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竹林軒出張所

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『アイコ16歳』、『アイコ17歳』(ドラマ)

b0189364_99519.jpgアイコ16歳(1982年・TBS)
第1話 女は全て美しい?!
第2話 大人への階段

アイコ17歳(1984年・TBS)
第1話 大学どうするの?
第2話 優等生なんかつまらない

演出:井下靖央、市川哲夫
原作:堀田あけみ
脚本:小林竜雄
出演:伊藤つかさ、大谷直子、秋野太作、三田寛子、遠野友理、かまやつひろし、加賀まりこ、真野あずさ、武田久美子、宮川一朗太、高柳良一

意外にしっかり作られていた学園ドラマ

 原作は、当時高校生だった堀田あけみが書き文芸賞を受賞して話題になった小説『1980アイコ十六歳』。この小説、その後映画化され、主演のアイコは富田靖子が演じていた。実のところ、映画版『アイコ十六歳』は、富田靖子に期待しながら劇場で見たんだが、結果的には何が面白いのかさっぱりわからないような映画で、所詮高校生が書いた日記みたいな小説が原作なんでしようがないのかなどと感じていた。だが、今回初めて見たドラマ版は、意外にしっかり作られていて面白かったのだった。
 映画版は公開時から話題になっていたが、テレビ・ドラマ版については僕自身まったく知らなかった。ドラマ化されていたという事実すら知らず、先日、CSのTBSチャンネルで放送されたことから初めて知ったほどである。当時かなり人気があったロリコン・アイドルの伊藤つかさが主演なんで、世間ではそこそこ話題になったとは思うが、何せ僕自身当時テレビのない生活を送っていたため、聞き知ったところで見る術はない。それに伊藤つかさに対してそれほど思い入れがあったわけでもないし。
 なお、『アイコ16歳』、『アイコ17歳』とも1時間×2回シリーズのドラマで、今の標準から考えると非常に変則的である。また『アイコ17歳』は『アイコ16歳』の2年後に作られた続編で、前作で三田寛子が演じていた親友の清美は、武田久美子に変わっていた。性格も大分異なっているよううな印象で、結局最後まで同じ人物だと気付かなかった。
b0189364_993329.jpg さてドラマだが、原作のモチーフを活かしながら、ドラマ的な要素も盛り込みつつ、それなりに盛り上がりを作るなど、ドラマ的なドラマに仕上がっている。キャストも個性的で、大谷直子や加賀まりこは魅力満載である。話の中心となる高校生(伊藤つかさ、三田寛子、遠野友理、武田久美子ら)たちの演技はそれなりだが、周囲のベテランがうまくサポートしているという感じで、当時のドラマ作りのありようがうかがわれるような気もする。素人が作ったような印象の映画版と比べると格段の差を感じた。
 ただし『アイコ16歳』の最初の方で登場したCM撮影のエピソードは不要だと思う。音楽担当のかまやつひろしをゲストで登場させて話題を作ろうとしたんだろうが、こういうおちゃらけたエピソードが入るだけで見る気が失せてしまう。事実このエピソードが出てきた時点でいったんはこのドラマを見るのをやめたんだ、僕は。その1カ月後にもう一度見直して、意外に面白かったので最後まで見たという次第。
★★★☆

追記:
 『アイコ17歳』では、映画『家族ゲーム』でお馴染みの宮川一朗太が高校生役で出演していたが、劇中で「うちの家庭教師が厳しすぎてイヤ」みたいなセリフを吐いていた。その家庭教師はもしかしてヨシモトか?という突っ込みが入りそうなシーンで、この部分、『家族ゲーム』のパロディのようである。おそらく製作者側が遊びでこしらえたセリフなんだろう。

参考:
竹林軒出張所『それぞれの秋(1)-(15)(ドラマ)』
by chikurinken | 2014-08-30 09:10 | ドラマ

『アラサーちゃん 無修正』(1)(ドラマ)

アラサーちゃん 無修正(2014年・テレビ東京)
演出:工藤里紗
原作:峰なゆか
脚本:新井友香、嶋田うれ葉、はしもとこうじ、八代丈寛、十時直子
出演:壇蜜、川村陽介、忍成修吾、みひろ、今野浩喜

「あるある」がほとんどない

b0189364_7404277.jpg 峰なゆかという人が描いたマンガ、『アラサーちゃん無修正』が原作のドラマ。
 雑誌のレビューを読んで興味が湧いたのでテレビで見ようと思ったが、うちのエリアでは放送されていなかった。しようがないのでオンデマンドで見てみた次第。
 内容は、おそらく著者の経験をほぼそのまま反映させたというような代物で、同世代の他の女や男に対するボヤキみたいな内容で、見ていて少々辟易した。若い女性の生活を赤裸々に描いているという要素もなくはないが、僕個人とはあまり縁のないタイプの生活で、あまり面白味は感じなかった。
 出演するのが壇蜜やみひろってことで、セクシーなシーンもいろいろとあったが、だからどうだってこともない。それから、みひろはともかく、壇蜜の演技はもう一つという感じで物足りない。ストーリーに対する共感が湧かないせいか、まったく好きになれなかった。
 著者の峰なゆかという人、先日深夜のバラエティ番組で見たが、この人に対してもあまり共感をおぼえなかった。まあ別世界の人という印象である。ただしこの著者が現在ネットで連載している『AV女優ちゃん』というマンガは、自虐的な要素が盛り込まれていて非常に面白いと感じた。やはり人を貶めるんじゃなくて自分を落として自虐的に描く方が(僕を含む)一般人には共感を持たれるってことさ。
★★☆

参考:
ゆるっとcafe『AV女優ちゃん』
竹林軒出張所『アオイホノオ(1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム(4)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『nude(映画)』
by chikurinken | 2014-08-29 07:42 | ドラマ

『アオイホノオ』(1)〜(6)(ドラマ)

アオイホノオ(2014年・テレビ東京)
演出:福田雄一
原作:島本和彦
脚本:福田雄一
出演:柳楽優弥、山本美月、安田顕、ムロツヨシ、中村倫也、浦井健治、黒島結菜、大水洋介、足立理

オタク色も濃いが主人公も濃い
'10年代ドラマの金字塔になるか?


b0189364_7365665.jpg 今こんな面白いドラマをやっているんだということを多くの人に知らせたい……そういうドラマである。全11回のうち、もうすでに6回終わっているが、ドラマ好き・映画好きの方には是非一度覗いていただきたいと思う。
 原作は島本和彦の自伝的マンガ『アオイホノオ』で、元ネタは彼の大学生時代の話だと思われる(どこまでが作り話かはわかりかねる)。主人公の焔モユルは、大阪芸術大学(原作では大作家芸術大学)に通う大学生で、クリエイターを目指す熱い男である。おそらく作者の投影であろうことは言うまでもない。原作では永井豪のキャラクター風のたたずまいであるが、ドラマでも柳楽優弥が同じようなメークをしており、非常に暑苦しい男ができあがっている。モユルの同級生には、後に『エヴァンゲリオン』を作る庵野秀明、『オネアミスの翼』の監督、山賀博之、後に『プリンセスメーカー』を手がける赤井孝美、マンガ『ネコじゃないモン!』の作者の矢野健太郎らがいて、ほぼ実名で登場してくる(個人的には庵野秀明以外は知らなかったが)。どのキャラクターも独特の個性を持っており、ドラマではそれぞれの役者が快演している。
b0189364_7375240.jpg 全体的にマンガ的な表現が多いドラマで、マンガをそのまま実写にしたような大げさな演出が多いが、どれもズバリとはまっていて、見ていて白けてしまうような要素はまったくない。焔モユル風に言うならば「うーむ、弱点が見つからん!」という感じ。
 モユルの周辺にいる他のキャラクターも戯画的だが、これがまたあるあるネタを体現しているような面白さである(トンコさんの天然ぶりと津田ヒロミのノーテンキぶりが個人的にはまった)。全体的にバカバカしいものを真剣に作って作品として昇華するというようなオタク的な面白さが随所に散りばめられていて(こういうところは映画『鴨川ホルモー』などと共通する)、感心しきり。また、あちこちに古いアニメやマンガのパロディがあり、そういう知識があるといっそう楽しめるようだ。この後、岡田斗司夫なんかも強烈なキャラクターとして登場してくるようで、ちょっと楽しみである。今考えると、当時の島本和彦の周辺はなかなかすごい才能が集まっていたんだなと実感する。同時に、今のテレビ東京の深夜枠もすごみを感じさせる。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『アオイホノオ (7)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (2)〜(4)(本)』
竹林軒出張所『女子ーズ(映画)』
竹林軒出張所『鴨川ホルモー(映画)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム (4)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』
竹林軒出張所『アドリブの相乗効果 - 「YOUは何しに日本へ?」が面白い』
竹林軒出張所『「日本世間噺体系」テレビ版』
by chikurinken | 2014-08-27 07:38 | ドラマ

『孤独のグルメ Season4』(2)(ドラマ)

孤独のグルメ Season4(2014年・テレビ東京)
演出:溝口憲司、井川尊史
原作:久住昌之、谷口ジロー
脚本:田口佳宏
出演:松重豊、柴田理恵、広岡由里子

b0189364_843021.jpg超薄味!
こりゃドラマじゃあるめぇ


 一部で人気があるテレビ東京の深夜枠ドラマということでちょっと期待したが、まったくの期待外れ。ドラマというより料理紹介番組である。
 主人公の井之頭五郎が、さて昼食に何を食べようかということで、とある店に立ち寄り、その料理がいかにうまいかを(ほとんどは独白で)語っていくという単にそれだけのドラマ。
 原作のマンガは、久住昌之原作、谷口ジロー作画というもので、ドラマは確かに谷口ジロー風の静かな演出ではある。それに久住昌之の原作というのも大概こんな感じで何が面白いのかわからないものが多いことを考えると、マンガ原作の味は結構良く表現できているのかも知れない。
 しかしそれにしても、僕みたいに古い人間は、こんなドラマはちょっと受け入れがたい。まあ、これをドラマと見なさなければ、なんてことないんだが。
 というわけで、これはドラマと見なさないで見るのが良かろう。僕はもう見ませんが。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『深夜食堂 (1)〜(4)(ドラマ)』
by chikurinken | 2014-08-26 08:04 | ドラマ

『おわこんTV』(1)〜(8)(ドラマ)

おわこんTV(2014年・共同テレビ)
演出:松木創、淵上正人
原作:水野宗徳
脚本:松木創、下山健人、葛木英
出演:千葉真一、小泉孝太郎、片瀬那奈、戸次重幸、市川由衣、福田沙紀、冨浦智嗣、遠藤雄弥

シリーズ化の予感を感じさせる楽しいドラマ

b0189364_757093.jpg 今となっては少ないテレビ業界ドラマ。舞台となるのはテレビ製作会社「チョコレートTV」で、このドラマ自体「共同テレビ」という製作会社が作っていることを考えると、それなりにリアルな世界が展開されているのではないかと思う(ちなみに放送されたのはNHK-BSプレミアム)。少なくとも外からではうかがい知れないような業界ならではのエピソードが紹介されていくのは確か。ただ全体にコメディ・タッチになっているので、どこまでが本当かわかりかねる部分はある。
 全8回の短いドラマだが、各回、社員の1人または2人が順に主人公になってドラマが展開し、製作会社「チョコレートTV」での仕事が紹介されていく。そういう点では、まだまだプロローグ段階みたいな印象も残る。また、各回、ゲスト俳優が登場するというのもなかなか今風の趣向である。個人的には、第1回に登場したいしだあゆみが老婆の役というのがちょっと衝撃であった。どのエピソードも、基本線は人情ストーリーという形で落ち着く。
 このドラマの魅力はなんといってもキャスティングで、主演の千葉真一が、いかにも'80〜'90年代のテレビ人という軽薄さを持つ、元TVプロデューサーの製作会社社長を演じていて、これが非常に良い。キャラクターの魅力もさることながら、千葉真一がこういうキャラクターを演じ、しかも見事にこなしているというのが意外でもある。脇を固める社員たちもそれぞれに特徴があり、魅力的である。特にドラマ・プロデューサー(いつもテレビ局の関係者やディレクター -- あげくにはADにも -- に謝っているため「謝罪のプロ」と呼ばれている)役を演じた片瀬那奈は快演。
b0189364_7572547.jpg 先ほども書いたが、まだプロローグ段階みたいな印象もあるため、この後シリーズ化されて『おわこんTV 2』、『おわこんTV 3』と続いていく可能性は大いにあると思う。今は少ない、家族揃って「お茶の間」で見ることができるタイプのドラマで、次はNHK-BSではなく総合テレビで木曜8時なんかに放送しても良いんじゃないなどと考えた。なおタイトルの「おわこん」とは「終わったコンテンツ=TV」を指す。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『深夜にようこそ(1)〜(4)(ドラマ)』
by chikurinken | 2014-08-25 07:58 | ドラマ

『詩のこころを読む』(本)

b0189364_7583778.jpg詩のこころを読む
茨木のり子著
岩波ジュニア新書

著者の現代詩愛が心地良い

 詩人の茨木のり子が、さまざまな現代詩について、カテゴリー別に紹介していく本。
 岩波ジュニア新書は基本的に中高生向けという位置付けだが、この本はまさに感受性が鋭い学習者のための本という感じで、詩人が、自分の好きな詩を生徒たちに紹介するというような体裁になっている。そのため詩への愛が随所に見受けられ、読んでいて何だか幸せな気分になってくる。紹介される詩もわかりやすいものが多く、日本の現代詩にはこれほど素晴らしいものが多いのかとあらためて感心する。
 ここに登場する詩人については、僕自身、谷川俊太郎と中原中也(中也まで紹介されている!)以外ほとんど知らない人たちばかりだが、ユニークな詩が多く、目を開かされる思いがした。ぜひ身近な若者に読ませたいと感じるような本で、岩波ジュニア新書の中でも珠玉の1冊と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『たんぽぽの日々(本)』
竹林軒出張所『高田渡と父・豊の「生活の柄」(本)』
竹林軒出張所『山之口貘の詩、そしてとぼけた味わいの曲』
竹林軒出張所『一切合財みな常吉 -- 鈴木常吉「ぜいご」』
竹林軒出張所『みすゞ(映画)』
by chikurinken | 2014-08-23 08:00 |

『蓼喰う虫』(本)

b0189364_80258.jpg蓼喰う虫
谷崎潤一郎著
新潮文庫
面白いんすか、これ?

 谷崎潤一郎の異色作『蓼喰う虫』。『つれなかりせばなかなかに』の関連で読んだ。前も書いたが、谷崎潤一郎、最初の結婚相手である千代夫人を友人の佐藤春夫に譲ったことがある(いわゆる妻譲渡事件)。実は妻を佐藤春夫に譲る以前に、候補として別の男(大坪砂男という後のミステリー作家)がいて、その男と結びつけようとしていたというのが『つれなかりせばなかなかに』の趣旨で、その事情を小説に仕立て上げたのが『蓼喰う虫』だというのが同著作者の瀬戸内寂聴の主張だった。その話を知ったので、これはひとつ自分自身でも読んでみなければなるまいと思い『蓼喰う虫』を読んだというのが今回のいきさつ。
 『蓼喰う虫』は、妻に性的なものを感じなくなった男、要(かなめ)が、妻、美佐子と離婚すべきと考えるところから話が始まる。妻の方も同感のようで、子供は一人いるが、このまま無理して疑似夫婦を続けるよりはそちらの方が良かろうと思っているフシがある。疑似夫婦と言ってもセックスレス以外はとりたてて問題ないようで、今の日本にはこんな夫婦いくらでもいると思うが、ちょっと異色なのは、夫が妻の不倫を認めているという部分で、妻には阿曾という恋人がいる。夫の方も娼館に通ったりしているんだが、こういう状況で、夫の従弟、高夏が2人の間を取り持つ……というか煮え切らない状況を進めようとしたりするんだ。
 それで、この小説の中の要が谷崎、美佐子が千代、阿曾が大坪砂男、従弟が佐藤春夫に該当するということになるのかな。終わりの方で従弟と妻との関係がほのめかされるような箇所が出てくるが、具体的に触れられずにそのまま終わってしまうのがこの小説(だからと言って、全体的に説明が著しく少ないというようなものでもない)。
 途中淡路島に人形浄瑠璃を見に行った下りが延々と出てきたりして、この部分必要なのと思ったりする。何の脈絡もないようなエピソードがあちこちに出てきて、ま、谷崎の日記だと思って読んだら読めなくもないが、ことさら面白いとも思わない。おそらくこれが実話を反映しているという話を聞いていなかったら、まったく読む価値を感じなかっただろう。この作品が今に残っているところを見るとそれなりに評価されているんだろうが、こういうのが面白いんすかと尋ねたくなるような話であった。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『つれなかりせばなかなかに(本)』
竹林軒出張所『痴人の愛(映画)』
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
by chikurinken | 2014-08-22 08:00 |

『和泉式部日記 マンガ日本の古典6』(本)

b0189364_7394915.jpg和泉式部日記―マンガ日本の古典 (6)
いがらしゆみこ著
中公文庫

よくできた翻案だが
ベタなロマンスで少し疲れる


 その華麗なる恋愛遍歴故に同時代の人々に「浮かれ女」などと言われ蔑まれた和泉式部が、敦道親王との恋愛沙汰について物語風に書いたのが『和泉式部日記』。これをマンガ化したのが本作である。描いたのは『キャンディ・キャンディ』のいがらしゆみこ。
 最初から最後までほぼ恋愛話なんで、いかにも少女マンガのいがらしゆみこの絵は合っているといえば合っているが、やはり原作が和歌中心であるためにマンガ化するには少々厳しい題材かなとも思える。物語部分はそれなりにうまく仕上がっているが、特に和歌の部分は、どうしても解釈が必要になるために、なんとなく無理やりな感じで説明が入り、マンガからちょっとだけ浮いてしまう。こればかりは、いかんともしがたい。
 ま、しかしそれでも、普通の人はなかなかいきなり日記文学に原文でトライしようという気にはなるまい。こういう作品を足がかりとして利用するというのであれば、このマンガ、十分有意義とも思える。現在原文の『和泉式部日記』も少しずつ読んでいるところだが、実際ストーリーがわかっていることで敷居が低くなっている。本作では時代考証などもしっかりなされているようで、そういう部分も原文を読むときに大いに役に立つというもの。原作は少々難敵ではあるが、マンガ化作品としては無難に処理できていると言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『落窪物語 マンガ日本の古典2(本)』
竹林軒出張所『好色五人女 マンガ日本の古典24(本)』
竹林軒出張所『源氏物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版(1)〜(10)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 (上)(中)(本)』
by chikurinken | 2014-08-20 07:40 |

『マンガ古典文学 徒然草』(本)

b0189364_7524822.jpgマンガ古典文学 徒然草
長谷川法世著
小学館

このシリーズは失敗!
とあえて断言する


 小学館の『マンガ古典文学』シリーズの1冊。このシリーズほとんど読んだが、残念ながら企画倒れという印象で、あまり良いものがなかった。唯一の例外は第1回配本の水木しげる版『方丈記』で、それ以外は見るべきものがない。中央公論の『マンガ日本の古典』シリーズには、質も量も足下に及ばない結果になってしまった。
 で、この『徒然草』もご多分に漏れず、平凡なマンガ化作品である。徒然草全243段のほとんどをマンガ化しているが、全部ではない。いっそのこと、面白味のない段であってもなんとか1話のストーリーにしてしまえば「コンプリート」という付加価値がついたんだろうが。
 また「マンガ化」という観点から見てもやや物足りない。と言うのも、そのほとんどが、絵に『徒然草』の日本語訳が載っているというようなたたずまいになっているためで、「マンガ化」と呼ぶには少々苦しい内容である。原作が随筆である点を考えれば、こういう形式になるのもある程度致し方ないとも言えるが、バロン吉元版がうまくまとめられていたため、どうしても比較してしまう。個人的には断然バロン吉元版の方を取りたいと思う。
 このシリーズには、巻末に解説と寄稿が付いているんだが、シリーズ全般に言えるが、巻末の寄稿はつまらないものが多く、まったく不要だと思う(本書は玉村豊男)。寄稿の他に解説が付いているんだからそれだけで良いじゃないかと思う(解説は良いものが多かった。本書は関谷浩)。
 いずれにしてもこのシリーズは、空回りの失敗だったというのが個人的な印象で、企画に携わった編集者はもう少しなんとかする必要があったと思う。そもそも出版社の90周年企画がなんで古典のマンガ化なんだという疑問も残る。中央公論の企画をまねたのかも知れないが、残念ながら2匹目のドジョウはいなかった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『徒然草 マンガ日本の古典17(本)』
小学館『マンガ古典文学 全9巻』
竹林軒出張所『マンガ古典文学 方丈記(本)』
竹林軒出張所『マンガ古典文学 源氏物語 (上)(中)(本)』
竹林軒出張所『マンガ古典文学 古事記 壱(本)』
竹林軒出張所『マンガ古典文学 伊勢物語(本)』
竹林軒出張所『マンガ古典文学 竹取物語(本)』
by chikurinken | 2014-08-19 07:54 |

『マンガ古典文学 源氏物語 (下)』(本)

b0189364_9125272.jpgマンガ古典文学 源氏物語 (下)
花村えい子著
小学館
過剰なセンチメンタリズムに辟易

 小学館から出ている『マンガ古典文学』版の「源氏」の最終刊。
 上巻、中巻同様、少女マンガ風に美しく描かれていて、源氏の世界をひきつづきそれなりに堪能できるようになっている。ただ、これも上巻、中巻同様、人物の描き分けがほとんどなされておらず、この巻によく登場する女性、女三の宮と紫の上の区別すらつかない。その上、光源氏と、紫の上を含むその近しい愛人たちがいつまでも若いままで、50歳の源氏が20台のときとほぼ同じなのもいただけない。源氏とほぼ同い年でマブダチである頭中将がお爺さん化した状態で描かれているのと対照的。
 またストーリー展開も、あまりにセンチメンタリズムが過ぎて、正直読んでいて辟易してきた。もちろんこれは原作の特徴と考えることもできるが、美麗すぎる絵との相乗効果もあり、ちょっとやってられないという感覚になってくる。こういうストーリー展開は、いかにも女性好みという印象で、僕のような無骨な野郎にとっては少々厳しい。何はともあれ読了したという満足感以外、あまり残るものがなかったというのが正直な感想である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『マンガ古典文学 源氏物語 (上)(中)(本)』
竹林軒出張所『源氏物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版(1)〜(10)(本)』
小学館『マンガ古典文学 全9巻』
竹林軒出張所『マンガ古典文学 方丈記(本)』
by chikurinken | 2014-08-18 09:13 |