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竹林軒出張所

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『ギャレスのコミュニティー合唱団』(ドキュメンタリー)

ギャレスのコミュニティー合唱団 〜再訪 サウスオキシー〜
(2012年・英Twenty Twenty Television)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_8214740.jpg 英国の合唱指揮者、ギャレス・マローンが、さまざまな地域に入っていき、合唱に縁のない人々を集めて合唱団を作りあげるという企画のドキュメンタリー。このドキュメンタリーでは、ロンドン北東部の寂れた街、サウスオキシ―に赴き、少年少女合唱団、地域合唱団、成人合唱グループを作り上げ、最終的にその3つを統合して、ついにはバーバーの『アニュス・デイ』(『弦楽のためのアダージョ』にラテン語の歌詞をつけた歌曲)を歌うまでに成長させる。そして同時に、地域の人々に自信と誇りを与えることに成功する。できすぎたストーリーのハリウッド映画みたいな話であるが、事実を基にしたドキュメンタリーである(少なくともそういうことになっている)。
 この番組の元々の出自は、英国のTwenty Twenty Televisionという製作会社が企画した『The Choir(ザ・クワイア)』という番組で、この番組、シリーズで放送されていたもののようだ。実際、このサウスオキシ―のケースも全4回のシリーズ(「The Choir: Unsung Town」)だったようで、『BS世界のドキュメンタリー』でも2010年2月に4本放送されている(BS世界のドキュメンタリー『響け 町の歌声 第1回 晴れの舞台は商店街』)。今回のドキュメンタリーは、この4回のダイジェスト版みたいなもので、いかにもという足早な構成になっていた。そういう点は少しもの足りなかったが、逆に言えば4回分が濃縮されているという言い方もできる。感動的なエピソードがいろいろ盛り込まれているので、4本構成でも十分充実した内容になっていたんじゃないかと思われる。ちなみにこのシリーズだが、他にもユース・オペラのシリーズ(全3回)、「軍人の妻」合唱団のシリーズ(全3回)も『BS世界のドキュメンタリー』で何度か放送されている。放送時あまり興味が湧かなかったので見なかったが、今回の番組から推測すると愛と感動が盛りだくさんのようだ。次の再放送時は是非見ようと思う。もっとも、再放送されればの話だが。
★★★★

参考
竹林軒出張所『ギャレス・マローンの職場で歌おう!(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2012-11-30 08:22 | ドキュメンタリー

12月放送予定TV番組の告知

b0189364_854935.jpg 例によって、来月のテレビ番組をTVガイドでチェックしていたんだが、来月、昨日紹介した『それぞれの秋』や2週間ほど前に紹介した『3人家族』がCSで再放送されるらしい。最近、木下恵介100周年企画として、木下恵介関連の映画とドラマのDVDが立て続けに発売されているが、おそらくその関連だろうと思う。同じくDVDが発売された木下映画『カルメン故郷に帰る』も放送される(こちらはかなり前から予定されていたもののようだが)。
 そういうわけで、過去このブログで紹介した番組で、来月放送される予定のものをここでピックアップしようという企画の第2弾。例によってBS、CS中心になったのはご愛敬ということで。なお「チャンネル銀河」については試聴経験がないため、どういうチャンネルなのかよく知らない。

ドラマ
それぞれの秋 12月1日16:00より、TBSチャンネル2
参考:竹林軒出張所『それぞれの秋 (1)〜(15)(ドラマ)』

3人家族 12月1日16:00より、チャンネル銀河
参考:竹林軒出張所『3人家族と二人の世界(ドラマ)』

ドキュメンタリー
天海祐希 パリと女と… 魅惑の新オルセー 12月1日14:30、NHK BSプレミアム
参考:竹林軒出張所『天海祐希 パリと女と… 魅惑の新オルセー(ドキュメンタリー)』

映画
にごりえ 12月3日21:00、日本映画専門チャンネル
参考:竹林軒出張所『にごりえ(映画)』

夫婦善哉 12月5日13:00、NHK BSプレミアム
参考:竹林軒出張所『夫婦善哉(映画)』

銀座カンカン娘 12月8日7:00、日本映画専門チャンネル
参考:竹林軒出張所『銀座カンカン娘(映画)』

招かれざる客 12月12日13:00、NHK BSプレミアム
参考:竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』

君よ憤怒の河を渉れ 12月14日13:00、日本映画専門チャンネル
参考:竹林軒出張所『君よ憤怒の河を渉れ(映画)』

カルメン故郷に帰る 12月17日21:00、NHK BSプレミアム
参考:竹林軒出張所『カルメン故郷に帰る(映画)』

望郷 12月19日13:00、NHK BSプレミアム
参考:竹林軒出張所『望郷(映画)』

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
  12月28日23:00、日本映画専門チャンネル
参考:竹林軒出張所『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(映画)』

華麗なる一族 12月31日10:05、日本映画専門チャンネル
参考:竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』

不毛地帯 12月31日14:05、日本映画専門チャンネル
参考:竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』

駅 STATION 12月31日21:05、NHK BSプレミアム
参考:竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』

注:上記は『デジタルTVガイド』からピックアップしたものです。あくまでも予定ですので変更になる可能性は大いにあります。また上に書いた放送予定にも誤りがあるかも知れません。興味のある方はそれぞれでご確認の上、ご覧になってください。
by chikurinken | 2012-11-28 08:56 | 放送

『それぞれの秋』(1)-(15)(ドラマ)

それぞれの秋(1973年・TBS、木下恵介プロダクション)
演出:井下靖央、阿部祐三
脚本:山田太一
出演:小林桂樹、小倉一郎、久我美子、林隆三、高沢順子、火野正平、桃井かおり

b0189364_8352088.jpg 山田太一の出世作と言われているドラマ。いわゆるホームドラマで、例によって平凡な家族の中に起こるちょっとした波乱を描く。
 サラリーマンの父、主婦の母、サラリーマンの兄、高校生の妹、そして主人公という5人家族で、主人公は温和で小心かつ消極的な大学生。小倉一郎が演じる。序盤は、妹が不良グループとつきあっていることに心を痛める兄という構図で、家族がそれぞれ勝手な行動をしバラバラでいることを気に病むという展開。だが、今の感覚から行くと家族観に少し温度差があってなんとなくなじめない。家族同士の関わり合い方というのが今の感覚からすると緊密すぎて、提示された問題意識が問題として感じられない。むしろ、主人公が気に病んでいる「現状」ですら、家族同士のお節介が過ぎるようにすら見えてくる。
 最初の方は特に大きな問題も無く、家族関係だとか妹が関わる不良グループとの関係だとかに主人公が悩むというような展開で、かなりもの足りない印象である。そんなわけで第6話までは数年前に見ていたのだが、そこで飽きて中断していた。今回、機会があって第7話以降を見ることになったが、実はここから少しずつ話が展開していき面白くなっていく。
 父が脳腫瘍を負っていることがわかり、入院、家族崩壊の危機、家族の結束というふうに話が動く。脳腫瘍のために、父の人格が変わって、やけに攻撃的・本能的になっていき、家族は心配するやらオロオロするやらでてんてこ舞いになる。このあたりは実に面白く、序盤の退屈が嘘のよう。で、最終的に家族との適切な距離感みたいなものがぼんやりとわかってくるという話である。いかにも70年代のホームドラマという話で、大きな社会問題が扱われるわけでもなく、扱われるのはただただ家庭内の問題になる。だが、個人レベルで見ればそれが最大の問題になったりもするわけで、見ている側はそれに共感したり反発を覚えたりする。そしてそれこそがホームドラマの存在価値になる。社会派ドラマのような派手さはないが、心情がうまく描けていけば立派な作品になるというのがホームドラマである。後の山田太一作品と比較すると多少もの足りなさは残るが、それでもデキの良いドラマであることには変わりない。
b0189364_8355615.jpg キャストはどれも好演だが、中でも複数の人格を巧みに描き分けた小林桂樹は見事。小心ものの小倉一郎やコミカルな親友の火野正平も存在感抜群であった。また、後にアイドル歌手として活躍する伊藤つかさ(伊藤司)が子役として出ていたのも僕にとっては新発見だった。ちなみにこのドラマ、木下恵介がテレビに進出して製作した『木下恵介劇場』、『木下恵介アワー』の延長線上のドラマであり、製作は木下恵介である。山田太一が起用されたのも、松竹時代に木下恵介の助監督を務めていたためといういきさつがある。音楽も木下映画、木下ドラマの常連、木下忠司。例によって『水戸黄門』を彷彿とさせる音楽が登場するが、同時にいかにもホームドラマという音楽も多い。おそらく木下忠司の音楽が、僕の中のドラマ音楽のスタンダードになっているんではないかと思う。そう考えると木下忠司の影響力というのは大きい。
 今回、木下恵介生誕百年ということで、このドラマもDVDで復刻されるという。何にしてもほとんど「マボロシ」化していたソフトが日の目を見るというのは喜ばしいことだ。
第6回テレビ大賞本賞、第11回ギャラクシー賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『3人家族と二人の世界(ドラマ)』
竹林軒『遙かなり 木下恵介アワー』
竹林軒出張所『藍川由美 喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集(CD)』
竹林軒出張所『ちびっ子レミと名犬カピ(映画)』
by chikurinken | 2012-11-27 08:37 | ドラマ

『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』(本)

b0189364_8472536.jpg親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと
山田太一著
PHP研究所

 シナリオ作家、山田太一の聞き語りを書き起こした育児論。
 読むのは今回が2回目だが、再読でもうなずく部分が多い。前に読んだときも旧ブログで紹介していて、今回もそのときと似たようなことを感じたので前回の記事も後で再録しようと思う。
 基本的には、子どもは自分の個性を発揮しておおむね勝手に成長するので、必要以上に親が介入すべきではないという主張である。一般的に親には自分なりの理想像というものがあって、それに近づけようと子どもにプレッシャーをかけたりするが、子どもはなるようにしかならないし、むしろそういうプレッシャー自体が迷惑な存在になるだけじゃないかと言う。むしろ親の側に対し、そういった理想像を捨て去って、死んだりケガをしたりしないよう見守るくらいがちょうど良いんじゃないかと主張する。もっとも「主張する」と言っても、文章自体の当たりはものすごく柔らかく、控え目な印象を受ける。
 本人によると、この本で展開している主張自体にもあっちこっちで矛盾はあるらしいが、親の子どもに対する思いなんてものはそもそも矛盾だらけなので、そういうところを矛盾なしで厳格に枠にはめ込もうとすること自体に問題があるとまで言う。確かにそう言われてみると、本書の記述に矛盾があること自体、著者の主張と矛盾していないことになる。なかなか奥が深い。
 以前、著者がシナリオを書いた『夏の一族』というドラマで、妙齢の娘(宮沢りえ)が既婚男性とつきあっていて、それで父親(渡哲也)とぶつかるシーンがあって、「子どもじゃないんだから私が何をしようと勝手じゃない。いつまでも私の人生に介入しないで」と激昂して主張する娘に対し、父親が同じく激昂しながらも「生まれたときから一緒にいて成長を見続けているのに、知らぬ存ぜぬで通すことができるわけがない」と返すシーンがあった。通り一遍のドラマと違った蘊蓄のあるセリフが心に響くとても印象的なシーンだったが、この本を読むと、なるほどこの著者が書いたシナリオなんだなと納得する。
 巷にあふれる目先だけの教育論が吹き飛ぶような体験的教育論で、子育てに悩む人も悩んでいない人もこの本を読むと良いよという本であった。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

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以下は以前のブログに書いた記事からの再録(例によって一部手を加えています)。
(2005年12月30日の投稿記事より)

 シナリオ作家、山田太一の聞き語りを書き起こした育児論。
 聞き語りといっても、テープ起こしした原稿に著者自ら手を入れるという念の入れようで、「聞き語りだから安直だ」とばかりは言えない。むしろ著者の人となりが直に伝わってきて、心持ちがよくなる。それになんと言っても読みやすい。
 内容もなかなか斬新で、洞察に富む。たとえば「2、3歳の可愛い時期を一緒に過ごしているんだから、たとえ子供が成長してぐれたりしても、これで元を取ったと思う」など、(子供を育てたことのある)僕には目から鱗であった。言っていることは鋭いのだが、表現が丁寧というか、あるいは腰が引けてるのかも知れないが非常に優しいので、感心することはあってもまったく反発を覚えることがなかった。例を示そうか。
「時には「人生にはなんの意味もないのかもしれない」というような、身も蓋もないような地点に立ち戻って、周囲が押しつけて来る価値観をゆさぶる必要があるのではないか、ということぐらいはいわせて貰ってもいいのではないか、と思います。」
 ずいぶん回りくどい言い方だが、全編がこんな感じで、相手に対する気遣いが感じられるのである。
 個人的には、著者の子供時代の話が興味深かった(第二章「父のこと、家のこと」)。僕は、著者について、育ちが良い人だというイメージをずっと持っていたが、実際はかなり苦労しているらしく、それもあまり苦労だとも思っていないフシもあり、著者に対するイメージが劇的に変わった。シナリオ作家、山田太一の作品に、これまで以上に興味がわいた。
by chikurinken | 2012-11-26 08:48 |

『中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ 第2話』(ドキュメンタリー)

中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ 第2話「ピュアなハートと恋心」
(2012年・NHK)
NHK-BSプレミアム

b0189364_10102810.jpg 『中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ』の第2回目。
 第1話が明治のアメリカ人コレクターを扱っていたのに対して、第2話は現代の外国人コレクターを紹介する。登場するのは白隠のコレクター、ギッター氏、明治工芸のコレクター、ハリリ氏、伊藤若冲のコレクター、プライス氏の3人。あわせてそれぞれの作家の芸術作品も紹介される。
 第1話と同じように、途中ドラマを交えながらの展開で、基本は白隠、明治工芸、若冲の三部構成。構成はしっかりしていて、中谷美紀が実際に京都の骨董屋を訪ねて白隠や若冲の作品を拝見するというドキュメント部分もある。
 なお、明治工芸の正阿弥勝義や伊藤若冲の作品紹介の部分は、かつて同じNHK-BSの番組『極上美の饗宴』で使われたものと一緒で、言ってみれば使い回しである。確かに『極上美の饗宴』で紹介された正阿弥勝義や並河靖之の作品群は目を瞠るばかりで、このとき放送された番組自体非常にグレードが高かったが、使い回しということがわかるとにわかに興が醒める。もちろん初めてこの番組で正阿弥勝義に触れた人にとっては良かったかも知れないが。
 NHK-BSで放送される美術番組は結構多く質の高いのものも割合あるが、そういうものの中では、中谷美紀のこのシリーズ、中庸のできだったかなという気がする。やはり寸劇ドラマの部分はなくても良いんじゃないかと思うんだな。こういうドラマを交えたドキュメンタリーはNHK-BSでときどき放送されていて(たとえば『神の手を持つ絵師 若冲』『にっぽん 微笑みの国の物語』)、おそらくそれぞれのテーマにあまり興味がない人々に対して敷居を下げるという目的でドラマ部分を入れているんだろうが、敷居だけでなくドキュメンタリーの密度も下がる上、質まで下がってしまうように思う。この部分に予算もかなりかかっているんじゃないかという気もする。こういった部分は無い方がよいと思うのは僕だけだろうか。
★★★

参考:
竹林軒出張所『中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ 第1話(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チャンスは一度、イエスかノーか』
by chikurinken | 2012-11-24 10:10 | ドキュメンタリー

『零の発見 ―数学の生い立ち―』(本)

b0189364_9101142.jpg零の発見 ―数学の生い立ち―
吉田洋一著
岩波新書

 1939年に初版が発行され、いまだに売れ続けているという古典的著作。標題となっている「零の発見 ―アラビア数字の由来―」と「直線を切る ―連続の問題―」の2編で構成されている。内容は、数学史にまつわるさまざまな事象をとりとめもなく説明していくというエッセイ風の構成になっていて、どことなく大学教養部の授業のような内容である。ちなみにこういう表現、個人的によく使うんだが、最近では教養課程の授業がない大学が多いらしい。ということは今どきの若者には「大学教養部の授業のような」といってもピンと来ないのかも知れない……。
 閑話休題。率直に感想を言うと、前半の「零の発見」はそれなりに面白く感じたが、「直線を切る」の方は受け付けなかった。問題意識の持ち方も共感できないし、内容もわかりにくい。記述も平易とは言いがたい。話が随分脱線して余計わかりにくくなるし、それに説明も中途半端だったりする。内容がギリシャ数学で多少興味がある分野だが、もう少し何とかならないものかと思ったりした。
 「零の発見」の方は、これに比べるとはるかに読みやすく、問題意識も十分共感できる。何より「0」を導入したことにどれほどの重要性があるかよくわかる。また、それにあわせてアラビア数学とその後のヨーロッパ数学、もちろん「0」を発見したインド数学もだが、各地域の数学的発展の特徴が示されていて、それが歴史とどう関わり合っているかもわかり、通俗的読みものとしてはよくできている。途中から例によってあらぬ方向に脱線してしまい、内容が煩雑になっているが、まあなんとかついていける範囲であった。しかしまあ、全体的に「古典的名著を読んだ」という以外、得るところはあまりなかったような気もする。こちらの数学的知識の欠如のせいかもしれないが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『世にも美しい数学入門(本)』
竹林軒出張所『物語 数学の歴史(本)』
竹林軒出張所『リーマン予想 天才たちの150年の闘い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ポアンカレ予想 100年の格闘(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『博士の愛した数式(映画)』
by chikurinken | 2012-11-23 09:11 |

『リオ・グランデの砦』(映画)

b0189364_8171134.jpgリオ・グランデの砦(1950年・米)
監督:ジョン・フォード
原作:ジェームズ・ワーナー・ベラ
脚本:ジェームズ・ケヴィン・マッギネス
出演:ジョン・ウェイン、モーリン・オハラ、ベン・ジョンソン、クロード・ジャーマン・Jr

 ジョン・フォードの西部劇。今回見るのが2回目のはずだが、内容はまったく憶えていなかった。ちなみに今回見たのも数日前だが、すでに結末がなかなか思い出せないでいる。西部劇はなんとなくそういうところがあって、よほど印象深いもの以外、すっかり忘れてしまう。娯楽作品なので印象が薄いのか、それともストーリーや演出が安直なせいか……。
 この映画も親子関係なんかが盛り込まれていてそういう点は新しいが、基本線は先住民とドンパチやらかすという恒例の展開である。ちなみにタイトルのリオ・グランデというのはアメリカとメキシコの国境を流れる大河で、この映画はその付近の砦に駐屯する騎兵隊の話である。南北戦争の北軍に対する憎悪がセリフの端々に感じられるが、そういう点で保守的傾向の強い観客向けだったのだろうかと思ったりした。敵の人格も一切鑑みないし、一部の主役クラスの人以外、まったく人格が感じられないような演出は、例によってご都合主義的にも映る。西部劇なんだからアクションを楽しんだら良かろうという見方もあると思うが、やはりどうしてもそういう部分が引っかかってしまう。ちなみにアクションについては、ジョン・フォードらしく大変迫力があった。『駅馬車』を彷彿とさせるようなシーンもあった。もっとも、『駅馬車』にしても内容はあまり憶えていないんだが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『黄色いリボン(映画)』
竹林軒出張所『ウィンチェスター銃'73(映画)』
竹林軒出張所『荒野のガンマン(映画)』
by chikurinken | 2012-11-21 08:17 | 映画

『スプリット 二極化するアメリカ社会』(ドキュメンタリー)

b0189364_8153413.jpgスプリット 二極化するアメリカ社会
(2012年・米Split Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

 アメリカの二極分化の状況をレポートするドキュメンタリー。
 アメリカの二極分化の状況は、共和党支持者と民主党支持者、沿岸部と内陸部、都市部と地方といろいろな語られ方をするが、つまるところ保守派と革新派という二極分化で、この両者の溝が現在決定的な状況であると報告される。そのため、人々の間での政治の話はもはやタブー化しており、公共の場で政治の話になると、敵対や憎悪が吹き出し収拾がつかなくなるという。特に近年、キリスト教原理主義がアメリカの政治に進出しており、保守主義が異常なほど進んでいる。この異常な保守主義は、日本に住んでいる僕などが見ると、少々奇異な感じすら受ける。イスラム原理主義などとあまり印象が違わないとも思う。もっとも日本でも近年、原理的保守主義者が幅を利かせ始めているのが現状で、対岸の火事で済まない部分はある。とはいっても、日本の場合は宗教的原理主義が幅を利かせていないだけまだマシと言える。
 このドキュメンタリーで紹介されるアメリカの保守主義者の言動は、もう異常な信念で凝り固まっており、しかも非常に利己主義的で、それを他者にも強制しようとする点で大変迷惑な存在である。こういう連中がアメリカの半分近くを占めているわけで、そりゃあアメリカが温暖化対策に取り組まないのも、環境破壊を平気で推し進めていくのも合点が行くというもの。正直、アメリカの保守主義がここまでひどいとは思わなかったので、そういう意味で驚きがあった。
 なお制作会社はSplit Filmsという団体で、この名前から推測すると、『ガスランド』同様、このドキュメンタリーを作るための団体ではないかと思われる。アメリカには、(製作会社以外の)一般人によるドキュメンタリー製作を支援するシステムがあるという話で、そういう点でアメリカはすごいと思う。異常な保守主義とこういったリベラルな気風の両方を併せ持つアメリカという国は、ホントに不思議の国である。
★★★★
by chikurinken | 2012-11-20 08:16 | ドキュメンタリー

『中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ 第1話』(ドキュメンタリー)

中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ 第1話「孤独と野心」(2012年・NHK)
NHK-BSプレミアム

b0189364_8132517.jpg 明治時代に日本美術に多大な関心を示し、数々の名品を海外に持ち去った3人のアメリカ人コレクターを紹介する番組。
 女優の中谷美紀が、謎の美女、玻琉(ハル)に扮して、ドラマ仕立てで話が進行していく。玻琉が亡父から京都の別荘を受け継いだという設定で、その別荘に赴くところから話は始まる。その別荘に、幽霊となったアメリカ人コレクターが現れ、玻琉と対話するという趣向である。こういうドラマ仕立ての趣向をNHKはよく使うが、果たしてこれが効果的なのかはイマイチピンと来ない。が、それなりに完成度が高く力が入っているのはわかる。ちなみにこの番組で登場するアメリカ人コレクターは、平治物語絵巻をアメリカに持ち帰りボストン美術館日本美術コレクションの礎を築いたフェノロサ、曽我蕭白を愛したビゲロ―、琳派作品を大量にアメリカに持ち帰ったフリーアの3人で、かれらの生涯や日本美術に惹かれた状況などを、これもドラマを交えて紹介していく。
 フェノロサやビゲロ―が、単にアメリカに名品を持っていっただけでなく、日本の美術史上大きな役割を果たしたことがよくわかって興味深かったが、しかしやはり、謎の美女のくだりのドラマはなくても良いんじゃないかと感じた。単に中谷美紀がガイド役として、かれらの生涯や収集作品を紹介していくだけで十分なような気がする、正直なところ。
 なお、詳細はわからないが、彼らが持ち帰ったボストン美術館所蔵の名品が現在日本で公開されているようで、この番組も便乗……というかタイアップ企画ではないかと考えられる。といっても地方に住んでいる僕にはあまり関係ない話ではあるが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『中谷美紀 日本ノ宝、見ツケマシタ 第2話(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2012-11-19 08:15 | ドキュメンタリー

輸入DVDもプチ・ウラシマ

b0189364_820267.jpg 以前、輸入盤のCDの値段がえらいことになっているとこのブログで書いたが(竹林軒出張所『輸入CDはウラシマ状態』参照)、その現象はCDだけにとどまらなかった。最近気がついたんだが、ジャズの巨匠たちの(秘蔵)DVDが軒並み1700円前後で売られている。『Jazz Icon』というシリーズがそれで、今のところ23タイトルあるらしい。ほとんどがヨーロッパ・ライブの映像で、現地の放送局が収録していたビデオ映像が最近になって発掘されたため、それがDVDとしてリリースされたという、そういういきさつのようだ。それにしても値段が破格で、今までの相場だと国内盤が4000〜5000円、輸入盤が3000〜5000円という感覚なんだが、国内CD並みの1700円というのは驚きである(映画は廉価ものもありますがね)。あるいはアメリカやヨーロッパではこれが普通の感覚かも知れない。それにジャズの巨人たちの映像は意外に残っていないもので、かつて、大勢のジャズメンの秘蔵映像を集めた映画を劇場まで見に行ったことさえあるくらいで、それくらい目にすることはなかった。特に60年代以前に死去した人々についてはそうである。当時のジャズの社会的地位なんかと関係しているのかも知れない。
 で今回、例によって、試しに1枚買ってみたんである、ジョン・コルトレーンのものを。ヨーロッパ・ツアーの映像ということで、ホールの舞台で演奏しているのであれば少し興ざめではあるが、演奏するコルトレーンの映像自体が少ないし、値段も安いんで、多少はずれでもかまわないと思っていたわけだ。だが実際、蓋を開けてみると、舞台以外の演奏もある上、トータル1時間半以上の映像が収録されていて、満足度は非常に高い。何より、コレハコレハ……という驚きの映像もあった。
 このDVDの構成は、1960年3月28日の西ドイツ、デュッセルドルフでのスタジオ・ライブ、1961年12月4日の西ドイツ、バーデンバーデンでのスタジオ・ライブ、1965年8月1日のベルギー、リエージュでのコンサート映像の3部構成になっている。60年が5曲、61年が3曲、65年が3曲だが、65年の「My Favorite Things」が20分以上の長い演奏という具合で、演奏時間にあまりばらつきはない。60年の演奏はマイルス・デイヴィス・クインテットからマイルス・デイヴィスを抜いたメンツ、61年と65年は、コルトレーン・カルテットのメンツ(マッコイ・タイナー、エルヴィン・ジョーンズら)である。
b0189364_823373.jpg さて60年の演奏だが、ライナー・ノートによると、「JATPヨーロッパ・ツアー」で渡欧したジャズメンをテレビ収録にかり出したものだったらしい。実際映像を見ると、マイルス抜きのマイルス・クインテット、つまりサックスのコルトレーン、ピアノのウィントン・ケリー、ベースのポール・チェンバース、ドラムのジミー・コブの演奏が始まる。このメンツもすごいが演奏も素晴らしい。ところがその後、「Moonlight in Vermont」(DVDの4曲目にあたる)の演奏が始まると、突如スタン・ゲッツが参加してくる。さらにその次の「Hackensack」になると、今度はウィントン・ケリーに代わってオスカー・ピーターソンがピアノを担当するという、コルトレーン、スタン・ゲッツ、オスカー・ピーターソンの夢の共演が実現するのだった。おそらくコルトレーンとスタン・ゲッツの共演は、CDでも出ていないんじゃないかと思う。非常に貴重な演奏が映像で楽しめ、これだけで十分元が取れるというものである。
b0189364_8234849.jpg なぜこういった奇妙なセッションが実現したか、その事情がライナー・ノートに書かれていた。当初、テレビ収録には、このJATPツアーに参加したマイルス・デイヴィス・クインテット、スタン・ゲッツ・カルテット、オスカー・ピーターソン・トリオが出演して、3番組収録する予定だったが、マイルス・デイヴィスが「オレはやらない」と言い出したという。JATPのプロデューサー、ノーマン・グランツは、テレビ関係者に、収録を中止することもできるがこういうのはどうだろうと言って、スタン・ゲッツ・カルテット、オスカー・ピーターソン・トリオの収録以外に、マイルス抜きでマイルス・クインテット(実態はカルテットだが)の演奏をやり、ゲッツとピーターソンをゲスト出演させる企画を持ち出した。テレビ関係者は、3番組撮れればOKということで結局この企画が実現した……ということらしい。スタジオ内のライブであるため、臨場感があって映像としても上質のものである。なお、曲の最後に拍手が入るが、これは現場にいた人々の拍手ではなく、後で重ねたもの(ライナーによる)。
 61年のスタジオ・ライブも同じく臨場感があり、ガレージみたいなセットがしつらえられていて、面白い映像になっている。ちなみにここで演奏される2曲「My Favorite Things」と「Impressions」はエリック・ドルフィーが参加しているもので、既発売のDVD『ジョン・コルトレーンの世界』に収録されているセッションと同じものである。
 最後の65年のコンサート・ライブは、大ホールで行われたセッションの記録映像だが、コルトレーンが無茶苦茶吹きまくる演奏で、ものすごく熱いライブになっている。1966年の日本ツアーもこんな感じだったんじゃないかという演奏で、そういう意味でも非常に貴重。
 このように、どの演奏もまったく外れがない、これで1700円はお買い得! どうです、奥さん! というようなDVDであった。満足度100%である。そういうわけで、このシリーズの他のタイトルも今後いくつか買うかも知れない。
あえて、★★★★

参考:
竹林軒出張所『輸入CDはウラシマ状態』
竹林軒出張所『ジャズの輸入DVD続編』
by chikurinken | 2012-11-17 08:24 | 音楽