ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

<   2013年 12月 ( 21 )   > この月の画像一覧

2013年ベスト

 今年も恒例のベストです。当然「僕が今年見た」という基準であるため、各作品が発表された年もまちまちで、他の人にとってはまったく何の意味もなさないかも知れませんが、個人的な総括ですんで、ひとつヨロシク。
(リンクはすべて過去の記事)

b0189364_9172767.jpg今年見た映画ベスト5
1. 『アギーレ・神の怒り』
2. 『アメリ』
3. 『仕立て屋の恋』
4. 『トキワ荘の青春』
5. 『シベールの日曜日』

 なんと全部再見の映画になった。まあ老い先も短くなってきたんで、今後は新しい映画よりもこれまで見て気に入った映画を中心に見ていくようなことになるかも知れない。今年はその先駆けということになるかな。ただ、それぞれの映画に感化されて……というか似たような傾向の映画や本にまとめて触れたりしたのも事実。たとえば『アギーレ・神の怒り』については、監督のヴェルナー・ヘルツォークの作品を他にも数本見ているし、『トキワ荘の青春』についても、その手のマンガや本を読みあさっている。多角的にアプローチしようというスタンスの現れととっていただいて結構。

b0189364_917521.jpg今年見たドラマ・ベスト5
1. 『沿線地図』
2. 『今朝の秋』
3. 『冬構え』
4. 『かすていら』
5. 『終電バイバイ』

 こちらも再見のドラマが多い。そもそも今年は山田太一脚本のドラマを(意図的に)たくさん見たので再見作品が多くなるんだが、当然のごとく昨今のドラマと比べると段違いに質が高いんで、ランキングを作れば当然こちらが上位に来る。ホントは全部山田作品にしたかったぐらいだが、それでも『かすていら』は割によくできていたドラマだし、『終電バイバイ』も、斬新でありながら非常に感性的な側面も併せ持つというちょっとこれまでにない作品で、この脚本家(岩井秀人)、ただものではないと感じた。そういうわけでここに2作品取り上げたわけ。
 とは言っても『沿線地図』と『今朝の秋』は(あらためて見たものだが)圧巻だった。これは絶対外せないところ。

b0189364_9182812.jpg今年読んだ本ベスト5
1. 『奥の細道 マンガ日本の古典25』
2. 『BORN TO RUN 走るために生まれた』
3. 『山椒魚戦争』
4. 『日本語の文法を考える』
5. 『チャップリン自伝 ― 若き日々』

 『マンガ版奥の細道』は、『奥の細道』に対する見方を180度覆してくれた快作で、完成度と言い、原著に対する著者の理解と言いまったく申し分ない。中央公論社の『マンガ日本の古典』シリーズはなかなかの秀作が揃っているが、『奥の細道』はその中でも屈指である。何度も読みたい作品であり、できれば著者には『奥の細道』全体をカバーしたものにひきつづきトライしてほしいものである(この『マンガ版奥の細道』はほぼ出羽路のみ)。
 『BORN TO RUN 走るために生まれた』は、メキシコ奥地に住むという、謎の走る民族を追ったノンフィクションだが、内容がスリリングで読み応えがあった。ただ、まったく未知の世界の話なんで文章だけではなかなか想像しにくい面もあったことは確か。だがこの作品にちなんだドキュメンタリーも出ていて、そちらを見れば現実の世界にかなり近づけるんではないかと思う。もちろんそれなしに、読みものとして楽しむのも良いものではある。
 『山椒魚戦争』は、永らく読みたいと思っていて二の足を踏んでいた著作だが、期待どおりの作品だった。題材自体は実にバカバカしいんだが、ここまで徹底して描かれると(しかも風刺を込めて)脱帽である。語り口も非常にうまいので、読み始めたら止められない。小説としても一流である。
 『日本語の文法を考える』と『チャップリン自伝 ― 若き日々』は再読。『日本語の文法を考える』に至っては今回3回目だし、類書の『古典文法質問箱』も今2回目を読んでいるところ。国語学の面白さを堪能できる大野晋の快作である。『チャップリン自伝 ― 若き日々』もサクセス・ストーリーであり、当時の英国の下層階級の事情を報告するルポにもなっていて、密度が濃い。

b0189364_9203646.jpg今年見たドキュメンタリー・ベスト5
1. 『大海原の決闘! クジラ対シャチ』
2. 『映像記録 市民が見つめたシリアの1年』
3. 『100年インタビュー 脚本家 山田太一』
4. 『外国人が見た禁断の京都 -芸妓誕生-』
5. 『風に吹かれてカヌー旅』

 『大海原の決闘! クジラ対シャチ』は、生き物ドキュメンタリーで、クジラとシャチの生をめぐる攻防を描く意欲作。なによりこれだけの映像が撮れたということがスゴイ。それに映像を駆使した解説も必要十分で、野生生物ドキュメンタリーの傑作と言ってよい。巷で話題になっている『ダイオウイカ』よりずっとグレードが高いと思う(『ダイオウイカ』同様、『クジラ対シャチ』もDVD化されたようです)。
 『市民が見つめたシリアの1年』はドキュメンタリーWAVEの1本だが、ドキュメンタリーの鑑というべき作品。報道機関が伝えるべき現実というのはこういうものを言う。当局の統制のために外に伝わってこない現状が報告されるんだが、その現実感、切迫感は他に類を見ない。何度も再放送して、日本国の住民に現状を知らしめる役割を果たしてほしいと思う。それこそがジャーナリズムというものである。
 『100年インタビュー 脚本家 山田太一』は山田太一のインタビューだが、当事者しか知りえない当時の放送界の裏話が語られていてなかなか興味深かった。脚本家の名前を冠した最初のドラマが『男たちの旅路』だというのも初めて知った事実だった。
 『外国人が見た禁断の京都 -芸妓誕生-』は、普通なら目にすることができない情景を美しい映像で描くという画期的な企画で、グレードが非常に高い。外国向けの番組というのがもったいないほどで、これも何度も再放送していただきたい作品である。
 最後の『風に吹かれてカヌー旅』は、カヌー家、野田知佑の旅を追ったドキュメンタリーで、野田氏と一緒に旅をしているかのように感じられる快作である。しかも舞台はモンゴルと来ている。まさに『世界の川を旅する』の映像版で、こちらもずっと後世に残していただきたい作品であった。

 というところで、今年も終了です。今年も1年、お世話になりました。また来年もときどき立ち寄ってやってください。
 ではよいお年をお迎えください。

参考:
竹林軒出張所『2009年ベスト』
竹林軒出張所『2010年ベスト』
竹林軒出張所『2011年ベスト(映画、ドラマ編)』
竹林軒出張所『2011年ベスト(本、ドキュメンタリー編)』
竹林軒出張所『原発を知るための本、ドキュメンタリー2011年版』
竹林軒出張所『2012年ベスト』
by chikurinken | 2013-12-30 09:23 | ベスト

『西本智美 祈りの歌をヴァチカンへ』(ドキュメンタリー)

西本智美 祈りの歌をヴァチカンへ 〜生月島に伝わるオラショ 500年目の里帰り〜
(2013年・NHK)
NHK総合

オラショ(oratio)ってオラトリオ(oratorio)と同語源?

b0189364_8353096.jpg 番宣メールをいただいた縁で見てみたドキュメンタリー番組(竹林軒出張所『ヤマグチさんからのメール』参照)。広報メールの送り主のシェリー・ヤマグチ氏は、この番組のプロデューサーだったことがわかった。やっぱりNHKの人か?
 番組の内容は前にも書いたように、長崎県の生月島に伝わっている隠れ切支丹の祈りの歌「オラショ」がヴァチカンで歌われたときの模様を追うというものである。ちなみにこの企画、元々ヴァチカンから指揮者の西本智美氏に持ち込まれたものということで、西本氏が全国から合唱団員を募集し、訓練した上でヴァチカンでの本番に臨むというもの。番組では、西本氏のこの演奏にかける思いを中心に据えて、同時に数人の参加者に練習時から密着して、それぞれの参加者の思いも辿っていく。参加者の中には、最近配偶者を亡くした女性、被災地の女性など、ワケありな人たちもいて、かれらの思いにもスポットを当てるというものである。
b0189364_8355779.jpg こうやって参加者の背景を追いながらイベントの本質に迫っていくというアプローチは、これまでも『北へ555キロ 〜日本最北端を目指したランナーたち〜』をはじめ、『激走! 富士山一周156キロ〜ウルトラトレイル・マウントフジ〜』『雲上の超人たち 〜日本アルプス大縦断レース〜』など、ウルトラ・マラソン関連のドキュメンタリーでお馴染みの手法であり、それ自体目新しさはない。上記のマラソン関係の番組ではこの手法が効果を発揮していたが、この番組では、残念ながら焦点がややぼやける結果になってしまい、散漫になっていたように思う。なによりそれぞれの参加者の思い入れが見るこちら側にあまり迫ってこなかったことということも大きい。ぼくが思うに、参加者に思い入れがあろうがなかろうが、結局は合唱に参加するという行為自体、趣味の延長みたいなものに過ぎない。僕もかつて合唱団に参加したことがあるが、この映像を見ている限り、そのときのノリに近いという印象しか受けなかった(『俺たちの交響楽』風とでも言ったらいいのか)。
 むしろこういった要素を排除して西本氏自身の思い入れにさらに踏み込んでいくか、あるいは「オラショ」の再現の過程を中心にしてじっくり描いていけば、散漫な印象も薄くなり、重厚なドキュメンタリーに仕上がっていたかも知れない(竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都』みたいに……)。あれこれ欲張りすぎて、結局どれも印象が薄くなってしまったという感じである。題材が面白そうで期待が大きかっただけにかえって失望感が大きくなってしまった。残念。
★★★

参照:
竹林軒出張所『ヤマグチさんからのメール』
竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『激走! 富士山一周156キロ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『雲上の超人たち 〜日本アルプス大縦断レース〜(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-12-28 08:40 | ドキュメンタリー

『太平洋ひとりぼっち』(映画)

b0189364_8155230.jpg太平洋ひとりぼっち(1963年・日活)
監督:市川崑
原作:堀江謙一
脚本:和田夏十
音楽:芥川也寸志、武満徹
出演:石原裕次郎、森雅之、田中絹代、浅丘ルリ子、ハナ肇、芦屋雁之助、大坂志郎

「ひとりぼっち」感が実に良い

 1962年、小型ヨット(「マーメイド号」)で太平洋単独横断を成し遂げた堀江謙一の手記『太平洋ひとりぼっち』を映画化したもの。
 主人公の堀江を演じるのは石原裕次郎。僕自身は俳優としての石原裕次郎をあまり評価していないので、正直この映画にもあまり期待していなかったが、そこはさすがに市川崑。「裕次郎らしさ」(これが嫌なんだ)をあまり出さずうまいことまとめ上げていた。
 話の内容はおおむね想定の範囲内で、嵐に遭ったり浸水に悩まされたりといったストーリーだが、タイトルの『太平洋ひとりぼっち』が示唆するような「ひとりぼっち」感がよく伝わってきた。それにヨットが思いの外小さいことや、エンジンが搭載されていないということ(まあ当たり前だが)も初めて知った。ヨットはほとんどボートに近いレベルである。堀江謙一のことは名前ぐらいしか知らなかったが、映画で航行の状況がよく再現されていたため、彼の成し遂げたことがすごいことだというのもよくわかった。
 父親の森雅之と母親の田中絹代がそれぞれ存在感を見せていたが、妹役の浅丘ルリ子はまったく存在感がなく、正直いてもいなくてもよかったんじゃないかという感じである。浅丘ルリ子であることすら気が付かなかった。
 この映画でなんと言っても出色だったのが武満徹のテーマ曲で、若者の野望や太平洋の孤独感などが音を通じて伝わってくるようだった。終わりの方はちょっと唐突に終わったが、和田夏十の脚本もなかなかうまくまとめられていた。終わった後に爽快感が残るような秀作で、テーマ音楽がいつまでも頭の中を駆け巡っていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『炎上(映画)』
竹林軒出張所『おとうと(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『コン・ティキ(映画)』

by chikurinken | 2013-12-27 08:17 | 映画

『タクシー・サンバ』(1)〜(3)(ドラマ)

b0189364_833421.jpgタクシー・サンバ(1981年・NHK)
 第1話 夜の少年
 第2話 愛のかたち
 第3話 路上の荒野
演出:村上佑二(1)(3)、音成正人(2)
脚本:山田太一
出演:緒形拳、坂上二郎、花沢徳衛、岡本信人、毒蝮三太夫、佐野浅夫、辰巳柳太郎、愛川欽也(1)、松田洋治(1)、大原麗子(2)、榊原郁恵(2)、役所広司(2)、紺野美沙子(3)、隆大介(3)

サービス精神満点、ネタの宝庫!

 タクシー・ドライバーを主役に据え、彼らの視点から同時代の社会を照射するという異色のドラマ。全3話構成で、それぞれ独立した話になっている。同じ脚本家が同じ頃、同じNHKで書いた『男たちの旅路』と同じような構成である。特に、第1話は、家庭で疎外されている父親の仕事ぶりを子どもに見せるという「昼間のパパ」(忌野清志郎作『パパの歌』--1991年--より)の話で、おそらく当時としてはかなり新しい主張だったんではないかと思う。またタクシー・ドライバーを主役に使うというのも、梁石日の『タクシー狂騒曲』が同じ年に出ていることから考えると、相当新しい試みで、脚本家の面目躍如というものである。
 第2話は、話自体は一般的な恋愛ドラマにありがちなストーリーだが、今で言うところの「共依存」がモチーフで、そこに主人公および同僚の半生が絡み合うというなかなか重厚な展開になっており、これも脚本家の豪腕が光る逸品である。第3話は、「ひきこもり」に通じるような問題を扱っており、同時に主人公の成長の話になっている。プロットをいくつも絡めてうまくまとめ上げた快作で、気持ちのいい話である。よくよく考えてみると、今これだけのドラマを書ける人はいないよなーと思う。
 どの回もゲスト出演者が出てドラマに彩りを添える。第1話の松田洋治はこの後同じ脚本家の『深夜にようこそ』、第2話の大原麗子は『チロルの挽歌』、第3話の紺野美沙子は『真夜中の匂い』で主役級で起用されるし、緒形拳や岡本信人も山田ドラマの常連ということを考えると、あて書きであることが窺える(もっとも山田太一は大体あて書きの人らしいが)。新国劇の辰巳柳太郎は異色な役回りだが、非常に好演。緒形拳との絡みも冴え渡る。ちなみに辰巳柳太郎は緒形拳の師匠で、緒形拳は辰巳の元付き人だったらしい。
プラハ国際テレビ祭テレビドラマ部門カメラワーク賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『風になれ鳥になれ (1)〜(3)(ドラマ)』

by chikurinken | 2013-12-25 08:04 | ドラマ

『更級日記・蜻蛉日記 ― NHKまんがで読む古典2』(本)

b0189364_8102692.jpg更級日記・蜻蛉日記 ― NHKまんがで読む古典2
羽崎やすみ著
ホーム社漫画文庫

日記でも物語風!
しかもテーマは現代的


 またまた古典文学のマンガである。今回は『更級日記』と『蜻蛉日記』。そもそもこの両作品が、マンガとして取り上げられるのは珍しい。なんせ元々が日記なんだからドラマとして成立しにくいはず……と思いきや、このマンガはそのあたりうまくまとめられていて、どちらもストーリーとしてできあがっている。しかも『更級日記』は『源氏』オタクの少女の話、『蜻蛉日記』は浮気性の夫に悩むプライドの高い美人妻というふうに、テーマ自体非常に今日的と言える。作画も手抜きがなく、しっかり描かれていて破綻はない。なんでも『更級日記』は著者のデビュー作だそうだが、まったくそれを感じさせない。
 『更級日記』、『蜻蛉日記』は、元々の著者はそれぞれ菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)、藤原道綱母(ふじわらみちつなのはは)で、要するに本当の名前は残っていない。ということで、このマンガの主人公、つまり(日記だから)原著者にはそれぞれ「サラちゃん」、「蜻蛉の君」という名前を付けて、かれらを主人公に設定し物語として再構築している。そのためストーリーとしては違和感がなく、普通のマンガと同じ感覚で読むことができる。こういうことが実にさりげなく行われているので気付きにくいが、古典の翻案としてはグレードが高いと言える。
 元々はNHKで放送された番組、『まんがで読む古典・更級日記』、『まんがで読む古典・蜻蛉日記』が元になっているらしいが、この番組についてはよく知らない。この放送を基にして描かれたのがマンガ版『更級日記』とマンガ版『蜻蛉日記』で、それぞれ別々の本として出版されていた。それが1冊にまとめられたのがこの文庫版で、全352ページ、それぞれが170ページ前後の作品である。元々1冊2千円弱で売られていた本が1冊にまとめられて、しかも680円で売られているため、とても「お得」感がある。NHK関連だから安いんだろうかと勘ぐったりもしている。
b0189364_8105525.jpg ちなみに『蜻蛉日記』のイメージはこんな感じ(右の絵参照)。主人公の「かげろうさん」、結構強情でプライドが高く、男からするとちょっと敬遠したいタイプである。この方の独白でストーリーは進むわけだが、どっちかというと夫の藤原兼家の方に共感を覚えてしまった。それに、息子の道綱に対するかげろうさんの態度もあまり気持ちの良いものではない。もちろん現代でもこういう女性、非常に多いけどね。一方で、そのあたりがこの古典作品の価値を一層高める結果になっているんだなと思う。
★★★☆

追記:
 たった今Wikipediaで知ったが、元々NHKで放送された『更級日記』と『蜻蛉日記』は、林真理子が脚本を書いていたらしい。なお、同じシリーズの『枕草子』は橋本治、『伊勢物語』は中沢新一が脚本を担当したということ(どちらも文庫版で出ている)。

参考:
竹林軒出張所『更級日記 平安時代の元祖文系オタク女子の日記(本)』
竹林軒出張所『日本人なら知っておきたい日本文学(本)』

by chikurinken | 2013-12-24 08:12 |

『麗しのサブリナ』(映画)

麗しのサブリナ(1954年・米)
監督:ビリー・ワイルダー
原作:サミュエル・テイラー
脚本:ビリー・ワイルダー、サミュエル・テイラー、アーネスト・レーマン
出演:オードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガート、ウィリアム・ホールデン、ジョン・ウィリアムズ

b0189364_923033.jpg麗しのヘプバーン

 『ローマの休日』の翌年に製作されたビリー・ワイルダー監督の映画。『ローマの休日』同様、25歳の麗しいヘプバーンが拝める。
 原作は舞台劇らしく、どうということのない荒唐無稽な話。ヘプバーン演じるサブリナが、大富豪の家の運転手の娘役で、彼女を見初める相手がその大富豪の御曹司という、言ってみれば『ローマの休日』の反対パターンである。多分に『ローマの休日』を意識して作られたんじゃないかと勝手に想像するが、ストーリー自体は『ローマの休日』ほどの意外性はない。相手役を務めるのはハンフリー・ボガート&ウィリアム・ホールデンということで超豪華だが、こちらも年が結構行っている(ホールデンは36歳、ボギーはなんと55歳! これじゃ親子だ)。たしかにビッグ・ネームだが、製作者はバランスということを考えなかったんだろうか。そう言えば『昼下がりの情事』でもワイルダーは同じようなことをやってるし、ワイルダーが「オードリーの年の差平気」の先例を作ったんだろうか。ヘプバーンはその後も『パリの恋人』でフレッド・アステアと(年の差30歳)、『マイ・フェア・レディ』でレックス・ハリソン(年の差21歳)と共演し、恋人役を演じる。どちらの映画もかつて見たが、『パリの恋人』については特に、2人の年の差が鼻についてかなり違和感を感じた。
 この映画、ストーリーはまあ陳腐だが、ワイルダーらしくあちこちにくすぐりが入っていて存分に楽しめるようにはなっている。また美術や衣装、音楽も洗練されていて、ゴージャスで贅沢な映画に仕上がっている。エンタテイメントとして見るなら、十分よくできた映画と言えるだろう。一家団欒には適した作品で、お正月のテレビ映画向きだと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ローマの休日(映画)』
竹林軒出張所『昼下りの情事(映画)』
竹林軒出張所『シャレード(映画)』
竹林軒出張所『いつも2人で(映画)』
竹林軒出張所『フロント・ページ(映画)』
by chikurinken | 2013-12-23 09:25 | 映画

ヤマグチさんからのメール

 ヤマグチさんからメールが来た。といってもクリスティー・ヤマグチでもなければ、山口ツトムさんでもない(ネタが古くて恐縮です)。
 何を隠そう、メールを送ってこられたのはあのシェリー・ヤマグチ氏で、京都の伝統文化におそろしく広いコネを持つ(と思われる)あの美女である(竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』)。あの番組ではコーディネーターみたいな立場で登場していたが、メールの文面から察すると、NHKの番組の制作に関わっておられる方のようで、NHKの人?なのかな。
b0189364_8445525.jpg メールの内容は、来週早々に放送される番組の件がメインで、これは皆さんにも早めにお知らせしなければなるまいということで、急遽この場でお知らせすることにした。案内ページを見る限り、指揮者の西本智実がバチカンでオラショを演奏するまでの過程を追うというもので、非常に興味深い。見たところ、NHKではあまり番宣に力を入れてないようで、もったいないよなーと思う。
 またメールには、「禁断の京都」シリーズは全部で6本あって、国内のNHKで放送されたのは件の2本だけということもあわせて書かれていた。こちらももったいない限り。ま、いずれ放送されるんじゃないかと思うが。
 ということで、ヤマグチさんのメールもそのまま掲載しようかと思う。本当ならヤマグチさんの許可を得るのが筋ってもんだが、緊急の番宣なんで事後承諾いただくってことで、ひとつよろしくお願いいたします。もし問題あるようでしたら、おっしゃってください(→ヤマグチさま)。

参考:
竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』

 以下文面。

-----------------

竹林軒さま

前略 いきなりお便りさせていただく御無礼、どうかお許しください。

はじめまして。
わたくしは、シェリー・ヤマグチと申します。
NHKの「禁断の京都」という番組の案内役をしております。
竹林軒さまには、番組を御高覧戴き、
さらに、真摯な御意見をブログに掲載していただきまして、
誠に有難く、心から感謝しております。

「禁断の京都」シリーズは、現在進行形で制作が進んでおり、
海外放送(NHK WORLD)では、既に6本を放送しております。
「Forbidden Kyoto」というタイトルです。
残念ながら日本語版は、竹林軒さまに御覧いただいた2本のみです。

昨今では、若者のTV離れが進み、ネット配信が主流だそうです。
わたくしとしては、あえてフルハイビジョンで制作し、TVで放送する番組は、
日本文化と、その精神性の高さを、圧倒的な美しい映像で伝えるべきであり、
日本人でさえ知らぬ禁断の世界を、世界に、日本に、発信したいと思料しており、
いくら予算が無いとはいえ、せっかく制作した残りの4本についても、
日本語版が制作され、日本国内で放送されるように願っていますが・・・。
視聴様からの強い要望が局に寄せられない限り、なかなか実現しません。
特に、竹林軒さまには、全シリーズ見て戴いて、
御意見や御感想をうかがいたいので、残念でなりません〜。

因みに、他の4本は、どのような内容かと申しますと、
NHK WORLDのHPに、予告編とラインナップが載っていますので、
お時間の許す時に、チェックしてみてください。

★Forbidden Kyoto番組HP

★番組ラインナップ

ところで、話は変わりますが、
わたくしが、ここ数年、全精力を費やして来た番組が完成し、
放送日時が決まりました。

長崎県の生月島に、今なお伝わる「隠れ切支丹」の祈りの歌「オラショ」が、
今から約500年前、宣教師に寄り日本に伝わった当時の形で、
強い百年の時を経て、ヴァチカンで演奏されました。
その過程を追った、ドキュメンタリー番組です。

今年の春に新法王に選出されたフランチェスコ1世は、
ヴァチカン派閥の中でもイエズス会に所属。
イエズス会から法王が選出されたのは、初めての事だそうですが、
奇しくも、500年前、日本に渡り、布教活動に従事した宣教師のほとんどが、
イエズス会の人だったということに、少なからず運命を感じました。
世界中のクリスチャンたちが、ラテン語を使わずミサを行っている今、
なんと、ヴァチカンと生月島だけが、いまだにラテン語でミサをあげています。
そして、ヴァチカンにさえ現存しない讃美歌(オラショ)が、
過酷な弾圧をくぐり抜け、いまだに、生月島に伝えられているのです。

来週のクリスマス祝日の月曜日、夕方5時からです。
12013年12月23日(月) 17:00〜
チャンネルは、NHK総合1chです。

この番組にご興味を持っていただき、御高覧戴けたら幸いです。
そして、感想、御意見など、伺えたら嬉しいです。

大寒の折りから、どうぞご自愛下さいませ。

かしこ

SHERRY YAMAGUCHI
b0189364_843133.jpg

by chikurinken | 2013-12-21 08:49 | 放送

『いつも2人で』(映画)

いつも2人で(1967年・英米)
監督:スタンリー・ドーネン
原作:フレデリック・ラファエル
脚本:クリス・チャリス、オースティン・デンプスター、アンリ・ティケ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:オードリー・ヘプバーン、アルバート・フィニー、ジャクリーン・ビセット、ナディア・グレイ

ハリウッド映画だが、意外にユニーク

b0189364_8153130.jpg スタンリー・ドーネン+オードリー・ヘプバーン+ヘンリー・マンシーニという『シャレード』と同じ組み合わせの映画。ただし内容は『シャレード』と違い、やや硬派で、倦怠期を迎えた夫婦の危機を描くというもの。
 ヘプバーンも、それまでのアイドル路線と違った演技派の面を見せていて新鮮である。相手役のアルバート・フィニーは英国の映画人で、僕はこれまで『ドレッサー』(1983年作)でしか見たことがなかったが、あの映画と全然印象が違うんでビックリである。15年でこんなに変わるものなのかと思うほどで、この『いつも2人で』では二枚目の夫を演じている。
 ストーリーは、どこにでも転がっていそうな話が題材だが、映画としてはなかなかユニークで、しかも時間軸を超えた複数のシーンが同時進行し、随時シーンが切り替わっていくという冒険的な手法をとっている(一種の回想形式)。そのためわかりづらい部分もあるが、主役の2人が知り合った頃、新婚時代、倦怠期時代とそれぞれの状況が対比されて、面白い効果をあげている。しかも舞台となる場所が絶妙にシンクロしたりして結構凝っている。スタンリー・ドーネンがこういう映画を撮れるというのもちょっと驚きである。
 ヘンリー・マンシーニの音楽は例によってすばらしいが、同じテーマが何度も何度も全編通じて流れるため、少々うるさく感じる。もう少し音楽を少なくするか、使うメロディにバリエーションをつけるかした方が良かったんじゃないかと思う。とは言え、単純なハリウッド映画とは少々毛色が違った意欲的な映画だったことは確かである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ローマの休日(映画)』
竹林軒出張所『麗しのサブリナ(映画)』
竹林軒出張所『昼下りの情事(映画)』
竹林軒出張所『シャレード(映画)』
by chikurinken | 2013-12-20 08:16 | 映画

『汚染水 〜福島第一原発 危機の真相〜』(ドキュメンタリー)

汚染水 〜福島第一原発 危機の真相〜(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

追求することこそが報道機関の責務

b0189364_810469.jpg 過去、NHKスペシャルでは福島第一原発の事故のその後を継続的に放送していて、1視聴者としては非常にありがたいが、この『汚染水』もこれまでの他の番組に劣らず、内容の充実さ、構成の巧みさの2つの点で高く評価できる。
 汚染水流出についてはニュースで何度も報道され、その重大性もわかっているつもりでいるが、具体的にどこからどのように漏れているかピンと来ない上、こういう状況がいつまで続くのか、完全にブロックすることが可能なのか(完全にブロックすることが不可能なのは容易に想像が付くが)なども正直見当が付かない。そのためこの番組で、相当具体的に、しかもCGやモデル(水を使ったモデルが非常にわかりやすかった)を使いながら漏れていると思われる箇所を示し、どういう対策が必要で、現状どうなっているのかが示されていたのは非常に良かった。実際に内部の様子をカメラで捉えた映像もニュースとしての価値が高いし、それに対して適切な解説が加えられていたのも良い。
 結果的に汚染水問題の全体像が示されることになったため、今後、汚染水流出のニュースが出たときに、かなりの程度まで理解できるようになったと思う。こういう番組が作られたのは賞賛に値する。また、今進められているという凍土による土壌カーテン作戦もわかりやすい解説が付いていて、今後の方針が示されていたのも良かった。もっともこの作戦、正直言ってあまり成算はなさそうだが、しかし問題の重大性を考えたらこれは致し方ないところで、これによって原発問題の大変さが逆に強調されることになっている。NHKには、(一部の勢力のように)原発問題をなかったことにすることなく、今後も真摯に追求していってほしいと切に願う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『シリーズ原発危機 第1回(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発事故 100時間の記録(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『調査報告 原発マネー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 (ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『メルトダウン 原子炉"冷却"の死角(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-12-18 08:11 | ドキュメンタリー

『シャレード』(映画)

シャレード(1963年・米)
監督:スタンリー・ドーネン
原作:ピーター・ストーン、マルク・ベーム
脚本:ピーター・ストーン
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:オードリー・ヘプバーン、ケイリー・グラント、ウォルター・マッソー、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディ

ハリウッド映画は結局役者に落ち着く

b0189364_8134681.jpg 恋と笑いとサスペンスを一緒くたにかき回してできあがったようなハリウッド映画。主演はヘプバーンで、相手役はなんと、『昼下りの情事』の相手役を断ったというケイリー・グラント。たしかにこちらはストーリー的に『昼下りの情事』ほど年の差が気にならないが、それでもちょっとね。ちなみに当時ケイリー・グラント59歳。
 離婚を考えている人妻レジ―(ヘプバーン)の夫がある日殺されてしまうところから話が始まる。ハリウッドのサスペンス映画の常道で、例によっていつの間にか妙な事件に巻き込まれてしまい、逃げ回る羽目になるという、そういうストーリー。その後も展開は二転三転して、娯楽作としてはなかなか楽しめる。
 この頃ヘプバーンはすでに33歳で、『ローマの休日』の頃みたいなエレガンスはない。20台の頃は美しさがまばゆかったが、30台になってからの映画ではやけに厚化粧ばかりが目立って美しさは感じられなくなった。あまりの違いに少々痛ましさを感じたりもする。特にこの後の『マイ・フェア・レディ』や『おしゃれ泥棒』ではもう目を覆わんばかり。若いときにあまりに良いイメージが定着してしまうと、女優として立ち回るのが難しくなるという好例である。
 作品のストーリーはなかなか凝っていて面白いが、結局は女優や男優を見せるための娯楽作に落ち着くのがハリウッド映画の常。最後まで十分楽しめるんだが、終わった後はなんとなく物足りない印象がいつまでも続くのだった。
 ヘンリー・マンシーニの有名な音楽と『戦争のはらわた』のジェームズ・コバーンの妙なすごみが見所かな。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ローマの休日(映画)』
竹林軒出張所『麗しのサブリナ(映画)』
竹林軒出張所『昼下りの情事(映画)』
竹林軒出張所『いつも2人で(映画)』
竹林軒出張所『戦争のはらわた(映画)』
by chikurinken | 2013-12-17 08:16 | 映画