ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

<   2011年 05月 ( 30 )   > この月の画像一覧

『鳥帰る』(ドラマ)

b0189364_8413932.jpg鳥帰る(1996年・NHK)
演出:伊豫田静弘
脚本:山田太一
出演:田中好子、杉浦直樹、香川京子、村上淳、原知佐子、丹波義隆、平田満

 これも田中好子追悼企画として放送されたドラマで、脚本は山田太一。山田太一のドラマは、単発ものも含めて85年以降は大体見ているはずなんだが、このドラマはまったく記憶になかった。
 問題を抱える人々が旅先で出会って、お互いの問題に少しずつ介入していきながらも、自分の人生のありようについても目覚めるという、ある種文学的な展開である。鳥取の観光名所が随所に出てくる一種のロード・ムービー(ロード・ドラマ?)だが、その辺の扱いもさりげないもので、わざとらしさは感じない。鳥取の映像も美しく、郷愁を誘う。
 この当時の山田ドラマには、他人が(遠慮がちではあるが)他人の私生活に介入して、結果的におおむね良い方に落ち着くような「お節介」話が何本かあるが、このドラマもまさしくそういう内容である。人同士の繋がりが希薄になった今の社会で、人が人を求めるという自然な欲求をドラマに反映したということらしい(ドラマ放送時の山田太一のインタビューより)。「お節介」とは言っても、ドラマを見るこちら側としては是非是非介入してもらいたいという状況で、見ていて不快になるようなものではない。ただ、現代の日本社会において、こういうお節介が可能かというのは難しいところだ。とはいうもののリアリティを欠いているというようなこともない。そのあたりは山田太一の力量というか豪腕である。
b0189364_8395564.jpg 主演の田中好子は、いろいろな表情を見せて好演しているが、ちょっと無理しているようなシーンもある。「あのシーンは、スーちゃんには合わないんじゃないスか、山田センセイ」と言いたくなるようなシーンもあった。
 ましかし、いろいろ考えさせられるし、見ていてまったく飽きることもないしで、やはり大したもんである、山田太一は。
★★★☆

追記:エンディングのタイトルバックでなかなか巧妙な演出が行われていて、一つの見所になっている。また、キャスティングも単発ドラマとしてはなかなか贅沢で、平田満と新井康弘(山田ドラマの常連)、内野聖陽がチョイ役で出ていた。

参考:竹林軒出張所『北の夢(ドラマ) 追悼 田中好子』
by chikurinken | 2011-05-31 08:43 | ドラマ

『中国10億人の日本映画熱愛史』(本)

中国10億人の日本映画熱愛史 ― 高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで
劉文兵著
集英社新書

b0189364_7562045.jpg 先日YouTubeで日本の古典的ドラマ『二人の世界』の中国語吹き替え版というのを見つけて、それがまた結構な人気を集めていたようで、『二人の世界』も中国で放送されていたのかとちょっと驚きを感じた。『おしん』や『赤い疑惑』が中国で大ヒットしたという話は聞いたことがあったが、『二人の世界』のような古いドラマが放送されていたということになると、結構いろいろなドラマが中国で放送されていたんだろう。今の日本の韓流みたいなものか。
 さて、この本であるが、文化大革命(文革)以降、中国で日本の映画やドラマに人気が集まったことについて紹介し、それについて社会学的考察を加えるというもの。
 なんでも、文革の後、日中友好ムードが高まったこともあり、日本の数本の映画が中国で熱烈に受け入れられたという。文革の間、映画産業が著しく後退したこともあり、文革が終わった後も中国国内での映画製作が円滑に運ばなくなった。そこで、海外の映画が上映されることになるのだが、中でも日本の映画が特に注目された。
 その中の代表的なものが『君よ憤怒の河を渡れ』と『サンダカン八番娼館望郷』で、特に高倉健はその後も中国で絶大な人気を維持しているという(近年、中国の代表的映画監督チャン・イーモウが主役として抜擢したことからもその影響がうかがわれる)。これは、こういった映画自体の魅力もあるかも知れないが、もっとも大きいのは当時の中国国内における社会的な要請とうまくかみ合ったせいである。近代的資本主義に触れると同時に「資本主義社会の下で表面化する矛盾」が当時の中国人民の嗜好に合ったということである。
 その後、日本映画の人気が後退するも、代わって日本のドラマ、特に『おしん』と『赤い疑惑』が大ヒットし、さらに90年代になるとトレンディ・ドラマまで人気が出たらしい。これも当時の政治や社会の状況を如実に反映したものであり、本書では、こういった映画やドラマが中国で受けた要因や社会的背景について考察が加えられている。
 日本ではよくわからなかった当時の中国事情について、映画やドラマを通じて知ることができる本で、日中映画交流史としての側面も持つ。内容が僕の興味に合っていたこともあって、一気に読み終えた。
 今のように冷え切った日中関係からは、日中にこういう文化的蜜月時代があったということ自体考えにくいが、映画などの民間レベルでの交流こそが大事であるということをあらためて思い知らされる。
★★★☆
by chikurinken | 2011-05-30 07:58 |

『夜のピクニック』(映画)

b0189364_94626.jpg夜のピクニック(2006年・ムービーアイ)
監督:長澤雅彦
原作:恩田陸
脚本:長澤雅彦、三澤慶子
出演:多部未華子、石田卓也、郭智博、西原亜希、貫地谷しほり、柄本佑

 ツマンネェーナーと思いながら見てました。ごめんなさい。僕とは波長が合わなかったようです。
 「24時間80キロを1000人で歩く」というキャッチフレーズを見たとき、こういう展開ではないかと思った通りのストーリー(もちろん細かい設定までは予想できませんよ。あくまで大枠)で、面白味も意外性もなかったです。こういう展開に持っていってドラマチックにするのはちと無理があるというものです、やっぱり。
 異常にお節介な周囲の面々も理解できません。どうしてこうタカコとニシワキ君に介入してくるのか(彼らが主人公だからか、それともストーリーが予定調和だからか)。
 実は最初のシーンを見た時点で見るのをやめようかという気になったもののかろうじて思いとどまったんですが、まあ予想どおりの展開だったですねぇ。演出もセリフもさして面白味がなかったです、ハイ。最初の10分と最後の20分見れば十分というようなもの足りない映画でした。
 名門進学高校がモデルのようですが、こういう学校生活がうらやましくはありますね。でも知人に聞かされる思い出話みたいで、あまり感じるところはありません。恩田陸の原作は「本屋大賞」受賞作だそうですが、もう「本屋大賞」信用しません。

追記:以前、北海道縦断マラソンのドキュメンタリーがあって(NHK『北へ555キロ 〜日本最北端を目指したランナーたち〜』)、同じようにスタートからゴールまで追っていたが、あれは非常にドラマチックで面白かった。フィクションよりドキュメンタリーの方が感動的というのもいかがなものかと思う。
★★☆
by chikurinken | 2011-05-29 09:06 | 映画

YouTube散策 & メルト・ダウン & アイソトープ

b0189364_9552391.jpg YouTubeをいろいろ見てみると、こういうご時世だからか、タイマーズのライブ映像がたくさん出ていた。しかも映像が結構きれい。あの「原発賛成音頭」もありました(YouTube「原発音頭 タイマーズ」)。ノリノリでした。
 同じライブで歌われた「メルト・ダウン」という曲も出ていた。前に歌詞を紹介しようと思ったんだが、ちょっと洒落にならないのでやめた。興味のある方はご覧ください(YouTube「メルトダウン タイマーズ」)。

メルト・ダウン
……
取り返しのつかない事が 起こってしまった
もう だめだ 助かりゃしない もう遅い
神様
仏様
阿弥陀様
……
というような歌。歌詞もあちこちのサイトで紹介されている。

 それから、ちょっと珍しいところで「アイソトープ」という歌もあった。

アイソトープ

歌:フォークジャンボリーズ(中津川渡、嬬恋信康)
オリジナル詩:衣巻省三
替え歌詞: なぎら健壱(おそらく)

アイソトープ アイソトープ
アイソトープ あたしの放射能
あんまりながく ほうっておくと
お行儀が悪くなる

b0189364_955505.jpg 高田渡が亡くなった直後に開催された高田渡追悼コンサート(2005年4月、小金井公会堂)で、なぎら健壱と坂崎幸之助のフォークジャンボリーズが披露した替え歌。
 ちなみに「アイソトープ」とは一般的には放射性同位体元素を表し、「放射線を出すアイソトープを含んだ物質を放射性物質、放射線を出す能力を、放射能と」(日本アイソトープ協会のホームページより)いうらしい。
 元歌は、高田渡の「アイスクリーム」で、こちらは小説家で詩人の衣巻省三という人の詩に曲をつけたもの。

アイスクリーム
(アルバム『ごあいさつ』に収録)

歌:高田渡
詩:衣巻省三
作曲:高田渡

アイスクリーム アイスクリーム
アイスクリーム あたしの恋人よ
あんまりながく ほうっておくと
お行儀が悪くなる

 この詩も面白い。
 どちらもYouTubeに画像がある。
YouTube「アイスクリームー高田渡」 ←元歌
YouTube「高田渡追悼コンサート3」 ←替え歌

 なお、リンクはすべて2011年5月28日時点のもの。リンク先はいずれ消える可能性が高い。今のうちにどうぞ。
by chikurinken | 2011-05-28 09:58 | 映像

『虐待カウンセリング 柳美里・500日の記録』(ドキュメンタリー)

虐待カウンセリング 〜作家 柳美里・500日の記録〜(2011年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

b0189364_959458.jpg 柳美里という作家にはあまり良い印象を持っていなかった。以前、この作家が友人のプライバシーを小説で書き立てて、それが原因で訴訟問題になったという報道を聞いたことがあって、そういうこともあり自己中心的なイメージが僕の中にあったためである。それに加え、児童虐待という問題があまり気持ちの良いトピックでないこともあり、このドキュメンタリーを見ることには随分逡巡していた。
 結局思いきって見ることにしたが、しかしこのドキュメンタリーに登場する柳美里については、正直少しビックリであった。自分が子どもを虐待してしまっていることをカミングアウトするだけでなく、虐待予防のためのカウンセリングを受けるところまで公にしているのだ。しかも自身の父や母の自分に対する虐待歴や、かれらの被虐待歴まで白日の下にさらそうとしている。これこそが作家魂というもの。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」である。そういうわけでこの作家をかなり見直すことになった。
 さて、その柳美里であるが、シングルマザーであり、自分の子どもに対してかなり厳しく躾けようとしているようで、それと同時にどうしても自分を抑えられず、子どもを虐待してしまうことがあるという。自分でもこれを何とかして止めたいと思い、カウンセリングに通いはじめた。カウンセリングを担当するのはある大学の先生(東海学院大教授・長谷川博一氏)で、これまでもこういった相談者多数と向き合っている。
 この先生の方法論は、虐待は前の世代から次の世代へ引き継がれるという考え方に基づいている。したがって、子どもを虐待する親は、幼少時にその親からも虐待を受けていることが多いということになる。そのため、子どもへの虐待を解消するには、自分の過去に向き合って、自分が虐待を受けたのが自分のせいではない(親のせいであり、ひいては虐待の連鎖のせい)ということに気付かなければならないというのである。
 柳美里も、自分の父、母と直接対話をする(結構おっかなびっくりだった)ことで、かれらが虐待を受けていたことを知る。やがて自分の中で、自分の被虐待経験について一定の決着を付けられるようになる。
 こうしてこのドキュメンタリーでは、柳美里を虐待者の1サンプルとして取り上げ、虐待のしくみと虐待解消のための方法論が紹介されていく。なかなか興味深い内容で、また同時に重い内容のドキュメンタリーであった。自分のことについてもいろいろ思いを馳せる機会になった。
★★★☆
by chikurinken | 2011-05-27 10:00 | ドキュメンタリー

『ぼくらの60〜70年代宝箱』(本)

b0189364_8582591.jpgぼくらの60〜70年代宝箱
黒沢哲哉著
いそっぷ社

 前に紹介した『昭和子どもブーム』などと同じコンセプトの本(『ぼくらの60〜70年代宝箱』の方が先に出版されている)。子ども時代に流行ったグッズを紹介して懐かしもうという企画である。
 こういった類の本は本書以外にも結構出ていて、どれも似たり寄ったりと言えば言えるんだが、でもまあ、どれも同じように懐かしさを感じることができる。著者は1957年生まれで僕より少し年上であるため、僕とは多少のズレはあるが、それでも、すっかり忘れていてこの本を見て思い出したというようなモノも多い。しかしなにより、当時の子どもの周囲にモノがあふれていたことにあらためて気付く。高度成長期の大量消費志向の反映なんだろうが、それにしても子どもにモノを与えすぎである。と言いつつ、僕自身もモノを与えられる側だったんだが。当時の物質信仰みたいなものが垣間見える気もする。
 また、当時子ども達が使っていた玩具が、火や火薬を使ったり感電させたりと大変危険なものであることも印象的である。今の時代、子どもを危険なものから遠ざけるようなところがあるが、どちらが良いかは別にして、今と大きな隔たりを感じる。
 この本の構成は、見開き2ページでいろいろなグッズを写真付きで紹介し、その次の見開き2ページに当時のことを書いた著者の思い出エッセイが続くというもの。「あったあった」感が満載でなかなか楽しめたんだが、よくよく考えると、こういった企画を求める自分という人間が非常に後ろ向きであるような気もしてくる。ちょっとなさけない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『昭和ちびっこ広告手帳(本)』
竹林軒出張所『昭和子どもブーム(本)』
竹林軒出張所『キックの鬼』
by chikurinken | 2011-05-26 08:58 |

『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』(映画)

カラヴァッジョ 〜天才画家の光と影〜(2007年・伊仏西独)
監督:アンジェロ・ロンゴーニ
脚本:ジェームズ・H・キャリントン、アンドレア・プルガトーリ
出演:アレッシオ・ボーニ、エレナ・ソフィア・リッチ、ジョルディ・モリャ

b0189364_8381353.jpg 16世紀イタリアの「天才」画家、カラヴァッジオの伝記映画。「カラヴァッジオ」かと思っていたがタイトルは「カラヴァッジョ」。こっちの方がイタリア語発音に近いのだろうか。ちなみにこの映画、元々はイタリアのテレビ・ドラマだったそうで、2本分を1本にまとめたものが、カラヴァッジオ没後400年(2010年)ということで日本でも公開されたらしい。
 テレビ・ドラマということもあってか、内容は説明的でわかりやすい。映像的にもとりたててどうと言うことはなく、ホントにいかにも伝記的。カラヴァッジオといえば、殺人も犯した放蕩無頼の輩であるが、そのあたりの経緯もわかりやすく描かれていて破綻はない。テレビの伝記ドラマとして見ればよくできているが、だが所詮は「最大視聴者の最大幸福」を目指すテレビ・ドラマ。大して心にのこるものはなく、言ってみれば内容はNHK大河ドラマみたいなもので、もちろんあれよりはしっかり作られているが、「可もなく不可もなく」という映画だった。お勉強にはなったけど、2時間半はちと長かった。テレビ・ドラマだと知っていれば多分見なかっただろうと思う。
★★★
by chikurinken | 2011-05-25 08:39 | 映画

なぜに関京戦は岡山に行くの?

 5月22日に岡山のKankoスタジアムでアメリカン・フットボールの関学-京大戦(以下「関京戦」)が行われた。
 アメリカン・フットボールの関京戦と言えば、今はどうか知らないが、15年ほど前までは関西学生フットボール・リーグ屈指の対戦で、2万5千人もの観客を集めたものである。そうそう、知らない人に言っておくが、かつて関西で一番集客力を持つアマチュア・スポーツは甲子園の高校野球で、2番目が関西学生フットボールだったのだ。「かつて」というのは、僕が関西から離れて大分経つので今の状況を知らないためである。
 どうして関西で学生フットボールがそんなに人気があったのか理由はよくわからないが、おそらく関学と京大がうまい具合に覇を競い合っていたのが面白かったんじゃないかと思う。そういう点からもこの関京戦、とても重要な一戦である。ということで、のこのこカンスタ(Kankoスタジアム)まで見に行った。フットボールの試合を見に行くのは実に20年ぶりくらい。
b0189364_9215078.jpg なぜに関京戦が岡山で?という疑問はずっと続いていたが、もらったパンフレットを見て納得した。毎年地元のチームを招いて、この時期に「瀬戸大橋ドリームボウル」というボウルゲームが行われていたが、今年は25周年記念で有力チームを招待したということらしい。関京戦といえば、野球の早慶戦に相当するような伝統の一戦で、いまは京大チームが地盤沈下したものの、ネームバリューはまだまだある(のかな)。
 さて、観客も(岡山での開催ということを考えると)思った以上に多く、3、4千人はいたのではないかと思う。午前中の雨もやみ、午後からは陽差しも出てきて、暑すぎず寒すぎず絶好のフットボール日和である。僕は、ホームスタンドの最上部に陣取っていたが、ホーム側が京大応援団、バック側が関学応援団であった。関学応援団は、ブラス、チアリーダー付きの本格的なもので、シーズン中と同じレベルで、僕にとって懐かしさもひとしお。一方京大側は、応援部から2人来ていただけで、ブラスもなし。あとは地元の衆に協力を求めるという地味なものだった。関西から岡山遠征ということになるとそこそこ金もかかるし、このあたり、金持ちクラブと貧乏クラブの財力の違いが出ているのか。
 試合内容も、京大ギャングスターズ(京大チームの愛称)にとっては寂しいもので、ライン戦では負けるし、ディフェンスバックはレシーバーに置いて行かれるしでお寒い内容であった。その点関学は、本格シーズン前でありながら、なかなか良い具合に仕上がっている。「完璧な形で仕上がった関学システムをズタズタにする京大ディフェンス」というかつての構図はまったく窺えなかった。もっとも第4クオーターあたりになって、京大が関学システムにアジャストしたせいか少し盛り返してきたが、大勢に影響なく、結果は30-7と関学の大勝で、今の両チームの力量を示すような結果になった。
 また、関西学生フットボール・リーグの恒例で、試合前と試合後に両応援団のエール交換があり、応援していたチームの勝ち負けに関係なく、毎度ながらさわやかな印象が残る。これが関西学生リーグだよな……などと思いながら、久々のフットボールを堪能したのだった。
 なお、このカンスタ、地元のJリーグ・チームのホーム・スタジアムであり、スタジアム自体は、トラックを併設した陸上競技場型でちょっとお寂しいものであるが、北に植物園、東に浄水場や操山(古墳がいっぱいある低い山)と、周りを緑で囲まれていて、周囲の眺めが最高だった。お立ち寄りの際は、ホーム側の一番上の席に行かれるとよろしいかと。また、この試合は来週、ローカル放送局で土曜の深夜(日曜日早朝)にダイジェストが放送されるらしい。

補足:関学と京大が覇を競い合っていた時代
 かつて関学の黄金時代というのがあって、145連勝というアンビリーバブルな記録を打ち立てたらしい。その中には、114-0(対京大)という記録的な試合も含まれている(計算すると平均2分で1回タッチダウンということになる。京大にとっては相当な屈辱だったんではないかと思う)。
 この試合から10年後(1976年)に関学の連勝記録が止まるが、その相手が京大だった。この辺が、ちょっとスクールウォーズみたいで感動的ではある。その年は関学、京大が同率優勝であったが、甲子園ボウル出場決定戦(関西代表決定戦)で関学が勝つ。翌年、満を持して臨んだ京大ではあるが、前半完全に圧倒していたものの、後半関学の意表のプレーが続出し、結局大逆転で関学が勝利することになる。この試合は、当時多くの集客が見込まれたことから、急遽会場を変更し、大量の観客を収容できる日生球場に移すことになった。しかも関西学生リーグで初めてテレビ中継されるという画期的な試合で、終了後も勝利した関学選手が号泣するなど、大変印象に残るものだったようで、その後も「涙の日生球場」として語り継がれるようになった(YouTubeにも映像がある)。
 この後、京大は着実に力を付け、ついに関学を破ってリーグ優勝、学生日本一、日本選手権(ライスボウル)勝利などを達成し、関学、京大の二強時代が始まる。80年代から90年代までの関西学生リーグはこんな感じだった。

参考:Wikipedia「関京戦」
   YouTube「涙の日生球場(1977年 関京戦)」
by chikurinken | 2011-05-24 09:27 | 日常雑記

『クジラと生きる』(ドキュメンタリー)

クジラと生きる(2011年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル
b0189364_9584157.jpg
 またしても、NHKのクリーンヒット。一時期低迷していたように思ったが、最近のNHKスペシャルは、『原発解体』のときも感じたが、ジャーナリズムとしての攻めの姿勢が窺えてとても良い。
 前に『イルカを食べちゃダメですか?』と言う本を紹介したときに(竹林軒出張所『イルカを食べちゃダメですか?(本)』を参照)、「是非、この内容(クジラ漁が追い込まれている現状)を映像化して、ニュース番組などで大々的に取り上げてほしいものだと思う」と書いたが、このNHKスペシャルはまさにそういう番組である。しかも、食文化の面を中心に論理を展開していて、非常に説得力を持つ内容になっている。また、反捕鯨運動側(シーシェパードという団体)の卑劣な運動方法や自己中心性もあぶり出されていて、映画『ザ・コーヴ』(反捕鯨を主張する映画)に対するアンチ・テーゼとしても十分に機能している。本当は『ザ・コーヴ』も見て、真っ白の状態で双方の主張を判断するのが良いのだろうが、『ザ・コーヴ』の意図的に作られた悪意に満ちた映像(このNHKスペシャルで一部紹介されている)を見てしまうと、あの映画を見ようという気も失せてしまう。
 たとえば『ザ・コーヴ』では、激昂してヤクザのように言葉を荒げてカメラに突っかかってくる漁師が登場して、漁師が極悪非道の人間であるかのように描かれているが、このNHKスペシャルで、反捕鯨団体の人間がどうやって漁師を挑発してこういう映像を撮っているかが紹介されていて、「ドキュメンタリー」映像の裏側が覗けたような気がする。普通、これだけのことをされたら誰でも怒り狂うだろうと思う。小型カメラを構えた多数の人間(反捕鯨団体側)が、漁師を取り囲んで罵声を浴びせたり、仕事に向かおうとする漁師の車を取り囲んで邪魔をしたりで、端で見ていても非常に不快感を感じるようなものであった。通常であれば脅迫や威力業務妨害に相当するんではないかと思うが、はなはだ気分が悪い映像だった。
 『ザ・コーヴ』で話題になったというクジラの殺戮シーンについても、それぞれの主張が紹介される。反捕鯨団体側は、こういうシーンを公開することで、世論に残虐性を訴えていて、一方で漁師側はシートで覆うことでそれを隠そうとしている。それについて反捕鯨団体の人間が、人間として恥ずかしいことをしているから見せたくないのだろうと迫るが、これに対して漁師たちは、牛や豚でも屠殺シーンを見せたら、誰でも反感を抱くだろうと言う。漁師にとってはこれは虐殺ではなく屠殺なのであって、それが意図的に世論の操作に使われているのでこれを隠すと言うのだ。それでも反捕鯨の人間はそれを隠し撮りし、その映像をネットで公開して、世論をどんどん味方に付けているという現状がある。
 今回のNHKスペシャルで見る限り、むしろマイノリティは漁師側のようにも見え、世論を操作したマジョリティであるアメリカ人が、自分たちの論理でマイノリティを強制的に排除する構造さえ見えてくるようであった。アメリカ人がこれまで(先住民や中南米に対して)世界中で展開してきた、かれらの「善意」に基づく利己的な暴力が垣間見えるような気がする。
 僕としては、この番組に登場する数人の中学生(!)が展開していた論理が、実に真理を突いていると思った。つまり、ある動物を食べない人が、その動物を食べる人に対して、かわいそうだと言う理由でやめろと迫るのはおかしいという論理である。しかもそれを迫っている人々自体、別の動物を食べているのだ。
 また、漁師の一人が言っていた言葉も説得力がある。クジラを食べるのをやめたとしても、その分、別の動物からタンパク質を摂るんなら、奪う命を減らすことにはならない。人間が生きるために命を奪わなければならないんなら、命を奪う対象(この場合クジラ)について難癖を付けるのではなく、その命に感謝していただくのが筋なんじゃないか……と言うのである。お説ごもっともで、いかにも日本人的な発想だと思う。こういう発想は利己的な「合理」主義者にはできないんだろうなと思う。
 要するにこの捕鯨の問題は文化的な問題なのであって、それを政治や環境の問題にすり替えることに問題があるという、そういう主張が展開されたドキュメンタリーで、その辺の図式が非常にわかりやすかった。

参考:竹林軒出張所『イルカを食べちゃダメですか?(本)』
★★★★
by chikurinken | 2011-05-23 10:01 | ドキュメンタリー

『土の文明史』(本)

土の文明史 ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話
デイビッド・モントゴメリー著、片岡夏実訳
築地書館

b0189364_1002331.jpg 内容は非常にすばらしい本だが翻訳が良くない。そのため読みづらくてしようがない。僕なんか、図書館で借りては返しを繰り返し、結局読み終わるのに都合半年くらいかかった。内容は割合平易なんだが、高校生の英文解釈みたいな日本語になっていて、「とんでもない訳」ではないがとにかく読みづらく、流れるように読むことができない。解読作業が伴うようでかなりきつかった。内容が大したことない本だったら間違いなく途中でやめていたことだろう。
 翻訳はともかく、その内容自体は大変示唆に富む充実したものだった。タイトルが示すとおり土壌から見た文明史で、ともすれば軽視される土壌が、人間の生活、ひいては文明にとってどれほど大きな意味を持っているかを説き起こす。
 著者によると、ローマ帝国をはじめとするさまざまな古代文明が、ことごとく土壌の疲弊や浸食が引き金となって崩壊している(崩壊の過程はゆっくりしているため因果関係が目に付きにくい)。また、近世の西ヨーロッパで土壌が疲弊したことが植民地主義の原因であった(特に土壌の劣化がひどかったのが、植民地開拓の先鞭を付けたスペインとポルトガルだったという)とか、フランス革命までが、土壌劣化で減少した農地を農民が支配階級から取り戻そうとすることが原動力になったとか、世界史上の重要な出来事の多くが土壌と結びついていることが示される。目からウロコの歴史観である。
 他にも土壌の性質や化学肥料発見の過程なども紹介され、土壌劣化・浸食がこれまでどのように進行してきたかやその現状なども具体的に示される。
 さらに、現在のアメリカ型の大規模機械化農業が土壌を破壊し尽くしていくことが主張され、労働力を集約した有機農業に回帰すべきことを訴える。われわれが子どもの頃は、教育の現場でもああいった大規模農業が憧れのように語られていたが、それとは正反対の主張である。こういった議論は、これまで農薬汚染や地下水の枯渇などの点から語られていたが、土壌浸食という観点でも大きな問題を抱えるものだということを今回初めて知った。ともかく、土壌は文明が所有する貴重な財産であるというのが著者の主張なのである。
 世界史、環境問題、食糧問題などに関心がある人には特に得るところが多いと思う。歴史や社会への見方が大きく変わる快著である。読みやすい翻訳であれば言うことがなかった。返す返すも残念。また著者名だが「モントゴメリー」じゃなくて「モンゴメリー」が正しい発音に近いんじゃないかと思うが如何。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『私は黄砂と闘う(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『土と内臓 微生物がつくる世界(本)』
by chikurinken | 2011-05-22 10:01 |