くこの映画を魅せられたらきついかなと思う。まあ異色作であるのは確かだが。
釜山国際映画祭、ドバイ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『生きづらさに向き合って(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『統合失調症がやってきた(本)』
竹林軒出張所『入院しちゃった うつウーマン(本)』
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
by chikurinken | 2015-04-21 08:10 | 映画

『LOVE理論』(1)(2015年版)(ドラマ)

LOVE理論(2015年・テレビ東京)
演出:西古屋竜太、太田憲一
原作:水野敬也
脚本:八代丈寛
出演:大野拓朗、片岡愛之助、清野菜名、武田真治、迫田孝也

やはり出てきたか、新版『LOVE理論』

b0189364_834689.jpg 2013年にテレビ東京系で放送された『LOVE理論』が新装オープンして戻ってきた。「やはり」という感は強いが、前のバージョンで水野愛也を演じた怪優、中村獅童は片岡愛之助に代わって、インパクトは1/3くらいになった。とは言え、ドラマの構成は非常によくできており、13年版『LOVE理論』にひけをとらない。
 ストーリーは、茨城の田舎から上京し應慶大学(慶應ではありません)に入った奥手な主人公、今田聡(大野拓朗)が、キャバクラ店長、水野愛也(片岡愛之助)から店長直伝の「LOVE理論」(恋愛テク)を伝授されるというもの。「LOVE理論」については毎回丁寧に解説があり、このあたりの見せ方は、同じテレビ東京の『俺のダンディズム』『アラサーちゃん』とも共通していて、テレビ東京深夜ドラマの一つのパターンができあがっていると考えられる。
 エンタテイメントの要素も多分に盛り込まれていて非常に面白いドラマに仕上がっているが、やはり水野店長のインパクトが13年版とまったく違っていて、そこらへんが物足りないと言えば物足りない。もっとも獅童の水野店長が毎回毎回でてきたら相当ウザイとも言える。なお、今回の『LOVE理論』だが、単発ではなく連続である。連続ドラマとして作るんなら、確かに片岡愛之助くらいの落ち着きは必要かも知れない。
 番組で紹介される恋愛テク、「LOVE理論」は、面白いところをいじってはいるが、テクニックとして考えるとくだらない。元ネタ(原作)は水野敬也の『LOVE理論』だが、内容は軽薄であほくさい。買って読むような本ではない……と思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム(1)〜(3)(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-04-20 08:04 | ドラマ

『不便な便利屋』(1)(ドラマ)

不便な便利屋(2015年・テレビ東京)
演出:鈴井貴之
脚本:鈴井貴之
出演:岡田将生、遠藤憲一、鈴木浩介、田中要次

まったく笑えない、だだ滑りのコメディ

b0189364_6514089.jpg 『アオイホノオ』『俺のダンディズム』を放ったテレビ東京の深夜枠なので期待したが、非常に浅はかなドラマで、まったく見るべきところがない。北海道・富良野に向かうバスが吹雪で動かなくなり、とある町に降り立った純(!)がその町の便利屋として働き出すというストーリーのドタバタコメディ。ナレーションは純のもので「お母さん、……」というもの。『北の国から』のパロディのつもりなんだろうが、そんなのこれまでさんざんバラエティ番組で使われたネタだし、新鮮味もなければ面白味もない。随所にだだ滑りのネタが出てきて、こちらを白けさせ、あきれさせる。一言で言うとセンスが悪い。(バラエティ特有の)女性観客の笑い声でもバックに入れてくれたら少しは笑えたかも知れない。
 演出、脚本の鈴井貴之という人、『水曜どうでしょう』の企画が当たった人気作家らしいが、少なくともこのドラマはありきたりで、しかもドラマ脚本もはっきり言って下手である。このドラマについては見どころがまったくなかった。もう見ません!
★★

参考:
竹林軒出張所『アオイホノオ (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-04-18 06:52 | ドラマ

『キューバ 市民ツーリズムにかける』(ドキュメンタリー)

キューバ 市民ツーリズムにかける 〜米との国交正常化の前夜〜(2015年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

変わりゆくキューバの姿が見える

b0189364_9422439.jpg アメリカとの国交が正常化しつつあるキューバで、民間人の間に観光業が勃興している事情を紹介するドキュメンタリー。
 キューバでは現在、アメリカからの観光客の増加を見込んで、公務員生活に見切りを付け民宿を始める人々が増えている。キューバは社会主義国なので基本的にほとんどの仕事は公務員扱いになるが、それでも近年物価の高騰により、給与の実質的な価値が目減りしている。そのため、多少リスクを抱えながらも、公務員としての仕事を辞め民宿を開業する人が増えているというのである。キューバ政府もこういった観光業に対して以前より速く許認可を出すようになったというが、このような事情もこういった傾向に拍車をかける一因になっている。だが一方で、過剰な民宿開業ラッシュのために、民宿はこれから淘汰の時代を迎える可能性が高い。キューバの経済状態は今後上向きになると期待する人々は多いが、新たな問題が生み出されそうな予感もある。
 個人的には、これまでのキューバの素朴な生活や美しい環境に親しみを持っていたので、これから国内が観光バブルに踊ったり「開発」という名の環境破壊が進んだりするのはあまり嬉しくないが、厳しい経済状態に苦しんでいる人にとってはそうも言ってられないんだろう。ただ今後今までのような社会保障制度は維持されなくなるかも知れない。改革開放の中国が歩んできた道を思い起こすと、同じ轍を踏まなければ良いが……などと感じてしまう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『アメリカが見たカストロ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-04-16 09:42 | ドキュメンタリー