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竹林軒出張所

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『そして、兄はテロリストになった』(ドキュメンタリー)

そして、兄はテロリストになった(2014年・英Grace Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_848823.jpg身を捨ててこそ
見えてくる真実もある


 イスラム教に改宗しテロ未遂の容疑で捕まった兄を持つドキュメンタリー作家が作った作品。
 兄の周辺にいた人々にインタビューすることで、なぜ兄のような人間が現れるかについて考察する。
 兄は、過激なイスラム指導者、チャウダリーの影響を受けてイスラム教に改宗したというのが製作者が考える直接的動機で、そのためにチャウダリーにもインタビューを敢行する。また、穏健な(普通の)イスラム教指導者兼心理学者とも協力して、一見普通のイギリス人がどのような過程を経て、イスラム戦士へと変貌していくかについて考察する。
 テロリストに転向するイギリス人の多くは、満ち足りない少年時代を過ごしそのために現状に不満を持ち続けるが、過激な思想に触れることで、それが弱い自分を変える力を持ちこれによって自身がさながら全能の存在になるかのように錯覚するというのが、製作者が最終的に到達する結論で、右翼の若者とその根底は同じだとする。そのために、右翼の若者にもインタビューを行い、彼らと根っこが同じであることを示そうとする。
 製作者が、自らの経験に基づいて冷静に考察した結果が示されるために、作者が展開する主張は非常にわかりやすい。日本ではびこるネトウヨなんかとも共通するような問題で、混迷の現代社会が浮き彫りにされる。製作者が身内の暗部をさらけ出しながら、難題にアプローチした意欲作と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フランスで育った“アラーの兵士”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『少年テロリストたちの“夜明け”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『T(ERROR) FBIおとり捜査の現実(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-02-28 08:48 | ドキュメンタリー

『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか』(ドキュメンタリー)

“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(2015年・米WGBH)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_8285022.jpgISの正体見たり

 最近NHKでは「イスラム国」を「イスラミック ステート」または「IS」などと呼ぶようになった。国でもないのに国であるかのような誤解を与えるということらしい。ということでこのドキュメンタリーも、かつて放送されたときは『「イスラム国」はなぜ台頭したのか』というものだったが、このようなタイトルに変更された。
 さてこのドキュメンタリーでは、なにゆえに「イスラミック ステート」が出現したか、そもそも「イスラミック ステート」というのはどういう集団なのかなどといった素朴な疑問に答えるもので、「イスラミック ステート」について知る上で必要な情報源になっている。先日、NHKで放送された『追跡「イスラム国」』よりさらに踏み込んだ内容になっている。
 では、「イスラミック ステート」はそもそもどこから出現したか。この番組では、その核の部分はスンニ派武装組織「イラクのアルカイダ」であるとする。2011年にアメリカがイラクから撤退した後政権に就いたのがシーア派のマリキ首相だが、このマリキ、何を思ったかスンニ派の閣僚たちを次々に粛正し始める。この番組によるとサダム・フセインの支持団体であるスンニ派のバアス党が復活するのを恐れたということだそうだが、結果的にスンニ派の実力者たちがマリキの恐怖政治に耐えられなくなり、「イラクのアルカイダ」と合流したのが「イスラミック ステート」の母体だと言うのだ。
 同時期に隣国のシリアでは、アサド政権対反体制勢力の内戦が始まり、2つの勢力の空白地帯に「イラクのアルカイダ」が勢力を延ばしていった。こうして「イスラミック ステート」は支配地域を拡大し、あげくに油田を制圧することで、資金源を得た。勢いに乗じた「イスラミック ステート」勢力はイラクの首都バグダッド近郊まで侵攻してくるが、あろうことか圧倒的多数の政府軍が逃走したことで、イラク国内にも大きな拠点を築くことができた……というのが現状らしい。
 その間、アメリカのオバマ政権も再三「イスラミック ステート」に対して攻撃を加える機会はあったらしいが、イラク戦争の教訓からか、不用意に介入することに躊躇したらしい。特にシリアについては、静観したいという考え方だったらしい。
 このようなさまざまな要因で「イスラミック ステート」は今日の姿になったわけだが、現在、先進国だけでなく湾岸諸国も「イスラミック ステート」には脅威を感じており、いずれ連合軍が進撃して、支配地域が縮小し元のテロ集団に戻るのではないかということが、このドキュメンタリーを見ると想像できる。ただしドキュメンタリーでは、「イスラミック ステート」は決して侮ることができない存在であると再三繰り返していた。ともかく、「イスラミック ステート」の歴史が非常によくわかるドキュメンタリーで、さすがにWGBH製作だと思わせるような硬派で堅牢な番組に仕上がっていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『そして、兄はテロリストになった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イスラーム国の衝撃(本)』
竹林軒出張所『イスラム国 テロリストが国家をつくる時(本)』
竹林軒出張所『少年テロリストたちの“夜明け”(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-02-27 08:29 | ドキュメンタリー

『列車に乗った男』(映画)

b0189364_814823.jpg列車に乗った男(2002年・仏独英スイス)
監督:パトリス・ルコント
脚本:クロード・クロッツ
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ、ジャン=フランソワ・ステヴナン、チャーリー・ネルソン、パスカル・パルマンティエ

不思議な展開のおとぎ話風の映画
まさにルコント・ワールド


 パトリス・ルコント監督作品で、『フェリックスとローラ』『親密すぎるうちあけ話』の間に作られた映画。
 内容はルコントらしく、少々変わった設定・展開で、途中まで謎めいた雰囲気と緊張感が続く。冒頭、主人公の「列車に乗った男」が登場するが、途中までどういうストーリー、どういういきさつなのか皆目わからない。この男が、ある町の老紳士と関わり合いになるが、あまり語るとストーリーを明かすことになるので詳しくは述べない(この映画はストーリーが結構重要になる)。この老紳士を演じるのは、『髪結いの亭主』で主演を務めたジャン・ロシュフォール。
 ストーリーも映像もなかなか重厚で、非常に丁寧に作られている。ルコント作品の中でもよくできた部類の映画で、テーマは『王子と乞食』みたいなものなのかしらんと見終わった後に考えた。おとぎ話みたいな話と言っても良い。
2003年LA批評家協会賞外国映画賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『仕立て屋の恋とフェリックスとローラ(映画)』
竹林軒出張所『フェリックスとローラ』(映画)』
竹林軒出張所『親密すぎるうちあけ話(映画)』
竹林軒出張所『髪結いの亭主(映画)』
竹林軒出張所『橋の上の娘(映画)』
竹林軒出張所『ぼくの大切なともだち(映画)』
竹林軒出張所『イヴォンヌの香り(映画)』
by chikurinken | 2015-02-25 08:15 | 映画

『ナタリー』(映画)

b0189364_8225299.jpgナタリー(2011年・仏)
監督:ダヴィド・フェンキノス、ステファン・フェンキノス
原作:ダヴィド・フェンキノス
脚本:ダヴィド・フェンキノス
撮影:レミー・シェヴラン
出演:オドレイ・トトゥ、フランソワ・ダミアン、ブリュノ・トデスキーニ、メラニー・ベルニエ、ジョゼフィーヌ・ドゥ・モー

日本未公開!
悪くはないがそれなりの恋愛映画


 美人のキャリア・ウーマンと冴えない男との恋愛を描いたフランス製ラブ・ストーリー。主演は『アメリ』のオドレイ・トトゥ。
 ストーリーは、トレンディ・ドラマか韓流ドラマかというような単純なもので、内容的にも特筆するような部分はなく、それなりの恋愛ドラマという感じ。ただ、オドレイ・トトゥが「スーパー美女」でフランソワ・ダミアンが「冴えない男」だという設定がピンと来ず、途中まで腑に落ちない状態が続いた。オドレイ・トトゥは、魅力的な女優ではあるが、美女という設定は少々微妙な気がするし、フランソワ・ダミアンも髪の毛が薄く冴えない感はあるが、状況によってはこれでもいけるかなという程度である。やはりこういうのは、記号として、もう少しはっきりとした設定を付けた方が良いのかも知れない。もっともやり過ぎると、戯画的になって白けてしまうのは目に見えているが。
 原作小説はフランスでヒットを飛ばしたものらしく、その作者がこの映画の監督までやっている。日本では劇場公開されていない映画(DVD化はされている)で、情報があまりないが、逆に言えばまあその程度の映画かなとも思える。それなりに楽しめはするが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アメリ(映画)』
竹林軒出張所『ココ・アヴァン・シャネル(映画)』
by chikurinken | 2015-02-24 08:24 | 映画

『オーケストラ!』(映画)

b0189364_7101216.jpgオーケストラ!(2009年・仏)
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ、アラン=ミシェル・ブラン、マシュー・ロビンス
出演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、ミュウ=ミュウ

これもご都合主義的
元巨匠が掃除夫ってのも無理がある


 かつて政治的な理由でボリショイ交響楽団をクビになった指揮者とメンバーが、起死回生を図り、ボリショイ交響楽団へのオファーを横取りしてフランス公演を果たそうとする……というストーリーの映画。
 謎解きやコメディの要素が盛り込まれておりそれなりに楽しく見ることができるが、話ができすぎかつ単純で、見終わった後「あほくさ」と思ってしまう。どことなく『オーケストラの少女』を思わせるストーリーだが、映画の雰囲気は『のだめカンタービレ』や『スウィングガールズ』に近い。
 それに主役の元マエストロは指揮が今一美しくないし、ヴァイオリニストも演奏しているように見えないしで、もう少しディテールにこだわった方が良いんじゃないかと思ってしまう。また「チャイコフスキーの協奏曲はともかく、セレナーデやプロコフィエフはどうなったんだ」と突っ込みを入れたくなるような、ストーリーのいい加減さも散見される。一言で言うと大雑把でご都合主義ということになる。
 タイトルバックがモーツァルトのピアノ協奏曲第21番第2楽章(「短くも美しく燃え」のテーマ)で美しい上、随所にいろいろな名曲が流れるのは音楽映画ならではである。もちろん、モチーフとして使われているチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もふんだんに聴けるなど(ご都合主義的な部分に目をつぶれば)音楽は存分に楽しむことができる。
★★★

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 以下、以前のブログで紹介した『スウィングガールズ』についての評(再録)。

(旧ブログ2006年12月7日の記事より)

b0189364_710427.jpgスウィングガールズ(2004年・東宝)
監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖
出演:上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、竹中直人、白石美帆

 よく作り込まれていておもしろいことにはおもしろいのだが、ストーリーが安直だ。マンガのストーリーによく見られるような安直さである。マンガが原作かと思ったくらいだ(どうやらオリジナル作品らしい)。「そんなにうまぐいがねって」と突っ込みを入れたくなる。
 登場人物がみな東北弁(米沢弁ですか?)を話すのは「なぜ?」と思った(関係者が米沢出身なのか?)が、それはそれで非常に味があって良かった。出演の竹中直人は、『シコふんじゃった』で見せたような絶妙なポジションで存在感を見せるが、ストーリーの安直さという点でも『シコふんじゃった』と共通していた。
★★★

参考:
竹林軒出張所『オーケストラの少女(映画)』
竹林軒出張所『名門オーケストラを救え(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スラムのオーケストラ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-02-23 07:11 | 映画

『徒歩7分』(1)〜(7)(ドラマ)

b0189364_7493068.jpg徒歩7分(2015年・NHK)
演出:中島由貴
脚本:前田司郎
音楽:冬野ユミ
出演:田中麗奈、鮎川桃果、田中圭、福士誠治、菜葉菜、石野真子

超新感覚天然ボケ・ドラマ

 「黒崎依子32歳。彼氏なし、友達なし、仕事なし。今更ですが、一人暮らし、始めます!」というキャッチフレーズのドラマ。黒崎依子は田中麗奈が演じる。
 この黒崎依子、一人暮らしだが特にこれと言って何もしていない。失業したというわけではなく、元々就職もしていない。バイト経験もない。友達もほとんどいない。これでドラマが成り立つのかという設定の、ちょっと天然ボケのドラマで、主人公も天然ボケ、周りの人々もなんだか天然ボケの行動をする。登場するストーカー(まがいの人)までが天然ボケと来ていて、ドラマに緊張感がない。そのあたりが魅力のドラマである。
 緊張感がないので30〜40年前のホームドラマみたいな安心感があるが、感覚的にはかなり新しい。先ほども言ったが、こういう設定でドラマが成立するのかというもので、しかしそれでもきっちりドラマになっているし、なんだか全編を漂うのんびりした空気が心地良かったりする。セリフの掛け合いが漫才のようで、そう言えば全体的にどこかコント的でもある。
 全8回のドラマらしいが、この後の展開が読みにくい……ま、おそらくこういった感じで大きなことは何も起こらずに展開するんだろうが、非常にユニークなドラマである。90年代からこっち、日本のドラマが停滞(あるいは後退)しているように感じていたが、昨年の『アオイホノオ』といい、このドラマといい、やはりそれなりの才能は隠れていて、業界自体にはポテンシャルがあったのだな……と感じた。
★★★☆

追記:
 回によってグレードにバラツキがある。第5回は、はじけ方が尋常でなく奇想天外で面白かったが、第6回は全編会話だけで進行して、環境ビデオのようだった。どっちかというと全般的に第6回みたいな感じではあるが、もう一工夫あると良いなと感じる。また田中麗奈の好演も特筆もの。

参考:
竹林軒出張所『アオイホノオ (1)〜(6)(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-02-21 07:50 | ドラマ

『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』(本)

b0189364_8342618.jpg不登校は1日3分の働きかけで99%解決する
森田直樹著
リーブル出版

試論としては面白いが
それほど単純ではなさそうだ


 長年子どものカウンセリングに従事してきた著者が、不登校の処方箋について語る。
 タイトルが示すように、1日3分間子どもの長所を褒め(著者はこれを「コンプリメント」と呼ぶ)続け、その記録を付けていくというというのがその処方箋で、要は自信を失っている子どもたちに自信を付けさせる(子どもの心の中のコップを「自信の水」でいっぱいにする)ということらしい。本書では、具体的な実践方法とケース・スタディがいくつか紹介されている。著者によると、成功率は99%ということらしい。
 方法論が斬新かつ単純でしかも理に適っているんで、この方法論に異論はないが、ただこれで不登校の99%に対応できるかというと少々疑問が残る。僕自身も不登校の子どもと話をする機会があるが、必ずしもそこに収束させることはできないんじゃないかと感じる。とは言え、有意義な方法だとは思うし、不登校の子どもを抱えている親は試してみる価値はあると思う。実際Amazonのカスタマーレビューでもほとんどの読者が「☆☆☆☆☆」を付けていて、実践して成功したという例も書かれている。おそらく不登校を解消できた親にとっては、この本は福音以外の何ものでもあるまい。そういう意味で価値の高い本であるのは確かだ。
 ただし、誤植が非常に多く文章も少々雑で、本としての完成度は低いと言わざるを得ない。Amazonで「ベストセラー1位」が付いているほど売れてるんだから、刷や版を重ねる際にしっかり校正してほしいと思う。出版元が地方の小出版社であるからだなどと思われるのは不本意ってもんだろう。他のしっかりした地方出版社の印象まで悪くなる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『子どもの夜ふかし 脳への脅威(本)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『ドキュメント 高校中退(本)』
竹林軒出張所『本当は学びたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『風にむかってマイウェイ(ドラマ)』
by chikurinken | 2015-02-19 08:34 |

『大学入試担当教員のぶっちゃけ話』(本)

b0189364_8253626.jpg大学入試担当教員のぶっちゃけ話
櫻田大造著
中公新書ラクレ

しっかりぶっちゃけてほしかった
「優」をあげたくならない本


 大学入試の現場について大学教員の視点で論じる本。
 日本の大学入試は、基本的に各大学の大学教員が入試問題を作り、大学職員と教員が協力して入学試験を実施している(らしい)が、これが世界に類を見ない特殊な形態(「ガラパゴス化」と著者は呼んでいる)で、しかも教員に大変な負担を強いているというのが著者の主張。そのために、少なくとも教員の負担を減らすとか、入試関連の労働に見合った待遇改善をすべきだと言う。
 お説ごもっともではあるが、どうも奥歯に物が挟まった言いようが多いような感じがするのは、著者が務める関西学院大学の事情があまり語られていないためで、そのために一般論で終始してしまっているような印象がある。端的に言えば内情についてあまり「ぶっちゃけて」はいないのだ。いろいろあちこちで読んだり聞いたりした話を寄せ集めましたという内容で、その辺が非常に物足りない。
 それでも、入試問題作成、入学試験、合格発表、その後の手続きに大変な労力がかかっていることはよくわかったし、あちこちの大学事情、入試事情もある程度知ることができたので、この本を読むことにそれなりのメリットはあると言える。ただ先ほども言ったような理由で満足度は低い。それから「ツージョー」みたいな言葉づかいが頻繁に出てくるのもうっとうしい。また「一兎を追う者、二兎を得ず」というようなフレーズが出てきたりもするが、どういう意図で使っているのかまったくわからない(言うまでもなく「二兎を追う者は一兎をも得ず」をもじっているんだろうが)。ところどころにこういう独特(?)の表現があって、結構戸惑う。この著者には『「優」をあげたくなる答案・レポートの作成術』という著書もあるらしいが、この本については「優」は無理なような気がする。
★★★

参考:
竹林軒出張所『笑うに笑えない大学の惨状(本)』
竹林軒『大学受験ラジオ講座回顧』
竹林軒出張所『中国 教育熱のゆくえ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-02-17 08:25 |

『ネイティブスピーカーの英語感覚』(本)

b0189364_9324476.jpgネイティブスピーカーの英語感覚
ネイティブスピーカーの英文法〈3〉

大西泰斗、ポール・マクベイ著
研究社出版

今度は助動詞と副詞
英文法つまみ食い


 『ネイティブスピーカー』シリーズ第3弾は、助動詞(must、will、can 、may、shall、shouldなど)と一部の副詞(up、down、out、off)。これらの助動詞・副詞の本来の意味(「基本イメージ」)を説いて、そこから派生してくるイメージ、意味を紹介していくという方法論で、こういうやり方は言語の学習法として正統的であり非常に良いと思う。こういう方法論は、高校や中学の先生たちにも共有してほしいところである。
 僕自身中学時代、「未来」をあらわすwillになんで過去形(would)があるのか不思議でしようがなかったが(当時の先生に訊いたら「形式上の話だから」という説明が返ってきて、それなりに納得したけどね)、そういうことについても解説がある。なんでもwillは未来じゃなくて「推量」をあらわす助動詞なんだそうだ。なるほどこれだとつじつまが合う。ただ僕自身はwillの「基本イメージ」は「意志」だと思っていたので、そのあたりは少々個人的に異論がある部分ではある。
 本書で触れられている単語の多くについては、おそらくそれなりに英語を続けている人たちは、ある程度のイメージを持っていると思うんだが(特にup、down、out、offなど)、しかしそれが、この本のようにきっちりした形でまとめられたことはこれまでなかったんじゃないかと思う。原因として考えられるのは、こういう部分の解説にどうしても独断が入りやすいということがある。それは『ネイティブスピーカーの英語』シリーズ全般で感じる部分ではあるが、それをあえてやってのけることには別の大きな意義がある。また、学校の講義のような雑談混じりの親しみやすい語り口も本書の魅力である。そういう意味でも、高校生をはじめとする英語学習者にとって魅力的な本になっている。
 なお、今回読んだ『ネイティブスピーカーの英語』シリーズの3冊だが、薄い割にはどれも高価でちょっと買いにくいという向きには、同じ著者による『一億人の英文法』という本がある。内容については、特に『前置詞』と『英語感覚』に共通する部分が多く、値段も手頃である。また『ネイティブスピーカーの英語』シリーズの別の本、たとえば『ネイティブスピーカーの単語力』などは、『英単語イメージハンドブック』と内容がかぶっている。ただし『一億人の英文法』も『英単語イメージハンドブック』も参考書風であまり通読しようという気にはさせられない。面白味もあまり感じられない。一方この『ネイティブスピーカーの英語』シリーズは、語り口や読みやすさ、切り込み方に魅力があるんで、金をけちらずにこちらから入るのが良いような気もする。とりあえず、まず最初に図書館で読んでみることだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ネイティブスピーカーの英文法(本)』
竹林軒出張所『ネイティブスピーカーの前置詞(本)』
竹林軒出張所『日本人の英語はなぜ間違うのか?(本)』
竹林軒出張所『白文攻略 漢文法ひとり学び(本)』
竹林軒出張所『古典文法質問箱(本)』
by chikurinken | 2015-02-15 09:32 |

『ネイティブスピーカーの前置詞』(本)

b0189364_7541886.jpgネイティブスピーカーの前置詞
ネイティブスピーカーの英文法〈2〉

大西泰斗、ポール・マクベイ著
研究社出版

英語学習のショートカット

 『ネイティブスピーカー』シリーズ第2弾は、前置詞についての解説。
 高校英語じゃ前置詞の意味について細かく解説するなんてことはしない。一つには、連語(イディオム)として生徒に憶えさせる方がずっと簡単だからで、もちろん先生がそういうことをよく知らないというのもある。
 僕自身は幸いなことに予備校で前置詞の意味などについて学習していたので、必要以上に連語の記憶に時間を取られないで済んだ。そういう点は非常にラッキーだった。さてこの本なんだが、前置詞について、本来の意味(基本イメージ)とそこから派生した副次的な意味を紹介し、こういったものを前置詞の「家族」としてまとめている。たとえば「on」であれば「上に接触している状態」が基本イメージで、そこから「線上のon」、「支えのon」、「方向のon」、「直接的影響のon」、「進行中のon」が派生してきたということをかなり細かく説明している。
 昨日も書いたように、僕が予備校で学習した内容と非常に似ていて、しかも後半の「場所をあらわすin、on、at」や「時をあらわすin、on、at」などは同じようなくくりで勉強した記憶がある。同じ先生に習ったのかと思った(竹林軒出張所『ネイティブスピーカーの英文法 英語の感覚が身につく』を参照)、というか今でも少し疑っているんだが、誰かがこういう本を出してくれないかなと長い間思っていたため、この本を見つけたのは少し喜ばしくもある。ただ一部、前置詞の解釈に納得いかない部分もあるのは確かで、やはり意味の解釈については、著者独自の見解に基づいていると見た方が良い。これが絶対的なものではないということで、forやofの基本イメージについては別の解釈の方が適切なのではないかと感じた。
 それでもやはり、このような本が手の届く範囲にある今の高校生にはうらやましさも感じる。是非こういった本を手にとって、英語の世界にどっぷり浸かってもらいたいと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ネイティブスピーカーの英文法(本)』
竹林軒出張所『ネイティブスピーカーの英語感覚(本)』
竹林軒出張所『日本人の英語はなぜ間違うのか?(本)』
竹林軒出張所『白文攻略 漢文法ひとり学び(本)』
竹林軒出張所『古典文法質問箱(本)』
by chikurinken | 2015-02-13 07:55 |