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竹林軒出張所

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カテゴリ:映画( 563 )

『健さん』(映画)

健さん(2016年・ガーデングループ、レスぺ)
監督:日比遊一
出演:マイケル・ダグラス、マーティン・スコセッシ、ポール・シュレイダー、ジョン・ウー、降旗康男、澤島忠、山田洋次(ドキュメンタリー)

b0189364_20161530.jpg高倉健の追悼映画

 高倉健の追悼ドキュメンタリー映画。生前、高倉健と交流のあった人々によって、高倉健に対する賛辞やエピソードなどが語られ、それをつないだ作品である。
 登場する人々は、マイケル・ダグラス(『ブラック・レイン』で共演したハリウッド・スター)、マーティン・スコセッシ(個人的に付き合いがあったそうだ)、ポール・シュレイダー(『ザ・ヤクザ』の脚本家、『Mishima』で高倉健を起用する話が進んでいたが高倉周辺の反対で結局破談になった)、ジョン・ウー(『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイク版を製作中)、降旗康男(『駅 STATION』などの監督)、山田洋次(『遙かなる山の呼び声』などの監督)などの映画製作者や、梅宮辰夫、八名信夫、中野良子らの俳優、高倉の実の妹、元付き人ら。最初、『単騎、千里を走る。』で高倉健と共演していた中国人俳優がさも案内役であるかのように登場するが、その後、所々に出て来はするものの、「案内役」は立ち消えになったかのように存在感が薄くなってしまう。
 高倉健のフィルモグラフィみたいなものが出てくるわけでなく、高倉健がどんな素敵な人だったかとか、プロ意識が高かったとか、賛辞ばかりが語られるドキュメンタリーで、少しもの足りないが、好きな人が見る分にはこれで良いんじゃないでしょうかという内容である。
 意外だったのは、八名信夫によって語られる「高倉健が現場に始終遅刻してきた」というエピソードで、遅刻するような役者が周囲にいたら「それはちょっと違うんじゃないすか」ぐらいのことを言いそうなイメージが高倉健にはあったが、当の本人が、朝が弱かったということで遅刻が多かったらしい。ただし「高倉健」ということで、現場では概ね許されていたらしいが。
第40回モントリオール世界映画祭ワールドドキュメンタリー部門最優秀作品賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『追悼 高倉健』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『遙かなる山の呼び声(映画)』
竹林軒出張所『単騎、千里を走る。(映画)』
竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』
竹林軒出張所『ザ・ヤクザ(映画)』
竹林軒出張所『君よ憤怒の河を渉れ(映画)』
竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』

by chikurinken | 2017-11-27 07:16 | 映画

『駅馬車』(映画)

駅馬車(1939年・米)
監督:ジョン・フォード
原作:アーネスト・ヘイコックス
脚本:ダドリー・ニコルズ
音楽:ボリス・モロス、リチャード・ヘイグマン、W・フランク・ハーリング、ジョン・レイポルド、レオ・シューケン
出演:ジョン・ウェイン、トーマス・ミッチェル、クレア・トレヴァー、ルイーズ・プラット、ジョン・キャラダイン

b0189364_17302402.jpg西部劇の見本

 ジョン・ウェインの出世作で、西部劇の見本みたいな映画。
 インディアン(先住民)アパッチ族のジェロニモが、入植者に対して反乱を起こしたという設定の時代背景である。ローズバーグという町に向かう定期乗合馬車は、途中、ジェロニモが出現する地域を通過するため、運行するかどうか危ぶまれるが、結局出立することになる。途中まで騎兵隊が警備することになるが、途中から任務のために帰還するということで、乗合馬車の単独行になる。馬車に乗り合わせた人々は、それぞれ背景を持ち、互いにさまざまな感情を持っていて、いろいろ揉めたりするが、そういった状況でついにインディアンの襲撃に遭う……という映画。
 何より、乗合馬車の乗員とインディアンが闘うシーンが出色で、映画史の中でも圧巻のシーンである。ストーリー自体は『荒野の決闘』『黄色いリボン』を合わせたようなもので、今となっては意外性はあまりないが(ちなみにこちらがオリジナル)、割合凝ったプロットになっていて、最後はなかなか心地良さが残る。
 ただし映画では、馬車に乗り合わせる賭博師ハットフィールドの正体が最後までよくわからず、何だかモヤモヤが残る。また、同じく乗り合わせる銀行家ゲートウッドの行動にもあまり必然性を見出せなかったが、もう少し説明が必要だったのではないかと思う(原作ではしっかり描かれているようだ)。
 元々、主人公のリンゴにゲイリー・クーパー、ヒロインのダラスにマレーネ・ディートリヒを当てる予定だったが、低予算だったためにまだ売れていないジョン・ウェインとクレア・トレヴァーが割り当てられたという(Wikipedia情報)。結果的にジョン・ウェインはこの映画で大当たりし、ハリウッド映画に欠かせない存在になったというのも皮肉なものである。
 今回見たのは、BSで放送されたものだったが、画面の揺れなどもなくモノクロ画像が非常にきれいだった。おそらくデジタルリマスター版だったのではないかと思われる。
1939年アカデミー賞助演男優賞、作曲・編曲賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『黄色いリボン(映画)』
竹林軒出張所『リオ・グランデの砦(映画)』
竹林軒出張所『タバコ・ロード(映画)』

by chikurinken | 2017-11-25 07:30 | 映画

『地獄変』(映画)

地獄変(1969年・東宝)
監督:豊田四郎
原作:芥川龍之介
脚本:八住利雄
音楽:芥川也寸志
出演:中村錦之助、仲代達矢、内藤洋子、大出俊、下川辰平、内田喜郎

文芸作品を映画化することの意味について考えたい

b0189364_18284478.jpg 芥川龍之介の『地獄変』を映画化したもの。
 原作に忠実ではなく、あちこちに改変が加えられており、総じて現代的な解釈である。たとえば、大殿様(藤原道長がモデルのようだ)の元に側室として引き取られた女(主人公の絵師の娘)の元許嫁が、盗賊団に入って大殿の屋敷を襲うみたいなプロットがあるが、作りすぎであり、この映画版『地獄変』でもはたして必要なプロットなのかというような疑問が残る。こういうような部分があちこちにあり、そういうことを考え合わせると、あまり良い映画化とは言えない。
 もっとも、この映画で展開される大殿、中村錦之助と絵師・良秀、仲代達矢の数々の激突は、両者の名演技のために、なかなかの見物になっている。中村錦之助と仲代達矢は、仲代達矢の話によると、酒の席でときどき芸論から大げんかになったような(親しい)関係らしく、両者の演技にその種類の親密感と迫力は感じられた。ただし、映画自体のテンポがあまり良くないせいもあって全体的にまだるっこしく、目が離せなくなるような展開は少ない。そのため面白さを感じる部分はあまりなかった。
 原作自体短編であることだし、この映画を見るなら原作を読んだ方が良いというのが僕の結論である。もっとも日本版のDVDは出ていないんで見る機会自体少ないだろうが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『役者なんかおやめなさい(本)』
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『コミックストーリー 日本霊異記(本)』

by chikurinken | 2017-11-23 07:28 | 映画

『クロムウェル』(映画)

クロムウェル(1970年・英)
監督:ケン・ヒューズ
脚本:ケン・ヒューズ
出演:リチャード・ハリス、アレック・ギネス、ロバート・モーレイ、ドロシー・テューティン、フランク・フィンレイ

b0189364_18101281.jpg歴史物はかくありたい

 1649年のピューリタン革命を描く歴史映画。タイトルからわかるように、主人公はオリバー・クロムウェルである。
 歴史ドラマとしてしっかり描かれている映画で、大体の歴史の流れがよくわかる。国王チャールズ1世の暴政を議会勢力が糾弾して両勢力が決裂、やがて内戦になり、その戦闘で勢力を伸ばしたクロムウェルが議会派のリーダーになって、チャールズを処刑するという動きである。
 チャールズ1世に扮するのは名優アレック・ギネスで、リチャード・ハリスのクロムウェルより存在感があった。特に外連味もなくきわめて真面目に、宮廷や議会、当時の風俗などがよく描かれていて、歴史ドラマとして見る分には最適である。前見た『クロムウェル 英国王への挑戦』はなんだかよくわからない内容で、こういう作品は歴史物として見る分には少々困る。生に近い歴史に接したいという僕みたいな視聴者にとっては、本作みたいな実直な描き方が望ましいわけだ。合戦シーンもよく再現されていて、衣装などの色が映えて美しく見える。アカデミー賞の衣装デザイン賞を取ったというのも大いに頷けるところである。
1970年アカデミー賞衣装デザイン賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『クロムウェル 英国王への挑戦(映画)』
竹林軒出張所『わが命つきるとも(映画)』
竹林軒出張所『冬のライオン(映画)』
竹林軒出張所『ブーリン家の姉妹(映画)』
竹林軒出張所『エリザベス(映画)』

by chikurinken | 2017-11-04 07:09 | 映画

『ブーベの恋人』(映画)

ブーベの恋人(1963年・伊仏)
監督:ルイジ・コメンチーニ
原作:カルロ・カッソーラ
脚本:ルイジ・コメンチーニ、マルチェロ・フォンダート
出演:クラウディア・カルディナーレ、ジョージ・チャキリス、マルク・ミシェル、ダニー・パリス

カルディナーレのプロモーションビデオか

b0189364_19014834.jpg 1944年のイタリアが舞台。パルチザンの闘志、ブーベに恋した若い娘、マーラの話。クラウディア・カルディナーレが、悪女ではなく、普通の(純真な)娘を演じる。ブーベ役は、『ウェスト・サイド物語』のジョージ・チャキリス。
 当時のイタリアの世相が描かれていて興味深い部分はあるが、基本的にはクラウディア・カルディナーレの映画ということになるのか。実際カメラはカルディナーレの姿を執拗に追うし、実際に魅力的な姿が映し出される。結局のところストーリーは「ダメ男を選んでしまった女の話」と言ってしまって良いのかも知れない。しっかり作られていて映画自体は決してダメではないが、これはこれはというような部分もあまりない。そのため、何度かに分けてぶつ切りにして見ることになった。見る途中、結構退屈していたのもまた事実である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『山猫(映画)』
竹林軒出張所『刑事(映画)』
竹林軒出張所『若者のすべて(映画)』

by chikurinken | 2017-11-02 07:01 | 映画

『大魔神』、『大魔神怒る』、『大魔神逆襲』(映画)

大魔神(1966年・大映)
監督:安田公義
特技監督:黒田義之
脚本:吉田哲郎
美術:内藤昭
音楽:伊福部昭
出演:高田美和、青山良彦、藤巻潤、五味龍太郎、島田竜三、遠藤辰雄、伊達三郎、出口静宏、二宮秀樹

b0189364_20552151.jpg下克上と大魔神

 『大魔神』シリーズ第1作。善政を敷いている為政者(守護大名か)がクーデターで追われ、命からがら逃げた若君と姫が、元近臣の力を借りて、再び政権を奪回しようとする、というのがメインのストーリー。お約束通り、下克上のクーデターで政権を取った一派は、悪政を敷き領民は苦しめられ、しかも村人の守り神である魔神像まで破壊しようとする。そういう具合に、善と悪の争いに魔神が絡んできて、最後はお決まりの勧善懲悪で、現人神として現れた魔神が大暴れするという話である。
 基本的に子ども向けの特撮映画ということで、細かいところがご都合主義だったりするんで、そのあたりがガッカリなんだが、脚本は割合よくできている。題材は面白いのに演出が今イチなんで、この映画なんかまさにリメイクにふさわしいと思うんだが、いまだにリメイクはない。特撮シーンは非常に良くできていて、建物を破壊しまくる大魔神にヒヤヒヤする(NGを出したら取り返しがつかない)。いずれにしても破壊シーンは特筆ものである。また美術も大映作品らしく豪華である。なお若殿を演じる二宮秀樹は、第3作の主人公、鶴吉も演じている。『マグマ大使』でちびっ子ロケット、ガムを演じている子役である。
★★★

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大魔神怒る(1966年・大映)
監督:三隅研次
特撮監督:黒田義之
脚本:吉田哲郎
美術:内藤昭
音楽:伊福部昭
出演:本郷功次郎、藤村志保、丸井太郎、内田朝雄、北城寿太郎、藤山浩二、上野山功一、神田隆、橋本力、平泉征

b0189364_20552758.jpg戦国時代と大魔神

 『大魔神』シリーズ第2作。全3作の中で一番地味と言える。今までたびたび見ているはずなのに、『十戒』ばりに湖が割れるシーン以外はまったく憶えていなかった。
 ある領国が隣の領国に侵略されるという、戦国時代にはよく起こったであろう話が題材になっている。ただひとつ違っていたのは、農民を大切にしていた為政者が滅ぼされ、悪政を敷く悪人が支配者になったということ。また例によって、村人の守り神である魔神を破壊するのである。やがて、何とか逃げ延びた侵略された側の若君が見つけ出され処刑……という算段になって、魔神様がお怒りになるという具合に話が進んでいく。前作と舞台や設定は違うが、根本的には同じで、ワンパターンの展開になる。日本の子どもは子ども時分からこういった「ワンパターン」に慣らされるので、ワンパターンドラマが流行ったのかも知れない……などと考えてしまう。ただこういった映画を見ると逆に、ワンパターンの良い面がわかることもある。この映画など、善が悪に虐げられるというストレスを観客に与えまくり、最後の最後に「スカッとジャパン」になるという典型的な復讐劇である。あまりに模範的で、観客は少々アホらしいと思いながらも、最後の最後には安心するわけだ。悪が栄えて映画が終わるとなると、見ている方はストレスを抱えたまま家路につかなければならなくなる。見る側の心の中で収束しないで終わってしまい、いつまでもモヤモヤが残ることになってしまう。
 キャストは、特撮映画としては珍しく、本郷功次郎や藤村志保などの一線級俳優が登場。また、大魔神俳優(大魔神の着ぐるみを着ている人)の橋本力も、一般の役で出ていたそうな(全然気が付かなかった)。また若かりし日の平泉征も結構重要な役で出ていた。平泉征は『なんたって18歳』がデビューかと思っていたので意外だった。
★★★

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大魔神逆襲(1966年・大映)
監督:森一生
特撮監督:黒田義之
脚本:吉田哲郎
美術:内藤昭、加藤茂、西岡善信
音楽:伊福部昭
出演:二宮秀樹、堀井晋次、飯塚真英、長友宗之、山下洵一郎、仲村隆、安部徹、名和宏、北林谷栄

b0189364_20553242.jpg拉致・強制労働と大魔神

 『大魔神』シリーズ第3作。3作中、プロットがもっともしっかりしているのがこれ。だが演出が雑で、ディテールがいい加減なので、ツッコミどころが多くなってしまった。実際、かつて劇場で見たときはあちこちで失笑が起こっていた。こういうふうにシニカルな見方をされてしまうのは、作品として残念な結果と言える。
 ストーリーは、硫黄を採掘するために隣の国から拉致され強制労働させられている木こりたちの話。その木こりたちを救おうと、木こりの子どもや弟達4人が、決死の覚悟で魔神の山を通って隣国まで向かうというのがメインのプロットである。この山越えの過程では、野を越え山を越え、崖まで上っていく。(見た目では)かなりの崖を子ども達が実際に登っており、今こんな撮影をしたら児童福祉法で引っかかるんじゃないかというような大変そうなロケである。どこでロケをしたかはよくわからないが、劔岳に似た山が映っていたのでもしかしたら立山あたりで撮影したのかも知れない。また、他にもいろいろなエピソードが盛り込まれ、冒険譚としてなかなかよくできている。残念なのは、さっきも言ったようにディテールが適当な点で、これが致命的になっている。美術も相変わらずすごいし、映像も美しい。特撮もよくできていて申し分ないのに、いい加減な演出のせいで台無しである。結果的に子ども向け映画でとどまってしまうのだ。
 主演の子どもは、第1作でちょい役で出た二宮秀樹(『マグマ大使』のガム役で有名)。他は、あまり知らない俳優ばかりだった。唯一の例外は、山の老婆を演じていた北林谷栄ぐらいか。このとき55歳だから老婆役にはまだ早いが、この人、若い頃から老婆になるまで老婆ばかりを演じている。そのため結果的に息の長い老婆女優になった。アニメ(トトロのお婆ちゃん)でも老婆を演じていたから、こうなると国宝クラスである。
 この『大魔神』シリーズで取り上げられているプロットのように、拉致され強制労働させられて虐げられる(あげくに殺される)などというような不快な事例、あるいは為政者が自分の私腹を肥やすために民衆を段圧するという事例は今でもあるわけで、そういう連中は、願わくば魔神様が現れて滅ぼしてほしいと思うが、なかなかそうは行かず、悪が栄えることがあるのも現実である。せめて、こういった映画を見てスカッとしたらいかがだろうか(スカッとできるかどうかわからないが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『大魔神甦る』
竹林軒出張所『ドラゴン怒りの鉄拳(映画)』

by chikurinken | 2017-10-18 07:00 | 映画

『天地明察』(映画)

天地明察(2012年・角川、松竹)
監督:滝田洋二郎
原作:冲方丁
脚本:加藤正人、滝田洋二郎
音楽:久石譲
出演:岡田准一、宮崎あおい、佐藤隆太、市川猿之助、横山裕、笹野高史、岸部一徳、中井貴一、松本幸四郎、渡辺大、白井晃、市川染五郎、きたろう

アク抜きしたら風味もなくなった

b0189364_20555141.jpg 映画は原作とは別物であり、それは重々わかっているつもりだが、気に入った原作本の映画化となるとやはりかなり不満が残る。
 原作は冲方丁(「うぶかたとう」と読むらしいが、読めない)の同名歴史小説で、非常に完成度の高い作品であり、特にキャラクターの描き方が非常にうまい。渋川春海の貞享暦をモチーフにした(一種の)青春成長小説で、史実を割合忠実に辿りながらも、劇的な要素をそれなりに盛り込んでいる。渋川春海をはじめとする登場人物が魅力的で、関孝和、保科正之、水戸光圀、本因坊道策らが(どれも奇抜な性格ではあるが)活き活きと目の前に現れる。キャラクターだけでなく、この小説全体について言えるのだが、非常に映像的であり、情景が視覚的に描かれている。それを考えると、そのまま忠実に映像化したらそれなりの傑作になるのではと思うのだが、映画の作り手は、そうは思わなかったようで、随所に改変が行われてしまった。
 もちろん時間の制約や、映像化にまつわる制約があっただろうし、映画的な演出も必要だったことは想像できるが、だがたとえば忍者の集団が測量隊を襲ったりする戦いのシーンが果たして必要と言えるのかはなはだ疑問。まったく必然性を感じない。それにもしこういうエピソードを入れたいのであれば、もう少し後に入れなければ、話のつじつまが合わないような気もする。
 キャスティングについても、春海の妻の「えん」は原作では気丈な人で、だからこそ春海との関わりに面白さが出るんだが、映画の宮崎あおいの「えん」にはそういう要素がなく、「えん」関連の面白い部分はそっくり落としましたという結果になっている。おかげで単なる恋物語で終わってしまって面白さ半減。実にもったいない。他のキャストは概ね原作に合わせて選ばれているようだが、うまくいっているものはあまりない。保科正之がぎりぎりOKという感じである。本因坊道策は横山裕の雰囲気が非常に良かったが、こちらも一部キャラが殺されてしまった。この映画化全般について言えるが、濃い部分(つまり面白い味のある部分)をことごとくそぎ落として、アク抜きしたような作品になってしまっている。
 音楽も付け方があまりにありきたりで、一体誰が今どきこういった陳腐な音楽付けをするのかと思っていたら、久石譲だった。原曲はともかく、音楽監督の資質としては疑問符が付く。あるいは監督の意向かもしれないので何とも言えないが。
 この原作を映像化するのであれば、今流行りのドキュメンタリー・ドラマみたいな形を取るかなんかして随所に解説を入れる必要があると思う。やはり当時の暦や和算の状況、江戸幕府が文治主義に転換した背景、囲碁界の状況などをセリフだけで説明するのは無理がある。それに、そもそもが数十年に渡る物語であるため、これを2時間に凝縮するとなると根本的に足りない。最低6時間くらいは必要ではないかと思う。NHKで1時間×10回シリーズぐらいで作り直したら良いものができるかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『天地明察 (上)(下)(本)』

by chikurinken | 2017-10-17 07:00 | 映画

『幸せはパリで』(映画)

幸せはパリで(1969年・米)
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
脚本:ハル・ドレスナー
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ、バート・バカラック
出演:ジャック・レモン、カトリーヌ・ドヌーヴ、ピーター・ローフォード、マーナ・ロイ、シャルル・ボワイエ

消えるには消えるだけの理由がある

b0189364_18252310.jpg ジャック・レモン主演のロマンティック・コメディと聞いていたため、ビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』みたいな作品を想像していたが、大変な思い違いだった。
 ストーリーも荒唐無稽だし演出もありきたりなものばかりで、しかも笑わせようとしている箇所すらさして笑えない。情けなくなるような映画である。カトリーヌ・ドヌーヴも少し年がいっていて魅力半減だし、あまり見るところのない作品で、見ているうち、終わるのだけが楽しみになってしまった。
 ストーリーを簡単に紹介しておくと、投資会社の部長に昇格した男(ジャック・レモン)が社長の妻(カトリーヌ・ドヌーヴ)と、それと知らずに恋仲になり、翌日パリに駆け落ちするという話。その間に馬鹿みたいなコミカルなエピソードが出てくるという代物で、これを1本のハッピーエンドの映画にしている。この題材では面白いものができるとは到底思えず、エラい思い違いと言わざるを得ない。そもそも不倫で駆け落ちしてハッピーエンドと言えるのだろうか。前途多難な2人の状況しか見えてこない。
 この作品、永らくDVD化されていなかったらしいが、それも合点がいく。むしろこのまま消えてしまっても良かったかも知れないと思う。この映画で唯一の見所だったのがバート・バカラックの挿入歌で、ときどき耳にするバカラック作の「April Fools」はこの映画で使われたものであるということを今回初めて知った。だからと言ってどうということはないのだが。
★★

参考:
竹林軒出張所『アパートの鍵貸します(映画)』

by chikurinken | 2017-10-05 07:24 | 映画

『男と女』(映画)

男と女(1966年・仏)
監督:クロード・ルルーシュ
脚本:ピエール・ユイッテルヘーベン、クロード・ルルーシュ
音楽:フランシス・レイ
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、アヌーク・エーメ、ピエール・バルー、ヴァレリー・ラグランジェ

内容が乏しい! 30分で十分収まる内容

b0189364_19150003.jpg カンヌでもオスカーでも賞を取っている名画ではあるが、失望したというのが素直な感想。見たのは今回が初。
 レーサーの男(ジャン=ルイ・トランティニャン)と映画のスクリプターをやっている女性(アヌーク・エーメ)が出会い恋に落ちるというたわいもないストーリー。映像は全編詩的ではあるが、なんせ内容が薄いのではなはだ退屈。しかもモノクロ映像とカラー映像が交互に出てきたりするが、その意図がまったくわからない。最初回想シーンにモノクロを使っているのかとも考えたがそうでもない。で、見終わった後、DVDに収録されていたクロード・ルルーシュのインタビューを見てわかったんだが、当初すべてモノクロで撮る予定だったが、スポンサーが現れてカラー撮影が可能になった。ただしカラー撮影用の機材が爆音をたてるため、屋外での撮影、それもロングショットでの撮影に限定したということらしい。驚くほどの行き当たりばったりの理由だった。
 そもそもこの映画、失敗作続きで赤字を抱えていたルルーシュが、配給先も決まらないまま撮影を始めた作品だったということで、撮影動機は自主映画的なものと言える。つまり自主映画まがいの作品が高評価を得てしまったという類の作品である。道理で作りが雑で奥行きがないわけである。実際今見ると、当時の評価は少々過大だったんではないかと思う。唯一の救いはフランシス・レイの音楽で、あのテーマ音楽のけだるさが全編を包んで独特の雰囲気を作り出した、それが評価される原因だったというのが案外正しいのではないかと思ったりした。
1966年カンヌ国際映画祭パルム・ドール、アカデミー賞外国語映画賞受賞
★★☆

参考:
竹林軒出張所『甘い生活(映画)』
竹林軒出張所『モンパルナスの灯(映画)』
竹林軒出張所『ローラ(映画)』

by chikurinken | 2017-10-04 07:14 | 映画

『ゲームの規則』(映画)

ゲームの規則(1939年・仏)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:ジャン・ルノワール
出演:マルセル・ダリオ、ジャン・ルノワール、ノラ・グレゴール、ローラン・トゥータン

面白いんだかどうなんだかよくわからない

b0189364_18522079.jpg ジャン・ルノワールの代表作みたいに言われている作品。
 上流階級の人々が、それぞれ配偶者の浮気を承知の上で自ら浮気しているという状況で、そういった人々がある貴族の館にパーティで集まるとどうなるかという話を戯画的に描いたもの。なお浮気しているのは上流階級だけに限らず、この館で働いている使用人たちにも及んで、ドタバタするという展開になる。全編ドタバタして、非常に喜劇的ではあるが、正直笑えるものなのかどうかもよくわからない。完全に作り物の芝居として接するのであればともかく、話の展開自体かなり無理があることから、リアリティはあまり感じられない。舞台ならいざ知らず、映画の素材として適していないんではないか。
 この話の元になった事件があってそれを風刺的に描いたものかそういうこともわからないし、なにぶん情報がほとんどないので細かいことについてはコメントできないが、少なくとも僕自身は面白さを感じなかった。唯一の見所と言えば、監督のジャン・ルノワール自身が重要な役で登場していることぐらいで、それにしても格別印象に残りそうにもない。実はこの映画、30年くらい前に自主上映会で見ているが、内容をまったく憶えていなかったという代物である。なるほどそれも頷ける……という、そういう種類の映画であった。もう二度と見ることはないだろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『大いなる幻影(映画)』
竹林軒出張所『ピクニック(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介したジャン・ルノワール作品に関する記事。この2本の映画については、見たことすら憶えていなかった。

(2005年9月27日の記事より)
b0189364_18522350.jpgどん底(1936年・仏)
監督:ジャン・ルノワール
原作:マキシム・ゴーリキー
脚本:ジャン・ルノワール、シャルル・スパーク
出演:ジャン・ギャバン、ルイ・ジューヴェ、シュジ・プリム、、ジュニー・アストール

 ゴーリキー原作の戯曲をジャン・ルノワールが映画化したもの。原作を大幅に変えているという(原作読んだことがないからよくわからない)。
 ただ全体的に戯曲調(舞台風)であったのは確か。タイトルからネオリアリズム風の暗い映画かとも思ったが、救いのある映画になっていた。ルノワールゆえか。
 個人的には、屋外レストランのパーティめいたシーンが、印象派絵画を連想させて良かった。やはりルノワール……。
★★★
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(2005年11月30日の記事より)
b0189364_18522628.jpg南部の人(1945年・米)
監督:ジャン・ルノワール
原作:ジョージ・セッション・ペリー
脚本:ヒューゴ・バトラー
出演:ザカリー・スコット、ベティ・フィールド

 ジャン・ルノワールがアメリカに渡って撮った代表作(らしい)。
 米国南部の貧しくて厳しくも人情深い生活を扱っているが、ジョン・フォードの『怒りの葡萄』のような、社会の矛盾をついた告発ものではない。もう少しおおらかでのんびりしたところがある。『大草原の小さな家』に近いか……。主人公は確かにいろいろな苦難を突きつけられるが、どこか牧歌的である。それだけに、見ていて少し物足りなさを感じた。芝居として完結しているような感じで、わき出すものがないというか……。ちょっと退屈した。
 動物を狩って、家族全員でむしゃぶりつくように食うシーンは、空恐ろしくもあった(喜びに満ちたシーンのようだが)。アメリカ人ってのは野蛮だなと素直に感じた。
★★★

by chikurinken | 2017-10-03 06:51 | 映画