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竹林軒出張所

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『マリリン・モンロー 最後の告白 前編、後編』(ドキュメンタリー)

マリリン・モンロー 最後の告白 前編後編(2008年・仏Les Films d'Ici)
NHK-BSプレミアム プレミアムアーカイブス

アナザー・サイド・オブ・モンロー

b0189364_1974997.jpg 女優のマリリン・モンローは、死の数年前からラルフ・グリーンソンという精神分析医のカウンセリングを受けていた。だがモンローとグリーンソンの関係は普通の医師と患者の関係を超え、モンローは非常に多くのことをグリーンソンに語っていた。そしてその中の相当量がオープン・リール・テープに録音されていた。
 このドキュメンタリーでは、その残された音源を基に、マリリン・モンローの晩年の様子を明らかにし、彼女がどうして自死を選んだのか、その謎を探ろうとする。ちなみにこのドキュメンタリーには原作があり、ミシェル・シュネデールの『マリリン・モンローの最期を知る男』というのがそれ。
 番組では、マリリン・モンローが孤独感から次第に神経症的になっていき、薬物に逃避する様子が描かれる。女優でありながら、映画に出演すること自体が苦痛で、それを緩和するためにますます薬物にのめり込んでしまう。そんな折に出会ったのがグリーンソン医師で、この医師とのカウンセリングが、彼女にとって新たな救いになる。そうしてこの医師に何もかもを打ち明けていくのだった。ジョー・ディマジオ、アーサー・ミラー、ケネディ大統領兄弟などとの関係もグリーンソンには率直に語られたらしく、それがこのドキュメンタリーでもそのまま明かされていく。驚くことに、晩年はセックス依存症のような傾向も示していたことさえ明かされる。
b0189364_1981245.jpg 全編、単調なナレーションで話が進められ、しかもナレーションの情報量自体が少ないため、納得いかない部分やよくわからない部分もあるが、モンローのさまざまな映像が次々に繰り出されるため、映画ファンにはうれしい。ケネディ大統領の誕生日パーティで「Happy Birthday」を歌う、あの伝説的なエピソードも登場する。またそのときのモンローの(どん底だった)メンタリティも紹介される。
 一般的な「セックス・シンボル」としてのモンロー像と一味違ったモンロー像が紹介されるため、モンローに偏見を持っている人にとっては目からウロコになるかも知れない。なお、このドキュメンタリーは、僕は放送で見たが、DVDも発売されている(『マリリン・モンロー 最後の告白』)。
★★★☆
by chikurinken | 2013-03-30 19:09 | ドキュメンタリー

バイバイ、『終電バイバイ』

ドラマNEO『終電バイバイ』(2)〜(10)(2013年・TBS)
演出:波多野貴文、橋本光二郎、柴田大輔、清水健太
脚本:岩井秀人、平田研也、中澤圭規、清水健太
出演:濱田岳、谷中敦、古山憲太郎、眞島秀和、夏帆、平田満、辻元舞、谷村美月

奇想天外なシナリオがうれしいじゃないか

b0189364_23105848.jpg 前にも書いたが(竹林軒出張所『終電バイバイ(2)〜(4)(ドラマ)』参照)、『終電バイバイ』というドラマ、ちょっと注目していたんだが、先頃最終回を迎えた。回によってはグレードが高いものもあり、特に岩井秀人というライターには、可能性を感じる。今後も注目していきたいと思う。
 このドラマ、前に書いたとおり、各回ごとにシナリオ・ライターと演出家が変わる。スタッフが違うにもかかわらず、終電を乗り過ごした男が主人公という設定は同じで、しかもこれを演じる俳優も一緒(濱田岳)。他のキャストは毎回異なる。ただし1人、語り部みたいな人が出てきて、これは同じキャストが演じる(東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦)。この人の立ち位置が結構独特で、基本は視聴者からしか見えないような立ち位置にいるんだが、キャストと絡んだりすることもある。この辺が「NEO」たるゆえんか。ちょっと斬新ではある。
 先ほども書いたように、回ごとにデキの良さにちらばりがあったが、デキの悪いものというのはなかった。僭越ながら、各回ごとに僕なりの評価をしておこうと思う。あくまでも自分の今後の参照用であって、関係者にどうこう言おうというものではない。あしからず。

  各話   サブタイトル   ラテ欄        脚本   評価
  第1夜  立川駅    深夜の大人の冒険    岩井秀人  ★★☆
  第2夜  秋葉原駅   深夜の大人の冒険    岩井秀人  ★★★★
  第3夜  南千住駅   フレンチな深夜恋    平田研也  ★★★
  第4夜  蒲田駅    潔癖男と地元アイドル  平田研也  ★★★★
  第5夜  片瀬江ノ島駅 深夜の水族館      中澤圭規  ★★☆
  第6夜  六本木駅   深夜の秘密の教室    岩井秀人  ★★★
  第7夜  溝の口駅   深夜の仁義無き戦い   清水健太  ★★★
  第8夜  下北沢駅   下北沢で修学旅行    平田研也  ★★☆
  第9夜  日本橋駅   誰もいない日本橋    岩井秀人  ★★★★
  最終夜  東京駅    東京駅で缶蹴り!    岩井秀人  ★★★☆

b0189364_23112580.jpg ちなみに第1夜は見ていない(後日見ました)。秀逸だったのは、第2夜、第4夜、第9夜。特に第9夜はあまりに奇想天外すぎて、最後の最後まで引っぱりまくられた。脚本家に脱帽の1本であった。第2夜はシナリオにも意外性があったが演出も冴え渡っていた。第4夜は、かなりぶっ飛んだ話であるが、これがうまくまとめられていて、破綻のない演出、脚本が見事であった。
 もう一つだったのは第5夜と第8夜で、第5夜は前も書いたようにつまらない悪ふざけが過ぎ、第8夜は平凡。それでもシリーズ全体で見れば非常に質が高い。近いうちにDVDボックスが出るらしいので、レンタルでもう一度借りて見てみようと思っている。なお、4月からも「ドラマNEO」と名うった番組が続くらしい(タイトルは『放課後グルーヴ』)。

参考:竹林軒出張所『終電バイバイ(2)〜(4)(ドラマ)』
by chikurinken | 2013-03-29 08:34 | ドラマ

『ピアノの詩人ショパンのミステリー』(ドキュメンタリー)

ピアノの詩人ショパンのミステリー(2007年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集

演奏者ならではの「ショパンのミステリー」

b0189364_214117.jpg ピアニスト、仲道郁代が、ショパンの楽曲に迫るドキュメンタリー。
 ショパンの楽譜には、ペダリングの指示や指使いの指示が細かく書かれているが、その指定位置に違和感を感じていたという仲道郁代。このドキュメンタリーでは、そんな彼女が、ショパンの故国、ポーランドやフランスを訪れ、その違和感の源泉を探る。
 ポーランドでは、生まれ育った町、ワルシャワとショパンの生家を訪れ、ショパンの足跡に触れる。このあたりは「いかにも」な紀行番組風である。
 ショパンは、21歳でパリに赴き、その後死ぬまで二度と故国に戻ることはなかった。そこで、次に訪れたのはフランス。ジョルジュ・サンドと過ごしたノアンという町を訪れ、そこで、ショパンが生きた時代に作られたというピアノに触れる。
 ちなみにピアノという楽器は、古典派の時代からたびたび改良が加えられ、現代のピアノとベートーヴェンの時代、あるいはショパンの時代のピアノでは大きく異なる。音の大きさも違えば響きも違う。この古いピアノで、ショパンの曲をいくつか実際に弾いてみて、仲道さん、感じるところがあった。つまり、ショパンのペダリングや指使いの指示に、現代ピアノで感じていたような違和感をまったく覚えないというのである。音の鳴り方が違うというのだ。要するに、ショパンの指示は、彼が生きた時代のピアノの音響を活かすためのものであり、現代のピアノの演奏だと、結果的にそれが活かされない。つまりショパンのピアノ曲は、ショパンの時代のピアノで弾いてこそ、本当の味がわかるという結論に達したのであった。こうしてショパンのミステリーが一つ解決されることになった……という、そういう番組である。
 この仲道郁代さんであるが、デビューしたての頃はアイドル歌手のような風貌で、ヴィジュアル系クラシック奏者の走りみたいな人だ。実際当時、追っかけなんかもいたらしい(僕も若い頃一度、ライブで彼女の「皇帝」を聴いたことがある)。そのため、どうしてもそういうイメージが伴うんだが、この番組でショパンのミステリーを追求する姿は、研究者のようでもあり、探究の意欲がひしひしと伝わってきた。
b0189364_224747.jpg 今回の例に限らず、古楽器での演奏というのは、ここ40年ほど活発に行われていて、今や古楽器演奏は珍しいものではなくなっている。ただ、それでも古いピアノ(ピアノフォルテ)で演奏した例は比較的少ないんじゃないかと思う。かつて、古楽器演奏の大家、クリストファー・ホグウッドが、ベートーヴェンの時代のピアノフォルテを使ってピアノ協奏曲全集を出したことがある。しかも、ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲が作られた時代にピアノが大きく進化(変貌)していたことを反映して、楽曲ごとに使用するピアノを、制作年にあわせて変えるという念の入れようであった。僕はベートーヴェンのピアノ協奏曲と言えば、ホグウッドのこの盤を聴くんだが、世間ではあまり評判が高くなかったようで、永らく絶版中である(輸入盤はある。『Piano Concertos & Sonatas』参照)。それはともかく、ピアノ独奏についても、是非、作曲家と同時代のピアノで演奏するという企画を増やしてほしいと思う。このドキュメンタリーでこういう結論が出たわけだから、それなりの必然性はあると思うんだな。是非、仲道郁代さんにそういうアルバムを出してほしいものだ。そういうことを感じたドキュメンタリーだった。
★★★☆

追記:「仲道郁代さんにそういうアルバムを出してほしいものだ」と書いたが、調べてみたらすでに出てました。協奏曲だが。『ショパン:ピアノ協奏曲第1番、第2番』というアルバムがそれ。ピアノだけでなく、オーケストラの方も古楽器なんだと。いずれ近いうちに聴いてみたいと思う。

参考:
竹林軒出張所『チョピンとは俺のことかとショパン言い』
竹林軒出張所『ホグウッドのモーツァルト』
竹林軒出張所『ショパン 愛と哀しみの旋律(映画)』
竹林軒出張所『別れの曲(映画)』
by chikurinken | 2013-03-27 08:50 | ドキュメンタリー

『テレビが映したスポーツ60年 第3回』(ドキュメンタリー)

テレビが映したスポーツ60年 第3回「高度経済成長とヒーローたち」(2013年・NHK)
NHK-BS1

万博世代のおもちゃ箱…的番組

b0189364_8323523.jpg テレビ放送が始まって今年で60周年ということで、NHKでは記念番組を繰り返し放送している。この番組シリーズ『テレビが映したスポーツ60年』もその一環である(ここではドキュメンタリー扱いしているが、ドキュメンタリーというよりバラエティ番組に近い)。今回の放送が第3回で、それまでの2回は力道山と大鵬を扱ったもの。大鵬の回も見たがなかなか面白かった。
 さて、第3回は「高度経済成長とヒーローたち」ということで、1970年前後のスポーツをいくつか取り上げている。個人的には一番琴線に触れる時代である。取り上げられたのは、キックボクシングの沢村忠、ローラーゲームの佐々木ヨーコ、ボウリングの中山律子、メキシコ五輪のときのサッカー日本代表、ミュンヘン五輪のときのバレーボール日本代表、体操の塚原光男、そして競馬のハイセイコーである。
 どの映像も今となっては結構貴重で、特にローラーゲームの映像はなかなか見られないんじゃないかと思う(映像は家庭用ホーム・ビデオで撮ったようなかなり乱れたものだった。ちなみに当時まだホーム・ビデオは普及していなかった)。子供のとき、毎週土曜の午後に放送されていた(僕の田舎ではこの時間帯だった)『日米対抗ローラーゲーム』を友達と一緒に毎回見ていたことを思いだした。なつかしー。
 沢村忠の映像も結構貴重なんだろうが、なんせ少し前にDVDで見たものと同じ映像だったので、懐かしさはあまりない(竹林軒出張所『買った、見た、ふるえた……キックの鬼 最終章』参照)。しかしあのDVDの中ではおそらく内容的にベストバウトと言える試合が放送されていたので、この番組の製作者、なかなか見識が高い。興味のある方は是非、この番組の再放送をご覧いただきたい(再放送があるかどうかわからないが)。
 メキシコ五輪のサッカー日本代表の箇所は、以前もNHKの別の番組で特集が組まれていて、ほとんどがその焼き直しだった。そのためこれも個人的には目新しさがなかった。
 個人的に一番印象に残ったのがバレーボール日本代表である。アニメの『ミュンヘンへの道』で取り上げられた題材だが、アニメはリアルタイムでほとんど見ていないし、その後も僕の周辺で再放送されていないので、あのチームの詳細をずっと知らないままだった。クイック攻撃を始めたのもこのチームだったという説明が入っていた(本当かどうかは知らない)が、実際の試合のクイック攻撃の映像もふんだんに出て、しかも練習風景なんかも紹介されていた(『ミュンヘンへの道』でちょっとだけ見たことのあるような映像)。
 また塚原光男の「月面宙返り」も何がすごいのか40年間わからないままだったが、この番組ではじめて納得した。ひねりが入っているのがツボなんだと。
 取り上げられた題材はどれも魅力的で、そのため50分の番組が短く感じられた。必要以上に感動を強調するようなこともなく、映像を淡々と流す手法も気に入った。また次もよろしく頼む(→NHK)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『買った、見た、ふるえた……キックの鬼 最終章』
竹林軒出張所『昭和ちびっこ広告手帳(本)』
竹林軒出張所『昭和子どもブーム(本)』
竹林軒出張所『ぼくらの60〜70年代宝箱(本)』
by chikurinken | 2013-03-26 08:41 | ドキュメンタリー

『チャーリーとチョコレート工場』(映画)

b0189364_20511282.jpgチャーリーとチョコレート工場(2005年・米英)
監督:ティム・バートン
原作:ロアルド・ダール
脚本:ジョン・オーガスト
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、デヴィッド・ケリー、ディープ・ロイ

遊園地のような映画

 『チョコレート工場の秘密』という児童書が原作のハリウッド映画。映画化は二度目(だそうで)。
 ハリウッド映画らしくストーリーはきわめて単純。「夢のある」映像と展開で、全編さながら遊園地のようである。また、ものすごくわかりやすい勧善懲悪的な展開もハリウッド映画らしい。基本はやはり子ども向けであり、子どもに向けたメッセージも盛り込まれている。
 映像は奇抜で、美しいかどうかはともかく、独特の世界が繰り広げられる。ティム・バートンらしくグロな表現も多く、僕などは少し辟易してしまった。好き嫌いで言うとあまり好きなタイプの映画ではないが、「独特」であることは否定できない。こういう映画があるというのも結構なんじゃないでしょうか。
★★★
by chikurinken | 2013-03-25 08:49 | 映画

『マダムと女房』(映画)

b0189364_8493241.jpgマダムと女房(1931年・松竹)
監督:五所平之助
原作:北村小松
脚色:北村小松
出演:渡辺篤、田中絹代、伊達里子、帝国ジャズバンド

この映画のどこを楽しめというのか

 日本初の本格的トーキー映画ということで今に名前が残っている映画。
 初めての国産トーキーということで音の聞きとりにくさはまあ致し方ないとしても、ストーリーをはじめ、脚本、演出と何一つ良い点がない映画である。冒頭のシーンなんかまったく意味のないシーンだし、スラップスティック・コメディのタッチにしてはいるがまったく笑えない。逆に当時の観客はこんなシーンで笑ったのだろうかと思ったりした。古い映画だからという見方は正しくない。この時代には、ドイツやアメリカでは今見てもまったく遜色のない映画が作られていたわけだし(このブログでもたびたび紹介している)、国産映画でも、小津安二郎の『生れてはみたけれど』がこの頃の映画だ。決して時代的なものではないと思う。あくまでこの映画が持つ特質と言える。
 映画を見るときはどこか一つは評価すべきポイントがあるものだが、この映画に限っては見所がほとんどなかった。Amazonのレビューで高い評価が付いているが、まったく理解に苦しむところである。「歴史的な作品を見た」という以外、まったく何も得るところがなかった。間違ってもDVDを買ったりしないように。


参考:
竹林軒出張所『煙突の見える場所(映画)』
竹林軒出張所『五重搭(映画)』
by chikurinken | 2013-03-23 08:50 | 映画

『ロボット革命 人間を超えられるか』(ドキュメンタリー)

b0189364_815988.jpgロボット革命 人間を超えられるか
(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

日本人はロボットが好き♡
世界のロボット開発の最前線


 世界の人間型ロボット(ヒューマノイド)開発の現状を追うドキュメンタリー。
 日本では、ホンダのアシモを始め、ヒューマノイドの開発があちこちで進んでいたのはご存知の通りだが、他の国でヒューマノイドの開発に熱が入り始めたのは実は最近だという。なんでもきっかけになったのは2011年の福島第一原発事故だったらしい。人間が近づけない場所でもロボットならばアクセス可能というわけで、こういう類の事故処理でのヒューマノイドの重要性が、この事故を契機にあらためて認識されたということなのだ。結果的に今まであまり本腰を入れていなかったアメリカでもヒューマノイドの開発が進み、今や二足歩行は当たり前、段差をあがったり匍匐前進したりと、技術面ではかなりのレベルまで上がっている。
 一方で、ロボット技術で世界をリードしているロボット大国、日本では、一段と実用性を高めたアシモや、製造工場に実際に配備されてそれまで人間が行っていたような作業を行っている産業用ヒューマノイドまですでに登場している。このロボット、人間と同じようなラインに入っているだけでなく、ラジオ体操も他の従業員と一緒に同じようにやってのけるという徹底ぶりで、いかにも日本人の仕事という細かさである。
 アメリカの国防省では、世界中のロボット技術を共有して、開発を一気に進めようというプロジェクトが始まっていて、世界中の多くの研究施設、企業がこれに参加している。ちなみにホンダはこれに参加しておらず(軍事技術への転用を危惧しているということらしい)、相変わらず独自の方法で研究を進めている。同時に東京電力と協力しながら、福島原発用の事故処理ロボットの開発にも力を入れているということだ。
 番組では、こういう具合に世界のロボット研究の最前線が紹介されていくわけだが、NHKらしい緻密な取材とうまい構成のためにエキサイティングなドキュメンタリーに仕上がっていた。それにしてもアシモの進化には驚かされた。これがこのドキュメンタリーの一番の目玉だったかも知れない。
★★★☆
by chikurinken | 2013-03-22 08:03 | ドキュメンタリー

『ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす』(本)

b0189364_9204128.jpgご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす
佐藤眞一著
光文社新書

正しい対応は理解から始まる

 老人の奇妙な行動について心理学的、行動学的に検証した本。著者は老年行動学の専門家らしい。そんな学問分野があるのかと思うが、心理学の1分野と考えて差し支えないのではないかと思う。
 要約すると、老人は一般的に非常に楽観的で、自分の年齢を実際よりかなり若く見ているということが一つ。同様に自分の能力を過剰に信じる(自己評価が高い)傾向もあるという。年を取って自動車の運転が危なくなっているにもかかわらず、いつまでもやめようとしないのはこういうところから来ているらしい。実際には年を経るに従って、さまざまな身体機能、認知機能が低下していくにもかかわらず、それをそのまま認めようとしないために、自身の認識(メタ認知というらしい)と現実との間にギャップが生じ、それがさまざまなトラブルの原因になる。ときどきやけに怒っている老人を見かけることがあるが、それもこういうところから生じているという。
 その他、会社で高い地位にあった人が定年を迎えてとたんに妻から疎んじられる存在になる現象や、家がゴミ屋敷化してしまう老人などについても考察し、その原因を探求しており、なかなか示唆に富む内容である。
 読んでいて自分に心当たる部分も結構あり(たとえば実年齢よりもずっと若いと思いこんでいるとか、メタ認知が高いとか)反省を迫られる部分も多かった。街で怒り心頭になっている老人みたいにはなりたくないと思っていたが、自分自身の考え方を少し改めなければいずれそうならないとも限らない。ともかくいろいろ考えさせられる本だった。
 なお、内容は平易で字も比較的大きいため、非常に読みやすい。自身の老化を感じている人や、困った老人が周りにいる人などにお奨めである。正しい対応は理解から始まる。
★★★☆
by chikurinken | 2013-03-20 09:21 |

『アッシャー家の末裔』(映画)

b0189364_8454161.jpgアッシャー家の末裔(1928年・仏)
監督:ジャン・エプスタン
原作:エドガー・アラン・ポー
脚本:マルセル・オフュールス
撮影:リュカ
音楽:塚本一実
出演:シャルル・ラミー、ジャン・ドビュクール、マルグリート・ガンス

シュールレアリズム期の傑作

 エドガー・アラン・ポーの同名小説の映画化。傑作の呼び声が高いサイレント映画である。
 映画は、イメージ・ショットを積み重ねモンタージュで効果をあげていく手法で構成されており、いかにもシュールレアリズム全盛期の映画という感じがする。なお、同年にシュールレアリズム映画の『アンダルシアの犬』を撮ったルイス・ブニュエルも、助監督として参加しているという話である(なんでも撮影途中で監督の逆鱗に触れたためクレジットには名前が出ていないらしい)。
 映像はなかなか興味深いが、途中ストーリー展開がわかりにくく、50分の劇映画として見るには少々苦痛である。接写を多用して必要以上に効果を高めようという意図が見えたりもして、今となってはもう少し整理した方が見やすくなるような気がする。ただセットはよくできており、それに不気味な雰囲気を盛り上げる演出も見事である。音楽はリマスターの際に加えられたものだろうが、シェーンベルグ風で効果的だった。
★★★
by chikurinken | 2013-03-19 08:47 | 映画

『原子力“バックエンド”最前線』(ドキュメンタリー)

原子力“バックエンド”最前線 〜イギリスから福島へ〜(2013年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

b0189364_8354779.jpgもう増設は許されない

 原子力発電で核燃料を反応させた後の核廃棄物の処理を「バックエンド」という。日本では相変わらずバックエンドに真っ正面から取り組もうという機運が見えないが、かつての原子力大国、英国ではすでに大がかりにバックエンドに取り組み、事業を本格化させている。その英国での取り組みをレポートし、福島第一原発の処理の参考として考察しようというドキュメンタリー。
 元々英国でもバックエンドの取り組みはなかなか進まなかったらしいが、20年ほど前から本腰を入れるようになったという。英国では1957年にセラフィールドの各処理施設で火災事故が起こり、スリーマイルクラスのレベル5の核物質放出が起こった。だがその後の処理もおざなりで、ほとんど放置された状態が続いていたという。要は、先送りが限界に達したということなんだろう。
 英国でバックエンド処理の実務を担当しているのは原子力廃止措置機関(Nuclear Decommissioning Authority:NDA)という行政機関で、ここがリードして全国20あまりの原発の廃炉作業に取り組んでいる。中には100年以上の計画で廃炉作業を行っているところもあり、福島原発が30〜40年という楽観的な目標を立てているのとは大違いである。いずれにしても大がかりで大変な作業になるのが核処理であり、相当な長期間に渡って廃炉作業に取り組まなければならないのは言うまでもない。結局のところ発電所建設を上まわる膨大な費用と労力が必要になる。しかもそれは次の世代にすべて託されるというんだから、これほどの利己主義はあるまい。
 とは言うものの、他の国に比べてバックエンド作業が比較的順調に進んでいるのが英国である。だがそれでも、最終処分場はいまだに目途が立っていないという。
 この番組では、英国の比較的進んだバックエンド技術が福島にも役立てられるのではないかという主旨だったんだが、むしろ、バックエンド事業の大変さばかりが伝わってきて、えらいものを背負い込んじゃったなという印象が強かった。日本の場合、原発だけで50基以上あるわけで、しかもそれでも増設しようという勢力がある現状で、まったく恐れ入る。せめて廃炉計画を考えてから建設計画を立ててほしいと思う。「おまえら、ふざけるな。このまま放置したら、どんな事態になるかわかっているはずだ。増設は許されない」というような発言があってもおかしくない。
 いずれにしてもバックエンド事業の現状を詳らかにした貴重なドキュメンタリーになっていた。原子力技術協会の反論が楽しみ(竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』参照)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『核のゴミはどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜 (ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原発解体(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-03-18 08:37 | ドキュメンタリー