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竹林軒出張所

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『映像記録 市民が見つめたシリアの1年』(ドキュメンタリー)

映像記録 市民が見つめたシリアの1年(2013年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

またまたクリーンヒット、がんばれWAVEくん

b0189364_8443862.jpg NHK-BSの『ドキュメンタリーWAVE』という番組枠で放送されたドキュメンタリー。
 この『ドキュメンタリーWAVE』、最初の1年ほどはつまらないものが実に多かったが、ここ最近、なかなか特徴のある面白いドキュメンタリーを放送している。特に現地の市民目線で語られるものが多く、『ドキュメンタリーWAVE』の制作陣はそれをこの番組枠の特徴にしようとしているのかも知れない。ニュースで伝えられる海外事情は、どうしてもマクロ的に紹介されることが多くてなかなかピンと来ないものが多いが、民衆の目から見た世界が紹介されると現地の市民の感覚でその事情を把握することができる。ある意味、これこそドキュメンタリーの王道というものである。今後ともこういう指針で続けていけば、なかなか面白い存在になるんじゃないかと思う。ぜひやってくれ。
 で、今回の番組では、日本であまり伝えられることのないシリアの事情が紹介された。アラブの春の流れで、シリアにも民主化の動きが出てきて現政権と対峙しているという状況は日本でもよく伝えられるが、他のアラブ諸国の事例と異なり、現地の映像がほとんど伝わってこない。なんでもアサド政権が情報統制しているらしく、そのために映像の撮影が困難になっているという話。
 この番組で紹介されるのは、現地のシリア人がこっそり撮った映像で、地下ルートで国外に持ち出されたものだという。というわけで非常に貴重な情報源である。紹介された映像は、政府軍の武力行使の様子を映したものが多く、爆弾や発砲などで大勢の人々、子ども達が死傷していく様子がカメラで捉えられている。誰もがアサド政権に対して憤りを感じるようなものばかりである。だが市民もやがて武器を取り、アサド政権に反撃を始める。そしてやがて首都にも迫る勢いになっている現状が映像で映し出されていく。このまま行けば、いずれアサド政権崩壊、アサド大統領の処刑という風に進んでいくことは想像に難くない。もっともその後は、内戦状態にならないとも限らないが、映し出される映像から、そういうことまでもが見えてくるのである。そしてそれこそが映像の持つ力というものである。このように、ドキュメンタリーのポテンシャルを感じることができる番組になっており、この『ドキュメンタリーWAVE』、今後とも注目していきたいと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『スペイン危機を生きる(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-01-30 08:44 | ドキュメンタリー

『球界の野良犬』(本)

b0189364_8584844.jpg球界の野良犬
愛甲猛著
宝島社

愛甲猛の半生記、そして反省記

 元プロ野球選手、愛甲猛の半生記。ある意味、反省記でもある。
 愛甲猛と言えば、投手として甲子園に出場、優勝し、その後ロッテオリオンズ(後に千葉ロッテマリーンズ)、中日ドラゴンズと渡り歩いた野球選手だが、実際のところ、僕には甲子園のイメージしかない。投手としてプロに入りその後打者に転向したという話をこの本で読んで、ああそうだっけと思った程度で、著者には悪いがあまり印象はなかった。ただ、彼が所属していた横浜高校が夏の大会で優勝したシーンは割に鮮明に憶えている。
 あの頃の甲子園と言えば、眉毛のない奴がいたりして(もちろん描いているが)あまり良い印象はなかったが、著者の愛甲も、そういった人間だったんだそうだ。家庭環境が少し複雑だったせいかわからないが、タバコやシンナーもやっていたし、暴走族にも出入りしていたらしい。それでも野球には熱心に打ち込んでいたということで、そのおかげか、地区大会を勝ち抜き、甲子園出場を果たす。そして、先ほど言ったように、甲子園でも優勝を遂げて、その名前は全国にとどろくことになった。
 やがてプロ入りし、投手としては行き詰まるが、チームメイトの落合博満との出会いで打者として開眼し、以後打者としてかなりの成績を残していく。中日への移籍、代打への転向などを経て、やがて引退に至るが、その間も筋肉増強剤に手を出したりしたため、結果的にそれが身体をむしばみ、引退の引き金になった。そういう半生が率直に、(おそらく)愛甲氏自らの筆で語られていく。
 彼の経歴が野球選手として普通なのか特殊なのかはよくわからないが、普通の生活をしている人間から見ると異色であることは確かである。一歩間違えるとやくざな道に入ってしまいそうな、かなりきわどいところを歩いてきたようにも見える。実際、彼の高校時代の友人は覚醒剤に手を染めて転落死したりしている。いずれにしても著者の経歴自体がかなり面白いんで、それなりに読む価値はある。プロ野球界の裏事情みたいなものも垣間見えてくるし。少なくとも落合博満がすごくいい人だというのはわかった。
 いったんは野球界から離れてサラリーマンになった著者だが、やはり野球から離れることはできないと自覚したということで、今また野球に関わる生活をしているらしい。がんばって後進を育ててくれ。
 ちなみに本書には文庫版もある。それにしてもすごい表紙だな。
★★★
by chikurinken | 2013-01-29 08:59 |

『老人漂流社会』(ドキュメンタリー)

老人漂流社会 終の住処はどこに(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

明日は我が身の老年フライデー

b0189364_856035.jpg 一人暮らしの老人が体調を崩して倒れたりすると、病院に入院することになるが、ある程度体調が回復するととたんに病院を追い出される。今はそういうシステムなんだそうだ。だからといって一人暮らしできる人ばかりとは限らない。一人暮らしに復帰できない人は、どこかの介護付き施設に入らなければならないが、手厚い介護が付いた(比較的費用が安い)特別養護老人ホームは、3年先まで予約が埋まっているということですぐには入所できない。そんなときどうするかというと、空きのあるショートステイの施設に一時的に入所することになる。ただこちらも1カ月くらいが上限だそうで、1カ月過ぎればいられなくなる。そして別のショートステイ施設に赴くが、こちらも1カ月すると出ていかなければならなくなる。こうして定住できない「漂流老人」が生まれる。
 更に悲しいのは、こういった人々は、安い年金でなんとかやりくりしている人が多いため、入所にかかる費用を負担できないということである。結局、差額分は生活保護でまかなわれることになるが、国の方針に従って今まで国民年金を掛けてきた普通の人々が生活保護を受けなければならないというのも、本人には忸怩たる思いがあるんじゃないかと察せられる(僕自身は生活保護を受けることにあまりためらいはないが)。こういうのは何もかもシステムの不備が原因で、これから高齢化していくのがわかりきっているのにいまだにちゃんとした福祉対策が打てないでいることがそもそもの要因である。
 このドキュメンタリーではそういう現状をルポルタージュ形式で報告する。国のシステムが悪いなどと特に声高に叫ぶでもなく、さまざまなケース・スタディを淡々と紹介していく語り口は見事である。
 番組の中で専門家と呼ばれる人がいくつか提言をしていたが、ありきたりで大して説得力のあるものではなく、彼らに対して「あなた方もいずれ同じ目に遭うんだよ」などと皮肉な見方をしてしまう自分がいる。もっともこの僕も「明日は我が身」の予備軍の1人ではある。福祉システムも完備できない上、その資金すらいずれ雲散霧消してしまいそうで(竹林軒出張所『日本国債(ドキュメンタリー)』参照)、日本国民の先行きは暗いと言わざるを得ない。
★★★☆

追記:
 タイミングよくというか、「<生活保護>7.3%引き下げ」(毎日新聞ニュース)というニュースが入ってきた。どうも今の政権は、借金は増やしても、必要なところに金を使う意志はないようだ。
by chikurinken | 2013-01-28 09:01 | ドキュメンタリー

『深海の超巨大イカ』(ドキュメンタリー)

b0189364_22345874.jpg深海の超巨大イカ(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

迫力不足の「超巨大イカ」

 今まで永らく生態が謎だったというダイオウイカを、世界で初めて映像で捉えることに成功したそうで、それを研究者とともに追体験するという主旨のドキュメンタリー。NHKとディスカバリー・チャンネルの共同製作で、いかにもディスカバリー・チャンネルというようなネタである。
 登場するイカの研究者たちだが、これまで小笠原で数百回に渡って潜水調査を繰り返してきたということで、新型潜水艇を使ったりクジラの頭に小型カメラを取り付けたりとさまざまな方法でアプローチしている。その模様がこの番組内で紹介されていく。もちろん、さまざまな試行錯誤を繰り返しても、なかなかダイオウイカの姿は捉えられないんだが、番組が進むにつれ徐々に期待が高まり、そしてとうとうダイオウイカの撮影に成功するんである。歓喜する研究者たち。盛り上がる演出。やがて研究者たちは決意を新たに、次なるダイオウイカ映像を目指すのであった……と、こういう展開である。
b0189364_223328.jpg 構成はなかなか巧みで、飽きることもなく、楽しく見ることができたんだが、正直なところ「世界初」というダイオウイカの映像が迫力に欠けるんだな。番組内で「巨大イカ」のエピソードが繰り返し語られ、そこから喚起されるイメージがどうしてもゲゾラ(竹林軒出張所『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』参照)みたいなものや右の図みたいなものになるんだが、それと比べると、実際に出てきた「巨大イカ」はかなりもの足りない。せいぜい大きめのケンサキイカくらいにしか見えない。せめてモンゴウイカかコブシメくらい横幅があればそれなりに迫力もあったんだろうが、想像以上に細身である。このイカが船や潜水艇を捉えようとするような映像はもちろんないしクジラと対決するような映像もなく、そういう種類のガッカリ感はあった。
 そういうわけで、ダイオウイカに特別思い入れがある人や、この映像撮影がどれほど素晴らしい業績か理解している人でないと、研究者たちの歓喜には共感できないんじゃないかと思ったりした。こういう生物ドキュメントはそれなりに面白いが、なんとなくもの足りない印象を持ってしまう僕は、自然に対する愛情が足りないんだろうか?
★★★☆
by chikurinken | 2013-01-26 08:31 | ドキュメンタリー

『愛の風は風力3』(本)

b0189364_20551687.jpg愛の風は風力3 ― えぐれ・獅子舞・チェリーです
大橋照子著
祥伝社ノンブック

決して侮れないアイドル本(風)

 かつて日本短波放送(その後「ラジオたんぱ」→現在「ラジオNIKKEI」)でアイドル的な人気を博した女性アナウンサー、大橋照子の初刊行本。発行は1977年だから、もう35年前ってことになる。
 本のたたずまいはほとんどアイドル本で、グラビアに始まり、エッセイ、ポエム、小説と続く。もっともポエムについてはラジオで『私の書いたポエム』という番組を40年近く前から担当している(今でも存続中)ので、それほど奇異な感じはない。またエッセイについても、当時の日本短波放送での番組について書いたもので、こちらもきわめて自然。小説はちょっと場違いな感じはあるが、内容は自分自身をモデルにしたようなもので、しかもアンブローズ・ビアスの『アウル・クリーク橋の一事件』(竹林軒出張所『ふくろうの河(映画)』参照)を思い出させるような意欲的な作品である。アイドル本(風)だからといって侮れない。
 ただし、大橋照子を知らない人が読んで面白いかどうかは微妙。僕はと言えば、浪人時代、彼女のラジオ番組(『ヤロウどもメロウどもOh!』)を毎回聞いていた(投稿もした)ので、個人的にかなり思い入れがある。この頃の『ヤロウどもメロウどもOh!』(通称『ヤロメロ』)は非常に面白かった。『オールナイトニッポン』とか『パックインミュージック』とかも聞いていたが、そういうのをはるかに凌ぐ面白さだった。といっても、若いリスナーがスタジオに集まって内輪ネタでワイワイやるといった番組で、とりたてて目新しいことはないんだが、やはりパーソナリティを務めていた大橋さん(あえてこう呼ばせてもらう)の魅力だったんだろうと思う。どことなくクラブ活動みたいな雰囲気もあった。
 その大橋さんももう還暦を迎えたし、当時20歳前後だった多くのリスナーもすでに齢50をまわっている。昨年、ヤロメロ35周年記念番組がラジオNIKKEIで放送されたということで、その模様が写真とあわせてネットで公開されているんだが(『大橋照子のヤロメロ35周年記念特別番組』参照)、集まった元リスナーがみんなオヤジなのだ。もう笑ってしまうほど。大橋さんは、もちろんある程度は老けたが、当時とあまり変わらない雰囲気があるんで、オヤジたちに囲まれた様子に余計違和感があった。まあ考えてみれば僕も彼らと同じようなものなんだが、それでもあれだけオヤジばかりが集まると異様と言えば異様だ。でもまあ、公開されている放送音源はなかなか楽しく、当時の空気が甦ってきて懐かしかった。大橋さん、いまでもご活躍だそうで、元1リスナーとしては喜ばしい限りである。この本を買ったのも、ネット上で大橋さんの情報をたまたま見て、懐かしさのあまり著書もついでに買ったといういきさつなんである。もちろん中古本である。実はこの本、昔持っていたんだが、とうに無くしてしまっていた。だから本自体にかなり懐かしさを感じたんである。ただ、今読むと少し気恥ずかしいような部分もあるが、しかし大橋さん、当時からやはり魅力的なお方だなーとあらためて感じた。なお副題の「えぐれ・獅子舞・チェリー」はそれぞれ彼女の当時のニックネームである。
★★★

参考:
『大橋照子のヤロメロ35周年記念特別番組』
竹林軒出張所『ふくろうの河(映画)』
by chikurinken | 2013-01-25 08:53 |

『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』(映画)

昭和残侠伝 唐獅子牡丹(1966年・東映)
監督:佐伯清
脚本:山本英明
音楽:菊池俊輔
出演:高倉健、池部良、三田佳子、津川雅彦、芦田伸介、保積ペペ

シェーンがカムバックしたような西部劇的任侠映画

b0189364_8201770.jpg 東映の任侠映画、『昭和残侠伝』シリーズの第2作目。イイモンがワルモンをやっつけるというストーリーの娯楽作である。
 例によって、ワルモン一味が(殺人を含む)嫌がらせをあれやこれや仕掛けてきて、イイモンは耐え続けるが最終的に堪忍袋の緒が切れて、破滅的行為に出るというストーリーである。そのまま西部劇にできるようなストーリーで、全体的に『シェーン』のような展開である。途中、『無法松』のような味付けも入る。
 北関東の石切場が舞台で、石切場の利権が絡んだ抗争という設定だが、設定はしっかりしていて違和感はない。娯楽映画だからどうのこうの言うことはあまりないんだが、登場人物は割合簡単に死んでいく。凝った演出も一部あるが、どことなく娯楽映画特有の、ゲームのような軽さもある。まあでも、あれこれ言わず愉しみながら見るのが吉なんだろう。
 滅法強い主人公の花田秀次郎を演じるのは高倉健。キャラクターは、その後の健さん映画に共通する真面目で寡黙な男だが、若い頃の高倉健はどこかケンがあって危ない感じがある。秀次郎が心を惹かれる若奥様が三田佳子、秀次郎と共闘する侠気のあるタフガイが池部良と、こちらも「ザ・定番」のキャスティングである。また、秀次郎に絡む子役は、後の青春映画の常連、保積ペペ。子どもなりの棒読み演技でどうってことないが、保積ペペがこんなところに出てきたことに少々意表を突かれた。
★★★

参考:
竹林軒出張所『昭和残侠伝 死んで貰います(映画)』
竹林軒出張所『ザ・ヤクザ(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『網走番外地(映画)』
竹林軒出張所『追悼 高倉健』
by chikurinken | 2013-01-23 08:21 | 映画

『荒野のガンマン』(映画)

荒野のガンマン(1961年・米)
監督:サム・ペキンパー
原作:A. S. フライシュマン
脚本:A. S. フライシュマン
出演:モーリン・オハラ、ブライアン・キース、スティーヴ・コクラン、チル・ウィルス

安直なタイトルの映画はペキンパー作品だった

b0189364_9193957.jpg 昨日に続いてこれもまた復讐譚の西部劇。こういう西部劇が続くと、西部劇には復讐譚しかないのかとつい思ってしまうが、それでもストーリーは割合しっかりしている。
 僕自身は序盤の手がかりの部分を見落としてしまっていたので(主人公のイエローレッグの顔色が変わるシーンがある)、途中までストーリーがどうなっているのか掴めず、頭の中が?だらけだったが、後で見直してみると序盤にしっかり描かれていて自分の見落としであることがわかった。この映画を見ようって人は、序盤からしっかり見ておく方がよろしい。
 さて、この映画、知らない役者ばかりが出てきて(モーリン・オハラの名前は聞いたことがある)、しかもどことなく低予算の匂いがするため、B級映画の類かなと途中で感じるようになった。それに邦題からしてB級である。何だ、『荒野のガンマン』って! どんな西部劇でも「荒野のガンマン」というタイトルをつけることができるってもんだ。何ものをも物語っていないきわめて安直なタイトルである。ちなみに原題は『The Deadly Companions』。「命がけの道連れ」みたいな感じかな。こちらは、内容を反映したなかなか良いタイトルだと思う。
 今回NHK-BSで放送されたものを先入観なしに見たため、B級映画かと思ってしまったんだが、そもそもB級映画が放送されることもあまりないだろう。なにゆえNHKで放送されたのか最後までわからなかったが、最後の最後に「監督:サム・ペキンパー」と出てきて納得したのだった。なんでもペキンパーの監督デビュー作だということだ。と言っても、後のペキンパー作品のようなバイオレンスの要素はまったくない。ごく普通の西部劇である。やはり一番の特徴は、よくできたストーリーということになるんだろう。小説が原作ということでそれも納得というものだ(なんでも作者自身が脚本も書いたんだそうだ)。
★★★

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『ウィンチェスター銃'73(映画)』
竹林軒出張所『リオ・グランデの砦(映画)』
by chikurinken | 2013-01-22 09:20 | 映画

『ウィンチェスター銃'73』(映画)

ウィンチェスター銃'73(1950年・米)
監督:アンソニー・マン
原作:スチュワート N. レイク
脚本:ロバート L. リチャーズ、ボーデン・チェイス
出演:ジェームズ・スチュワート、シェリー・ウィンタース、スティーヴン・マクナリー、チャールズ・ドレイク、ミラード・ミッチェル

b0189364_8201525.jpgサービス精神旺盛な西部劇

 いろいろな要素を詰め込んだ、サービス精神旺盛な西部劇。OK牧場のワイアット・アープまで登場する。
 基本は復讐譚で、主人公のリン(ジェームズ・スチュワート)が父の敵を討つという展開だが、いろいろなエピソードが盛り込まれているため、先が読みにくくなり、多少混乱した印象も残る。だがそれでも十分楽しめるし、終わりに近付くにつれて話が一点に収束していくため、展開自体に違和感はない。またモノクロ映像に非常に味があって、白黒のコントラストが強く、アンセル・アダムスの風景写真を彷彿させるような美しいものだった。
 実はこの映画に興味を持ったのは、井上ひさしの小説『青葉繁れる』の中で話題にされているためで、その中で「ウィンチェスター銃を狂言回しにして云々」という批評が出てくるわけ。そういうこともあって、随分長いこと見てみたいと思っていたのだった。『青葉繁れる』以外ではほとんど聞いたことがないタイトルだったためB級映画の類かと思っていた。B級映画となるとなかなか見る機会もないものだが、今回NHK-BSで放送されたんで、お目にかかることができたという、そういう話である。もっともよくよく調べてみるとDVDも何度も再発されているようで、存外有名な映画なのかも知れない。内容も決してB級とは言えないほどよくできた映画だった。恐れ入りました。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『リオ・グランデの砦(映画)』
竹林軒出張所『荒野のガンマン(映画)』
by chikurinken | 2013-01-21 08:21 | 映画

『時にはいっしょに』(1)〜(11)(ドラマ)

時にはいっしょに(1986年・フジテレビ)
演出:河村雄太郎、舛田明廣
脚本:山田太一
音楽:渡辺博也
出演:伊東ゆかり、細川俊之、南野陽子、角田英介、洞口依子、石田えり、坂上忍、佐藤友美、永瀬正敏、山本學

脚本家の豪腕が光る正統派ホームドラマ

b0189364_9261145.jpg 25年前にフジテレビで放送された、山田太一脚本のドラマ。離婚する夫婦と、それに翻弄される子ども達の生き様を描く。
 山田太一の離婚ネタは他にはあまり知らないが、いずれにしても珍しい。離婚ネタであってもホームドラマには変わりなく、いかにもというようなホームドラマである。だが、そこはそれ、安直に展開するようなものではなく、テーマは結構重い上、例によって視聴者に対しさまざまな問いかけがなされる。といってもドラマ自体は軽めに展開し、見ていて気持ちが滅入るようなこともない。
 夫婦の離婚に伴い、高校生の2人の子どもはそれぞれの親の側に別れていく。こうして家族は分断されるが、さらに2つの小家族内でもそれぞれが自分の世界を持つようになる。他の元家族のことを気にかけながらも自分の生活(恋愛や仕事)にはまっていき、精神的に付いたり離れたりを繰り返しながら、結局は適切な距離感を新しく確立していくという流れだが、非常に自然に推移するため違和感はあまりない。ただ、後半になるとストーリー上偶然に頼っている部分がいくつかあり、多少白けてしまう部分もある。ドラマで偶然が何度も出ると呆れてしまうものなんだが、作者(山田太一)もそれを意識してか、「こういう偶然があるのか?」「同じ町だから出会うこともある」などといったセリフで言い訳している。この辺は作者の良心なのかも知れない。
 キャストは結構異色で、特別うまい人はいないが、セリフによってキャラクターの魅力が吹き込まれているような部分がある。そのためどの登場人物も魅力的である。特に、洞口依子と石田えりが良い。石田えりは同時期の『昨日、悲別で』より格段に良く、シナリオでこんなに違うかと思うほどである。また南野陽子もけなげさが伝わってきて非常に魅力的。永瀬正敏は高校生役である。登場人物や設定が非常に魅力的であるため、かれらのことごとくに親近感を感じる。この頃の山田太一は全盛期と言ってよく、その豪腕ぶりがいかんなく発揮されているように思う。また、主演の4人の家族を自転車に対応させた演出もなかなか心憎い。
 ドラマとしては非の打ち所がないほどのデキだが、やはり偶然に頼っている部分が少し鼻に付く。偶然に頼ったドラマというのも、山田作品では他にあまりないんじゃないかと思う。そういう点でも山田ドラマとして少し異色と言えるかも知れない。
★★★☆

参照:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『昨日、悲別で(1)〜(13)(ドラマ)』
by chikurinken | 2013-01-19 09:27 | ドラマ

『少年』(映画)--大島渚追悼--

b0189364_833421.jpg少年(1969年・ATG、創造社)
監督:大島渚
脚本:田村孟
音楽:林光
出演:渡辺文雄、小山明子、阿部哲夫、木下剛志

 自動車にぶつかって示談金をせしめる当たり屋家族の物語。高知を手始めに全国をめぐるロード・ムービーになっている。
 ストーリーはストレートで、サブプロットはない。なんとなく実録風なのでモデルがあるのかと思ったが、やはり当時話題になった事件が元になっているらしい。定点カメラを多用したりなどややドキュメンタリー・タッチの映像で、基本的にカラー作品だが、途中モノクロ映像になったりもする。効果が上がっているかどうかは微妙なところだが別段違和感はなかった。なんでも低予算映画だそうで、その割にはよく仕上がっていたと印象である。だがそう言われてみれば確かにロケが多かったような気がする。
 他の大島作品みたいな演出上の破綻はないが、全体に密度が薄い。登場人物は、モデルがあったせいか性格描写が割にうまく行われていた。だが、低予算の映画であることを考えるとできの良い部類に入るんではないかと思う。ただ、実際に起こった事件をそのまま映像で再現するという作業は、『愛のコリーダ』にも通じるが、それ自体作り手として「志が低い」ような気もする。そういう意味では、もう少し濃厚さ、つまり独自の味付けとでも言えば良いのか、そういったものを望みたいところである。
★★★

参考:このブログで扱っている大島渚の映像
竹林軒出張所『反骨の砦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本の夜と霧(映画)』
竹林軒出張所『忍者武芸帳(映画)』
by chikurinken | 2013-01-18 08:34 | 映画