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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 179 )

『ライスカレー』(1)〜(13)(ドラマ)

ライスカレー (1)〜(13)(1986年・フジテレビ)
演出:杉田成道、河毛俊作
脚本:倉本聰
音楽:宇崎竜童
出演:時任三郎、陣内孝則、中井貴一、藤谷美和子、布施博、ガッツ石松、北島三郎、風吹ジュン、室田日出男、田中邦衛、佐藤慶、三木のり平

b0189364_20471328.jpg青春、出会い、別れ

 倉本聰が『北の国から』で大ヒットを飛ばし一番名前が売れていた頃の作品。『北の国から』と同じフジテレビ作品で、フジテレビも『北の国から』以来の倉本作品ということで、カナダで8カ月間ロケを敢行するという力の入れようだった。残念ながら視聴率は奮わず、フジテレビとしては誤算だったかも知れない。しかし内容は『北の国から』に迫る、あるいは超えると言って良いほどのグレードである。再放送もあまりなかったようで、永らくDVD化されることもなく、なんでこれほどの作品を眠らせておくのか僕には皆目見当が付かなかった。僕は古本のシナリオを買ったりしたが、ともかく世間的にはずっと評価が低かったようである。そういう状況が変わったのが2011年で、DVDがとうとうフルセットで販売された。僕は速攻で入手したが、結局見ることもなく、そのまま野積み状態で今日まで至ったのだった。手に入ってしまうとすっかりそれで満足してしまって見なくなるということはよくあることである。
 放送時に見たときは非常に心に残って、先ほども言ったように倉本聰の最高傑作だと思ったほどだが、今回通しで見てみてその思いを新たにした。主役は時任三郎、陣内孝則、中井貴一で、時任三郎と中井貴一は『ふぞろいの林檎たち』の主役2人だが、まったく異なるキャラクター、まったく異なる関係性を巧みに演じている。陣内孝則はほぼドラマ初登場だが、非常に個性的な役柄を演じていて会心の演技である。初めて見たときは「これ誰?」と思ったほどの存在感。後は概ね倉本ドラマの常連が脇を固めている。北島三郎は特別出演という枠で初回と最終回のみの登場である(回想シーンでたびたび出てくるが)。
 ケン(時任)、アキラ(陣内)という2人の若者が、地元の先輩、次郎(北島)の(カナダでライスカレーの店を始めるから手伝いに来いという)大風呂敷に乗ってカナダまで行ってしまうが、その先輩が失踪していなくなっていたというのが振り出し。このケンとアキラ、高校では野球に明け暮れ英語はからっきし、コミュニケーションにも困る有様で、とりあえず次郎を探したりするが、見つからず、方々をさまようことになる。その後、いろいろな人々と出会い、そして別れを迎える。まさに青春の1ページである。出会いや別れは、彼らの地元、銚子の人々との間でも起こり、カナダ、銚子の二層構造がドラマに重厚さを与えている。
 あちこちに倉本作品らしい恥ずかしい表現も一部あるし、悪ノリのシーンも結構多いが、いろいろな細かい部分にリアリティがあり、それぞれの登場人物に魅力があって、ストーリーに無理がない。そのため、自分を登場人物と同じ境遇に置くという見方ができる。こういう点は、最近のドラマに著しく欠けている部分である。それに最近のドラマみたいにやけに人が死んだりということもない。人の死は、言うまでもなく現実世界では重いものである。ドラマの中であっても軽々しく扱ってしまうと、極端にリアリティがなくなってしまう。人の死はやはり重いものでなければならない。その辺の表現も実に良い。決して完璧なドラマではないが、(特に若い頃の)人との出会いや別れについて思いを馳せることができる作品である。見た後は、良い作品に接した後の爽快感が残る。
★★★★

追記:
 今見ると、当時の日本人のガイジン・コンプレックスが発揮されていて、見ていて痛々しい感じがする。特に時任演じるケンが、英語がわからず終始愛想笑いしているのがはなはだ痛ましい。ただし演技という視点で見れば最高である。

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様 (1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-05-29 06:46 | ドラマ

『玩具の神様』(1)〜(3)(ドラマ)

玩具の神様 (1)〜(3)(1999年・NHK)
演出:石橋冠
脚本:倉本聰
出演:舘ひろし、中井貴一、永作博美、かたせ梨乃、小林桂樹、根津甚八、佐藤B作、美保純、きたろう、ミッキー・カーチス

面白いものが書けていた頃の倉本作品

b0189364_21072968.jpeg 倉本聰がシナリオを書いたNHKのドラマ。
 『安らぎの郷』同様、主人公は脚本家(二谷:舘ひろし)。視聴率競争にばかり明け暮れる昨今のテレビ・ドラマに疑問を感じ始めていて、ドラマ・シナリオを書くことも以前ほどうち込めず、そのせいか締切も遅れがち。そんなとき、ニセモノの二谷が現れ、方々で詐欺行為を働いているという情報が、本物の二谷の元に入る。同時に二谷には妻の不倫騒動まであり、シナリオが書けない二谷はそのエピソードまでドラマ化するなど、なんだかしっちゃかめっちゃかな状態。一方、ニセ二谷(中井貴一)はよろしくやっていて、しかも弟子までとっているという有様。本物の方が何となく冴えないが、このあたりは倉本聰の自虐ネタも入っているのか。そうそう、当然のことながら、この二谷は、脚本家自分が(ある程度)モデルになっている。この頃、実際にニセ倉本聰が現れ、倉本になりすまして詐欺行為を働いていたということで、そのエピソードをシナリオ化したのがこの作品なんである。
b0189364_21073315.jpeg ドラマは主人公周辺、詐欺師周辺が並列で進行し、しかもそれぞれの周辺にいろいろなエピソードが盛り込まれているため、結構長いドラマではあるが、非常に面白く見ていてまったく飽きない。倉本聰もこの頃は、これだけ面白いドラマが書けていたということがわかる。しかもドラマの低レベル化を随所で嘆いていたり、視聴率至上主義のテレビ界を批判していたり、いろいろな主張も盛り込まれている。こういう部分は、ある程度時間が自由になるテレビ・ドラマだからできることで、実にドラマ的な部分とも言える。あまりにいろいろなものが盛り込まれているため、少々雑多な印象もあるが、これもテレビ的で、さほど気にならない。いかにもテレビらしい、ドラマらしいドラマと言えるかも知れない。
 ただし、山田ドラマのような強烈なテーマはなく、見た後で肩すかしを喰らわされたような印象は残る。とは言え、人間の善意や信頼などが最後まで貫かれているため、見た後は気分の良さが残る。そういう点でも「良いドラマ」だと思う。
 キャストはどれも非常に好演で、演出もなかなか見事に決まっている。堺雅人がエキストラ並みのチョイ役で出ていたようだ(おそらくAD役)が、はっきりとは確認できなかった。
第17回ATP賞2000優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『安らぎの郷(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-05-27 07:05 | ドラマ

『旅立つ人と』(ドラマ)

旅立つ人と(1999年・フジテレビ)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
出演:市原悦子、渡瀬恒彦、吉岡秀隆、大路恵美、井川比佐志、下條正巳

b0189364_19350596.jpg逝く人、見送る人

 『大丈夫です、友よ』の翌年、同じ製作局(東北新社クリエイツ、フジテレビ)で、似たようなスタッフ(プロデューサー、演出など)、似たようなキャストで作られた山田ドラマ。主役夫婦は前作同様、市原悦子と井川比佐志。井川比佐志は、『大丈夫です、友よ』や『友だち』同様、嫁に少しやきもちを焼く普通の頑固親父を好演。市原悦子も、それから他のキャスト(吉岡秀隆、大路恵美、下條正巳)も皆ものすごく良い味を出している。魅力的な登場人部は、山田ドラマらしいと言える。
 余命わずかの男(渡瀬恒彦)が街で見かけた見知らぬ女性(市原悦子)、普通のおばさんなんだが男にとっては当時魅力的に映ったらしいその女性に、死ぬ前にもう一度逢いたいと思うところがストーリーの発端である。妙な申し出を受けて最初はきっぱり断っていたが、次のシーンで見舞いに行っているという、いわゆる「ドラマチック・アイロニー」が使われていたりして、演出も楽しい。息子役の吉岡秀隆と井川比佐志の掛け合いなんかも実に良い。会話や雰囲気が楽しいこういったドラマは今はほとんどないが、良質の作品にはこういう生きた味わいがある。ドラマのスタンダードはやはりこのあたりに置いておきたいものである。
b0189364_19351023.jpg それはさておき、ストーリーは、山田ドラマらしく賑やかに進んでいくが、やがてその中にテーマが明確に現れてくる。つまり、逝く人とその周辺、そして送る人の有り様などが問われる展開になってくる。さすがの山田ドラマである。自分が死んでも生きているうちに誰かに話しておけばその人の記憶の中にその事実が残るというような気の効いたセリフが飛び出してくるのも山田ドラマらしい。そういう意味でも見所満載である。
 同じ山田作品の『ふぞろいの林檎たち』のIIかIIIで、看護師の陽子が死にゆく患者を愛してしまうというモチーフがあったが、このドラマはあそこからピックアップして、仕立て直したのではないかというようなストーリーである。また、『今朝の秋』『早春スケッチブック』でも、死に関する強烈な問いかけがある。こういう痛切な問いかけないしは明確なテーマがあると、ドラマ、あるいは映画でもそうだが、重厚さが増して、その価値が一段と上がるというものである。もっともそれは書く方にそれ相応の思想なり哲学なりがなければ無理で、ちょっとやそっとの書き手ではやはりなかなか良いものは書けない。それを考えると、今のドラマにこれだけのグレードを期待するのはやはり無理なのか……と考えてしまう。
ギャラクシー賞月間賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『やがて来る日のために(ドラマ)』
竹林軒出張所『大丈夫です、友よ(ドラマ)』
竹林軒出張所『友だち (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2017-05-25 07:34 | ドラマ

『大丈夫です、友よ』(ドラマ)

大丈夫です、友よ(1998年・フジテレビ)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
出演:市原悦子、藤竜也、深津絵里、柳葉敏郎、井川比佐志、坊屋三郎

魅力的なキャラが山田作品らしい

b0189364_20591644.jpg ある中規模アパレルメーカーが、関連会社の倒産で危機に陥ってしまう。その社長である浩司(藤竜也)が失踪したため、社員の洋子(深津絵里)と取引銀行の銀行マン、智之(柳葉敏郎)が心当たりを探しに行く。彼らの憶測通り、浩司は命を絶つことを考えており、死ぬ前の最後に一目ということで自分の故郷に帰っていた。そこでたまたま昔の同級生、良子(市原悦子)に会うところから話が展開していく。この後、かなりいろいろな偶然が重なって、浩司、良子組と洋子、智之組が長崎のハウステンボスに行き、また良子の夫、昭夫(井川比佐志、彼も浩司と良子の元同級生だが)までハウステンボスに行き、そこで全員が出会うというかなり強引な展開になる。しかも実は洋子が昭夫と良子の、家出した娘だったと来る。この辺かなり無理がある強引な設定で、ともかく安いドラマ風に話が進んでいく。
 このようにストーリーはいささかご都合主義ではあるが、そこは山田ドラマ、ディテールは非常に巧みに描かれていて、どの登場人物も非常に魅力的である。昭夫の立場からは、東京で出世している同級生と、地元で失業しているみじめな境遇の自分とを比べてしまう。世の中は随分不公平にできていると思うわけだが、東京で出世している(と思っていた)同級生、つまり浩司がそれほどうまく行っておらず、実際はどん底で死を考えているという有様で、それを思うと、何が幸せかわからないということになる。浩司の「結局人生トータルでならしたら大体公平にできている」というセリフがなかなか味わい深い。
 こういう古い世代に対峙する若い世代、つまり洋子たちがまた魅力的で、古い世代が持っているひがみとかきしみとかいったものと別次元で存在しているのが実に気持ち良い。特に洋子が、ちょっと天然っぽいにもかかわらず実は結構したたかで、そういう手の内を智之に明かして驚かすなど、はなはだインパクトが強いキャラである。深津絵里の演技が良いのか、あるいはキャラクターがよく描けているのかわからないが(おそらく両方なんだろう)、非常に魅力的である。
b0189364_20592367.jpg 妻の不倫疑惑に憤る夫は、これも山田ドラマの常連、井川比佐志が演じているが、役回りは『友だち』と同じである(性格描写は少し違う)。妻の良子役は、この頃よく山田ドラマに出ていた市原悦子で、この2人、2005年の『やがて来る日のために』『旅立つ人と』でも主演夫婦役を演じている。演出は、これも過去の山田ドラマを何度も演出した、元NHKの深町幸男。山田太一にとっては、馴染みの人々に囲まれ、安定した力を発揮できた作品と言えるのではないか。
 ただ先ほども言ったが、あまりに偶然に頼りすぎなのが、らしくない。骨の部分にあまりにリアリティを欠いているとやはり見ている方は白けてしまう。また、登場人部の名前がいちいちテロップで表示されるという演出も珍妙で疑問である。ドキュメンタリーじゃないんだ。こんな演出、バカバカしいので二度とやらない方が良い。
第53回芸術祭優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『やがて来る日のために(ドラマ)』
竹林軒出張所『旅立つ人と(ドラマ)』
竹林軒出張所『友だち (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『ながらえば(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2017-05-23 06:58 | ドラマ

『レ・ミゼラブル』(1)〜(4)(ドラマ)

レ・ミゼラブル (1)〜(4)(2000年・仏)
演出:ジョゼ・ダヤン
原作:ヴィクトル・ユーゴー
脚本:ディディエ・ドゥコワン
撮影:ウィリー・スタッセン
音楽:ジャン=クロード・プティ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ジョン・マルコヴィッチ、クリスチャン・クラヴィエ、ヴェロニカ・フェレ、シャルロット・ゲンズブール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、エンリコ・ロー・ヴェルソ、ジャンヌ・モロー

『レ・ミゼラブル』のほぼ完璧なドラマ化

b0189364_19100159.jpg ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』を約6時間のドラマにしたもの。『レ・ミゼラブル』は、これまでたびたび映画化やドラマ化、あげくはミュージカル化されているほどの名作だが、このドラマは決定版と言えるほどのできである。原作にもかなり忠実で、主役を演じたジェラール・ドパルデューが「時間の制約から原作の改変・短絡が避けられない映画化に対し、時間をかけて忠実に描写出来る長編ドラマのメリットを認め、プロデューサーも兼任した」(Wikipediaより)という作品である。原作の『レ・ミゼラブル』を堪能するにはこれ以上ないドラマである。
 このドラマ、非常に丁寧に作られている上、しかもキャストが素晴らしい。ジェラール・ドパルデューのジャン・ヴァルジャン、ジョン・マルコヴィッチのジャヴェール、ヴィルジニー・ルドワイヤンのコゼットは秀逸で、これ以外のキャストは考えられないと思わせるほどである。美術や衣装も素晴らしく、原作本を読む代わりに映像を見ることの利点を十分に感じることができる。
 このドラマ、各回1時間半×4回分で構成されているが、第1回は特にフランスの救いようのない下層社会が描かれ、そのひどさは見るに堪えないほどで、おかげで途中何度も中断を余儀なくされた。つまりそれくらいよくできたドラマということを言いたいわけだが、第2回以降も、ジャヴェールに追われるヴァルジャンの構図を中心に、それを取り巻く人々のさまざまな人生模様が絡んでくる。一方でフランス革命や7月革命が背景として描写されるなど、時代とそれに翻弄される人間の描写が素晴らしい。
 序盤は徹底したリアリズムで描かれていくが、真ん中にどっしりと置かれるのは理想主義的人間像で、それをジャン・バルジャンが体現していく。バルジャンとジャヴェールの絡みは、さしずめ性善説的な人間観と性悪説的な人間観のぶつかり合いのようにも見え、善であろうとするバルジャンと、悪の道にどっぷり嵌まり込んだテナルディエの絡みも、性善説と性悪説とのぶつかり合いのように見える。ドラマチックなストーリーでありながら、明解なテーマが随所に顔を覗かせる。見る者を引っ張り込んで離さないストーリー展開はさすがである。ただこのドラマ版、ちょっと偶然に頼りすぎな面があって(原作については詳しくは知らない)、そこら辺がちょっと引っかかるところではある。とは言えこれだけのドラマはちょっとやそっとでは作れないだろうし、優れたフランス文学を映像で堪能できるというのも、このような上質のドラマがあるゆえである。僕自身は、19世紀フランス文学の偉大さに触れたような気がしている。随所で流れるテーマ音楽もロマン派的で良い。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『原作と映画の間』
竹林軒出張所『隣の女(映画)』
竹林軒出張所『カミーユ・クローデル(映画)』
竹林軒出張所『マルコヴィッチの穴(映画)』

by chikurinken | 2017-04-19 07:09 | ドラマ

『さらば国分寺書店のオババ』(1)〜(10)(ラジオドラマ)

NHK-FMふたりの部屋
さらば国分寺書店のオババ (1)〜(10)
(1981年・NHK)
原作:椎名誠
脚本:津川泉
出演:伊武雅刀、佐々木允、武知杜代子

椎名誠と伊武雅刀の黄金タッグ

b0189364_19024079.jpg ここでラジオドラマを取り上げるのは珍しいが、かつてはよくラジオドラマなどというものを聞いたものである。僕自身も今と違って時間に余裕があったせいかも知れないが、そもそもラジオドラマ自体が今より多かったような気がする……そうでもないのかな。僕自身がラジオをよく聞いていたせいかも知れない。今回紹介する『さらば国分寺書店のオババ』は81年の放送時に聞いたもので、椎名誠が同作でエッセイストとしてデビューして2年後の放送である。そのため椎名誠もまだそれほどメジャーではなく、一部のマニアに受けていたというような時代である。僕自身もこの放送を聞いた時点ではまだ椎名作品を読んだことがなかったんだが、この放送のインパクトが強かったため、その後『本の雑誌』を買って読むようになった。あ、この『本の雑誌』というのは椎名誠が編集していた雑誌なのね。
 さて、この放送であるが、15分×全10回という代物で、月曜日から金曜日の夜11時頃に放送された。ドラマのほとんどの部分、つまり原作の地の文は伊武雅刀が読む……というか演じる。伊武雅刀も当時まだそれほどメジャーではなく、僕はこのドラマで初めて「いぶまさとう」という名前を聞いたのであった。そして、この伊武雅刀のナレーションがもう、すごくいい。椎名誠の初期のスーパーエッセイは、世の中のいろいろなことに怒ったり考察したりというものなんだが、その怒り具合の表現、妙ちきりんな考察の表現などが、これ以上ないくらいはまっている。「椎名役は伊武雅刀」という定番になっていたとしてもおかしくない。実際この後同じ枠で放送されたラジオドラマ『気分はだぼだぼソース 日本の異様な結婚式について』(椎名誠原作)でも伊武雅刀が怒って絶叫しており、僕なんぞ聞いていて大笑いしたのだった。
 このラジオドラマは『さらば国分寺書店のオババ』というタイトルになっているが、半分以上は『かつをぶしの時代なのだ』のネタである。もちろん『さらば国分寺書店のオババ』のネタも入っていて、それぞれが非常にうまくブレンドされていて、知らなければ原作は元々1冊の本なのではないかと勘違いするほどである。毎回最後に「オババの部屋」などというコーナーもあって、聴取者を楽しませる工夫もある。また第9回、第10回には椎名誠本人が登場し、伊武雅刀と対話するというスペシャル企画もあって、本来であれば音源をアーカイブしていてほしいほどの傑作であったわけだが、残念ながら現在この音源が発売されているなどということはまったくない。ところがそれがYouTubeに登場していたのである。投稿した方によると「掃除してたら懐かしいカセットテープが出てきました。」ということらしいが、ありがたきこと限りなしである。そういうわけでYouTube経由で、全10回分存分に堪能し尽くした。『日本の異様な結婚式について』の方ももう一回聞いてみたいが、現状ではYouTubeにはない。もっとも残っているかどうかもわからない。奇跡的に残っていて、それを奇跡的に公開してくれる人がいたらなーと思うが、たとえ登場したところですぐに当局が消したりするんだろう。著作権を主張するのは当然だと思うが、それなら別の形で提供しろよと思う。ブツはないくせに、俺のだから勝手に人に見せたらいけんよなどというのは少々虫が良すぎるのではないか。何らかの手段で音源を集めるなりして、有料でもかまわないから公開するのが筋ってもんじゃないかなと思う。元々無料で公開していた作品なんだからあんまりうるさいことを言うなとも思う。
 この間の『快刀乱麻』のケース(竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』を参照)もそうだったが、こういった草の根的、ゲリラ的な一般公開は(本当なら権利がないにしてもだ)、やはりインターネットの一番の魅力と言える。そしてそれがYouTubeの魅力でもある。(著作権の観点から考えると)不謹慎かも知れないが。
★★★★

参考:
YouTube『NHK-FM ふたりの部屋 さらば国分寺書店のオババ 1』
竹林軒出張所『かつをぶしの時代なのだ(本)』
竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』

by chikurinken | 2017-04-17 07:01 | ドラマ

『幕末グルメ ブシメシ!』(1)〜(6)(ドラマ)

幕末グルメ ブシメシ! (1)〜(6)(2017年・NHK)
演出:山内宗信、金澤友也、雫石瑞穂
原作:土山しげる
脚本:櫻井剛
出演:瀬戸康史、草刈正雄、田中圭、酒井若菜、三吉彩花、平田満、徳井優、クロちゃん

カラスミをわざわざまた煮てダメにしたようなドラマ

b0189364_06573560.jpg 『勤番グルメ ブシメシ!』というマンガが原作のドラマ。といっても内容は全然違うような……。原作は読んでいないが、基になっているネタが酒井伴四郎の日記だそうで(竹林軒出張所『幕末単身赴任 下級武士の食日記(本)』を参照)、原作にはまったくドラマチックな要素はなさそうである。
 ドラマでは、主人公の藩の殿さまが中間(下級武士)の恰好でお忍びで町に出て主人公と絡んだり、あるいは料理合戦をやったり、いかにもな筋立てになっている。あまりにやり過ぎでちょっとあほくさい感じさえするが、ドラマとしてはそれなりに面白く、きちんと成立している。
 主人公の名前は酒井伴四郎ではなく「酒田伴四郎」で、叔父貴は宇治田平三ではなく「宇治井平三」になっている。基本的な人間関係は原作に従っているが、かなりデフォルメした人物像になっている。原作とはまったく別物のドラマと考える方が良い。
 先ほども言ったようにそれなりに面白くできてはいるが、元々の酒井伴四郎の日記の内容がかなり興味深いものなので、取り立てて大げさなストーリーにせず、元の話を活かしたものにした方が良かったのではないかと感じながら見ていた。製作者側が、今の視聴者はこのくらい濃い味にしないと見向きもしないと思ったのか。薄味の上品なドラマも見てみたい昨今である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『江戸古地図の旅 〜江戸東京 迷宮の道しるべ〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『幕末単身赴任 下級武士の食日記(本)』

by chikurinken | 2017-04-15 06:58 | ドラマ

『母をたずねて三千里 完結版』(アニメ)

母をたずねて三千里 完結版(1976年・日本アニメーション)
演出:高畑勲
原作:エドモンド・デ・アミーチス
脚本:深沢一夫
場面設定・レイアウト:宮崎駿
キャラクターデザイン・作画監督:小田部羊一
音楽:坂田晃一
出演:松尾佳子、二階堂有希子、信沢三恵子、永井一郎、東美江(アニメーション)

「完結版」じゃなくて「簡潔版」でしょ

b0189364_19190304.jpg 1976年、『フランダースの犬』の後に放送された『カルピスまんが劇場』の1本。なお次の年に放送されたのは『あらいぐまラスカル』。
 監督は『アルプスの少女ハイジ』の高畑勲、場面設定・レイアウトに宮崎駿が参加している。絵のタッチは『ハイジ』に似ている。今回見たものは、元々52話だったものをなんと1時間半に凝縮しているものであるため、ダイジェストも良いところというような作品になっていて、あまりに端折っているため途中わかりにくい箇所も結構あった。もちろん全部あわせて20時間以上のものを1.5時間にするんだから重々承知ではあるが、ホントだったら全部見た方が良いんだろなーとは感じた。
 原作はエドモンド・デ・アミーチスという人のごく短い話だそうで、それを山あり谷ありの冒険談に仕上げたのはアニメスタッフの功績である。ストーリーは波瀾万丈で、もし最初の放送時に目にしていればきっと毎週見続けるだろうと思う。放送時、僕は『カルピスまんが劇場』を一切見ていないんだが、質の高い作品が揃っていて、これについては同時代に生きた者として大変もったいなかったと感じている。
 『カルピスまんが劇場』(今では『世界名作劇場』というらしい)は、その後、自分の子どもが小さいときに何本か再放送されたものを見せ、そのときに僕も一緒に見たため『ハイジ』と『ラスカル』は概ね見ており、『フランダースの犬』もちょっとだけ見ているが、この『母をたずねて三千里』はまったく見ていなかった。タイトルから内容を想像できるということもあるかも知れないが、他の作と比べると知名度が落ちるということも手伝ったような気がする。だが最近、このアニメの音楽担当が坂田晃一だったことを知ってから俄然関心が湧き、それで見ることにしたといういきさつである。とは言ってもさすがに52話全部見るというのはなかなか踏ん切りが付かず、そうこうしているうちにダイジェスト版があることを知ったため、この完結版に手を出したというわけ。
 音楽については、テーマ曲からしてフォルクローレ風にまとめられていて、南米の雰囲気が醸し出される。テーマ曲は、坂田晃一らしくリリカルで魅力的な曲調で、坂田の才能が遺憾なく発揮された見事な作品である。
 映像の方も南米大陸の壮大さ、美しさが表現されていて、大変魅力的。優しい人たちが(不自然でない形で)支援してくれたり、一方で冷たい人たちに主人公があしらわれたりするなど、ストーリーにダイナミズムがあって目が離せない。人の優しさをありがたく感じる良い話が目白押しで、『ハイジ』同様、派手さはあまりないが、心に染みいる良く練り上げられたストーリー。少年少女に見せたくなるようなアニメである。時間があれば通しで全部見たいところであるが、やはり踏ん切りが付かない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『さよならの夏 〜それはルフラン 頭の中で響くの〜』
竹林軒出張所『朝倉理恵ファンがいるかは知らんがやっぱり「ひとさし指」が出た』
竹林軒出張所『昨日、悲別で (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』

by chikurinken | 2017-04-13 07:18 | ドラマ

『タイガーマスクW』(アニメ)

タイガーマスクW(2016年・東映アニメーション)
演出:小村敏明
原作:梶原一騎、辻なおき
出演:八代拓、梅原裕一郎、三森すずこ(アニメーション)

b0189364_22215895.jpgこれも一種の懐かしグッズ

 夜中に『タイガーマスク』が復活していると聞いて、タイガーマスク世代である僕は早速見てみたのであった。
 主人公がナオトで、その恋人がルリコ。その上虎の穴が存在していて、ミスXという女性が虎の穴の代理人をやっているなど、前作との繋がりを示唆させる部分が多いのはポイントが高い。しかも僕が見始めた回ではなんと「覆面ワールドリーグ」などという大会が開催されていて、タイガーマスク世代にとっては感涙ものである。その上、ミスタークエスチョンまで出てきた日にゃ感動を通り越して苦笑である。もっともこんなことを書き連ねたところで、昔の『タイガーマスク』を見たことのない人にとってはちんぷんかんぷんだろうが、要するに旧『タイガーマスク』の設定およびキャラクターをかなり意識的に踏襲しているということである。何よりかつての『タイガーマスク』に登場していた、主人公伊達直人の弟分である高岡拳太郎(ケン高岡)が、そのまま老人化して出ていて、しかもタイガーマスクWを育てていたというのだから、まさにその後の『タイガーマスク』である。このケン高岡によって、昔のタイガーマスク周辺のあれやこれやの事情が語られたりするのも良い。
 とは言うものの、このアニメ、かつての『タイガーマスク』のような重さというか救いようのなさがまったくなく、全体を通して結構軽い。お笑い要素もあちこちにあり、しかも現在の新日本プロレスのキャラが出てきて、どこか新日本プロレスの宣伝材料みたいな臭いも漂う。それに(今でも存在している)虎の穴が主催する(のかよくわからないんだが)新しいプロレス団体GWMも、なんだか存在自体がエンタテインメント的で、一方で虎の穴は厳しい掟で縛られているなど暗い要素があるのに、その辺りがどうも整合性が取れていない。やっぱりあの50年前の世界を現在に持ち込もうとすることに無理があるんじゃないかという気がする。そうはいっても、我々旧世代が見ると、先ほど言ったような要素以外に、懐かしのレッドデスマスクやブラックバイソンがさりげなく登場したりするとちょっとテンションが上がるのである。そういう懐かしグッズと考えると良いかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『虎だ! お前は虎になるのだ!』
竹林軒出張所『ちびっ子レミと名犬カピ(映画)』
竹林軒出張所『追われる日々』

by chikurinken | 2017-04-11 06:28 | ドラマ

『やすらぎの郷』(1)〜(5)(ドラマ)

やすらぎの郷 (1)〜(5)(2017年・テレビ朝日)
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
脚本:倉本聰
出演:石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、八千草薫、藤竜也、ミッキー・カーチス

まだ5回だから何だが
すっかり枯れてしまっている


b0189364_19290211.jpg 倉本聰の新作ってことで少しばかり期待したが、本当に後ろ向きで枯れきっているという印象のドラマである。
 第5回目までに関してだが、セリフが説明的で、ナレーションも過剰である。しかも設定があまりにも不自然。短編小説とか1時間ドラマだったら耐えられるかも知れないが、これから約3カ月間も付き合うのはちょっと大変そうな気がする。ドラマの中に、先へ先へと進めるだけのダイナミズムがないため(1回あたり12〜13分のドラマだが)見続けるのも苦痛を感じる。
 もちろんまだ5回目だし、今後なんやかんやエピソードが入ってきていろいろと展開するんだろうが、そもそも舞台になっている、テレビ業界人だけが招待されるという(しかも入居者の費用がほとんどかからない)豪華老人ホームの設定があまりにリアリティがなさ過ぎで、その段階でもう見ていてアホらしくなる。なお付け加えると、入居者は(元大女優を含む)元大スターが多く(消息がわからなくなっていた大スターたちが実はここに住んでいたというようなことになっている)、そこにかつてシナリオライターだった主人公が新しく入居してくるというストーリーである。それから、ここにかつてのスターたちが入っていることは世間には完全に秘密にされているという嘘みたいな設定にもなっている(今後つじつまがあわなくなりそうな予感さえする)。
 こういう設定を聞くと、倉本聰の夢想をそのまま描いたのかとも思ってしまうが、こういう設定で話を進めるとなると、スターさんたちの過去の栄光が物語の中心にならざるを得ないような……つまり過去および懐かしさ中心に話を展開することになるんじゃないかと推測されるが、こういうふうに懐かしさが物語の中心に鎮座してしまうと、本当に精気が無い抜け殻のような枯れたドラマになるんじゃないかというふうに危惧する。今後精気が盛り込まれるかどうかがこのドラマの唯一の注目点だが、本当のところあまり関心が湧かない。
 キャストは超豪華だし、石坂浩二と浅丘ルリ子の共演なんかもう二度とないだろうから、それなりに見所もあるんだろうが、こんな枯れつくしたような作品が世間に受け入れられるのか、そのあたりは疑問である。「シルバータイムドラマ」などと名うっているんで年寄り向けなんだろうし、初回放送で視聴率が検討していたとか話を聞くが、個人的には大して興味が湧かず、これからも見続けるかどうかはわからない。
★★★

追記:
 ドラマでは登場人物の背景(出演作品とかその人のエピソードとか)がいろいろ出てきて(ほとんどはナレーションで説明される)、こうやって登場人物の背景を設定するのが倉本聰のシナリオ流儀らしく、つまりドラマに直接関係ない人物史を描き、それを随時使うというのが倉本流らしいんだが、これがもうとてもわざとらしくてうるさい感じがするのである。倉本作品を見ると、ときどき居心地の悪さを感じるんだが、おそらくこういうのが原因なんだろうな……ということに今回やっと気が付いた。物語の表に出てこない部分はないことにして良いんじゃないかと思うし、むしろそういう部分の処理の仕方が文学やドラマの醍醐味であり面白さではないかというのが僕の考え方である。

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-04-09 07:28 | ドラマ