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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドキュメンタリー( 490 )

『人生フルーツ』(ドキュメンタリー)

人生フルーツ(2016年・東海テレビ)
監督:伏原健之
撮影:村田敦崇
ナレーション:樹木希林

ロハスな夫婦の贅沢な老後

b0189364_16581126.jpg 建築家夫婦(津端修一氏、90歳、妻、津端英子さん、87歳)のロハスな生活を追うドキュメンタリー。
 2人が住む家は夫の修一氏が設計したもので、家の目の前には、自ら広葉樹を植えて作った雑木林と庭がある。またそのそばには畑もあり、その畑で取れた作物を自ら料理したり加工したりして、のんびりした生活を送る老夫婦。見ていて大変好ましい感じだが、夫の修一氏は少しわがままなように見え、それに合わせている妻の英子さんの方がかえって魅力的に映る。
 彼らの家は修一氏が設計した団地の一郭にあるが、敷地はなんと300坪、生計は月36万円の年金でたてている。彼らの生活自体は楽しそうで、うらやましさもあるが、ましかし、こちらには300坪の土地も月36万円の年金もないので、雑木林を作る余裕もないし、それどころか必死に働かなければならない。こういうロハスな生活を送る余裕は、僕みたいな庶民にはないのであった。
 このドキュメンタリー、東海テレビ作で、今年あちこちの映画館で劇場公開された作品である。その際僕は見逃したが、今回NHK-BSの『ザ・ベストテレビ』で放送されたため、それを見ることができた。優れたドキュメンタリーを作る東海テレビの作品ではあるが、今回見た感じだと、劇場で金を出して見るほどではなかったなと思う。テレビで見ることができて(金を払わずに済んで)満足である。
文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『裁判長のお弁当(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-10-21 06:57 | ドキュメンタリー

『スターウォーズ レーガンのハッタリ』(ドキュメンタリー)

スターウォーズ レーガンのハッタリ(2016年・仏Sunset Presse)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

無能な指導者のハッタリは
予想以上にうまく機能した


b0189364_19023930.jpg 1980年にアメリカ大統領になったロナルド・レーガンは、徹底した反共主義者だったこともあり、ソ連を倒し強いアメリカを取り戻すことを政策の中心に置いていた。
 そのレーガン政権が1983年にぶち上げたのが戦略防衛構想(SDI)、俗に言うスターウォーズ計画である。これは大陸間弾道弾を宇宙空間でことごとく撃墜するというシステムで、これが実現すると、ソ連の核攻撃を無力化することができるという話だった。当時冷戦状態は続いており、核の均衡により平和が保たれていたため、これが実現した暁には、ソ連は一方的にアメリカの核攻撃の危機にさらされることになる。ソ連側も、現実的には不可能と疑いながらもそれに対する対策を行わなければならなくなる。国家予算の40%にまで達していた防衛費はますますかさむことになる。
 一方でレーガン政権はサウジアラビアと蜜月関係を築きあげ、原油を大量に市場に流すことで原油価格を大幅に引き下げることに成功する。これにより、ソ連の数少ない外貨獲得手段だった石油は、価格が暴落しソ連の収益も激減。これがソ連経済に致命的な打撃を与えた。
 さらにアフガニスタンに侵攻していたソ連に揺さぶりをかけるため、反ソ・ゲリラ勢力(イスラム原理主義勢力を含む)に莫大な支援を与えることで、間接的にソ連の経済を揺さぶるということも行っている。この3つの条件がソ連の崩壊に繋がったとするのが、このドキュメンタリーの主旨である。なおこの番組では、SDIについてはまったくのホラだったとしている。
 確かにこういったことがソ連崩壊の原因になったとは思うが、レーガンが意図的にやったかどうかは怪しいところで、もし意図的にやっていたとしたら(このドキュメンタリーでも否定的に扱っているが)これはレーガン政権の外交的な成果ということになる。ただレーガンにそれだけの能力があったとも思えず、あくまでも結果論だと僕などは考える。歴史が誰かの意図通り進んでいくなどということはあまりないものである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史 (8)〜(10)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第4集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『インサイド・ジョブ(映画)』

by chikurinken | 2017-10-20 07:02 | ドキュメンタリー

『京都人の密かな愉しみ blue 修行中』(ドキュメンタリー)

京都人の密かな愉しみ blue 修行中(2017年・NHK)
NHK-BSプレミアム ザ・プレミアム

どっこい生きてた『密かな愉しみ』
新シリーズは遊び心に溢れていた


b0189364_18284883.jpg 完結したはずの『京都人の密かな愉しみ』が、物語の背景を変えて装いも新たに蘇った。メインストーリーの主役だった老舗和菓子店の三八子(常盤貴子)は出てこない(話が完結したんで当然だが)。その代わりに職人(庭師、和食の調理師、パン職人、陶芸家、有機野菜農家)を目指す5人の若者の話がメインになる。野菜農家を職人として扱っていいのかとも思うが、番組ではいかにも職人風の扱い方をする。
 演出はこれまでと同じ源孝志で、ドラマ部分はよくできている。前のシリーズで見られたような「無理から」な展開は(今のところ)少ない。京都の風習にスポットが当てられるのも前シリーズと同様で、今回は五山の送り火が取り上げられる。扱い方はオーソドックスで、前のシリーズと違ってあまり奇抜過ぎないのも良い。例によって大原千鶴のお料理のコーナーもある。しかも試食のゲストとして呼ばれた(という設定の)京都市在住の2人の女性が、ドラマ部分の登場人物になっており、ドラマとドキュメンタリーが妙に混ざり合って、独特の面白味を醸し出している。遊び心に溢れた、斬新で実験的な試みと言って良い。
b0189364_18285123.jpg 前のシリーズみたいなツッコミどころはあまりなく、安心して見ていられる1時間半番組で、おそらくこれからも続くのは間違いない。バラエティ感覚でくつろぎながら見れば良いという類の番組である。もちろんドキュメンタリー、ドラマとしても良質である。なお前シリーズで登場したヒースロー先生(団時朗)が脇役として登場するのも、少し遊び心を感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 夏(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 冬(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 月夜の告白(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 桜散る(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-10-09 07:28 | ドキュメンタリー

『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』(ドキュメンタリー)

戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946(2016年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

植民地政策に屈辱を感じる

b0189364_18130017.jpg 1945年、太平洋戦争が終わってから1年間の東京がどんなふうだったか、未公開映像や発掘映像を使って再現するというドキュメンタリー。
 現代人(山田孝之)が唐突に当時にタイムスリップするという趣向のドラマが混ぜられていて、当時の映像の中に合成ではめ込まれて使われたりしている。こういう演出が必要かどうかはともかく、山田孝之が良い味を出していてそれなりの効果は出ている。
 当時の状況は、まさに戦勝国(実質アメリカ)による占領下であり、しかもその(「進駐軍」という名の)占領軍の費用は日本が負担していた(国家財政の1/3に相当)ということで、事実上植民地状態である。東京はほとんど焼け野原で、焼け残った有力な建造物は「接収」という名で奪われ、占領軍の将校などに分け与えられる。その上、日本人が出入りできない場所が多数設けられるなど(東京租界)、多分に差別的である。植民地というものがどういうものか身をもって体験したのがあの時代である。
b0189364_18125501.jpg また女たちは兵隊(ほとんどが米兵)たちに取り入り、中には兵隊専用売春婦なるものも現れてくる。日本政府の国策として連合軍向け売春宿が経営されたこともこういう状況に拍車をかけていたわけだが、しかしそれを思うと、当時の日本政府にはまったく恐れ入る。なんでも普通の婦女子を米兵から守るための現実的な政策だったといういうことらしい。しかしこういったことは、当時の日本人(特に男たち)には屈辱的に映ったに違いない。
 一方で、当時の日本人は食うものもなく、いつも腹を空かせた状態と来ている。配給はままならず、どうしても闇市みたいなものに頼らざるを得ない。ただしこの闇市にしても当局が取り締まりの対象にしていたため、こういうところで商売をしていても突然すべてを没収されるというようなこともありうる(今の中国でもこういう状況があるようだが)。治安も悪く、平穏な現代日本とは大きな違いである。しかもこういった中で、占領軍に取り入って成り上がるヤクザ者も出てくるし、モラルハザードどころではない。貧しい社会というのは、力のあるものが力のないものをどこまでも収奪する弱肉強食の世界であることがよくわかる。
 タイトルの「東京ブラックホール」というのは、当時の東京がヒト、モノ、カネをブラックホールのように飲み込んでいったというところからつけられたものであるが、ちょっとスカしていてどうかと思う。戦後すぐの混乱期については、いろいろな本や映画で描かれており「今さら」感もあるが、「今」との隔たりの大きさにあらためて驚くという点で、ときどきこういう特集番組をやるのもありかなと思う。「今」の生活のありがたみがよくわかるというものだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『昭和史 戦後篇(本)』
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本テレビとCIA(本)』
竹林軒出張所『ドイツ零年(映画)』

by chikurinken | 2017-10-08 07:12 | ドキュメンタリー

『華族 最後の戦い』(ドキュメンタリー)

華族 最後の戦い(2017年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリードラマ

b0189364_18162790.jpg木戸くんと近衛くん

 元内相の木戸幸一、元首相の近衛文麿、元内相秘書官の松平康昌が、戦中・戦後にどのような活動を行って、天皇制、華族制度などを含む「国体」を守ろうとしたかを描く。ちなみに木戸は侯爵、近衛は公爵、松平は侯爵(いわゆる華族)で、彼らは天皇制を守ることこそが自分たちの地位を守ることであるというコンセンサスの下で行動していたという。
 ドキュメンタリードラマという体裁になっており、木戸幸一は佐野史郎が演じる。演じると言っても、NHKの松平定知のインタビューを受けるシーン(これがこのドキュメンタリーのメイン)と東京裁判の尋問を受けるシーン以外にはない。よって、ドラマ仕立てにする必然性があったのかははなはだ疑問。
b0189364_18163114.jpg このドキュメンタリー番組の価値としては、木戸幸一と近衛文麿の立場やスタンスがわかるという点が挙げられるが、それ以上ではない。実際のところ、2時間という長い放送枠の割には内容が乏しかったというのが率直な印象である。少し前に放送された『ドラマ 東京裁判』と雰囲気が似ていたため、あの番組のスピンオフか、あるいは同じスタッフだったのか判然としないが、まあそんなことはどちらでも良い。結局、大した見所はなかったというところに落ち着くのである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ドラマ 東京裁判 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『昭和史 1926-1945(本)』
竹林軒出張所『昭和史 戦後篇(本)』

by chikurinken | 2017-10-07 07:16 | ドキュメンタリー

『幻の色 よみがえる浮世絵』(ドキュメンタリー)

幻の色 よみがえる浮世絵(2009年・NHK)
NHK-BSプレミアム プレミアムカフェ

浮世絵は決して「渋い」絵ではなかった

b0189364_20373692.jpg 少し前に富山の農家で382枚の版木(浮世絵を刷るときに使用する木版)が見つかった。江戸時代に実際に浮世絵印刷のために使われた版木で、それぞれの版木には、当時使われた絵の具が付いている。見つかった版木の多くは歌川国芳の浮世絵を刷るためのもので、これらの版木で刷られた作品は現存しているものが多いが、現存作品と版木を比べると色が微妙に異なる。つまり刷られた浮世絵では、顔料によっては経年に伴い色落ちしているというわけで、それがこの版木の発見によって明らかになった。
 そこで、元々使われていた顔料を使って、発表当時の色彩でこの浮世絵を復刻してみようというプロジェクトが始まる。この浮世絵復刻プロジェクトで実作業を担当するのが、現代の浮世絵師、立原位貫(竹林軒出張所『一刀一絵 江戸の色彩を現代に甦らせた男(本)』を参照)である。立原氏は、江戸時代の彫りと刷りを(独学で)自ら再現し、しかも当時使われていた紙や道具まで復刻したという猛者で、このプロジェクトにはうってつけの人材と言える。
 作業は、元の版木から刷り用の版木を複製するところから始まるが、番組ではこのあたりにも密着していて、なかなか興味深い部分である。髪の生え際の微妙な表現がミソ、というか彫り師の腕の見せ所だったという事実も紹介される。もちろん立原氏による生え際の彫りについてもたっぷり見ることができる。
 彫りが終わると刷りの過程に移るが、そこで明らかになったのが、一部の顔料(紅)がすでに市場にないという事実で、このあたりは芸術作品の復刻のあるあるネタであるが、そこは立原氏、例によって、復刻できそうな業者に頼み込んで、何とか再現してもらう。こうしてすべての顔料が揃ったところで、いよいよ刷り作業に当たる。実際に刷ってみると、現存する渋い刷りからは想像できないほどのハデハデな絵が現れた。浮世絵があくまで庶民の楽しみであり(そば一杯程度の値段で売られていたらしい)、それに当時隆盛だった歌舞伎などの色合いを考えると、浮世絵がハデハデな絵であっても何ら不思議はなく、むしろこれが浮世絵の真の姿であることが窺われる。考えようによってはケバケバしいということもできるが、しかし色の使い方は割合合理的で、汚さは一切感じない。こうして、版木の新発見から始まった一連のプロジェクトで、浮世絵に対する新しい視点が生み出されることになった……という、そういうドキュメンタリーである。
 なお番組中に、浮世絵が好きという人々が集まってきて、歌川国芳やこの復刻版画についていろいろコメントするコーナーがあるが、毎度ながらこういう部分はいらないと感じる。この時間があったら立原氏の技術をもっと見せてほしいところである。なお、この浮世絵好きの人々の中に『日本語ぽこりぽこり』のアーサー・ビナードも入っていて、鋭い視点を披露していたのは、このコーナーの唯一の救いであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『一刀一絵 江戸の色彩を現代に甦らせた男(本)』
竹林軒出張所『日本語ぽこりぽこり(本)』

by chikurinken | 2017-10-06 07:37 | ドキュメンタリー

『アフガニスタン 山の学校の記録』(ドキュメンタリー)

アフガニスタン 山の学校の記録 マスードと写真家長倉洋海の夢
(2017年・NHK)
NHK-ETV ETV特集

再建は草の根から

b0189364_20004417.jpg ソビエト連邦がアフガニスタンに突然侵攻したのは1978年。ソビエト連邦が事実上敗北して撤退した後は、今度は狂気のタリバンが権力を奪い、そのために永らくアフガニスタンは暗黒時代を迎えることになった。
 ソビエトに対するレジスタンスの中に、アフマド・シャー・マスードという男がいた。勇敢であり人望があったことから、アフガンのチェゲバラと呼ばれた。ソ連撤退後は暫定政府の要人にもなり、タリバンとの戦闘にも参加した。だが、2001年9月9日(9・11の2日前)に暗殺されてしまう。
 そのマスードだが、生前、アフガンの再建にとって必要なのは教育であるという理念の下、山間部に小さな小学校を作った。当時マスードに接近していた報道写真家、長倉洋海もマスードの理念に共感し、支援活動を始めた。もちろん、この小学校と生徒をずっと撮影し続けた。その後マスードの死、アメリカの軍事介入、タリバン政権の崩壊を経て現在に至るが、この学校はその後も存続を続け、地域からの支援も受けるようになった。卒業生には大学に進学する者まで現れ、中にはこの学校で教える者までいる。将来を担う人材が育成されているわけで、まさにマスードの理念が生き続けている。
b0189364_20004848.jpg このドキュメンタリーは、この過程を長倉洋海の視点から紹介するもので、長倉が撮影したかつての子ども達の今の姿、この学校への思いなどが紹介されていく。アフガン再生のモデルになってほしい事例で、中村哲氏の活動(竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』を参照)ともども、闇夜の中の光明のように映る。アフガンが再生して発展し、第2、第3のマスードが現れて国の建設に携わることが望まれる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アフガン秘宝の半世紀(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『バーミヤンの少年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』

by chikurinken | 2017-09-20 07:00 | ドキュメンタリー

『プリズン・シスターズ』(ドキュメンタリー)

プリズン・シスターズ
(2016年・スウェーデンNima Film他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

その後の『塀の中の自由』

b0189364_20325256.jpg 『塀の中の自由 アフガニスタンの女性刑務所』のその後。
 あのドキュメンタリーの主人公サラが、スウェーデンに亡命する。例の女性刑務所を出所した後別の男と結婚していたが、同作品のスウェーデンでの上映会の際にスウェーデンに赴き、その際に難民申請をすることになったというわけである。
 いつ殺されるかわからない(恥さらしの人間ということで親戚から命を狙われていた)アフガニスタンでの日々に比べると、スウェーデンでの日々は自由で平和である。女であるために虐げられてきたアフガンとは大違い。難民申請をしたのはそういういきさつである。
 一方で、刑務所の中で一緒だったナジベのその後も気になる。出所後石で撲殺されたという噂も聞く。真相を確かめるためにこのドキュメンタリーのディレクターがアフガンに赴き、方々を訪ねまわった結果、ついに生きている彼女を突き止めることができる。しかし彼女は娼婦に身を落としていた。そしてその後連絡を断った。
b0189364_20325732.jpg サラの方は難民申請が認められ、夫をスウェーデンに呼び寄せることになる。夫はアフガン式の女性の扱いをスウェーデンでも継続しようとし、ブルカ(女性の姿を隠すベール)の着用をサラに求める。サラは断固反対していたが、やがて夫がやってきて同居が始まるに及んで、ブルカを着ることになったらしい。そしてその後、ディレクターとも連絡が取れなくなったということである。
 アフガンの女性解放がはるか遠くにあることを思い知らされる、少々暗くなるドキュメンタリーである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『塀の中の自由 アフガニスタンの女性刑務所(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-19 07:32 | ドキュメンタリー

『“肉”は健康の敵?』(ドキュメンタリー)

“肉”は健康の敵? meatの真実(2016年・英BBC)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

エセ「科学」に騙されてはならない

b0189364_11532405.jpg タイトルから肉食についての問題点を追求するドキュメンタリーかと思ったら、あに図らんや肉食を全面肯定する番組だった。しかもそれを「科学的」に証明するなどといいながら、どれも「栄養学」に基づいたいい加減な実験と結論で、肉は完全な栄養食で取り過ぎに注意し取り方を工夫すれば良いという面白味のない結論を引き出す。そんな番組いりますかと言いたくなるようなチープなドキュメンタリーである。
 たとえばさまざまな値段の鶏肉(オーガニックのものやケージ外のもの、特別な飼料を与えたものなど)を比較し、どれも変わらないという結論を出したりする。実際番組で比較したのは脂肪の量に過ぎず、しかも飽和脂肪酸に至っては放し飼いのものの方がかなり少ないという結論だったにもかかわらず、「どれもさして変わらない」という結論を出すムチャクチャぶり。
 また、食肉処理の現場を取材しながら、屠殺の現場を完全に省略して、しかも「こうして見るとその辺の肉屋と変わらない」などとヌケヌケと言うなど、ここまでなると意図的な捏造である。内容が退屈でチープな結論を出しているだけでなく、むしろ間違った情報を流すという意味で有害である。消費者は『チョコレートで痩せる?』の教訓に従って、こういったエセ「科学」に騙されないよう気をつけなければならない。
★★

参考:
竹林軒出張所『Love MEATender(ラブ ミートエンダー)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』
竹林軒出張所『いのちの食べかた(映画)』
竹林軒出張所『フード・インク(映画)』
竹林軒出張所『ありあまるごちそう(映画)』
竹林軒出張所『100マイルチャレンジ 地元の食材で暮らす(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チョコレートで痩せる?(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-17 11:53 | ドキュメンタリー

『チョコレートで痩せる?』(ドキュメンタリー)

チョコレートで痩せる? 〜ドイツ ダイエット商法のからくり〜
(2015年・独k22 Film & Entertainment)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

あくまでも個人の感想です

b0189364_07332930.jpg 世の中に出回っているさまざまな「贋の」ダイエット方法に異議を唱えるドキュメンタリー。
 リンゴで痩せるとか、納豆で痩せるとか、世間ではいろいろなダイエット方法が紹介され、また一部の消費者がそれを真に受けて、そのダイエット法に果敢に挑戦し案の定失敗に終わる。世の中にはこの手のエセ情報が大量に出回るわけだが、中には科学的な裏付けがあるかのごとく紹介されるものもある。たとえば有名科学雑誌で証明されたなどの権威付けが行われるのも日常茶飯である。しかしこのような権威付けを行うのは、意外に簡単だというのがこの番組の主張である。この番組では実際に、「チョコレートでダイエットができる」というデタラメな説を素材にして、そのことを実証してみせるのである。
 たとえデタラメな説でも、さまざまな恣意的な方法を利用することで、実験結果で裏付けされた(かのような印象を与える)結論を導き出すことができる。このドキュメンタリーでは、ある命題(この場合は「チョコレートでダイエットができる」)を証明するために、実験環境を恣意的に操る、実験データを(嘘にならないように)都合の良いように編集する、それを論文にして科学雑誌に発表するという手順を実行する。これが首尾良く行けば、その説を科学雑誌の権威で裏付けることができるため、たとえデタラメな命題であろうと、世間では事実であるかのように扱われるという具合である。そもそも、ほとんどの人は論文になど目を通さないで、結果だけを見るため、過程がどうだということは知らないままである。いくらインチキな論文であっても、有名雑誌に紹介された時点で「事実」になってしまうという按配である。
 実際、怪しげな命題が事実であるかのように世間に喧伝されているのは我々の目にするところで、ネットだけでなく新聞などでも、ツッコミどころ満載の珍説が真実であるかのようによく発表されている。医学界でも同じようなことが起こっていて、結局患者がその被害を被るのだということを近藤誠が著者(『成人病の真実』『健康診断は受けてはいけない』)で告発していたが、この番組で紹介されている状況もあのケースと重なる。何も考えずに情報を鵜呑みにすると、知らない間にだまされちゃうよということ。それがこのドキュメンタリーのテーマである。みんな気をつけよう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『成人病の真実(本)』
竹林軒出張所『健康診断は受けてはいけない(本)』
竹林軒出張所『史上空前の論文捏造(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『調査報告 STAP細胞 不正の深層(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-16 07:34 | ドキュメンタリー