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竹林軒出張所

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『ズニ族の謎』(本)

b0189364_7123065.jpgズニ族の謎
ナンシー Y. デーヴィス著、吉田禎吾、白川琢磨訳
ちくま学芸文庫

発想は斬新だがまだ試論段階

 アメリカ大陸にヨーロッパ人が来る以前、アメリカ中西部(ニューメキシコ州あたり)にプエブロ族と呼ばれるアメリカ先住民(インディアン)が住んでいた。彼らはレンガ造りの家に住み独特の集落を形成していたが、他の先住民同様、後にスペイン人に征服されることになる。プエブロ・インディアンとひとくくりに呼ばれることが多い彼らであるが、実は25以上の部族がある。その中に他のプエブロ族と少々異なる特異な文化を持つズニ族という部族がある。そのズニ族のルーツが日本人なんじゃないかとするのがこの本である。
 ズニ族は、相貌、言語体系、習慣、文化など、多くが独特で、それは研究者の間でも謎とされてきたが、著者は、それが日本由来のものであるという仮説を立て、その共通性を論じている。ちなみに著者はアメリカの人類学者。
 まずズニの遺物から考察を進めていき、日本との共通性を見ていく。次にズニの人々と日本人の肉体の形質的な共通性、それから言語の共通性、家族関係の共通性、文化の共通性(ズニにナマハゲのようなものがある。表紙絵参照)、宇宙観の共通性などについて検討していく。言語の共通性ではさまざまな単語レベルでも共通なものを取り上げている(「山」がズニ語で「yala」、「カラス」が「kalashi」など)が、一部、日本人の我々から見れば深読みが過ぎるようなものまである。それについては訳者(同じく人類学者)が訳注で突っ込みを入れている(著者に確認、了承済み)。とは言っても言語的な共通性が見て取れるのは明らかである(特に音韻系)。最終的に、ズニの伝承や遺跡から、14世紀ごろ(およびそれ以前)に日本人の集団が渡ったのではないかと結論付ける。
 もちろんこれだけ共通性を並べてもすぐには結論が出ないのがこういう学の特質で、また、この本自体が学術論文の延長みたいなもので、いずれにしても試論レベルである。非常にユニークな発想だが、書籍としての完成度は低く、読みづらいのも事実。ただし著者の議論に一定の説得力があることも加えておきたい。これまで、日本(およびその他のアジア諸国)からアメリカ大陸に到達した船や物がアメリカ大陸の沿岸部から結構な量出ているらしい。太平洋に海流があって、それが巨大なハイウェイの役割を果たしているのは有名な話で、実際にヨットや筏で太平洋を渡った日本人もいる。古代に日本人が南米に渡っているという説を唱えている歴史家もいる(アメリカ大陸の先住民と日本人のDNAが著しく酷似しているという話も以前聞いたことがある)。決して荒唐無稽とは言えない話で、いずれ時間が証明する事項だと思うが、今後展開するであろうこのような研究のたたき台としてこの論文があると考えることもできる。したがって試論として十分な価値を持つ本と言うことができると思う。とにかく目の付け所が非常に面白い本である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』
竹林軒出張所『日本語の教室(本)』

by chikurinken | 2013-07-31 07:13 |

『男はつらいよ(テレビドラマ版)』(1)、(26)(ドラマ)

男はつらいよ(テレビドラマ版)(1968年・フジテレビ)
演出:小林俊一
脚本:山田洋次
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、森川信、杉山とく子、佐藤蛾次郎、井川比佐志、横内正、津坂匡

b0189364_7174561.jpg寅は蛇に噛まれた

 『男はつらいよ』シリーズが元々テレビ・ドラマだったことは割に有名だと思う。元々は1968年にフジテレビで放送された26回シリーズのドラマである。第1回と最終回(第26回)の映像が奇跡的に残されていたということで数年前にDVD化された(第2回から第25回はないようだ)。今回チャンスがあってこの「幻」のドラマを見ることができた。
 ストーリーや設定はおおむね映画版と同じだが、さくらが長山藍子、おばちゃんが杉山とく子というふうにキャスティングが若干違っている。ストーリーはおそらく映画版の『男はつらいよ』(第1作)と同じではないかと思う。テキヤ稼業の寅次郎が、すでに亡い両親の墓参りのために葛飾柴又の叔父の家を訪ね、そこで十何年も離ればなれになっていた唯一の肉親、さくらに出会うというもの。さくらには縁談があり、このフーテンの兄貴がそれを(結果的に)かき回すことになるという話になる(と思う)。マドンナの美人に惚れてしまって最後に振られるというのもまた同じ。ちなみにマドンナは『若者たち』の佐藤オリエである。
 ストーリーやプロットは非常にしっかりしていて、当時のテレビ・ドラマとしては相当質が高い部類に入る。ただ最終回の後半部分で、寅さんの最期が回想形式で語られるんだが、このシーンがちょっと冴えない。そうそう、「最期」とネタをばらしてしまったが、実はテレビ版では、寅さんは最後にハブに噛まれて死んでしまうのだ。で、番組終了後、そのことでフジテレビに抗議が殺到して、結果的に映画版が作られることになったそうな。ドラマの内容でテレビ局に抗議する暇人が当時からいたんだなと感心するが、裏を返してみればこのドラマ自体、それなりの人気を集めていたということなんだろう。
 なお、渥美清、東野英治郎、佐藤オリエは『渥美清の泣いてたまるか その一言が言えない』(以下のかつてのブログ記事を参照)以来の共演。「3人が連続で共演」というのも珍しいと思うが、この3人に何か特別な関係があるんだろうか。ちなみにこの3人、1969年の映画版の『続・男はつらいよ』でも共演している(こちらは、登場人物の設定がこのテレビ版と同じようだ)。
★★★☆

参考
竹林軒出張所『男はつらいよ 純情篇(映画)』
竹林軒出張所『若者たち(映画)』

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b0189364_7191567.jpg(2005年12月16日のかつてのブログの記事より)
渥美清の泣いてたまるか その一言が言えない(1966年・TBS)
監督:中川晴之助
脚本:橋本忍
出演:渥美清、佐藤オリエ、松本克平、永井智雄、東野英治郎

 1話完結のドラマ、『渥美清の泣いてたまるか』の第23回で、橋本忍が脚本を書いたもの。橋本忍得意の法廷劇。
 元警官のタクシー運転手が、ヤクザに絡まれドスで脅されて、もめているうちに逆に刺して死なせてしまうというストーリー。周囲の警察、検察、弁護士は、皆口々に正当防衛を主張するが、殺意があったことを当人だけが訴える。
 法廷劇でスリリングなところもあるが、最後までなんだかはっきりしないドラマだった。面白いことは面白い。佐藤オリエが若くて可愛い。
★★★☆
by chikurinken | 2013-07-30 07:20 | ドラマ

『男はつらいよ 純情篇』(映画)

男はつらいよ 純情篇(1971年・松竹)
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、宮崎晃
出演:渥美清、倍賞千恵子、若尾文子、森川信、三崎千恵子、前田吟、笠智衆、太宰久雄、佐藤蛾次郎、森繁久弥、宮本信子

プログラム・ピクチャーに堕してしまった空回り映画

b0189364_8324712.jpg 『男はつらいよ』シリーズ第6作で、マドンナは若尾文子。
 『男はつらいよ』シリーズ、特に悪い印象は持っていないが、少なくともこの作品は、舞台喜劇のような、実にとってつけたようなエピソードばかりでストーリーの質は低い。また、例によって展開はワンパターンで、ま、それはそれでいいんだが、あまりに強引にそういう方向に持っていこうとする意図が見えて白けてしまった。
 『男はつらいよ』シリーズはもう少し面白かったような印象があったが、こっちが世間ずれしたせいか、アラばかり見えてほとんど面白味を感じなかった。若尾文子も面白味のない役回りで、少し前の大映映画で見られたような「身持ちの悪さ」がなく、人間味が全然感じられない。なんだかあれやこれやがことごとく空回りしているという印象だけが残った。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『遙かなる山の呼び声(映画)』
竹林軒出張所『家族(映画)』
竹林軒出張所『倍賞千恵子の現場(本)』

by chikurinken | 2013-07-29 08:33 | 映画

『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(本)

b0189364_9151233.jpg私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。
大宮冬洋著
ぱる出版

ユニクロ版『舞踏会の手帖』

 ユニクロと言えば、労働条件についてあちこちで非難されたり、あるいは逆に経営方法が賞賛されたりもしているが、労働者側から見た実像というのはなかなか伝わってこない。ブラック企業などと言われることもあるユニクロだが、実際に店舗に行っても、店員に暗い雰囲気を感じるようなこともない。内部告発の本などがあればまだ理解する術もあるんだろうが……ということでこの本の登場ということになる。
 もっともこの本は内部告発の本ではない。端的に言えば、かつてユニクロ町田店(154番店)で正社員として勤務していた著者が、当時一緒に働いていた同僚を訪ねて、当時の思いやその後の人生について聞き出すというコンセプトの本で、さながらフランスの古典映画『舞踏会の手帖』みたいな趣向である。
 著者によると、当時(2000年)のユニクロ町田店は非常に雰囲気が良く、ダメ社員の著者をも包んでくれるような雰囲気があったという。この町田店はその後(ユニクロ流経営の特徴である)統廃合の憂き目に遭って2002年に閉店になり、当時のスタッフもバラバラになった。他の店舗に移った者もいるが、ほとんどは職を変えていったという。
 本書では当時のスタッフ約10人の他、当時の町田店に通っていた客などもインタビューの対象になっている。彼らの話を通じて当時のこの店の雰囲気がよく伝わってくる上、それぞれのスタッフがどういう思いでいたかも分かってくる。良い職場環境にいると辞めた後でもその時代を懐かしく感じたりするが、この本を読んでいると、そういう感情が読者側にも芽生えてくる。だが、当時の雰囲気を懐かしむという要素だけでなく、ユニクロ式経営の問題点も同時にあぶり出されているのがこの本の特色である。スタッフや職場環境を使い捨てにするような経営方法が本当に良いのか……そういう問いかけを著者は繰り返すが、これはかつて務めていた人間側からのミクロ的な発想と言える。こういった視点は経営側の利益追求の発想からは決して出てこないもので、ユニクロの経営方法を賞賛するような経済マスコミには絶対に伝えられない部分だ。
 と言っても、経営陣を一方的に批判するというようなアプローチでもないのだ。著者は、ユニクロの代表者である柳井正に労働者を疎外するような悪意がないことにも同意している。労働者側から経営者側を見るという比較的冷静な視点が、ユニクロという企業の実像を映し出すことを可能にしているのだ。どんな企業、集団にも言えるが、本当の姿というのは、外部からの非難や賞賛だけでは捉えきれないもので、内部に身を置いた者でなければわからない現実というものがある。それが見事に映し出されているのがこの本であり、それがこの本の価値を決定的にしている。
 著者による問題提示、そして良い職場を懐かしむ感情など、どれもさりげなく伝わってくるのは、著者の人柄ゆえか。またインタビュー中心であるため、大変読みやすい本になっている。ユニクロに行って、スタッフ・ウォッチングしてみたくなること必定の好著であった。
★★★☆
by chikurinken | 2013-07-27 09:15 |

『模倣品社会 〜命を脅かすコピー商品〜』(ドキュメンタリー)

模倣品社会 〜命を脅かすコピー商品〜(2013年・加Tell Tale Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

「安ければそれでいい」が今問われる

b0189364_7594571.jpg コピー商品の問題点を真摯に追求するドキュメンタリー。コピー商品と言われて連想するのがブランド品であるが、現在ではブランド品のみならずあらゆるもののコピー商品が作られている。そしてその中には、人命に関わるものが数多くあるというのがこのドキュメンタリーのテーマである。
 このドキュメンタリーで取り上げられているケースは、薬、自動車のブレーキ部品、航空機の部品などで、どれも人面に関わるものである。こういったもののコピー品……と言っても機能的には同等の役割を果たさないので、模造品と言った方が正しいかも知れないが、外見だけ同じで中身が違うものが堂々と流通していて、しかも業界の方にも、過度な経費削減でそれを流通させる仕組みがあるというのだ。
 たとえば薬は、効かないだけでなく毒物が混ざっているものなどもあり、当然それが原因で毎年死者が出ているらしい。この番組で紹介されていた統計によると、パナマで300人、インドで100人、中国に至っては何と毎年30万人がこういう薬で命を落としているという。こういう薬はネット通販で簡単に入手できるため、ますます流通しやすくなっているというわけ。まるで『第三の男』の世界である。
 また航空機の部品も、使い古しのものに手を入れて流通させる悪徳業者がいて、そういう粗悪模造部品が定期点検の際に航空機や軍用機に使われるケースがあるらしい。過去、不良部品が大事故につながったこともあり、こうなるとコピー商品もシャレで済まないレベルである。
 先日も、とある中国人客室乗務員がiPhone用充電器のコピー商品が原因で感電死したという事件が中国で発生したが、あれがまさにこの番組で取り上げられた危険なケースの一例である。普通に考えれば家庭用電源で感電死するなどとは考えにくいが、利益のために安全性を度外視して作られた製品であれば、そういうこともありうるということなのだ。
 値段ばかり追求する風潮がコピー商品をはびこらせているのは間違いないが、消費者の側も今一度消費行動について反省すべきときが来ている。安かろう悪かろうの商品は結局のところ高くつくということに、消費者もそろそろ気付かなければならない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『低価格時代の深層(ドキュメンタリー)』
竹林軒『百円ショップを巡りながらこう考えた』
by chikurinken | 2013-07-26 08:00 | ドキュメンタリー

『石ノ森章太郎WORLD 青年萬画編』(本)

b0189364_8343498.jpg石ノ森章太郎WORLD 青年萬画編
石ノ森章太郎著、すがやみつる監修
ゴマブックス

ストレスがたまる本

 石ノ森章太郎の青年向けマンガを集めた本。収録されているのは、『佐武と市捕物控』、『HOTEL』、『おみやさん』、『さんだらぼっち』、『化粧師』、『風のように…』などで、ほとんどは「石森」時代の作品である。収められているのはどれも1本読み切り作品で、数多く集めてはいるんだが、中には一部だけ(途中から、途中まで)しか入っていないものもあり、編集者の良識を疑ってしまう。ラインアップは青年向けということでエロ的な要素もところどころ入れられている。著者のサービス精神(または商業主義的志向)の現れとも言える。
 今回この本を読んだのは『風のように…』が目的だった。先日NHK-BSで放送された『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記』(竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』参照)で、手塚治虫が石森章太郎の『ジュン』を(おそらく嫉妬のため)批判し、その後石森のところに謝りに行ったというエピソードが紹介されていたが、そのエピソードがこの『風のように…』で描かれているというので、読んでみたくなって図書館で借りたというわけ。ところが、この『風のように…』も途中から収録されていて、肝心のシーン(手塚が石森の仕事場に謝りに行く場面)が載っていなかった。
 『佐武と市捕物控』などは、『ジュン』で試みた実験的な手法を多数取り入れているのがわかり、それはそれで面白い要素は多かったが、一部だけ収録してもOKとする編集方針にはやはり反感を感じる。石森作品についてはどれもデキは割と良いが、ストーリーがどこか予定調和的であまりに単純な点が好きになれなかった(絵はうまいと思うが)。テレビシリーズ化されている『おみやさん』が石森作品だというのは今回初めて知った。
 なかなか読めない石森作品も収録されていてその点では評価できるが、それにしても一部収録はないだろと思う。いずれにしてもストレスがたまる本である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-07-24 08:34 |

手塚・石森アニメ/特撮ドラマ回顧

 手塚治虫、石森章太郎といえば、我々世代にとっては非常に愛着のある存在。かれらのマンガはもちろん、かれらが原作のアニメも同時代の子どもとして折に触れて接触してきている。昨日も紹介したが(竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』参照)、その手塚治虫、石森章太郎の特集が今月NHK-BSで組まれていて、彼らが原作のアニメ/特撮ドラマも大量に放送された(他にかれらをモデルにしたドキュメンタリードラマも放送)。
 アニメ/特撮ドラマはどれも初回と最終回をセットで放送するというもので、放送されたアニメ/特撮ドラマのラインアップは、手塚治虫作品が『マグマ大使』、『鉄腕アトム(アニメ第1作)』、『ブラック・ジャック』、『ビッグX』、『ミクロイドS』、『ジャングル大帝』、『リボンの騎士』。石森章太郎作品が『仮面ライダー』、『がんばれ!! ロボコン』、『変身忍者 嵐』、『さるとびエッちゃん』、『人造人間キカイダー』、『サイボーグ009(アニメ第1作)』、『秘密戦隊ゴレンジャー』というもの。
 同時代で見たものもあるが、『ロボコン』や『ゴレンジャー』は初放送時すでにこっちもそこそこ年長になっていたため、面白いと感じたことはない。大体このころの石森章太郎は、子ども心に商業主義的な匂いがして、しかも内容自体ちょっとお粗末だったこともあってあまり思い入れはない。しかもその後、『マンガ日本経済入門』を出すに至って、いかにもコビコビの商業主義というイメージを持ってしまったため、手塚治虫と違って、石森氏に対してはあまり良い印象はない。それに『マンガ日本経済入門』の頃、名前を石森から石ノ森に改名したのもなんだか良い気分はしなかった。そのため、石ノ森章太郎という呼び方はいまだに違和感がある。僕の中では石ノ森章太郎は「石森章太郎」ではないのだ。
b0189364_7445814.jpg さて、放送された番組だが、初回と最終回をセットにするというのはなかなか面白い企画で、その作品を俯瞰するにはもってこいと言えるかもしれない。『マグマ大使』は最終回を見るのは40年ぶりくらいでなかなか新鮮だったんだが、正直言って設定もいい加減だし映像が実にチャチな感じがした。『マグマ大使』は、初放送時に見たときは、もうとにかくゴアが怖くて、アニメを混ぜた演出や、マグマ大使の頭の位置からの俯瞰撮影、ロケットからマグマ大使に変身する特撮シーンなんかも非常に斬新さを感じたが、怪獣とヒーローの格闘シーンについては、今見るとやはり円谷プロに一日の長があると見た。それにマグマ大使の着ぐるみがボロボロだったのももの悲しさがある。
b0189364_7453159.jpg 『変身忍者 嵐』と『人造人間キカイダー』についても設定のいい加減さとチャチさを感じた。当時の特撮モノは全体的にこういう水準だったのかも知れない。『変身忍者 嵐』は、小学生だった当時は「面白い!」と思って見ていたんだが、今見るととてもご都合主義的で、しかもディテールがしっかり描かれていないので、大人が見るにはちょっと苦しい。「素敵なラブリーボーイ」の林寛子が子役で出ていたのは当時まったく知らなかったので、今回ちょっとした驚きだった。そう言えば林寛子が歌手で出てきたときどこかで見た顔だと思ったような記憶はある。それから『仮面ライダー』で地獄大使を演じた潮健児が、おっちょこちょいのイタチ小僧として登場したのも新鮮な驚きだった。他にも『仮面の忍者赤影』の白影、牧冬吉が『赤影』と同じような役回りで出てきたりするので、キャスティングは今見ると非常に面白い。
 『ミクロイドS』も今回が35年ぶりぐらいで、当時も感じていたが、作りが非常に雑である。セル数が非常に少なく絵があまり動かない上、プロットもいい加減で、それに絵だって原作の絵と全然違うし、悪いアニメ化の実例みたいな作品だった。『ゴレンジャー』も『ロボコン』もずさん。やはり当時子ども向け番組が非常に多かったせいか、「質より量」とか「こんなもんでよかろう」というような風潮がそれぞれの放送局にあったのかも知れない。
b0189364_7522079.jpg 例外と言えるのが『ジャングル大帝』で、冒頭のタイトルバックの表現は手がかかっていてしかも芸術性が高い。しかも音楽は冨田勲と来ている。虫プロ作品であることから、手塚治虫が関わっていたのかしらんが、今の水準から見ても非常にレベルは高い。今回はタイトルしか見ていないので、内容はどうだかわからないが、タイトルだけで非常に感心したので、ここに記しておこうと思う。
 いずれにしてもこういう企画はなかなか楽しいもので、手塚、石森作品以外にもこれからどんどん放送していってほしいと思う。次はスポ根ものあたりになるのかなと勝手に思ったりもしている。『タイガーマスク』の最終回はすごかったけど、NHKでは放送できないかな……などと一方的に考えたりする。やはり60〜70年代のアニメ、特撮ドラマは我々世代の琴線に触れてくるものなんである。

参考:
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-07-23 07:52 | 放送

『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記』(ドキュメンタリー)

手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(2013年・NHK)
NHK-BSプレミアム

「浦沢氏ダメだよ」と言われたかった……浦沢直樹談

b0189364_9223248.jpg 少し前にNHK-BSで手塚治虫と石ノ森(石森)章太郎を特集していた。東京都現代美術館の展覧会とタイアップした企画のようだ。放送されたものは結構ボリュームがあり、原作のアニメ、特撮ドラマをはじめとして、ドキュメンタリードラマ、それからこのドキュメンタリーとなかなか多彩。で、このドキュメンタリー(というよりバラエティ)なんだが、基本線は爆笑問題、浦沢直樹、秋元康、吉木りさの対談形式で、そこにさまざまなエピソードを投入していくという手法である。それぞれのエピソードはどれも面白い情報で意外に楽しめたのである。前に放送された2本のドキュメンタリードラマは、爆笑問題の2人が、手塚、石ノ森を演じるという趣向で(手塚治虫編「神様 最後の一日」と石ノ森章太郎編「神様への鎮魂歌」)、これについてはどちらも取るに足りないもので、そのおかげもあってこの番組が余計に引き立ったわけだ。中でも、マンガ家の浦沢直樹の話が、マンガ家としての視点、ファンとしての視点の両方を交えて披露されていて、深さもあり、非常に興味深い内容だった。
b0189364_9231370.jpg 構成は5章立てになっていて(第1章「時代が生んだヒーロー対決」、第2章「ロボットからサイボーグへ」、第3章「アニメの誕生とコンテンツビジネス」、第4章「神が王を批判した理由」、第5章「神と王のニッポン」)それぞれの章単位でさまざまなテーマについて語られていく。第1章では、石森の『仮面ライダー』や戦隊ものがテレビ局の発注の下企画されたという話がちょっと新鮮。また第3章では、手塚治虫の虫プロで作られた日本最初の国産アニメ『鉄腕アトム』の秘話が披露される(たとえば低予算のため、あまり絵を動かさないように工夫したとか、同じ絵を使い回して制作費を節約したとか、その後オモチャメーカーとタイアップしてマーチャンダイズビジネスを日本で初めて開始したとか)。第4章では、石森の『ジュン』を手塚が(おそらく嫉妬のため)批判し、その後石森のところに謝りに行ったエピソードが紹介され、これも知らなかったので目新しさがあった。
 正直、この番組については、当初あまり期待していなかったんだが、蓋を開けてみるといろいろ見所があって、結構楽しめたのだった。ハリモトではないが、「アッパレ!」をあげたいところ。
★★★☆
by chikurinken | 2013-07-22 09:23 | ドキュメンタリー

『日曜劇場 うちのホンカン』(ドラマ)

b0189364_954487.jpg日曜劇場 うちのホンカン
ホンカンがんばる うちのホンカン-PART II-
嘆きのホンカン うちのホンカン-PART III-
(1975〜76年・北海道放送)
演出:守分寿男、小西康雄
脚本:倉本聰
出演:大滝秀治、八千草薫、仁科明子、蟹江敬三、藤岡弘、室田日出男、中条静夫

大滝秀治が主演の珍しいドラマ

 これも、名バイプレイヤー、大滝秀治が主演という珍しいドラマ。TBS系列の「東芝日曜劇場」で『うちのホンカン』が1975年に放送され、好評だったためその後パート6まで作られた。1〜3、4〜6がそれぞれ2枚のDVDで発売されており、今回見たのは1〜3である。ちなみにシナリオは倉本聰。
 まず、パート1に相当する『うちのホンカン』。これが好評で続編が作られたわけだが、今回見た3本の中でできは一番悪いと感じた。倉本聰のシナリオは、はまってしまえばとても良いんだが、時折外してしまうことがあって、このパート1がまさにそう。もうあちこちやり過ぎで、それが雰囲気をぶちこわしてしまう。蟹江敬三と藤岡弘の喧嘩のシーンからウソっぽく、その後に続く大滝秀治を交えた駐在所での会話ももう低レベルである。『昨日、悲別で』みたいなノリで、ギャグをやれば滑るし、必要以上に大げさで、気恥ずかしくてちょっと見ていられない。設定自体はなかなか面白いし、「東芝日曜劇場」としては内容が濃い印象だが、正直なところあまりどうと言うことはないドラマだった。
 ただパート2の『ホンカンがんばる』とパート3の『嘆きのホンカン』は、倉本聰の良い部分が出たドラマで、しかもオヤジギャグみたいな程度の低い笑いもなく、まさによくはまったケース。この2本は『北の国から』とか『ライスカレー』みたいに全編非常に締まって、しかも内容も濃く、大変質の高いドラマになっていた。ストーリーもよくできていて、『嘆きのホンカン』に至っては昨日の『オールドフレンド』同様「花嫁の父」のモチーフだが、とても良い質感が出ていた。花嫁の恋人役の室田日出男も良い味が出ていた。大滝秀治、八千草薫、室田日出男は倉本聰のドラマの常連であるが、3人とも非常に好演。倉本聰がよく起用するのもわかる。八千草薫がときどき発していた「だよ」言葉がとってもキュートで良い。当時45歳だが若々しく魅力的。
第23回日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞(『うちのホンカン』)
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『冬のホンカン うちのホンカン-PART IV(ドラマ)』
竹林軒出張所『オールドフレンド(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『昨日、悲別で(1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様II(1)〜(24)(ドラマ)』
by chikurinken | 2013-07-20 09:56 | ドラマ

『オールドフレンド』(ドラマ)

オールドフレンド(1991年・NHK)
演出:永野昭
脚本:黒土三男
出演:大滝秀治、黒木瞳、松村達雄、永島敏行、浜村純、南利明、丘さとみ、今福将雄、奥村公延、桜金造、渡嘉敷勝男

セリフがまずいとドラマもまずい

b0189364_7491187.jpg 先頃死去した名バイプレイヤー、大滝秀治が主演という珍しいドラマ。昨年亡くなったときに追悼番組としてNHKアーカイブスで放送された。このドラマ自体はまったく知らず、そのときに初めて耳にした。
 ストーリーは、「花嫁の父」のモチーフに高齢化の問題を絡ませて進行する。方々に工夫の跡が見られるが、セリフが良くなく、せっかくうまい俳優を並べているにもかかわらず、セリフのせいでなんだかもうわざとらしさが全編を覆って、正視に堪えない。セリフがまずいドラマは、最初の10分で見るのがイヤになるが、このドラマもまさにそう。しかも途中、小津安二郎の『晩春』めいたセリフまで出てくるし、オマージュのつもりか知らんが、これが目玉のシーンになっているためパクリというそしりも逃れられまい。大滝秀治と松村達雄の絡みなんか、本当だったらものすごいものになっても良いんだが、退屈きわまりなく、少々気持ちの悪いものになっていた。
 見所は、「ハヤシもあるでヨ」の南利明の伊達姿(これが最後のドラマか?)と、まだ若い黒木瞳(といってもすでに31歳)ぐらい。渡嘉敷勝男まで出てくるが、トカちゃんでなければならない役どころだったのかはなはだ疑問。結局、高速道路の料金所で働いている年配の人(主人公の設定)に対して共感を感じるようになったという程度のドラマで終わってしまったのは残念至極であった。
★★☆
by chikurinken | 2013-07-19 07:49 | ドラマ