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竹林軒出張所

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『項羽と劉邦 (1)〜(3)』(本)

b0189364_823485.jpg項羽と劉邦 第123巻
横山光輝著
潮漫画文庫

 司馬遷の『史記』に出てくる項羽と劉邦の物語をマンガ化したもの。『項羽と劉邦』といえば司馬遼太郎の小説などもあるが、このマンガの原作がどれなのかはわからない。あるいは『史記』を基にした横山光輝オリジナルなのかも知れない。
 横山光輝といえば『三国志』が有名で、かつて10巻くらいまで読んだがあまりに長くて途中で断念した。『項羽と劉邦』ならば『三国志』と比べて短いようだから大丈夫だと思って読み始めたが、これも全12巻あるらしい。今現在1巻から3巻まで読んだが、高校生の時に漢文で習ったような話が出てくる。だが、『三国志』にも共通するが、登場人物がやたら多い上、名前も見たことのない漢字が使われていたりしてややこしい。横山光輝の絵も、あまり人物が描きわけされていないのでややこしさはひとしおである。もちろん、横山光輝だけあって、情景描写などは非常にうまいんだが、なんとなく面白味に欠けるような部分はある。もっとも『史記』自体、元々史書だから面白くてしようがないというような類のものではないとは思う。そういうわけでやはり教養のために読むということになるんだろう。
 第1巻は秦の始皇帝の政治から始皇帝の死、秦の暴政に対して民衆が立ち上がるという場面。その後、項羽、劉邦がそれぞれ名を上げて、第3巻終了時点で、項羽と劉邦が楚の国の王の命令で咸陽(秦の首都)に向かう。先に関中(咸陽の周辺域)に入った方がこの地を支配できるという約束になっている。これから項羽と劉邦が戦って、最後は項羽が散る……虞や虞やなんじをいかんせん……というような話になるんだろう。漢文で勉強したから知ってる。でも漢文で習ったような無味乾燥さはさすがになく、そのあたりはマンガならではで、横山光輝の面目躍如である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『三国志 (1)〜(30)(本)』
竹林軒出張所『史記 (横山光輝版)(本)』
竹林軒出張所『殷周伝説 太公望伝奇 (1)〜(22)(本)』
竹林軒出張所『水滸伝 (1)〜(6)(本)』
竹林軒出張所『平家物語 (上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『元禄御畳奉行の日記 (上)(下) (横山光輝版)(本)』

by chikurinken | 2012-07-03 08:03 |

『博士の異常な愛情』(映画)

博士の異常な愛情
または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

(1964年・英米)
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ピーター・ジョージ
脚本:スタンリー・キューブリック、ピーター・ジョージ、テリー・サザーン
出演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン

b0189364_88425.jpg 米ソの核戦争を題材にした異色の映画。
 この映画、25年ほど前、名画座でスタンリー・キューブリック3本立ての3本目として見ている。ちなみに他の2本は『バリー・リンドン』と『シャイニング』であったが、この2本でヘトヘトに疲れてしまい、この『博士の異常な愛情』についてはあまり印象がなかった。延々と繰り返される会議とあのラスト近くの衝撃のシーンくらいしか記憶になかったが、今回見てみると、やはりその辺のシーンが印象として強い。
 アメリカ軍の1人のトチ狂った司令官が核攻撃の指令を勝手に出してしまい、米ソの首脳陣がその対応に追われるというストーリーで、随分生々しい話である。特にこの映画が製作された64年といえば、キューバ危機の少し後で、冷戦まっただ中。米国もソ連も相手に対する懐疑心ばかりが増幅し、一触即発といってもいいような状況である。それをブラックユーモアと皮肉を交えて痛烈に批判したのがこの映画ということになる。
 登場人物は、どれもある程度戯画化されているが、しかしどの人物も不思議とリアリティがある。重要な登場人物3人(マンドレイク大佐、大統領、ストレンジラブ博士)は、なんとピーター・セラーズが一人で演じている。マンドレイク大佐については、『ピンクパンサー』を思わせるような風貌だったこともありピーター・セラーズであることに気が付いたが、後の二人は気が付かなかった(もちろんこれは最初見たときの話で今回は見る前に知っていた)。なお原題は『Dr. Strangelove: Or How I Learned To Stop Worrying And Love The Bomb』で、『博士の異常な愛情』はなかなか凝った訳だが、実際は、マッドサイエンティストのストレンジラブ博士の名前がそのままタイトルになっている(ちなみに「Strangelove」という名前は、ドイツ語の本名を英語に直訳したものという設定であり、この博士、ナチスの臭いがプンプンする人物)。
 全編、特異なモノクロ映像で、どことなく『時計仕掛けのオレンジ』みたいな乾いた空気が流れている。事件が起こってからその後の処理に至るまで時系列で描かれるため、異色な映画ではあるがわかりにくさはまったくない。核戦争のイメージを具体化したという感じで、見る者は核戦争というものを肌で感じるような錯覚を覚える……かな。なかなか説明が難しい映画だが、ともかくどことなく醒めた視線が常に意識され、「シニカル」という言葉がよく似合う映画であると思った。オープニングとエンディングにはシニカルな映像と音楽が流され、この映画の立ち位置を象徴しているように思う。
第30回ニューヨーク映画批評家協会賞監督賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『ロリータ(映画)』
竹林軒出張所『フルメタル・ジャケット(映画)』
竹林軒出張所『アイズ ワイド シャット(映画)』
by chikurinken | 2012-07-02 08:10 | 映画