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竹林軒出張所

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『調査報告 "消えた"子どもたち』(ドキュメンタリー)

調査報告 "消えた"子どもたち 〜届かなかった「助けて」の声〜(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

鬼畜のような人間が親になったら

b0189364_826934.jpg 親が子どもを長期間に渡って監禁していたというニュースがたまに流れるが、なんてひどい親なんだと思いつつ、こういう状況はなかなか見えてこないのが実態である。そのようなケースについて、具体例を挙げながら紹介し、一般市民の注意を喚起するというドキュメンタリーがこの番組。
 この番組によると、こういう事例はこれまで判明しているだけでも10年間で1000件を越すらしく、それを考えると案外身近にあるのかも知れない(虐待例は結構身近にあるしね)。こういう事例は周囲から気付かれない場合も多いが、学校や児童相談所がそれに気付いたとしても、親が拒否すればなかなか住居内に踏み込むというわけに行かず、わからないままになってしまうこともあるらしい。
 この番組で取り上げられたある女性は、生まれてから18年間家から一歩も外に出させてもらえず、自分を支配する親に怯えながら生きていたという。学業は当然皆無に近く、18歳で助け出されたときは、やせ細っていて身長も120cm程度しかなかったらしい。親の目が離れた瞬間に家を飛び出て近所のコンビニに駆け込み保護されたんだそうだ。その後、社会復帰を果たそうとするが、当然のことながら社会生活不適合状態で、しかもキャリアもほとんどないためいまだに(精神的に)不安定な状態が続いている。
 こういった子どもたちを生み出す鬼畜のような親にはもちろん落とし前を付けてもらうことになるんだろうが、それと同時に周囲が発見しやすい環境を作り出すことも大切というのがこのドキュメンタリーの主張である。もっとも行政がこういった事例に実際にどのように対応しているかや、可視化するための方法などについてはほとんど示されなかったため、なんだか曖昧模糊とした終わり方をして、具体的な事例の報告に終始したのは少し残念な部分ではある。ただこういった事例が身近にあるんだということを突きつけたという意味では、価値のある番組だったと思う。行政を含め、こういった事件に対する具体的な対策については、またいずれ別の機会に紹介されるだろう、と期待を込めて書いておく。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『失職女子。(本)』
竹林軒出張所『虐待カウンセリング 柳美里・500日の記録(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-03-31 08:30 | ドキュメンタリー

『ヤンキー原発閉鎖 5年の記録』(ドキュメンタリー)

ヤンキー原発閉鎖 〜米・バーモント州 5年の記録〜
(2014年・米Turning Tide Productions/NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

b0189364_10173298.jpgアメリカの原子力事情
ケーススタディ1


 アメリカ、バーモント州にあるヤンキー原発は、福島第一原発と同型の老朽化した原子炉(GEのマークI)を持つ。建造からすでに40年経っており、本来であれば廃炉になるんだが、その所有者であるエンタジー社は運転延長を決めた。一方これに反対する周辺住民は、議会を動かして、運転延長の撤回を決議させた。ところがこれに対してエンタジー社が「議会に運転延長について決定する権限はない」として訴訟を起こし、結果的にエンタジー社の主張を認める判決が出され、運転延長が決定的になった。そんなときに発生したのが福島第一原発の事故で、これにより風向きが変わる。その後、住民の運動が功を奏したこともあって、結局当初の案どおり廃炉が決定した。このいきさつを5年間に渡って追い続けたのがこの番組である。
 映像に映し出されるのは、日本とまったく同じような光景で、住民の主張や質問に対して木で鼻をくくったような態度で臨む電力会社という構図は変わらない。反対運動を行う住民に警察が圧力を加えるなどの図式も同じ。また、原発の運転と利害を同じくする住民による原発礼賛運動まであり、所は違えども行われていることはほとんど同じ。唯一普通と違うのは、地方の行政と議会が原発にノーの意志を示した点である(まあ日本でも議会や行政が反対の意思表示をしたケースがあるにはある)。
 このヤンキー原発については、これまでもたびたび放射能漏れを起こしていて、近隣の河川にも放射性物質を垂れ流してきたのは有名で、地下の配管も相当老朽化しているらしい。電力会社の方も地下配管の状態については正確に把握していないようだが、それでも資本の原理で、金になる財産はちょっとぐらい危なくても使い続けたいという意識が働くようだ。だが、その危険の度合いがそこいらの通常の施設と違うのが原発である。こういった単純な思考にノーが突きつけられたのは、たとえアメリカの話でも大変結構なことである。とは言え、これからとりかかる廃炉作業は向こう数十年続くことになり、悪夢は簡単には終わらないのである。番組の最後に追加された、廃炉後も苦難は続くというメッセージはなかなかシビアで、原発の特徴がしっかりと映し出されていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『原子力大国 アメリカ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原子力“バックエンド”最前線(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-03-29 10:18 | ドキュメンタリー

『テレビに映る中国の97%は嘘である』(本)

b0189364_941456.jpgテレビに映る中国の97%は嘘である
小林史憲著
講談社+α新書

興味深い記述は多いが
タイトルが内容を反映していない


 中国で取材活動をしているテレビ東京の記者が、現場の目線でいろいろな事件を紹介していくという本。
 2012年の反日デモ、中国の金持ち村、マオタイ酒バブル、チベット族の仏画バブル、2008年の毒ギョーザ事件、中朝国境の様子などを章単位でまとめており(全6章)、それぞれ取材の現場で見聞きしたさまざまな事柄を紹介していく。取材現場の臨場感が伝わってくるような記述で、外野である我々にとってはなかなか興味深い。特に反日デモの現場の様子(第1章)や毒ギョーザ事件のスクープ合戦の章(第5章)が面白かった。
 反日デモについては、当時テレビでさかんに放送されたこともあり中国全土で暴力的なデモが繰り広げられたかのように思いがちだが、実はごく一部の地域・地区でしか行われなかったこと、破壊活動については一部の暴徒が暴走して略奪行為に発展したに過ぎなかったこと(ロックコンサートの熱狂みたいなものと著者は言う)、(あちこちのマスコミで取り上げられた)暴徒に襲われたという日本人記者がこの著者であること(これについても事情が詳細に書かれている)などが現場の目線で書かれていて、目からウロコである。また、中国当局による毒ギョーザ事件の犯人逮捕発表に際しての日中の温度差などもなかなか興味深い。日本人記者によるスクープ合戦はまさに現場の様子が臨場感とともに伝わってくるし、中国の農村が抱える貧困の問題も明らかにされていて、ジャーナリスティックな内容に仕上がっている。
 そのため、取材記者が書いたジャーナリズム本として読めば十分楽しめるんだが、タイトルに少々アオリが入っていて、妙な期待をもって読むと少々失望する。このタイトルを見ると、日本での報道が中国の実情をまったく反映していないことを告発する本なのかと思うが、反日デモの章以外は、まったくもってそういう内容の本ではない。ただよくよく検証してみるとそう考えるのもこっち側の一方的な思い込みとも言えるわけで、著者が「まえがき」で書いているところによると「私のカメラを通じてテレビに映し出された中国という国は「嘘だらけ」の国だった」ということなんだそうだ。つまり、「報道が嘘だらけ」ということではなく「中国社会が嘘だらけ」というのが著者の主張のようなんである。誰が付けたタイトルか知らんがなんだか詐欺的ではある。とは言え、日本での中国の報道が必要以上に誇張されているのは事実のようで、このあたりについては反日デモの章でしっかり書かれている。そうは言っても、タイトルについては釈然としない感覚は最後まで残る。面白い本だけに少々もったいない部分である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『在中日本人108人の それでも私たちが中国に住む理由(本)』
竹林軒出張所『中国はなぜ「反日」になったか(本)』
竹林軒出張所『中国人の本音(本)』
竹林軒出張所『中国人一億人電脳調査(本)』
竹林軒出張所『だまされて。 涙のメイド・イン・チャイナ(本)』
竹林軒出張所『毛沢東の遺産 激論・二極化する中国(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-03-27 09:42 |

『京都人の密かな愉しみ』(ドキュメンタリー)

京都人の密かな愉しみ(2015年・NHK)
NHK-BSプレミアム ザ・プレミアム

よそ者でも密かに愉しめる京都

b0189364_1421953.jpg 京都をモチーフにしたドキュメンタリーで、今年の正月に放送されたもの。
 ドキュメンタリーとは言っても、実質的には4本の寸劇風短編ドラマで構成されており、トータルとしてドキュメンタリータッチでまとめ上げられているという、ちょっととりとめのない構成である。ただし、のんびり見る分にはそういうことはまったく気にならず、そんなわけでかなり楽しめる。このドキュメンタリーの着眼点や基本的な視点はあくまでもよそ者的ではあるんだが、京都内部からの視点が全編を貫いており、(外部の者による)妙ちきりんな京都像というものではない。そんなわけで、京都の関係者でも安心して見ることができる……と思う。とは言うものの京都人役で出演する役者たちの京都弁は少々不安な感じもする。よそ者の僕にはそのあたり判然としなかったが。
 また、文化財の類も本物が登場しているらしく、他にも京都の知られざる名所が登場する他、京都の美しい風景もふんだんに出てくる。『雁の寺』でお馴染みの相国寺瑞春院の雁の襖絵も登場する。そのため、テレビの前で京都のさまざまな側面を多角的に楽しむことができ、いながらにして京都にどっぷりひたったような気分になれる。正月に放送される番組としては格別ではないだろうか。
 音楽が洗練されていたのも特筆ものである。エンドロールでは、武田カオリという歌手が歌った「京都慕情」が流れるが、これも非常に良い味わいである(現在のところCD化はされない模様)。
 なお、ドキュメンタリー(というかドラマ)のホスト役を務める外国人教師は団時朗、その教師があこがれる老舗和菓子屋の若女将は常盤貴子が演じている(京都弁に少々違和感あり)。タイトルはブニュエルの映画『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』から……だろうな。
第32回ATP賞グランプリ受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 夏(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 冬(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 月夜の告白(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 桜散る(ドキュメンタリー)』
BSコラム『「京都人の密かな愉しみ」プロデューサーのつぶやき』
竹林軒出張所『漱石悶々(ドラマ)』
竹林軒出張所『京都御所 〜秘められた千年の美〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都 冷泉家の八百年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『雁の寺(映画)』
by chikurinken | 2015-03-25 01:43 | ドキュメンタリー

『雨に唄えば』(映画)

b0189364_927018.jpg雨に唄えば(1952年・米)
監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
脚本:アドルフ・グリーン、ベティ・コムデン
作詞:アーサー・フリード
作曲:ナシオ・ハーブ・ブラウン
音楽:レニー・ヘイトン
出演:ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ、ドナルド・オコナー、シド・チャリシー、ジーン・ヘイゲン

映画は名画だが
あいにくひどい商品を掴まされた


 脳天気なハリウッド・ミュージカル映画……ではあるが、この脳天気さが結構心地良い。特にジーン・ケリーとドナルド・オコナーのはじけ方がもうのっぴきならない状態で、見ていて思わず微笑んでしまう。気分が落ち込んだときにこういう映画を見ると気持ちが明るくなる。そういう意味では癒やしの映画とも言える。
 ストーリーは、トーキー創世記のハリウッドを舞台にしたもので、そういう点ではありきたりなミュージカル映画とは少々毛色が変わっている。映画界の内輪ネタみたいなものもあるし、スタジオを舞台として使った映像は楽屋オチ風でもあるしでなかなか凝っている。圧巻は雨の中でジーン・ケリーが踊りまくる有名なシーンだが、それ以外にも見所が多い。ただ終わりの方にあるブロードウェイ・ミュージカルは、10分ぐらい続くんだが、毎度毎度見るたびに退屈する。製作者側の一種のサービスみたいなレビュー映像で、シド・チャリシーまで登場してくるんだが、長すぎて飽きてしまう。僕にとっては「蛇足」という言葉がピッタリくるんだが、好きな人には堪えられないんだろうか?
 ちなみにこの映画を見たのは今回で3回目。『ザッツ・エンタテイメント』(MGMのミュージカル映画を紹介するドキュメンタリー映画)も2回見ているし、雨の中のシーンについては数え切れないほど見ている。今回は、英語の勉強のつもりで『雨に唄えば (別冊宝島 1597 名作映画で英会話シリーズ 7)』という本を買ってそれの付属DVDを見たんだが、この付属DVDってのが粗悪で、いかにも「別のDVDからコピーしました」という代物で、なんと再生が途中で止まってしまった(異なる2台のDVDプレーヤーで同じ症状が出た)。こういうケースは初めてである。結局、ワーナー・ホーム・ビデオから発売されている正規版を見たんだが、いくらおまけだっつっても、金取って売るからにはちゃんと見られるものを提供すべきじゃないかと思う。こういう売り方は悪質で、詐欺に近い。この間の『レベッカ』と言い、せっかくの名画が台無しである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『レベッカ(映画)』
竹林軒出張所『ロシュフォールの恋人たち(映画)』
竹林軒出張所『ロバと王女(映画)』
竹林軒出張所『NINE(映画)』
竹林軒出張所『銀座カンカン娘(映画)』
by chikurinken | 2015-03-23 09:27 | 映画

『レベッカ』(映画)

b0189364_9393055.jpgレベッカ(1940年・米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ダフネ・デュ・モーリア
脚本:ロバート・E・シャーウッド、ジョーン・ハリソン
撮影:ジョージ・バーンズ
出演:ローレンス・オリヴィエ、ジョーン・フォンテイン、ジョージ・サンダース、ジュディス・アンダーソン

ロマンス小説風に展開するが
通り一遍の玉の輿物語ではない


 ヒッチコック監督の名画で、見るのは今回で2回目である。ストーリーがなかなか凝っていて、ロマンス小説風の玉の輿物語かと思えばさにあらず。話が二転三転し、誰が正義で誰が悪かだんだんわからなくなる(終いには法廷劇か?というような展開すら見せる)。もちろんそれで話がどこかに飛んで行ってしまうようなことはなく、ストーリーとして非常にうまくまとめられている。職人芸みたいな味わいさえ感じられ見事である。
 この映画は、なんと言っても主演女優のジョーン・フォンテインが非常に魅力的である。ヒッチコックは女優を魅せるのがうまいという印象が個人的にはあるが、この映画なんかその最たるものである。この作品は、ヒッチコックがアメリカで撮った最初期の映画で、同時に女優の魅力を活かした映画としても最初期の映画と言える。この後、イングリッド・バーグマン、ティッピー・ヘドレン、グレース・ケリーなどがヒッチコック映画を華々しく飾っていき、ヒッチコック作品がハリウッドの華々しさを一層引き立てる役割を果たしていくことになる。なおジョーン・フォンテインはこの後、ヒッチコックの『断崖』にも主演として登場している。
 この映画も随分古い映画であるため、現在日本ではパブリックドメイン(著作権切れ)扱いで、いろいろなメーカーからDVDが安価で出されている。今回僕が見たDVDは『世界名作映画全集 30 レベッカ』というものだったが、字幕をオフにできないだけでなく画質も非常に悪く、DVDとしての品質が非常に悪かった。そのため、前に劇場で見たときよりも映画自体が劣っているような印象すら感じた。多少値段が高くても、しっかりした配給会社から提供されているものやリマスターものを選んだ方が無難だとあらためて感じた次第。
第13回アカデミー賞最優秀作品賞、撮影賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『巨匠たちの肖像 ヒッチコック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『サイコ(映画)』
竹林軒出張所『知りすぎていた男(映画)』
竹林軒出張所『マーニー(映画)』
竹林軒出張所『ロープ(映画)』
竹林軒出張所『めまい(映画)』
竹林軒出張所『ガス燈(映画)』
竹林軒出張所『ハムレット(映画)』
by chikurinken | 2015-03-21 09:39 | 映画

『ミモザ館』(映画)

b0189364_8421930.jpgミモザ館(1934年・仏)
監督:ジャック・フェデー
脚本:ジャック・フェデー、シャルル・スパーク
出演:フランソワーズ・ロゼー、ポール・ベルナール、アンドレ・アレルム、ジャン・マックス、アルレッティ

カジノという縦糸に
人間心理が複雑に絡みつく


 フランスの古典的な名画で、僕自身は30年ばかり前に大阪で見た。ちなみに併映は『舞踏会の手帖』。『舞踏会の手帖』の方は割合内容を憶えていたが、この『ミモザ館』についてはまったく記憶がなかった。これほど記憶にないという映画も珍しい。
 タイトルの「ミモザ館」というのは、主人公のルイズ(フランソワーズ・ロゼー)が経営する安ホテルの名前で、付近にはカジノがある。このカジノがストーリー上重要なモチーフになっていく。主人公夫婦に養子の男の子がいるが、その男の子がやがて成人して、主人公夫婦との関係がややこしくなる……というようなそういった類のストーリーである。
 話の中にはカジノに溺れる人間や裏社会の人間も出てきて、全体的にはむしろリアリズム風の映画で、タイトルが持つロマンチックな響きからはちょっとかけ離れた内容になっている。ストーリーについて一切記憶がなかったのは、そのあたりの乖離のせいかも知れない。
 社会問題を捉える映画でありながら、愛(近親愛なども含めて)や嫉妬などといった精神的な面も重層的に描かれており、映画の奥深さが形成されている。カジノが素材の映画といえば、同じくフランス映画の『天使の入江』などという作品もあったが、こうして何度も素材として取り上げられているところから推測すると、フランスではカジノが社会の中に溶け込んで社会問題化しているんだろうかとも思う。昨今カジノ導入なんてことを声高に叫んでいる連中がいるが、簡単に考えてほしくないものだね。まあいずれにしても、少々変わった傾向の映画と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『天使の入江(映画)』
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』
by chikurinken | 2015-03-20 08:43 | 映画

『昭和残侠伝 死んで貰います』(映画)

b0189364_8203860.jpg昭和残侠伝 死んで貰います(1970年・東映)
監督:マキノ雅弘
脚本:大和久守正
出演:高倉健、藤純子、池部良、長門裕之、津川雅彦、荒木道子、中村竹弥、山本麟一

安直なインスタント映画

 『昭和残侠伝』シリーズの第7作で、シリーズの他の作と似たり寄ったりのプログラム・ピクチャーである。
 例によって、ワルモン一味が(殺人を含む)嫌がらせをあれやこれや仕掛けてきて、イイモンは耐え続けるが最終的に堪忍袋の緒が切れて、破滅的行為に出るというストーリー。映画としては取り立ててどうということがない作品で、ま、高倉健、藤純子、池部良あたりを見に行こうかなという類の、キャスティング中心の映画である。
 途中、高倉健と藤純子の恋愛のシチュエーション(お互いが初恋同士という設定)がたびたび入るが、見ていてこっぱずかしい。演出も非常にありきたりで、まあつまりはそれ以前の安直な恥ずかしいパターンを踏襲しているわけだが、正直見るに堪えない。藤純子が15歳の娘を演じていて、可愛らしい声を出したりするのもどうかと思う。
 マキノ雅弘の甥である長門裕之が高倉健の舎弟役で良い味を出しているが、弟の津川雅彦についてはチョイ役で、登場する必然性があるのかわからないような役柄で出ている。『唐獅子牡丹』には、比較的重要な役で出ていたわけで、何なんですか、この扱い……という印象である。おそらくこのあたりの時代から長門裕之と津川雅彦の確執が始まっているんだろうと勝手に想像する。
 総じてワンパターンの作品で、すでに一定の枠が決まっていて、そこにキャストやエピソードを流し込むだけみたいなインスタントな映画というイメージが残る。そのため序盤のあれやこれやのエピソードはとってつけたようなものが多く、大して重要性を感じることもない。そのため、このあたりは適当に切り上げて早々に格闘シーンに移ってくれよなどと考えながら見ていた。その割に格闘シーンは短く、少々物足りなくもある。ワンパターン作品ってのは、まあおおむねそういったもので、それ自体に不満はないが、見終わった後一抹の虚しさが残るのはちょっと残念。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』
竹林軒出張所『ザ・ヤクザ(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『網走番外地(映画)』
竹林軒出張所『追悼 高倉健』
by chikurinken | 2015-03-18 08:22 | 映画

『手足をなくしても 〜ある登山家の挑戦〜』(ドキュメンタリー)

手足をなくしても 〜ある登山家の挑戦〜(2014年・英5Production)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

指がなくても岩登りできるとは驚き

b0189364_8172254.jpg かつて遭難して凍傷になった結果手足を失った元登山家が、再びスイスのマッターホルンに挑むまでを描いたドキュメンタリー。
 この登山家、ジェイミー・アンドリューは、1999年の遭難で、両手の手首から先、両足の膝から下を失った。その後、失意の日々を過ごすが、やがて自分でできることを少しずつ増やし、かつてのように登山に挑むことができると信じるようになる。登山のためのトレーニングを続け、ついにマッターホルンに挑む日がやってくる……という、そういった話。
 なおこのマッターホルンだが、1000mを超える断崖を登らなければならず、長時間のロッククライミングを強いられる。手首から先がなくてどうやってロッククライミングできるのかにわかにはわからないが、要するに残っている部分(つまり手首まで)を使って岩を掴むのである。ちなみに足は義足(写真参照)。実際にアンドリューがロッククライミングしているシーンはなかなか圧巻である。
 一人の男の再起の記録としてはよくできているが、ドキュメンタリー番組としては少々盛り上がりに欠ける……かな。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ヒマラヤ8000m峰 全山登頂に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『雲上の超人たち 〜日本アルプス大縦断レース〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『夏の北アルプス 雲上のアドベンチャー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『典子は、今(映画)』
by chikurinken | 2015-03-17 08:18 | ドキュメンタリー

『“空中農園”が人類を救う!?』(ドキュメンタリー)

“空中農園”が人類を救う!?(2014年・仏Docside Production)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

「空中農園」の理想を語るのは結構だが
説得力に欠ける


b0189364_8202490.jpg 今後(人口増加によって)食料需要の増加が見込まれる現代において、その生産のために「空中農園」を作って対応するというのはどうだと提案するドキュメンタリー。
 「空中農園」とは、高層ビルのような建物の各階で野菜を栽培しようという案で、土を使わず水耕栽培で野菜を育てようというもの。同時に、この「農園」はコンピュータによって高度に管理化されており、LED照明を使って光を照射し作物を育てるらしい。そのため、一般的な畑より病害虫が少なく、より有機に近い作物ができるし、しかも広い土地も不要というメリットがある。また、都市で生産できるため、輸送にかかる費用、エネルギーを節約できるというのも大きなメリットである。科学者たちや一部の資本家は、いずれこれを実現しビジネスとして成立させたい考えのようだが、目下のところは、採算面で商業ベースに載せることが難しいという話である、このドキュメンタリーによると。
 ビルの屋上に土を乗せて野菜を栽培したり小さな森を作ったりという話は実際よく聞くし、空間利用の方法として良いと思うが、この「空中農園」は、言ってみれば野菜の工場ということで、取り立ててどうと言うことはない。土地が著しく狭く農地が確保できないという地域ならいざ知らず、ほとんどの状況では、このドキュメンタリーで訴えているようなメリットはあまりないんじゃないかという気がする。何より、商業ベース云々というよりも、野菜の生産に大量のエネルギーを投下しなければならないわけで、言ってみれば化石燃料を食料に変換しているようなものである。まったく持続可能ではない農業に将来性はないんじゃないのと思う。
 また、あらゆる野菜がこの水耕栽培で生産できるかというとそうでもなさそうで、紹介されていた実際の映像を見る限り、生産されているのはほとんどがトマトだった。トマトを主食にするわけにも行かないだろうし、基本的に穀物を生産できなければ「増加する食料需要に対応するための農業」という観点では大した意味がないような気もするが、そういうことには番組内では一切触れずで、そのためにあまり説得力がないドキュメンタリーになってしまった。良い面ばかりを強調して悪い面に触れないのは、お粗末なドキュメンタリーと言わざるを得ないのではないだろうか。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ランドラッシュ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100マイルチャレンジ 地元の食材で暮らす(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』
by chikurinken | 2015-03-16 08:21 | ドキュメンタリー