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竹林軒出張所

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『忘れられた皇軍』(ドキュメンタリー)

忘れられた皇軍(1963年・日本テレビ)
日本テレビ・ノンフィクション劇場
監督:大島渚
語り手:小松方正

b0189364_8312710.jpg小松方正の語りがまた強烈

 先日、『NNNドキュメント』で『反骨のドキュメンタリスト 大島渚「忘れられた皇軍」という衝撃』というドキュメンタリーが放送された。かつて大島渚が作ったドキュメンタリー『忘れられた皇軍』をメインに据えた企画で、当時の大島を知る人々のインタビューや撮影風景などを絡めて1時間枠の番組にしたものである。当然『忘れられた皇軍』も全編放送された。なんでも制作されてから50年間放送されていないらしく、今回半世紀ぶりに日の目を見ることになったそうな(朝日新聞DIGITAL「大島渚監督、幻の30分作品 今夜、半世紀ぶり再放送」より)。
 内容は、朝鮮生まれでありながら先の戦争にかり出され、あげくに手、足、目などを失った傷痍軍人の話である。戦後、当然のことながら傷痍軍人が大量に発生し、町でも傷痍軍人会などが活動をしていたという話を聞いたことがある。ただし、一般の傷痍軍人には、傷病恩給や軍人恩給が支給されていたが、このドキュメンタリーに登場する軍人については、朝鮮生まれであるという理由で恩給が出ていない。韓国から保証してもらえというのが日本政府の態度らしい。彼らは、その不当性を訴え通常の軍人恩給を求めるため、閣僚に会いに集まってきた。その模様をカメラで捉え、この現状を改めるべきだと強く訴えたのがこのドキュメンタリー。「日本人よ、これでいいのだろうか?」というナレーションが最後に繰り返されるなど、非常にストレートな内容である。また、身体障害者になった元軍人たちの姿もカメラでしっかり捉えられているため、そのインパクトも相当なものだ。
b0189364_8305378.jpg ただそういった強烈なメッセージ性やインパクトを別にすれば、割に素朴なドキュメンタリーで、ドキュメンタリーとして考えるならば平凡である。大島渚作品は、劇映画にも通じるが、メッセージ性の強さを感じることはあるが、割合雑な印象を受ける。このドキュメンタリーも例外ではなく、身体障害を前面に出した映像に結局終始してしまっているような気がする。そういう点でも少々物足りなかった。
 なお、この映像はDailymotionというサイトで見ることができる。
第1回ギャラクシー賞受賞
★★★☆

参考:
Dailymotion『反骨のドキュメンタリスト 大島渚「忘れられた皇軍」という衝撃』
朝日新聞「大島渚監督、幻の30分作品 今夜、半世紀ぶり再放送」
竹林軒出張所『反骨の砦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (6)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『本日ただいま誕生(映画)』

by chikurinken | 2014-01-31 08:33 | ドキュメンタリー

『原子力大国 アメリカ』(ドキュメンタリー)

原子力大国 アメリカ
(2012年・米9.14 Pictures)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_8221015.jpg本家アメリカの原子力事情

 これも福島第一原発の事故をうけて作られたドキュメンタリーで、これはアメリカ製。アメリカの原子力事情を紹介する。ちなみに原題は『The Atomic States of America』。なかなかふるっている。
 このドキュメンタリーでも、アメリカの原発史が語られる。そのルーツは原子爆弾開発のためのマンハッタン計画である。第二次大戦終結により核開発の必要性がなくなると、関係者は既得の核兵器研究予算を失わないよう、原子力の平和利用というキャッチフレーズを掲げ、なんとか原子力を他の用途で利用できないか模索し始める。当初は珍奇なアイデアがいろいろ出されたが、発電に利用すればよいのではというアイデアが採用され、原子力発電が始まることになる。
 その後、アイゼンハワー政権によって支持されたこともあり、原子力発電は急拡大を遂げ、全米に原発が作られることになる。だがその後、スリーマイル原発で事故が起こり、コントロールが難しい技術であることが判明すると、原発の拡大は停止する。最近になって地球温暖化の問題にあわせて原発の見直しが進んだが、福島原発事故以降、再び増設に歯止めがかかっているというのが現状である。現在アメリカには100基以上の原発があるが、使用済み燃料の処分法はいまだに確立されておらず、最終処分場がない状態である。
 また、それぞれの原子力施設の放射能管理もずさんなところが多く、環境に放射性物質が垂れ流しになっている箇所もある。番組では、ロングアイランドの原子力施設周辺で異常な病気が多発したケース(その後、放射性物質トリチウムの環境への流出が明らかになる)や、軍の核施設のずさんさが一例として紹介される。
 さらに、大都市ニューヨークから数55キロの地点に立つインディアン・ポイント原発は、近くに活断層があることが判明し、しかも製造後40年経っている旧型機であるにもかかわらずさらに20年の継続運転が認可されているという事実が明かされる。マグニチュード7程度の地震により原発事故が起こる可能性がある上、事故が起こると巨大都市ニューヨークに計り知れない影響を及ぼす可能性があるということで、大きな懸念材料になっている。この国もフランスや日本と同じように、大惨事を経験しなければわからないんだろうか。もちろんこういうドキュメンタリーが作られているということは、市民の側にそれなりの危機意識があるということなんだが。いずれにしてもアメリカの場合、大陸的なずさんさがそこここに見受けられ、こんなずさんな方法であんな危険な原子力を管理できるんだろうかとこのドキュメンタリーを見てあらためて不安な気持ちになった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フランス 原子力政策の軌跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-29 08:24 | ドキュメンタリー

『フランス 原子力政策の軌跡』(ドキュメンタリー)

フランス 原子力政策の軌跡
(2013年・仏Morgane Production/Kami Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_813695.jpgフランスの原子力事情

 福島第一原発の事故をうけて作られたフランス製のドキュメンタリーで、フランスの原子力事情を紹介する。
 2011年の福島第一原発事故をきっかけに、世界中の国で原発の見直しが行われ、ドイツやスイス、イタリアのように原発廃止に向けて舵を切った国がある一方で、いまだに原発政策を強行に進めようとする国もある。その代表格がフランスで、フランスが原子力大国であることを考えると無理もないと言えるかも知れない。福島第一原発の汚染水処理にもフランスのアレバ社の技術が採用されたと聞く(全然役に立っていないという話もあるが)。
 実際フランスには60基もの原発があり、高速増殖炉の開発もかなり長いこと進められていた(スーパーフェニックス、今は廃炉)。総電力の70%以上が原子力によるもので、しかも電力の輸出も行っている。原子力に取り組んだのも早く、自前の原子炉もある。アメリカと並ぶ原子力先進国であるのは間違いない。
 元々フランスの原子力への取り組みは、第二次大戦後の核兵器開発に始まったもので、その後第一次オイルショックの際に原子力発電への傾倒が進んでいった。当初は日本と同様、原子力は未来のエネルギーという見方がされていて、負の部分があまり明らかでなかったこともあるが、同時にフランスはキュリー夫妻を輩出した国であり、原子力技術に対してひとかたならぬ思い入れがあることも大きく作用しているんだろう。実際、原子力テクノクラートの力が大きく、政権の中枢部に深く入り込んでいるというのだ。そのために政府レベルで、反・原子力に舵を切ることができないらしい。
 スリーマイル原発やチェルノブイリ原発の事故を経験してからは原子力に対して懐疑的な勢力も増えているが、それでも状況は変わらず。原発の増設まで行われている。現在稼働中の原発が約60基で、アメリカ、旧ソ連に次いで第3位、日本の54基をしのぐということで、統計的に素直に考えると、次に大事故が起こるのはフランスが有力ということになる。日本も、今は多少変わったとはいえ、この間の事故以前はフランスと同様の状況だったわけで、やっぱり愚かしい文明人は自らが大失敗を経験しないと気付かないものなのか。だがヨーロッパ大陸で大事故が起こると、その影響は福島の比ではあるまい。
 こういうドキュメンタリーが、フランス国内でもたびたび作られていることを考えると、世論は原子力政策に対して懐疑的であることがわかるが、いい加減舵を切らないと取り返しがつかなくなるよと老婆心ながら言いたくなる。ま、日本もまったく同じだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原子力大国 アメリカ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-28 08:14 | ドキュメンタリー

『原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜』(ドキュメンタリー)

原発廃炉は可能か? 〜計画とその現実〜
(2012年・仏Eclectic Presse/ARTE France)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

続けるのも問題だが、やめるのも大変!

b0189364_7573281.jpg フランス、ドイツ、アメリカでの原子力発電所の廃炉の現実を報告するドキュメンタリー。廃炉作業の問題性を順を追って紹介していく。
 番組では、まず廃炉作業の複雑さが取り上げられる。原発は、操業中に大量の放射性物質を扱うという性質上、原発の多くの設備が放射性物質で汚染される。そのため、通常の発電施設であれば問題なく進むような解体作業も、こと原子力施設ということになると簡単にはいかない。まず第1段階として燃料を取り出し、第2段階では放射性物質と接触していない部品(通常の廃棄物)と原子炉近くの部品(低レベル、中レベル汚染)を撤去する。そして第3段階で、放射線量が非常に高い原子炉自体を解体する。すべてを解体するのに30〜40年、場合によっては60年かかる。ただしたとえ解体作業が終わったとしても、最終処分場がなく廃棄物を処分することができないため、その多くが敷地内に野積みになっているのが実態である。例としてドイツのルブミン原発とアメリカのメイン・ヤンキー原発の状況が示される。
 こういった廃棄物の中でも特に問題になるのは、高レベルの廃棄物で、そのままでは非常に危険な上、現時点でこれを処理する方法は無いときている。かつてフランスでは、高濃度放射性廃棄物を海洋投棄していたが、今では当然こういうことは許されず、どの国も安全な廃棄物処理方法を模索している段階にある。だが現状では、地下深くに埋めるという方法以外見つかっていない。
 ドイツでは40年前、アッセの岩塩鉱山跡(地下500m)に放射性廃棄物を貯蔵するという方法を採った(岩塩の成分が放射性物質を中和するというような理屈だったらしい)が、2004年に地殻変動が原因で貯蔵施設の一部が崩壊。今はその手当てのために奮闘を余儀なくされている。また、フランス、ビュールでも同様の計画が進んでいるが、爆発や火災の危険性があることが指摘されていて、やはりこれはという解決策は見つかっていない。
 さらに作業員の被曝の問題も挙げられる。作業員に放射線についての正しい知識が伝えられないことがあり、それが作業員の放射線被曝を招くことになる。たとえ正しい教育を行っている現場であっても(被曝量の制限のため)作業員が長期に渡って働くことができにくいため、知識や経験が引き継がれにくいという問題もある。
 廃炉はこのように複雑な問題をかかえる作業であるため、廃炉にかかる費用も相当な額に上る。たとえ一定の予算を組んでも、実際にはその何倍もの費用がかかることも多く、今後、大量の原発を廃炉する上で想定される費用は莫大なものになることが予測される。どの政治家がこれにゴーサインを出すのかということも問題になり、結局は厄介な問題が先送りされることになる。しかも、廃棄物の管理方法すらいまだ答えが出ていないという状況である。
 原発は運用するのもいろいろ問題があって大変だが、廃炉作業も一筋縄ではいかず、現在操業中の原発を本当にすべて廃炉できるのかという疑問を提示して番組は終わる。僕自身、このドキュメンタリーを見て暗澹たる気持ちになってきた。だがこういう問題が目の前にあるのも事実で、なかったことにするわけにもいかないだろう。もちろん、これまで原発を推進してきた関係者(および支持者)にはそれなりの責任をとってほしいものだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原子力“バックエンド”最前線(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 (ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『地下深く永遠に 〜核廃棄物10万年の危険〜』(ドキュメンタリー)』
『原発解体』に対する日本原子力技術協会による反論(2009年10月16日)
by chikurinken | 2014-01-27 07:58 | ドキュメンタリー

『数学の学び方・教え方』(本)

b0189364_8523756.jpg数学の学び方・教え方
遠山啓著
岩波新書

算数・数学を教える人々には
一度は読んでいただきたい本


 数学教育に造詣が深い遠山啓の数学教育に関する著書。
 「量」、「数」、「集合と論理」、「空間と図形」、「変数と関数」の5章立てになっており、それぞれの章で、小中学の数学教育を念頭に置きながら、数学の概念について議論を進めていく。特に量と数の理論や分数の概念については目からウロコで、大変面白く、こういった概念について考え直す上で非常に役に立つ。ただ後半はあまり感じるところがなく、特に「空間と図形」で非ユークリッド幾何学なんぞ持ち出された日には、少々白けてしまう。「変数と関数」もややありきたりであった。
 やはり、この遠山先生、初等教育論がずば抜けていると感じた。現在採用されている教科書についてその出自から説きおこして批判を加え、どういう内容にした方が子どもたちにとって理解しやすいかまで丁寧に解説しているのは、著者ならではである。また分数の割り算の説明も秀逸であった。どうしても多少わかりづらい面は残るが、それでも説明としては非常に合理的である。数字だけで説明する方法もあるが(竹林軒出張所『なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?(本)』参照)、あれよりよほどグレードが高い。
 著者の岩波新書には他に『数学入門』という本もあり、この本と重なる部分もあるが、こちらもなかなか読み応えがありそう(現在進行中)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?(本)』
by chikurinken | 2014-01-25 08:54 |

『あんな「お客」も神様なんすか?』(本)

b0189364_10225159.jpgあんな「お客(クソヤロー)」も神様なんすか?
「クレーマーに潰される!」と思った時に読む本

菊原智明著
光文社新書

発想の転換で
クレームに対するストレスを軽減


 元住宅メーカーの営業担当者で、現在営業コンサルタントの著者が説く、顧客からのクレームに対する心構え。タイトルの『あんな「お客」も神様なんすか?』の「お客」の部分には「クソヤロー」という読みがなが振られているが、この言葉、営業担当のときに元後輩が口にした言葉なんだそうだ。キャッチーなタイトルで思わず目を引かれたが、この著者には他にも『人は上司になるとバカになる』というものもあり、コピーライターとしてもなかなかのものである(本人自身がつけたタイトルかどうかはわからないが)。
 さて内容であるが、住宅メーカーで営業をやっていたときの経験から、クレームをストレスに感じて押しつぶされるのではなく、クレームを顧客からの要望のサインと考え、原因を究明し丁寧に対処することで、顧客の満足度を上げるだけでなく、自分の成長を助けることにもつながるということを主張するもの。実際著者は、メーカー勤務時クレームに汲々として業績が上がらないダメ社員だったが、その後この方法で発想を転換することにより、トップ営業マンになったという経歴を持つらしい。
 第1章でケーススタディとして8件の(実際の)事例を紹介し、第2章でクレームに対する発想の転換のすすめを説く。ここまでがおそらく柱の部分で、最後の第3章では、顧客に対して、他の顧客から受けたクレームを伝えることで信用を獲得するという究極の方法を紹介している。どれも納得できるようなもので、なるほどと思う。要は、顧客に誠意を持って対応するのが営業成績を上げるコツということらしい。ごもっともである。
 ただ少し気になるのは、紹介されているクレームが、たしかにクレームなんだが、ゆすりたかりに近いような悪質なクレーム(世間でクレーマーと呼ばれるような人間によるクレーム)がないという点で、そういう悪質クレームの対処法を期待して読んだ僕はちょっと取り残されたような気になった。本書で紹介されているクレームもたしかにクレームを受ける当人にしてみれば厄介なんだろうが、タイトルに「クレーマー」と入れるのはいかがなものかと思う。もちろん、それで本書の価値が損なわれることはなく、顧客に対応する仕事をする人にはそれなりにヒントになる本ではある。営業マンでない僕のような(顧客側の)立場からすると、すべての営業マンが本書のように誠実に対応してくれれば良いなと思う。間違いない。
★★★☆
by chikurinken | 2014-01-24 10:25 |

『キング牧師とワシントン大行進』(ドキュメンタリー)

キング牧師とワシントン大行進
(2013年・米Sundance Productions/Smoking Dogs Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

歴史的な出来事が目の前に甦る

b0189364_815532.jpg アメリカの公民権運動において象徴的な出来事と言えば、1963年のワシントン大行進。これをきっかけに公民権法の制定の流れに拍車がかかった。そしてワシントン大行進と言えば思い出されるのが、マーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説「I have a dream」。このドキュメンタリーでは、ワシントン大行進がどのように企画され、どのように進められて、キング牧師の演説に至ったか、その背景からわかりやすく紹介し、ワシントン大行進の映像を交えて報告していく。
 モンゴメリー・バス・ボイコット事件に端を発して盛り上がった公民権運動だが、その後徐々に後退していく。一方で南部における黒人に対する迫害事件はとどまることはなかった。そんな折に大統領になったのが(自由主義的と評判の)ジョン・F・ケネディ。自由を求める黒人たちは一様に彼に期待したが、実際には大統領が政府内の保守勢力を抑えることができず、期待されていた公民権の立法化もなかなか進まない。このような背景で企画されたのがワシントンでの大規模かつ平和的なデモである。行政機関、立法機関に心理的圧力をかけようというのが当初の狙いであった。
 一方、ホワイトハウス側は、このデモが暴動に発展することを警戒し、事前に主催者側にさまざまな要求を出していく。主催者側も彼らと適当に折り合って準備を進めながら、同時に民主的な考えを持つ全米の人々にワシントンのデモに参加するよう促す。ハリウッドでは、ハリー・ベラフォンテの主導により、チャールトン・ヘストンやマーロン・ブランドも参加を表明。結果、さまざまな有名人がこの企画に参加することになった。
 主催者側は、参加者が集まらず失敗に終わることを危惧していたが、蓋を開けてみると20万人もの人々が集まり、しかも行政側が危惧したような暴動も起こらず、すべてが平和的に進行した。ジョーン・バエズ、ピーター・ポール・アンド・マリー、ボブ・ディランらも歌で参加し、黒人と白人が手を取り合って公民権を訴えるという大集会になる。さまざまな代表者が演壇に上って演説を行い、そして最後に演説したのが、主催者の1人であるキング牧師。そしてその演説は伝説となる。
 集会後、大統領はホワイトハウスに主催者たちを招き入れ、かれらの仕事をねぎらったという。そして翌年に公民権法は議会を通過し、ついにアメリカは、制度上平等主義を確立することになる。その後、キング牧師はノーベル平和賞を受賞するが、その2年後凶弾に倒れることになる。
 番組では当時の映像がふんだんに紹介され、バエズやPPMの当時(そして今)の映像が出てきて、当時を知らない僕などには非常に新鮮だった。またキングの演説の映像も出てくる。僕にとっては歴史上の1つの出来事であるが、このドキュメンタリーできれいな映像で紹介されているため、同時代の出来事であるかのように現実的に接することができた。資料的価値が高いドキュメンタリーと言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』
by chikurinken | 2014-01-22 08:16 | ドキュメンタリー

『ザ・プレミアム よみがえる江戸城』(ドキュメンタリー)

ザ・プレミアム よみがえる江戸城(2013年・NHK)
NHK-BSプレミアム

冗長な正月番組にするにはもったいない素材

b0189364_8212575.jpg 江戸城の本丸御殿をCGで復元して披露しようという企画。CGの復元には5年の歳月がかかったという。
 お正月番組だったこともあり、全体的におめでたい雰囲気で、だらだらと2時間半にわたって進行する。CGは割合よくできていてそれなりに面白いが、高橋克実がツアーコンダクターになって内部を案内するという見せ方がいただけない。非常に冗長で無駄な演出である。
 CGは、残されている図面を詳細に検討した上で作られたということで、割合しっかりしたものになっている。また襖絵も、現在残されている下絵から再現したと言うことで、こちらもある程度信頼できそうである。何より、江戸城の天守閣が早々に消失してしまい、事実上本丸御殿が江戸城の中心になっていたというのは今回初耳で、そう考えると江戸城は純粋に政務機関だったと考えても良さそうである。
 大広間や松の廊下を紹介するくだりでは、それぞれ関連するエピソードが示され、当時の風習や作りなども詳細に紹介されてまあ楽しめるが、考証が少々眉唾な印象もある。デタラメではないんだろうが、たとえば松の廊下は実際は暗かったなどと言われても、合理性に欠けているんでにわかに信じられない。番組の解説では、松の廊下は、図面から推察すると板戸で覆われていたと考えられるため外光が入らず暗かったはずと言うが、暗くする必然性がなければ、明かりを入れる方が合理的な気がする。そうすると考証の方をもう一度検討し直すべきではないかと感じたりするんだがどうだろう。
 こういう感じで随所に中途半端さが残る番組作りで、いっそのことCGを素材に江戸城の機能を丁寧に紹介するというストレートな展開のドキュメンタリーにした方が番組として良いものになったんじゃないかと思う。どこかで正月向けのバラエティ番組にしたいという意向が働いていたようだが、こういう風に処理してしまったため、せっかくの素材が無駄になったような気もする。
★★★

参考:
竹林軒出張所『京都御所 〜秘められた千年の美〜(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-21 08:21 | ドキュメンタリー

『スモール・アクト 〜小さな善意が生んだもの』(ドキュメンタリー)

スモール・アクト 〜小さな善意が生んだもの〜(2010年・米Harambee Media)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

小さな善意が報われた稀少なケース

b0189364_891178.jpg 現代ニッポン、善意の寄付はとりたてて珍しいものではなく、街頭での募金活動などもよく目にする。だが、実際には寄付した金がどこに流れているかもわからないまま終わってしまうのが実情である。もちろんそれがターゲットとなる場所に届いていれば不服はないが、本当にちゃんと届いているのか、まさか途中で着服している人々がいるんじゃないかなどと考えると、寄付をしようという気持ちもあまり起こらない。
 このドキュメンタリーで取り上げられているケースは、かつてケニアに住んでいた貧しい1人の子どもが、1人のスウェーデン人女性に(ほぼ匿名に近い状態で)毎月15ドル程度の支援を受け、その結果、ケニアの大学を卒業し、その後ハーバード大学を経由して国連で働くようになったというもの。後に、支援を受け続けたこの元少年(クリス・ムブル)は、唯一わかっていた名前(ヒルダ・バック)を頼りにこの女性を探し出して、今日の自分があるのはあなたのおかげですと感謝の意を述べたのだった。しかもこのクリス、現在では、貧しいケニア人の子どもたちの進学を助けるための奨学金を自ら提供していて、それにヒルダ・バック基金という名前をつけているというのだから立派である。
 たしかにこのヒルダ・バックの行いは立派だが、それにもまして、いまだに恩義を感じ次の世代にその善意をつないでいこうとするクリスの思いがまことに気持ち良い。こういう風に思いが伝わるんなら寄付も良いよなと思う。でもやっぱりこういうケースは少ないんだろうとも思う。支援によって1人でも貧しい子どもが助かればまだ良いんだが、それすらもわからないまま終わってしまうのが普通である。もっともそういう条件でも支援するというのが本当は大人の態度というものなんだろうが、どこか釈然としない気持ちも残る。
 そういう意味でもこのクリスの行動はすばらしい。このドキュメンタリーを見た多くの人が、貧しさにあえいでいる子どもたちを助けたいと感じたんじゃないかと思う。間違いない。
★★★☆
by chikurinken | 2014-01-20 08:10 | ドキュメンタリー

『HIT SONG MAKERS いずみ、浜口編』(ドキュメンタリー)

『HIT SONG MAKERS〜栄光のJ-POP伝説〜』いずみたく、浜口庫之助
(2013年・BSフジ、イースト)
BSフジ

流行歌黄金時代を回顧する

 60〜70年代の歌謡界を彩った音楽家を特集する『HIT SONG MAKERS』シリーズの第2シリーズ。第1シリーズは2005年に製作・放送され、筒美京平や宮川泰を特集していた(その後DVD化された)。この番組自体、非常によくまとまっていて、日本民間放送連盟賞なんかも受賞したらしいが、その第2シリーズが2013年に製作され、中村八大、いずみたく、浜口庫之助、井上大輔が取り上げられた。今回僕が見たのは傑作選ということでいずみたく、浜口庫之助、井上大輔の3人の回が放送されたもの。中村八大にも非常に興味はあるが、放送されないんだから仕方ない。今回見たのはいずみたく、浜口庫之助の回で、井上大輔の回はパス。

b0189364_9292798.jpg まず、いずみたくであるが、1960年代生まれの我々にはお馴染みの名前で、なんと言ってもピンキーとキラーズや佐良直美らを育てて大ヒットを飛ばしたことで知られる御仁。僕自身大人になるまで彼の曲にはあまり関心がなかったが、昔の歌謡曲などをちょくちょく耳にしているうちにその楽曲の新鮮さにあらためて気が付いたという次第。で、いろいろ調べてみると、あれもいずみたく、これもいずみたくといった具合で、その守備範囲が非常に広い(しかもことごとく質が高い)ことに気が付いた。ざっと見ただけでも流行歌以外にアニメソング、ドラマのテーマ曲、CMソングなど非常に多彩である。中でも、日本のスタンダードを作るという意気込みで始めた「日本のうた」シリーズは、すでに流行歌の域を超え、今やスタンダードになっていると言ってもよい(たとえば「女ひとり」や「いい湯だな」)。
 そのいずみたくの生い立ち、音楽業界に入ったいきさつから始め、多彩な楽曲や交友関係を紹介していくというのがこのドキュメンタリー。中でもその広い交友関係には驚く。音楽界の人脈は当然だとしても、その他に野坂昭如、永六輔、やなせたかしらとも親しく付き合っていたと言う(彼らとは音楽作りでも共作している)。しかもこのいずみたく、音楽作りはすべて独学だったというから二度ビックリ。いってみればアマチュア上がりなわけで、あの独創的なメロディーは、たしかにプロっぽくなく、それが新鮮さにつながっているのだなとあらためて納得する。いろいろ勉強になった。なお、いずみたくの代表作は、上記楽曲の他に「見上げてごらん夜の星を」、「夜明けのスキャット」、「恋の季節」、「夜明けのうた」、「肝っ玉かあさん」、「手のひらを太陽に」、「ゲゲゲの鬼太郎」、「花のア太郎」(アニメ『もーれつア太郎』テーマ曲、メロディが独創的で面白い)など。由紀さおりのデビュー・アルバム『夜明けのスキャット』はほとんどの楽曲がいずみたく作である。

b0189364_9294820.jpg 浜口庫之助の回もいずみたく同様に、生い立ちから始まり時系列で浜口の楽曲が紹介されていく。バンド・メンバーとしてのキャリアの後(紅白歌合戦の出場経験もある)、ソングライターに転身し、数々のCM曲、歌謡曲を手がけ、ヒットを飛ばしていく。「黄色いサクランボ」、「星のフラメンコ」、「バラが咲いた」、「空に太陽がある限り」などが代表曲だが、作詞、作曲の両方をこなし、ときには自分でも歌っていたということでシンガーソングライターの走りと言えるかも知れない。晩年は癌による闘病生活が長く続いて、若い時分のようになかなか活動できなかったが、島倉千代子に「人生いろいろ」を提供し最後のヒットを飛ばす(そしてその数年後に他界)。
 ハマクラ先生の場合、彼の歌謡曲作品についての印象は個人的にはあまりないが、CM曲に面白いものが多く、そちらの方で興味が湧く。ちなみに代表的なCM曲は「小さな瞳」(ロッテ・チョコレートのテーマ曲)、「私のカローラ」(ボサノヴァ調の軽快な曲)、「ヤクルト・ジョア」(小柳ルミ子が歌唱)など。ハマクラ先生のCM曲については、『浜口庫之助 CM大全』などのCDでも接することができる。なお、番組内では、小野リサが、ハマクラ先生の代表曲として「私のカローラ」と「みんな夢の中」をライブで歌っていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夜明けのスキャット(CD)』
竹林軒出張所『CM曲のCD』
竹林軒出張所『拝啓天皇陛下様(映画)』
by chikurinken | 2014-01-18 09:31 | ドキュメンタリー