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竹林軒出張所

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『驚くべき日本語』(本)

b0189364_831668.jpg驚くべき日本語
ロジャー・パルバース著、早川敦子訳
集英社インターナショナル

外から見た日本語

 日本在住45年のオーストラリア人による日本語論。
 著者によると、日本語は(話す上では)非常に易しく習得が容易な言語であり、これまで言われてきたような「曖昧で難しい言語」ではない。たとえば動詞に格変化(主語に応じて動詞が変化すること)がないし、語彙も英語などに比べて少ないらしい。さまざまな場面に応じて省略される(できる)ために、よそ者にとっては「曖昧」に聞こえるが、その文脈さえわかっていたら、内容が理解できる。これはどのような言語にもあることで、日本語の特質が曖昧だとは言えないという。持って回った言い方にしても、それは相手に対する配慮などから使われているだけで、日本語自体が曖昧なわけではないんだそうだ。だから英語のような「国際語」にも割合向いている言語であるというのが著者の主張である。
 ただし決して「国際語にすべきだ」という主張ではない(少なくともそういう風な印象は受けなかった)。某所のカスタマーレビューにそういう読み方をしている評があったが、読みが浅いと言わざるを得ない。ましかし、これは本の側にも多少は問題がある。各章の見出しに「世界に誇る」だの「世界にもまれな」だの、ナショナリズムを喚起するような文言があるんだ。おそらく編集者が勝手につけたタイトルなんじゃないかと想像するが、こういうことが誤解の原因になる。
 本書の基本となっているのは、たとえばオノマトペ(擬態語)の多用が日本語の柔軟性を向上させているなど、あくまでも日本語の特質の紹介である。そしてまず母国語の特質をよく知った上で外国語を学ぶと真の意味でコスモポリタンになれるよという主張ではないかと思う。
 実際のところ、日本語を母国語としている我々には、なかなかそういう特質はわかりにくいし、この本で書かれていることも意外に思うことが割合多かった。外からの視点が内の部分に気付かせてくれるということはよくあるが、これもそういった類の本で、要は比較言語学の延長線上にある本である。と言っても、学術的な本ではなくどちらかというとエッセイ風ではある。だが、学術的でないためにかえって読みやすく、それに先ほども言ったように意外性もあって、日本文化論としてはよくできた本ではないかと思う。英語版があったらちょっと読んでみたいところである(本書に出てくる日本語がどのように表現されているのかに興味が湧く)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート(本)』
竹林軒出張所『英国一家、日本を食べる(本)』
by chikurinken | 2014-06-30 08:03 |

『喰う寝るふたり 住むふたり』(3)〜(8)(ドラマ)

喰う寝るふたり 住むふたり 第3回〜最終回(2014年・NHK)
演出:宮武由衣
原作:日暮キノコ
脚本:宮武由衣
出演:小西真奈美、金子ノブアキ、宮崎美子、木本武宏、田山涼成、山下容莉枝、逢沢りな

喰って寝て住む……それが日常
b0189364_8225664.jpg
 日暮キノコの人気マンガ『喰う寝るふたり 住むふたり』のドラマ化。「人気マンガ」と言っても僕自身はまったく知らなかったんだが、ともかく「人気マンガ」らしい。8年間同棲を続けているカップルが主人公で、どうってことのない日常を淡々と描いたドラマである。
 おおむね各回完結の話(2回構成のものもある)で、僕が見たのは第3回から最終回だが、第3、4回のテーマがセックスレス、第5回が料理、第6回が買物、第7回が子ども、最終回が家族と結婚という具合になっている。いかにもな話ばかりで感情移入しやすいが、途中、2人のそれぞれの目線で同じシーンが二度繰り返されたりするのがちょっと斬新。もっとも少々くどさを感じたりもする。
 とりたててスゴイというタイプのドラマではないが、それでもこういったほっこり系のドラマがあるのも「佳きかな」である。小西真奈美演じる「りっちゃん」が、外ではキャリアウーマン風でありながらうちの中では可愛い面を見せたりするのもリアリティがあって良い。それにちょっととぼけた味もある。小西真奈美の代表作になるんじゃないかというほどの快演である。聞くところによると、女性にとっては金子ノブアキの演技が魅力的だそうな。いずれにしても2人とも好演で、彼らの魅力を引き出した演出も見事と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『のんちゃんのり弁(映画)』
竹林軒出張所『家に帰ると妻がカフェをやりたがっています。(本)』
by chikurinken | 2014-06-28 08:24 | ドラマ

『LOVE理論』(ドラマ)

b0189364_7335658.jpgLOVE理論(2013年・テレビ東京)
演出:西古屋竜太
原作:水野愛也
脚本:田中眞一、八代丈寛、つじまこと
出演:中村獅童、浜野謙太、秋山竜次、塩谷瞬、橋本奈々未、杉ありさ、Rio、河本準一

中村獅童の怪演に注目

 これも『俺のダンディズム』同様、ドラマといっていいのかよくわからないプログラムであるが、とりあえずはドラマ仕立てである。
 冴えないコンビニ店長が、コンビニ・バイトの若者に店長直伝のLOVE理論(恋愛テク)を伝授するという話。普段は冴えないが急に豹変するコンビニ店長を中村獅童、バイトの若者を浜野謙太、秋山竜次、塩谷瞬が演じる。ちなみにこのコンビニ店長、役名は水野愛也という。水野愛也というのは、このドラマの原作に当たる『LOVE理論』の著者名、水野敬也をもじっていると思われる。この水野店長、恋愛体育教師・水野愛也への豹変ぶりがあまりに劇的で、非常にマンガ的であるが、変貌前、変貌後とも中村獅童が怪演している。こんな奇怪な演技ができるのは中村獅童をおいて他にあるまい。
 この水野店長が、恋に悩む3人のコンビニ店員にさまざまなアドバイス、つまりはLOVE理論を講義していくが、具体的には「大変じゃない?理論」(どんな口下手でも「大変だね」だけで会話がつながる魔法言葉)、「執着分散理論」(1人に絞るのではなく5人同時に狙うことで本命に緊張せず話せる)、「うわっつらKINDNESS理論」(55種類の表面的な動作で優しさをアピール)など。どの理論も面白いには面白いが、あまりにテクニカルで、バカバカしいっちゃあバカバカしい。なお、ドラマの中ではどの方法も面白いほどうまく展開するが、それはそれでまた楽しい。
 ともかく獅童の演技がすごく、それだけでも十分このドラマを見る価値があると思う。今回DVD化されたところを見るとそれなりに人気があったことが推測されるが、それを考えると、いずれまたエピソード2が出てくるんじゃないかという気もする。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『俺のダンディズム(ドラマ)』
竹林軒出張所『LOVE理論 (1)(2015年版)(ドラマ)』
by chikurinken | 2014-06-27 07:33 | ドラマ

『フラバー うっかり博士の大発明』(映画)

b0189364_7351939.jpgフラバー うっかり博士の大発明(1961年・米)
監督:ロバート・スティーヴンソン
原作:サミュエル・W・テイラー
脚本:ビル・ウォルシュ
出演:フレッド・マクマレイ、ナンシー・オルソン、トミー・カーク、キーナン・ウィン、エド・ウィン

楽天的かつ善意に充ち満ちた映画

 子どもの頃映画館で見た近日公開映画の予告編が非常に印象的で、随分長いこと記憶に残っていた。コメディタッチの映画で、バスケットボールの試合のシーンなんだが、一方のチームの選手が全員ピョンピョン高く跳ね回って簡単にゴールをゲットするというもの。当時、「東映まんがまつり」か何かの公開時だったと思うんだが、僕を含む館内の子どもたちは(予告編にもかかわらず)このシーンに大爆笑で、おかげで僕の記憶にも残ることになったのだ。
 さてこの映画であるが、後にディズニーの『フラバァ』であることがわかった。『フラバァ』は1961年に日本で公開されているが、僕が予告編を見たのは68年前後だったような記憶がある。おそらくリバイバル上映の予告だったんだろう。なお現在発売されているDVDでは、『フラバァ』ではなく『フラバー うっかり博士の大発明』というタイトルになっている。これはおそらく、1997年にロビン・ウィリアムズ主演でリメイクされた映画『フラバー』を意識しての改名ではないかと思う。97年にリメイクされたということは、子ども時代に『フラバァ』を見た映画関係者がリメイクを発案したということも容易に想像できる。
 さてこの映画だが、フラバーというのはflying rubberの略称で、主人公のうっかり博士が発明したもののこと。このスライム状の物質を何かにくっつけると、それが空に浮かぶようになるという、『ラピュタ』の飛行石のようなものである。この新発明が巻き起こすドタバタをコミカルに描く映画で、明らかに子どもの視聴者を意識しているが、大人が見ても十分楽しめる。やはり圧巻はあのバスケットの試合のシーンで、この映画の目玉と言って良い。バカバカしくて今でも大笑いできる。特撮もよくできており、丁寧に作り込まれていることがわかる。当時のディズニープロダクションの技術力がうかがわれる。
 全体的におとぎ話的ではあるが、非常に楽天的かつ善意に充ち満ちた映画であり、当時のおおらかなアメリカ社会を反映しているような脳天気で楽しい映画だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ピノキオ(映画)』
竹林軒出張所『アナと雪の女王(映画)』
竹林軒出張所『狼王ロボ(映画)』
竹林軒出張所『空飛ぶゆうれい船(映画)』
by chikurinken | 2014-06-25 07:36 | 映画

『史上最大の作戦』(映画)

史上最大の作戦(1962年・米)
監督:ケン・アナキン、ベルンハルト・ヴィッキ、アンドリュー・マートン
原作:コーネリアス・ライアン
脚本:コーネリアス・ライアン、ジェームズ・ジョーンズ、ロマン・ギャリー、デヴィッド・パーサル、ジャック・セドン
出演:ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、ジャン=ルイ・バロー、ロバート・ライアン、リチャード・バートン、ロバート・ミッチャム、アルレッティ、ショーン・コネリー、ポール・アンカ

b0189364_804238.jpg様式化された戦闘は随分退屈だった

 ノルマンディー上陸作戦を再現した超大作映画。超豪華キャストも異例なら、監督が3人、脚本家が5人というのも異例。しかし現場の責任者が3人いてまとまった映画になるわけがなく、内容はバラバラで、単にエピソードの羅列になってしまった。
 原作がノンフィクション(『The Longest Day』)だからか、全編モノクロ映像のドキュメンタリー風のタッチで描かれているが、戦闘シーンは、今見るとリアリティも迫力もなく、『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦の描写と比べると、はなはだチープに映る。『コンバット』的というか、撃たれた人はその場に倒れるという決まり事に則ったようなチャンバラ風の様式化された演出で、戦場の臨場感、緊迫感はほとんどない。それにドイツ軍の戦闘員が少々間抜けに描かれているのも『コンバット』風である。実はこの映画、米軍、英軍、フランスのレジスタンス以外にも、ドイツの作戦本部もしっかり描かれていて、丁寧な作りに好感が持てると思いながら見ていたのだが、戦闘シーンでは『コンバット』になる。やはりそのあたりは当時の戦争映画の限界なのか。
 映画のストーリーは、時系列を追いながらノルマンディー上陸作戦のいろいろな局面を描いていくというもので、先ほども言ったようにエピソードの羅列で終始している。もちろん大局的には繋がりがあるものの、各シーン、バラバラの印象はぬぐえない。キャストはやけに豪華だが、どのキャストもチョイ役みたいな扱いである。そりゃまあ、エピソード集みたいな映画だから仕様がないと言えば仕様がない。フランスの名優、ジャン=ルイ・バローまで出ているんだが、あまりにチョイ役なんで僕などエンディング・ロールまで気が付かなかった。しかも『天井桟敷の人々』で相手役だったアルレッティと夫婦役をやっていたというんだから驚きである。でも気付かなかった。なんとももったいない。ショーン・コネリーやリチャード・バートンにも気が付かなかった(さすがにジョン・ウェインとヘンリー・フォンダには気が付いた)。だが、役者をこんな風に餃子の具みたいに使っても良いものかとは思う。せめて八宝菜の具程度の扱いをしたらどうなんだろうか。そういうようなことを感じるほど、ぞんざいな使い方である。それにどの役者もまったく生かし切れていないように思える。
 世間では名作で通っているが、僕自身はまったく感じるところがなく、実際最後の1時間は眠くて眠くて仕方なかったほどである。映画なんだからもっと映画の文法に則って作った方が良かったんじゃないかと思う。少なくとも、原作者とは言え、ノンフィクション・ライターが、ドラマの脚本に加わるというのはいかがなものかと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『D-Day 壮絶なる戦い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』
by chikurinken | 2014-06-24 08:00 | 映画

『D-Day 壮絶なる戦い』(ドキュメンタリー)

D-Day 壮絶なる戦い 前編後編(2013年・BBC)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

物量にものを言わせてDデイを再現

b0189364_731318.jpg 第二次世界大戦でヨーロッパ戦線のターニング・ポイントになったのは、言うまでもなくノルマンディー上陸作戦で、映画『史上最大の作戦』『プライベート・ライアン』でも取り上げられるほどのエポックであった(ロバート・キャパの写真でも有名)。そのノルマンディー上陸作戦が決行されたのが1944年6月6日で、その70周年企画としてこのドキュメンタリーが、NHK-BSで2014年6月4、5日に放送された。
 このドキュメンタリーでは、当時の映像とCGと再現映像を使ってこの作戦を振り返り、その間に随時、この作戦に参加して生き延びた人々へのインタビューを挟んでいく。ヒストリー・チャンネルあたりでよく放送されるような歴史ドキュメンタリーである。演出は非常に正攻法で、作りも丁寧。歴史ドキュメンタリーとしては申し分のない作品になっている。
 このドキュメンタリーによると、連合軍は、ノルマンディー上陸作戦以前にもヨーロッパ大陸への侵攻を試みているが失敗している。そのせいもあって、この作戦では、航空機を使って事前に大陸の沿岸部の写真(2台のカメラで同時に撮影した3D写真)を大量に撮影し、それに基づいて作戦を立てるという周到さを見せた。なんでも当時、ドイツは、ヨーロッパ大陸沿岸部にスカンジナビア半島からイベリア大陸に至るまで要塞を敷き詰めるように敷設していたらしく(「大西洋の壁」)、どこの沿岸も突破するのは非常な困難を極めることが想像されたという。結局、その時点でもっとも手薄と見られたフランスのノルマンディーが選ばれたということなのだ。
 こうして、英国南岸から4つのルートでノルマンディー沿岸に上陸し、同時に大陸内の要衝にもパラシュート部隊を降下させることで、大陸内に拠点を築くという作戦が立てられた。決行は当初6月5日に決まっていたが、悪天候を回避して翌日に決行される。ちなみにタイトルの「D-Day」はこの決行日を指す。作戦では、多大な被害を出すことになったが、それでも事前に撮影していた3D写真が功を奏したことから作戦は成功し、連合軍は大陸に橋頭堡を築くことに成功、この作戦以後戦局が大きく転換し、やがて連合軍はドイツ軍を駆逐することになる。
b0189364_7315033.jpg 戦記ドキュメンタリーとしてよくできた番組で十分面白かったが、当然のことながら連合軍中心の視点で、内容については特に目新しさはない。むしろこの番組で驚いたのは、ドイツ軍の物量のすごさで、ヨーロッパの沿岸全体に渡って要塞を築いていたことはまったく知らなかった。闘った相手は英米など大国の連合軍であり、それに数年に渡って対抗していたことも驚きである(決してナチスを肯定しているわけではないよ)。また、このノルマンディー上陸作戦についても、失敗する可能性も大きかったらしく、悪天候のためにドイツ軍が「この日には作戦決行なし」と考えていたことが大きな要素になったというのも興味深い。当時指揮官だったロンメルも休暇を取っていたらしい。もっともこういう歴史観は連合国側のものであり、ドイツ軍の側から検証したらまた別の見方が生まれるのかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『史上最大の作戦(映画)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』
竹林軒出張所『運命の一枚〜“戦場”写真 最大の謎に挑む(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-06-23 07:32 | ドキュメンタリー

『飢餓海峡』(映画)

b0189364_8104334.jpg飢餓海峡(1965年・東映)
監督:内田吐夢
原作:水上勉
脚本:鈴木尚也
音楽:富田勲
出演:三國連太郎、左幸子、伴淳三郎、高倉健、藤田進、加藤嘉、風見章子

『砂の器』にやけに似ている

 映画関係者の評価が高い映画で、こちらとしても期待が大きかったが、正直ちょっと期待外れだった。
 先入観も予備知識もまったくない状態で見たので、どんな映画か知らなかったが、松本清張風の推理ものだった。松本清張風だけに社会状況もそこに絡ませるんだが、ストーリー自体は『砂の器』によく似ている。ちなみに原作は『砂の器』の2年後、映画版については松竹の『砂の器』の9年前ということになる。また原作者の水上勉も、当初松本清張に傾倒して推理小説を書いていたそうで、僕自身彼は純文学系統だと思い込んでいたためそちらもちょっと意外だった。しかしこの『飢餓海峡』と『砂の器』の類似性を見るとさもありなんという印象を受ける。
 映画の序盤は、犬飼多吉(三國連太郎)、杉戸八重(左幸子)、弓坂刑事(伴淳三郎)を別々に追っていくため少しばかり散漫な印象を受けるが、後半ではこれが1本の線に集約されていき、散漫な印象は消える。プロットはよく練られている。演出は割合ありきたりで、ご都合主義的な箇所も多い。特に重要なシーンでご都合主義が見え隠れすると途端に白けてしまう。数少ない見所は三國連太郎の演技で、テレビドラマ『赤い運命』の島崎の原点がここにある。僕は少年時代に『赤い運命』の島崎に恐怖した経験があるので(竹林軒『放送時評:新「赤い運命」の島崎直子役の女優』参照)、この映画の三國連太郎にもすごみを感じた。
 全体で3時間を超える大作映画だが、途中かなり退屈した。推理ものだってことがわかっていたら、こんなに一生懸命見ることはなかったなと今にして思う。
★★★

参考:
竹林軒『放送時評:新「赤い運命」の島崎直子役の女優』
竹林軒出張所『雁の寺(映画)』
竹林軒出張所『五番町夕霧楼 (63年版)(映画)』
by chikurinken | 2014-06-21 08:11 | 映画

『氾濫』(映画)

b0189364_7393921.jpg氾濫(1959年・大映)
監督:増村保造
原作:伊藤整
脚本:白坂依志夫
出演:佐分利信、沢村貞子、若尾文子、左幸子、川崎敬三、中村伸郎、叶順子、潮万太郎、船越英二

真田夫人の恋人は
お馬さんになった


 『チャタレイ夫人の恋人』を翻訳して物議を醸した(いわゆる「チャタレー事件」)伊藤整原作の『氾濫』を映画化したもの。『氾濫』というタイトルは、この映画の予告編によると「性(セックス)の氾濫」から来たものということで、内容は奔放な性を描くものになっている。
 主人公、真田(佐分利信)とその妻(沢村貞子)はそれぞれで不倫しているし、元級友の大学教授(中村伸郎)も愛人がいる。娘(若尾文子)も、サイコパスまがいの若手研究者(川崎敬三)に迫られて関係するが、実はこの若手研究者には他にも関係していた女がいて、しかも出世のためにさらに他の女にも手を出すという始末である。モラルもへったくれもあったもんじゃない。出てくる登場人物がことごとく一般的な道徳観に反するような行動をとっていて、見る側に対してちょっと挑戦的な印象を与える。
 ただ、内容的にはそういったレベルでとどまっており、呆れたり不快になったりはするが、結局それだけであまり残るものはない。いずれ内容についても忘れてしまいそうな、そういった類の映画であった。演出も正攻法だが平凡である。
 一つ面白かったのが、船越英二演じるプレイボーイが、『痴人の愛』の主人公さながら、若い女の「お馬さん」をやっていたことで、このシーンが、67年の映画『痴人の愛』の一場面と非常によく似ていた。どちらも同じ監督の作品だが、もしかして増村監督、この映画を作っているときに、『痴人の愛』映画化の構想を思い付いたのかしらんなどと感じたのだった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『痴人の愛(映画)』
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
by chikurinken | 2014-06-19 07:40 | 映画

『妻は告白する』(映画)

b0189364_7212487.jpg妻は告白する(1961年・大映)
監督:増村保造
原作:円山雅也
脚本:井手雅人
出演:若尾文子、川口浩、馬淵晴子、根上淳、高松英郎、小沢栄太郎

弁護士が書いた小説が原作の法廷劇

 登山事故に際して夫殺しの容疑をかけられた若妻が主人公の法廷劇。原作は、タレント弁護士でもある円山雅也が書いた同名小説である。
 内容は、弁護士が書いた小説が原作なだけに、法廷シーンは割合よくできている。ただ主人公の若妻(若尾文子)と、彼女が思いを寄せる若い男(川口浩)との絡みにはあまり面白味がない。やけに湿っぽいし、すぐに自殺ネタを持ち出すのは安直に過ぎないかと思う。とは言え、映画としてはよくまとまっていて見所も随分あった。特に若尾文子が濡れ鼠で現れるシーンは不気味で良い。川口浩も相変わらずちょっととぼけた演技で味がある。
 川口浩と若尾文子は、二人とも大映の看板だったこともあり、この映画を含めよく共演している。個人的には、小津安二郎の『浮草』の印象が強烈であるが、共演作が10本くらいはあるんじゃないかと思われる。この映画の若尾文子は少々湿っぽすぎてあまり良いとは思わないが、ご本人にとっては『清作の妻』と並んで印象に残る作品だったらしい(DVD収録のインタビューより)。
 キャストは芸達者な人が多く、特に小沢栄太郎は、相変わらず、傲慢で歪んだ性格の人物を好演している。この人はどの映画を見てもこういう悪人を演じているような印象があり、私生活でもそうなのか知らんと思ってしまうほどである。何でも実際は女性問題が多かったらしく、意外に色男だったようだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『雁の寺(映画)』
竹林軒出張所『祇園囃子(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
by chikurinken | 2014-06-17 07:21 | 映画

『「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート』(本)

「ニッポン社会」入門 ― 英国人記者の抱腹レポート
コリン・ジョイス著
生活人新書

b0189364_791046.jpg英国人による日本人向けの日本論

 日本在住のイギリス人が書いた日本文化論。「よそから見た日本」というカテゴリー、実は学生の頃から好きなんだ。日頃見慣れているものが、別の角度からはこういうふうに捉えられるのかという驚きがあって良いのだ。NHK-BSで放送されている『cool japan』なんかも毎週欠かさず見ているほどだ。そのため、ちょっとやそっとの日本印象記なら、僕の方もそんなに感じるところはない。日本人が過剰に親切だとか、桜が美しいとか銭湯が最高とか、あるいはトイレがすごいだとかの印象記は今までさんざん聞かされているんで、そんなのが出てきたところで何とも思わない。どうしてももっと新しい目線を期待するのである。
 さてこの本、前記のような比較的ありがちな部分もあるが、独自の視点も多く、その点で面白い文化論になっている。当然母国イギリスとの比較に基づくものが多いが、それ以上に彼自身の嗜好も強く反映されていて、そういう点が面白い部分になる。イギリス人の彼にとってビールとサッカーは欠かせないものだそうだが、日本サッカーの急成長と地ビールの広がりは90年代以降、いわゆる「失われた10年」に起こっており、彼にとってまさにこの10年は「失われなかった10年」になったというのも目新しい見方である。他にも全17章に渡り、いろいろな日本の事象を取り上げていくが、終わりの方はネタがあまりなくなったのか、意外性が少なくなり、読みものとして退屈になってきた。著者は現在、『デイリー・テレグラフ』の日本特派員をやっており、イギリスの新聞がどういう記事を好むかとかそういう話もあったが、こういう部分はイギリスの新聞の後進性を感じただけで、大して面白味を感じないものである。やはり、おかしなところでも面白いところでもどこでも良いんで、「外から見た日本」を徹底的に書き綴ってほしかったと思う。
 この本で一番面白いと感じたのは、日本語に関する章で、擬態語の豊富さに感心するくだりである。彼によると擬態語が日本語を面白くしているらしく、擬態語は「国宝」ものなんだそうだ。また、省略語や英語由来の新語などの造語能力も面白いそうで、「パソコン」、「マザコン」、「億ション」なんかが例として挙げられている。「おニュー」という言葉を初めて聞いたとき著者は大笑いしたんだそうだが、こういうのは普段日本語を使っている我々にはわからない感覚である。しかしこういう擬態語や省略語は、以前の社会論だったら日本語のダメな部分として扱われることが多かったが、見方を変えるとポジティブな捉え方もできるということがわかる。なんでも一方的な価値観でものごとを断ずることはいけないんだよということに、こういう「よそから見た日本」論であらためて気付いたりする。そういう点がこの種の文化論の魅力なんだろうなと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『英国一家、日本を食べる(本)』
竹林軒出張所『新「ニッポン社会」入門―英国人、日本で再び発見する(本)』
竹林軒出張所『中国嫁日記(本)』
『cool japan』ホームページ
by chikurinken | 2014-06-15 07:10 |