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竹林軒出張所

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『ナバロンの要塞』(映画)

b0189364_725518.jpgナバロンの要塞(1961年・米)
監督:J・リー・トンプソン
原作:アリステア・マクリーン
脚本:カール・フォアマン
音楽:ディミトリー・ティオムキン
出演:グレゴリー・ペック、デヴィッド・ニーヴン、アンソニー・クイン、スタンリー・ベイカー、イレーネ・パパス

戦争冒険活劇エンタテイメント

 第二次大戦を舞台にした戦争冒険アクション映画。原作は、アリステア・マクリーンというイギリス人の同名小説。
 イギリス軍の特殊工作部隊が、現在のギリシャにあるナチス・ドイツの巨大要塞に潜入して壊滅を目論むというストーリーで、ハラハラドキドキの展開……ではあるが、実際にはあまりに都合良く行きすぎで少々白ける。80年代後半以降の映画に見られるような戦争のリアリティは元々期待していないが、展開があまりにご都合主義的だと、今度は物語としてのリアリティが失われてしまう。そういう点がマイナス点。
 ただし美術や特撮は非常に凝りまくっていて、その点ではなかなかのリアリティを感じさせる。したがって、上記のような『コンバット』的要素についてある程度割り切って見るんであればそれなりに楽しめる。
 キャストは、グレゴリー・ペック、アンソニー・クインらで、グレゴリー・ペックが相変わらず飄飄とした演技を見せる。アンソニー・クインとイレーネ・パパスはこの後『その男ゾルバ』でも共演するが、どちらの映画もギリシャが舞台で、しかも映画の中で似たような役回りである。『その男ゾルバ』の製作者は、この映画をヒントにこの2人を起用したのかしらんと思わず勘ぐってしまう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『第十七捕虜収容所(映画)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』
竹林軒出張所『道(映画)』
竹林軒出張所『ローマの休日(映画)』
by chikurinken | 2014-04-30 07:25 | 映画

『フルメタル・ジャケット』(映画)

フルメタル・ジャケット(1987年・米)
監督:スタンリー・キューブリック
原作:グスタフ・ハスフォード
脚本:スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
美術:キース・ペイン、ロッド・ストラットフォード、レス・トムキンス
出演:マシュー・モディーン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ、R・リー・アーメイ、ドリアン・ヘアウッド

b0189364_9153850.jpgキューブリックが描く戦争

 キューブリックが戦争映画を作るとこういうふうになるという見本みたいな映画。映画の主役はベトナム戦争時のアメリカ海兵隊であるが、映画自体は前半と後半で話が2つに別れている。前半の舞台が海兵隊訓練所、後半がベトナム戦争(テト攻勢)の戦場で、前半でいったん物語が収束してしまっている。
 後半の戦場の描写は、『プライベート・ライアン』同様、生々しく緊張感も漂っていてよくできているが、前半部分にキューブリックらしい絵作りが多く特に興味深い。ほとんど『シャイニング』みたいである。個人的には断然こちらを買う。ただ、1本の映画で前半と後半で話が切れてしまうというのはどうかと思う。その点、最後まで違和感が残った。
 後半に出てくるテト攻勢、フエ攻防戦は、戦場写真家、沢田教一の写真で見たことがあったが、この映画によって、なるほど現場はこんな感じかという明確なイメージが掴めたような気がする。ただし撮影は、ベトナムではなく英国の工場跡で行ったという話である(キューブリックが東南アジアに行くのを嫌がったらしい)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ディア・ハンター(映画)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』
竹林軒出張所『炎628(映画)』
竹林軒出張所『戦火のかなた(映画)』
竹林軒出張所『無防備都市(映画)』
竹林軒出張所『戦争のはらわた(映画)』
竹林軒出張所『地下水道(映画)』
竹林軒出張所『パサジェルカ(映画)』
竹林軒出張所『博士の異常な愛情(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『アイズ ワイド シャット(映画)』
竹林軒出張所『ロリータ(映画)』
by chikurinken | 2014-04-29 09:15 | 映画

『プライベート・ライアン』(映画)

b0189364_8115254.jpgプライベート・ライアン(1998年・米)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ロバート・ロダット、フランク・ダラボン
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールドバーグ、ヴィン・ディーゼル、マット・デイモン

破格の戦闘シーンを堪能すべし

 ハリウッド製の戦争映画だが、まず冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンで度肝を抜かれる。ドイツ軍の機関銃が、上陸するアメリカ兵を掃射するんだが、撃たれた兵隊はそれはそれは凄惨な姿をさらす。肉片が飛んだり頭が吹き飛んだりで、従来型の『コンバット』風戦争映画とはひと味違うことがわかる。で、こういうシーンが、断続的にではあるが最後までずっと展開され、戦争のリアリティが執拗に追求される。もっともこっちは戦争体験なんかないんで本当のところはわからないが、しかしこれがリアルな戦争なんだろうというのは容易に想像できる。これがこの映画の最大の見所である。敵兵士も同じ人間であることがしっかり描かれるため、途中から戦闘という名の殺し合いをやっている意味みたいなものが見えなくなるが、これはまさに登場人物たち、つまり兵士達の感覚に近いんじゃないかと思う。そういう意味でも反戦映画としての役割を十分果たしていると言える。その点については特に高く評価したいと思う。
 ただしストーリーはまことにハリウッド的というか英雄的で、しかも少しばかり予定調和的であるのが残念なところ。ありきたりな要素が随所に散りばめられているのも難点である。ハリウッド映画だとどうしてもこういう方向に持っていかなければならないってことだろうか。
 もしこの映画の戦闘シーンが『コンバット』みたいな安易なものだったら、この映画自体まったく価値のないものになっていただろうが、いかんせん戦闘シーンとそれによってもたらされる強烈なメッセージ性が破格であるため、この映画の価値はまったく揺るがない。3時間近くの長い映画だが、緊張感は当然持続するし、まったく飽きることもない。劇場で見たら、リアルな戦場を疑似体験できること間違いなしで、後を引くものもさぞかし多いんじゃないかと思う。
 なおタイトルの『プライベート・ライアン』はなんだかよくわからないタイトルだが、原題の『SAVING PRIVATE RYAN』は「ライアン二等兵の救出」というような意味。こちらは具体的でわかりやすいタイトルと言える。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『炎628(映画)』
竹林軒出張所『戦争のはらわた(映画)』
竹林軒出張所『戦火のかなた(映画)』
竹林軒出張所『ナバロンの要塞(映画)』
by chikurinken | 2014-04-28 08:12 | 映画

『炎628』(映画)

b0189364_7225434.jpg炎628(1985年・ソ連)
監督:エレム・クリモフ
原作:アルシ・アダーモヴィチ
脚本:アルシ・アダーモヴィチ、エレム・クリモフ
撮影:アレクセイ・ロディオーノフ
美術:ヴィクトル・ペトロフ
出演:アレクセイ・クラフチェンコ、オリガ・ミローノワ、リュボミラス・ラウツァヴィチュス、ウラダス・バグドナス

飾りが一切ない戦争、これが現実だ

 この映画が製作されたのは1985年で、個人的には一番映画を見ていた時期と重なるんだが、その後10年以上まったくこの映画について知らないままできた。おそらく2000年前後だったと思うが、たまたまCSで放送されたのを見て、非常に大きな衝撃を受けた記憶がある。当時、この映画がこんなに無名だったのが不思議でならなかったほどで、映画でこれほどの衝撃を受けたのも後にも先にもほとんどない。映画史上のベストテンに入ってもおかしくないというほどの傑作だと思った。それにもかかわらず、この映画もDVDが永らく絶版状態だった。再版されたのが昨年で、そんなこともあって速攻で入手したというわけ。で、ようやっと昨日久々に見たんだが、やはり衝撃のシーンが目白押しで、一瞬たりとも目を離せない。最初から最後まで緊張感が持続するという、そんな映画である。
 舞台は1943年の白ロシア(今のベラルーシ)で、すでにナチスのドイツ帝国が軍事的に占領した状態になっている。実際にこの時代、白ロシアの各地でドイツ軍によって破壊活動が繰り広げられたそうだが(628の村が住民とともに焼き払われたという。邦題の『炎628』はここから来ている)、その様子を村人の目線で描いたのがこの映画。
 被害者の視線で戦争が描かれるため、戦争に対する美化は一切なく、描写はまったく容赦がない。終始、生の現実が突きつけられるのである。登場人物たちもその現実に恐怖しうろたえるが、それが見るこちらにもそのまま伝わってくる。「勝利して歓喜」みたいな戦争映画にありがちの描写もなく、見終わった後はただただ虚無感で一杯になる。
 演出はソ連映画らしくやや無骨だが、ドキュメンタリーを思わせるような重厚な絵作りになっている。戦争映画だが詩的な映像も多数取り入れられており、当時のソ連映画の技術水準の高さをうかがわせる。
 戦闘の描写が生々しい戦争映画は、この映画の後いくつか出てきて、特に『スターリングラード』の冒頭のシーンなどは瞠目したが、しかしやはりこの映画を超えるものは今のところ思い付かない。情景の描き方、人間の描き方、話の展開など、どれも卓越している。戦争についてあれやこれや言う前に、とりあえずこの映画を見よと言いたくなるような作品である。
★★★★☆

参考:
竹林軒出張所『戦火のかなた(映画)』
竹林軒出張所『無防備都市(映画)』
竹林軒出張所『戦争のはらわた(映画)』
竹林軒出張所『地下水道(映画)』
竹林軒出張所『パサジェルカ(映画)』
by chikurinken | 2014-04-26 07:24 | 映画

『ダンケルク』(映画)

b0189364_7471288.jpgダンケルク(1964年・仏伊)
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
原作:ロバート・メルル
脚本:フランソワ・ボワイエ
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、フランソワ・ペリエ、カトリーヌ・スパーク、ピエール・モンディ

フェルディナンが戦争に
駆り出されたかのような映画


 第二次大戦時のダンケルクの戦いを描いた映画だが、僕自身はそもそも「ダンケルクの戦い」自体まったく知らなかった。なんでも第二次大戦が始まってすぐの1940年に、ドイツ軍が電撃的にフランスに侵攻したが、そのときに大陸に派遣されていたイギリス軍とフランス軍がイギリスに撤退したらしい(もちろん海上輸送で)。そのときに起こったドイツ軍と英仏連合軍との衝突が「ダンケルクの戦い」なんだそうである。
 撤退は、フランスの海岸ダンケルクから行われ、その周辺に英仏両軍の軍人が集結し輸送船を待つわけだが、この海岸がこの映画の舞台になる。対するドイツ軍はこの撤退を阻むべく、空爆や長距離砲による爆撃で英仏軍に攻撃を加えていくが、フランスの敗残兵マイア(ジャン=ポール・ベルモンド)が、1兵士としてこれに遭遇するというのがこの映画の骨子。爆撃は毎日のように行われ人の死を目の当たりにするが、このマイア、どこか飄飄としておりその行動も到底戦闘員とは思えない。まるで『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』の主人公(どちらもジャン=ポール・ベルモンドが演じる)のようである。ヨーロッパ戦線ではこんなものだったのか知らんが、行動もとても自由で、あちこちの施設や民間の住宅に出入りする他、将校とも対等に話したりしているし、そういう点で少々違和感があった。
 映画自体は、戦争映画であるため緊張感を強いられるような場面もあるにはあるが、こういう登場人物の行動もあって全体にのんびりした空気が漂っており、見ていて少々退屈する。爆撃シーンは迫力があるが、最後まで登場人物たちの行動と、その背景となる戦闘がミスマッチに思えた。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『地下室のメロディー(映画)』
竹林軒出張所『ナバロンの要塞(映画)』
by chikurinken | 2014-04-25 07:48 | 映画

『第十七捕虜収容所』(映画)

b0189364_865646.jpg第十七捕虜収容所(1953年・米)
監督:ビリー・ワイルダー
原作:ドナルド・ビーヴァン、エドマンド・トルチンスキー
脚本:ビリー・ワイルダー、エドウィン・ブラム
出演:ウィリアム・ホールデン、ドン・テイラー、オットー・プレミンジャー、ロバート・ストラウス

舞台劇風でよくまとまっているが
少々作りすぎの印象


 第二次大戦時のドイツ軍の捕虜収容所を舞台にした話。
 捕虜収容所が舞台のハリウッド映画といえば大体は脱走劇で、ナチス・ドイツに一泡吹かせたというようなものが多いが、この映画は多少違う。むしろ密室劇みたいな内容で捕虜収容所内の人間関係を描き出すというようなやや重い話である。密室劇風ということを考えると戯曲が原作かという頭が働くが、やはりその通りで、原作はブロードウェイの舞台劇だという。さっき言ったような脱走劇云々についてもある程度ハリウッドの伝統を踏襲していると言えなくもない。
 内容は重厚だが、ビリー・ワイルダーらしいくすぐりの要素もあって十分楽しめる。ただどことなく作りすぎというか、自然さに欠けるというか、ドラマのために用意した設定みたいな印象も受けた。
1953年アカデミー主演男優賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『麗しのサブリナ(映画)』
竹林軒出張所『昼下りの情事(映画)』
竹林軒出張所『フロント・ページ(映画)』
竹林軒出張所『ナバロンの要塞(映画)』
by chikurinken | 2014-04-23 08:07 | 映画

『解夏』(映画)

b0189364_7315579.jpg解夏(2003年・アルタミラピクチャーズ)
監督:磯村一路
原作:さだまさし
脚本:磯村一路
出演:大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、田辺誠一、古田新太、松村達雄

ベーチェット病の啓蒙映画か

 さだまさし原作の同名短編小説の映画化作品で、難病で視力を失うかも知れないという男の心の逡巡を描いた映画。
 作りはまことに正攻法で、テレビドラマと見まがうばかりの演出である。まずくはないが、とりたてて大きな感慨もない。人間関係についてもありきたりな描き方で、ちょっと美しすぎなのは、さだまさしらしいとも言える。印象として一番大きかったのは(自分に照らした場合の)視力を失うことへの恐怖感で、ベーチェット病怖いなという感覚だけが残った。そういう意味ではベーチェット病の啓蒙映画と言って良いかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『精霊流し』(映画)
竹林軒出張所『眉山(映画)』
竹林軒出張所『アントキノイノチ(映画)』
竹林軒出張所『かすていら(1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『精霊流し(本)』
by chikurinken | 2014-04-22 07:32 | 映画

『にあんちゃん』(映画)

にあんちゃん(1959年・日活)
監督:今村昌平
原作:安本末子
脚本:池田一朗、今村昌平
撮影:姫田真佐久
出演:長門裕之、松尾嘉代、中村武、前田暁子、北林谷栄、吉行和子、小沢昭一、穂積隆信、二谷英明

日本全国で涙を誘った話だそうだが
あまり感じるところがなかった


b0189364_830573.jpg 佐賀の離島の炭鉱町でひっそりと暮らす貧しい4人きょうだい(兄弟姉妹)の物語。戦後、石炭需要の落ち込みに伴って全国的に炭鉱が閉山されていったが、それはこの映画の舞台になる大鶴鉱業所でも同じである。そういう貧しい町で、しかも両親が死んで兄弟姉妹だけになった家族を待ち受けるのは極度の貧困であった。やがて離ればなれで暮らすことになってしまうこの兄弟姉妹だが、末の妹(末子)の願いはみんなで一緒に住めるようになることだけであった……。
 このような話であるため、全編通じてどん底生活が展開されるが、リアリズム映画のような悲惨さはあまりない。主人公の子供達が前向きな上、命の危険を感じるような場面が少ないためだろう。それは、元々この末の妹の末子が書いた日記が映画の原作になっているためでもある。その日記だが、長兄が出版社に送ったことがきっかけで出版され、それが後にベストセラーになって、ラジオドラマや映画になった。おかげで、この兄弟姉妹は貧乏暮らしから抜け出し、すぐ上の兄(にあんちゃん)と本人(末子)はそれぞれ慶応、早稲田に進学できたというんだから人生はわからない。
 とは言うものの、映画になっているのはそれ以前の話で、隅から隅まで貧乏が漂っていて、金銭的に苦しいときなどに見るとやりきれないかも知れない。それに因業な婆さん(北林谷栄)も出てきて、ちょっとイヤーな気持ちになる。
 また全体を通じてセリフが聞きとりにくいという欠点もある。録音技術が悪いのか知らんが、とにかく聞きとりにくい。黒澤明の映画並みで、こういうのは映画としては致命傷だと思う。
 キャストは、脇に味のある役者が揃っていて、その後も活躍した人が多いのも特徴。大滝秀治がちょい役ででているが、まだ若く髪の毛もある。北林谷栄は先ほども言ったが例によって婆さん役である。なお当時48歳。十代の松尾嘉代が初々しくて可愛く、さながら「掃き溜めに鶴」みたいな存在であった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『日本の悲劇(映画)』
竹林軒出張所『路傍の石(映画)』
竹林軒出張所『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん(映画)』
竹林軒出張所『豚と軍艦(映画)』
竹林軒出張所『人間蒸発(映画)』
竹林軒出張所『うなぎ(映画)』
竹林軒出張所『赤い橋の下のぬるい水(映画)』

by chikurinken | 2014-04-21 08:30 | 映画

『カーター大統領の“ソーラーパネル”を追って』(ドキュメンタリー)

カーター大統領の“ソーラーパネル”を追って
(2011年・スイスAtelier Hemauer/Keller)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_820127.jpg「暗黒の時代」への分岐点

 1977年から81年までアメリカ大統領を務めたのがジミー・カーター。リベラルかつ民主的な考え方の持ち主で、当時少年だった僕なども親近感を持っていた。『なぜベストをつくさないのか』という著書まで小遣いで買ったくらいだ(読んでないけどね)。ただ、カーターの時代はとかく世界、特にアメリカ関係でいろいろなことが起こったのだった。イラン革命、そしてイランのアメリカ大使館人質救出失敗、さらには第二次石油ショックなどなど。スリーマイル島原発事故も1979年である。その上、ソ連がアフガニスタンに侵攻したこともあり、アメリカ、そしてカーター政権の権威は一気に失墜した。
 内政では、石油ショックの影響で国内にガソリン欠乏状態が発生し、ガソリンをふんだんに使った生活に慣れていた当時のアメリカ市民の不満が高まった。一方でカーターは市民にエネルギーの節約を呼びかけ、自然エネルギー導入にも積極的だったという(エネルギーの節約については市民に不評だったようだが)。そういう点では非常に現代的で、30年以上前にすでに自然エネルギーを推進しようとしていたことは、今になって彼の評価を高めることにつながっている。
 そのカーター大統領が、1979年6月にホワイトハウスの屋上にソーラーパネル(太陽熱温水器)を設置したことはあまり知られていない。そしてそのときスピーチを行い、
「2000年を迎えたとき、本日公開した太陽熱温水パネルは安く効率的なエネルギーを供給しつづけているはずです。さらなる将来、このパネルはどうなるでしょう。”選ばれざる道”(road not taken)の象徴として博物館に並ぶのでしょうか。あるいはアメリカ国民が選択した壮大な挑戦のひとつとして生き続けるのでしょうか。太陽の力を暮らしに活用し、外国の石油への依存から脱却した第一歩として」
と語った。まさにこのときがアメリカのエネルギー政策の分岐点だったと今になってわかる。だがこのソーラーパネル、次のレーガンが大統領になるや早々と撤去されたらしい。まさしくこれは象徴的な出来事で、その後アメリカはエネルギー浪費の道をひた走り、カーター政権が推進していた省エネルギー政策は「選ばれざる道」になった。同時にアメリカからは社会正義が失われ、多国籍企業に政治が牛耳られるようになって、少数の利益のために多くの人々が虐げられるという暗黒の時代に陥ってしまったのは周知の通り。
 さてそのソーラーパネルだが、撤去後、ユニティ・カレッジという小さな大学に引き取られ倉庫に眠っていた。このパネルの一部をスミソニアン博物館とジミーカーター図書館博物館に届けるというプロジェクトがこのドキュメンタリーの柱になっている。同時にカーター時代の情勢や政策を振り返り、なにゆえアメリカが「選ばれざるべき道」を選んでしまったか検討しようというのがこの番組の主旨である。
 カーター自身のインタビューがある上、元側近たちも当時の状況を語ったりして非常に興味深いが、要はカーターは、市民にとって耳に痛いことばかり言って説教ばかりするというイメージができあがってしまったようで、しかも外交的にもソ連やイランに好き勝手なことをされるという印象ができあがって、「弱いアメリカ」の象徴になったことが大きかったようだ。一方で、対立候補のレーガンは、テレビ映画でよく目にする顔で、しかもカーター政権と正反対の強硬路線を主張したことから有権者の受けが良かったということらしい。まあしかし、その後の共和党政権がやったことと言えば、世界中に害悪を広めるわエネルギーは浪費するわ、環境は悪化させるわ、しかも国内の市民生活を破壊するわで、有権者の選択が正しかったとは到底言えないんじゃないかと思う。ものごとを深く考えず、イメージだけで自分の心地良い世界を志向するのは誤りだとあらためて気付かされるドキュメンタリーで、環境から政治を照射する試みが新鮮だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カーボン・ラッシュ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『クリーンテクノロジーは地球を救うか(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-04-19 08:20 | ドキュメンタリー

『サンド・ウォーズ 〜広がる砂の略奪〜』(ドキュメンタリー)

サンド・ウォーズ 〜広がる砂の略奪〜
(2013年・仏Rappi Productions/La Compagnie des Taxi-Brousse)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

泥棒が砂を盗んでよそで売りさばいてる

b0189364_7254121.jpg 世界中で砂が乱獲(?)されている現状を訴える。このドキュメンタリーで紹介される事例の多くは、建築資材用、埋め立て用としての砂である。
 建築ブームの新興国では、コンクリートの主原料である砂が欠乏しているため、あちこちから砂が不法に採集され、それが結果的に環境破壊をもたらしている。砂なんか世界中にいくらでもありそうなんだが、実はそうでもなく、建築に使える砂は限られた貴重な資源だという。たとえば、建築ラッシュに沸いているアラブ首長国連邦などの場合、国内に砂漠があるのでその砂を使えば良さそうなものだが、砂漠の砂は風化しすぎていて建築資材としては不適格なんだそうで、結果的に他国から輸入せざるを得なくなる。その結果、その国(砂輸出国)で環境破壊が引き起こされるという図式。世界中であまりに砂が不足しているため、中には建築に海砂が使われるケースも多いようだが、海砂を使ったコンクリートでは腐食が異常に早くなるというのは周知の事実である。こういうことを考えると、砂の採取による環境破壊を含め、すべてが後先を考えない行為ばかりで、端からは愚かしい行為にしか見えない。
b0189364_7262462.jpg 砂が埋め立てに使われる事例としては、シンガポールのケースが紹介されている。シンガポールは狭い国土を拡大するために埋め立てを積極的に進めているが、その原料となる砂は実は対岸のインドネシアの海岸から採取されているという。結果的にインドネシア側では海岸が浸食され、利用できる土地がどんどん狭くなる。ということは、これは言ってみれば国土の輸出である。だがインドネシアの住民にはその事実が知らされておらず、こういう取引が違法に行われているという現実がある。
 このドキュメンタリーでは、このような理不尽なことが世界中で行われている現状がレポートされるが、少なくとも砂の違法な取引については今まであまり知らされてこなかったんで、そういう意味でも有用な番組だった。そうそう、ダムの事例(ダムのために砂が海に流れず土壌浸食の原因になる)などについてもきちんと触れられていて、総じて非常に情報量が多いドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実(映画)』
竹林軒出張所『血塗られた携帯電話(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ガスランド(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『岐路に立つタールサンド(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-04-18 07:27 | ドキュメンタリー