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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 189 )

『季節が変わる日』(ドラマ)

季節が変わる日(1982年・日本テレビ)
演出:久野浩平
脚本:山田太一
出演:八千草薫、岡田真澄、小池朝雄、早川勝也、キャロライン、ハナ肇

教育についていろいろ考えるドラマ
なかなかの力作


b0189364_08131479.jpg 不登校の息子をある山間の寄宿学校に入れることにした女性(八千草薫)と、非行の娘を同じ学校に入れることにした男性(岡田真澄)が恋愛関係に陥っていくというストーリー。この学校というのが軍隊式で、子ども達のヤワな根性をたたき直すというコンセプトの施設。おそらく戸塚ヨットスクール(竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』を参照)がモデルだと思われるが、ドラマではこのような施設に対する批判精神も顔を覗かせる。一方で荒れる子どもをお払い箱にした親が見せる安心感なども描かれ、少し辛辣さも感じる。
 これも日テレ製作のドラマで、ややリズム感を欠いている上、ホテルのベッドシーンなんかは(以前の日テレドラマらしさを感じるような)ちょっと気恥ずかしい演出で、ちょっとどうよと思うようなものであったが、先が読めないストーリー展開はさすが山田ドラマである。子どもを寄宿学校に入れて親たちがよろしくやっているということには反撥も感じるが(主人公の口からもそういうセリフが語られる)、しかしこの親たちにしても、不倫ではないわけだし恋愛したって問題はないわけで、こういう(視聴者という)第三者による(一方的で)禁欲的な考え方は理不尽である。本来は。だがまあそういう感慨を持つのも自然といえば自然で、一方でそういう紋切り型の考え方をしてしまう自分が何やらみっともなくもあり、なかなか厳しいところを突かれたという感じが残る。かくのごとく、いろいろ考えるところが多いドラマで、そのあたりも山田ドラマらしいと言える。
 教育の問題は難しいし、特にこのドラマが製作された時代は不登校に対する定見がなかったこともあり、親も社会も手探り状態であったと思う。教育の歪みが校内暴力などという形で現れたのもこの少し前の時代で、教育については難しい問題が山積みであった。答えは簡単に見つからないし、今も正答があるわけではないが、社会が以前より柔軟に対処しているのは実感できる。それは教育に対して真摯に向き合った人々の成果でもあるわけで、こういった問題意識の高いドラマも一役買っていたのではないかと思う。実際山田太一には教育論(『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』)もあり、これも大変興味深い本であった。子どもが提示してくる問題に対しては真摯に向き合うというのが唯一の方策なのかなとも思うが、このドラマでも何となくそういう方向性が示されていたように思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-08-10 08:13 | ドラマ

『ちょっと愛して…』(ドラマ)

ちょっと愛して…(1985年・日本テレビ)
演出:せんぼんよしこ
脚本:山田太一
出演:樹木希林、川谷拓三、和田アキ子、河内桃子、篠田三郎、沢田雅美、小倉一郎

冴えない男女のドラマ……だが
やっぱり冴えてる方が良いような


b0189364_21075742.jpg 山田太一脚本の1985年のドラマ。製作は山田ドラマとしては珍しい日本テレビだが、山田ドラマの味は損なわれていない。このドラマは放送時見ておらず、存在すら知らなかった。日テレ放送だったからか。
 婚期が遅れている冴えない男女(樹木希林と川谷拓三)が、結婚相談所を通じて結婚相手を求めるが、なかなか理想的な相手が見つからず……という展開のドラマ。『想い出づくり。』を作るときに「ドラマだけがね、なんかこう2人の男女のきれいなのがいて、後は奉仕するっていうのは……恋敵とかだってね、恋敵という役にもう固定されてしまうわけでしょ。そんなドラマはね、早晩壊れちゃうだろうって思った」という山田センセイ、それを地で行くようなストーリーである。
 確かに美しい男女があれやこれやあって恋愛関係に陥るという話もバカバカしさを感じるが、でもやっぱり恋愛ドラマは美しい男女の方が良いという気もする。このドラマにはキャストレベルでのリアリティはあるが、出ている人が美形の方が見ていて楽しいし、精神的にも盛り上がるんではないかと感じた。もっとも、それは一般的なつまらない恋愛ドラマでの話で、密度が濃いこういうドラマだと、ちょっと冴えない風貌でもOKかなとは思う。一方で、篠田三郎や河内桃子などの美形男女が出てくると、見ているこっちは安心したりする。なお篠田三郎と河内桃子は結婚相談所の職員役で出てくるんだが、主役の2人を鑑みると、これも少し意地悪な配役だと感じる。
 主人公が勤めるのがデパートの紳士服売り場で、しかも紳士服メーカーから直接派遣されているという立場で、主人公の口から「そういうのがあるんです」と語られるが、僕自身はそういうシステムがあることを知らなかったので、そういうもんなんだと感心した。こういう目新しい職業形態が紹介されるのも山田ドラマらしいと言える。主人公の同僚役を務めるのが和田アキ子で、この役が非常に魅力的である。主人公と仕事面で対抗しながらも、主人公の幸せのために尽力するという存在である。和田アキ子の山田ドラマ出演は『輝きたいの』以来(だと思う)。一方主役の樹木希林も山田ドラマの出演は珍しい。『さくらの唄』以来ではないかと思う。なおこの『さくらの唄』だが、久世光彦演出の水曜劇場だったこともあり、樹木希林(当時、悠木千帆)らの出演陣がやたらアドリブばかりやるんで、山田太一が非常に怒って「アドリブは止めて台本通りにやってくれ」と要求した(こういうこともあり、それ以降久世光彦とは組んでいない)という逸話が残っている。それを考えると樹木希林の主役起用は意外である。
 ドラマとしては、途中まで流れがあまり良くなく少々まだるっこしさを感じるが、途中から良い具合のダイナミズムが出て来た。話のテーマとしては『ハワイアン ウエディング・ソング』に似ているが、どちらのドラマもオリジナルで魅力的な作品であることには変わりない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『輝きたいの(1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ハワイアン ウエディング・ソング(ドラマ)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2017-08-09 07:07 | ドラマ

『いちばん綺麗なとき』(ドラマ)

いちばん綺麗なとき(1999年・NHK)
演出:伊豫田静弘
脚本:山田太一
出演:八千草薫、加藤治子、夏八木勲、多田木亮佑、中嶋ゆかり

短時間、少製作費でもこれだけのドラマができる

b0189364_20042549.jpg 茨木のり子の詩「私が一番きれいだったとき」を思い出させるようなタイトルだが、内容もあの詩と共通する要素がある。また、あの詩と同様、反戦テーマも入っていて、うまいこと練り上げられたストーリーである。
 夫に先立たれた女性(八千草薫)のもとに、その夫が不倫していたという情報がもたらされる。その情報を持ってきたのは、夫の不倫相手の女性の夫(夏八木勲)ということで、不倫された者同士が、それぞれの想いをぶつけ合うという展開になっていく。途中、戦争の引き上げの話がストーリーに絡められ、しかもロードムービー的な味も盛り込まれてなかなか盛りだくさんである。しかも、山田ドラマには珍しく、主演の八千草薫と加藤治子の激しいぶつかり合いなどまである。それも、向田邦子作品かと思わせるような激しさである。実際、この2人、(後から思い出したんだんが)向田作品の『阿修羅のごとく』の長女役と次女役で「さもありなん」という感じ。向田邦子へのオマージュだったんだろうか。
 配偶者の死後、その不倫が発覚するというストーリーは『魂萌え!』を思い起こさせるが、発表はこちらのドラマが先である。もしかしたら桐野夏生、このドラマからモチーフを拝借したか。今ではよく扱われるモチーフになったが、もしかしたらこのドラマが元祖かも知れぬ。
b0189364_08141816.jpg 先ほども言ったように、いろいろな要素が盛り込まれた盛りだくさんなストーリーだが、セリフの生々しさ、登場人物の行動様式のリアリティなどは、さすが山田ドラマとうならせるようなものである。夫に不倫されていた妻と妻に不倫されていた夫が、配偶者たちの行動を推測して怒りを感じながらも「(配偶者の不倫の話について)こんな話他の人にできない」などと漏らすさりげないセリフに思わずうなってしまう。
 なおこのドラマ、舞台が名古屋で、京都の舞鶴まで舞台が広がっていく。おそらくNHK名古屋の製作ではないかと思うが、製作に関する詳細な情報がタイトルバックに出なかった。夜9時から1時間15分の『NHKドラマ館』という枠で放送されたらしいが、僕自身は見ていない。この頃はほとんどの山田作品はチェックしていたがこれについてはチェック漏れであった。主演の3人を除くと無名の俳優ばかりで、しかも家の中のシーンまでロケで撮影しているなど(ただしそれはそれで良い効果が出ている)、製作費が少なかったのかと勘ぐったりもするが、作品のグレードは高い。1時間15分枠、しかも少なめの製作費でこれだけのものができるとなれば、今放送されている他の多くのドラマは一体何なんだと感じてしまう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『再会(ドラマ)』
竹林軒出張所『旅の途中で(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-08-08 07:04 | ドラマ

『富士ファミリー』(ドラマ)

富士ファミリー(2015年・NHK)
演出:吉田照幸
脚本:木皿泉
出演:薬師丸ひろ子、小泉今日子、吉岡秀隆、高橋克実、ミムラ、片桐はいり、中村ゆりか、マキタスポーツ、小倉一郎、仲里依紗

取って付けたようなエピソードがどうもね

b0189364_20180321.jpg 昨年の正月に放送されたドラマだが、今の今まで見ていなかった。つまりハードディスクの肥やし状態。
 木皿泉の脚本で、木皿泉ドラマの常連が登場するドラマ。あまり起伏のない癒やし系のドラマであろうという予測に違わず、木皿泉らしい穏やかなドラマであった。
 いくつかの小エピソードを盛り込んでひとつのストーリーにするのはこの脚本家らしいが、やはりどれも大して面白味を感じない。もちろんこれはデキが悪いわけではないため見る人次第ということだが、僕などはこういったドラマには物足りなさを感じる。お化けが出たり吸血鬼が出たりするのもやり過ぎでくだらないし、それに20年間連続で女性の誕生日にプロポーズする(しかも断り続ける)というのもリアリティがなさすぎ。設定自体が多分に童話的で、これを受け入れられるかどうかも人によるんだろう。「誰でも今のまま生きてて良いんだよ」というのがこのドラマのメッセージで、その辺はまずまずと言えるが、あまりにリアリティを欠いたこの類のドラマを、僕はやはりあまり歓迎したくないと思うのである。
第32回ATP賞テレビグランプリドラマ部門最優秀賞受賞
★★★

追記:
続編の『富士ファミリー2017』も録画しているが、おそらく見ないと思う。

参考:
竹林軒出張所『すいか (1)〜(10)(ドラマ)』
竹林軒出張所『昨夜のカレー.明日のパン (1)〜(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『おやじの背中 (2)〜(6)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-08-06 07:17 | ドラマ

『秋の駅』(ドラマ)

秋の駅(1993年・フジテレビ、福島テレビ)
演出:河毛俊作
脚本:山田太一
出演:田中好子、布施博、益岡徹、村田雄浩、小倉久寛、金山一彦、大森博、中原ひとみ、丹阿弥谷津子、千秋実

ストーリーの使い回しか

b0189364_20354651.jpg 山田太一のドラマだが、随分小粒な印象がある。プロットも割合単純である。
 田舎の駅を舞台に、嫁が来ない男たちが、ちょっとマドンナ的な女性(離婚経験はあるが)にアプローチしていくという、『幸福駅周辺』みたいなストーリーである。もしかして山田センセイ、使い回しですかと聞きたくなるくらい、設定が似ている。また将来に絶望した老夫婦が死に場所を探すというストーリーも『冬構え』を思わせる。そういうわけで、このドラマについてはあまり目新しさがない。もちろん、ドラマには起伏がありそれなりにうまく作られているが、山田ドラマとしては少し肩すかしを食った印象。
 キャストも山田ドラマとしては比較的珍しいラインアップであるが、活躍している俳優ばかりで違和感はまったくない。また、どの役者もそつなく演技していて申し分ない。ただしキャストの方言(おそらく福島弁)が少し聞き取りづらく、セリフがわかりにくいという部分が難点であった。福島テレビの記念番組だったらしく、そのせいでリアルな福島方言をキャストに話させたのかも知れないが、聞き取れなければしようがない。そういう点も、僕にとってはマイナスポイントだった。期待が大きかっただけに失望感も大きかったが、山田ドラマらしくドラマのクオリティはそれなりに高い。
第19回放送文化基金賞優秀賞受賞作品、第30回ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『幸福駅周辺・上野駅周辺(本)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-07-14 07:35 | ドラマ

『夏の一族』(1)〜(3)(ドラマ)

夏の一族 (1)〜(3)(1995年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
出演:渡哲也、竹下景子、宮沢りえ、加藤治子、藤岡琢也、柄本明、永島敏行、大野雄一、森本レオ、柳沢慎吾

結局『冬の一族』はなかった

b0189364_20295294.jpg 山田太一の『一族』三部作(『春の一族』、『秋の一族』、『夏の一族』)の最後の作品。このドラマはこれまで3回くらい見ていて、何度見てもセリフのうまさに感心する。それに複数のプロットを巧みに組み合わせた重厚な構成にも感心する。山田太一の最高傑作の1本と言える。
 自動車会社の設計部門で長年設計に関わっていた中年男(渡哲也)が、ある日突然販売店に出向になった。名目的には出向ではあるが、実質的には肩たたきということで、それでも仕事にしがみついて、上司(藤岡琢也)のいじめにも負けずに真面目に取り組む……というのが1つのプロット。この男の家族は一見したところ割合平穏に過ごしているが、娘(宮沢りえ)は妻子持ちの男と付き合っているし、妻(竹下景子)は夫に多少不信感を持ちながら昔の恋人にしきりに誘われたりしていて、こちらも少々危ない感じ。さらにまた主人公がかかわる不登校の中学生、主人公を育てた血のつながりのない「姉」(加藤治子)などとの間にもサブプロットが発生して、かなりいろいろなストーリーが盛り込まれているが、これがまた実にうまいこと調和している。それぞれの人間関係に強い繋がりがあってそれが不自然ではないため、現実性があり、人間関係にリアルな安定感がある。そのためか構成に隙がないように感じる。
b0189364_20374490.jpg 先ほども少し触れたが、このドラマは特にセリフが優れていて、全3回のドラマのあちらこちらに名ゼリフが散らばっている。またそれぞれのキャラクターがもれなく非常に魅力的で、利害が絡んで嫌な面を見せたりしはするが、それでも人間らしさが出ていて、大変気持ちがよい。それぞれのキャストが良い仕事をしているのは今さら言うまでもない。
 ただ難がないわけではなく、特に第3回は、途中からオカルトが入って『異人たちとの夏』みたいになるのは、あくまでも嗜好の問題ではあるが、いただけないと思う。必然性があると言えばいえるし、これも「ブラザー軒」みたいな1つのエピソードと考えればよいのではあるが、そっち方向には持っていってほしくなかったと感じる。また第3回は、セリフで語るシーンが非常に多かった。ただそのセリフの内容にはインパクトがあるので、まったく飽きたりすることはないが、第1回、第2回がドラマとしてあまりによくできていたため、第3回はやや平凡な感じがしたのが残念。
 とは言うものの、これだけの作品は、いかに山田太一といえど、そう何作も書けるものではないと思う。『今朝の秋』同様、日本のテレビドラマの最高到達点と言えるような作品であることは間違いない。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『春の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『秋の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『異人たちとの夏(映画)』

by chikurinken | 2017-07-12 07:29 | ドラマ

『秋の一族』(1)〜(3)(ドラマ)

秋の一族(1994年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
音楽:福井崚
出演:緒形拳、岸恵子、大鶴義丹、原田知世、川原和久、藤岡琢也、平田満

b0189364_20335371.jpg原田知世の代表作

 山田太一の『一族』三部作(『春の一族』、『秋の一族』、『夏の一族』)の1本。3本の中では一番地味と言えるか。過去2回見ているが、内容をほとんど覚えていなかった。だが逆に何度見ても楽しめて良いとも言える。
 かつてみずからの自立のために夫(緒形拳)と中学生の子どもを置いて出ていった中年女性(岸恵子)が、仕事先のシンガポールから日本に戻ってきて、彼らに再会するというところから話が始まる。このあたり2001年作の『再会』を彷彿させる展開である。同時にその息子夫婦(大鶴義丹、原田知世)周辺に起こる事件と、元家族の関係が話の中心部分になる。結果的にいろいろなことが、端から見ると逆説的に映ったりして、世の中ってのはわからないなというような話になる。派手さはないが、人間がよく描かれており、またとぼけた楽しい会話も散りばめられているし、何より魅力的なキャラクターたちは山田ドラマの面目躍如である。
b0189364_20340027.jpg 中でも原田知世が演じる美保が、ちょっと「不思議ちゃん」であるが非常にキュートである。原田知世が素晴らしい演技をしていて、彼女の代表作と言える作品、それがこのドラマである。思えば原田知世、素材は素晴らしいのに大した映画に恵まれなかった、女優としては少々寂しい存在である。しかしこのドラマを見ると、やはり素晴らしいポテンシャルを秘めていることが分かる。また藤岡琢也、平田満らの脇役が面白い存在感を放っているのも山田ドラマならではである。派手さはあまりないが、山田太一の職人芸が存分に発揮された佳作と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『春の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『再会(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『サヨナラCOLOR(映画)』

by chikurinken | 2017-07-10 07:33 | ドラマ

『春の一族』(1)〜(3)(ドラマ)

春の一族 (1)〜(3)(1993年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
音楽:福井崚
出演:緒形拳、十朱幸代、国生さゆり、中島唱子、浅野忠信、藤岡琢也、丘みつ子、天宮良、江戸家猫八、内海桂子、江口ともみ

お節介なキャラが巻き起こす波風

b0189364_20250369.jpg NHKの土曜ドラマの枠で放送された山田太一脚本のドラマ。演出は山田作品でお馴染みの深町幸男、出演も緒形拳、藤岡琢也、『ふぞろい』の中島唱子と常連組が中心。十朱幸代は珍しい感じがするが『あめりか物語』に出演経験あり。国生さゆりは、山田作品はこの1本だけだが、なかなか快演。浅野忠信は本格デビュー間もない頃で、不登校の高校生役。
 ストーリーは、よそよそしい他人同士が集まる環境に、1人の男が入っていって波風を立てていくという、山田ドラマでは割とよくあるパターンである。またその男が謎めいていて、しかも実は元々は相当な実力者だったというのも、山田ドラマの鉄板ネタである。山田ドラマにしては割合ありきたりなネタではあるが、もちろんドラマとしてはまったくありきたりではない。また登場人物たちが抱えているものも多様であるため、見ていても決してワンパターンというような印象は起こらない。毎度ながらよくできたドラマと感じるし、笑ったりいらだったりしながらドラマにのめり込んでしまう。
b0189364_20245839.jpg 東京、本郷にあるある古いアパートに、中年男、中井(緒形拳)が入居するところから話が始まる。このアパートには何人か住人がいるが、当然のごとく顔を合わせても話をしたりすることはない。登場人物たちが語るように「東京のアパートってそういうもの」だ。だが中井は積極的に他人に関わろうとし、考えようによってはお節介が過ぎるんだが、おかげで周囲に波風が立っていくというように展開していく。
 1回1時間半で全3話構成。第3話でかなりのどんでん返しがあるが、ストーリーの軸が変わることはない。そういう点でも、安定感があるよくできたストーリーである。この後タイトルに「一族」がつく作品が同じ枠で2本放送されるんで(『秋の一族』、『夏の一族』)この作品も放送当時評判が良かったことが推測される。どれも秀作ドラマだが「一族」というタイトルには少々違和感がある。個人的には『夏の一族』が一番のお奨めである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『秋の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『春の惑星(ドラマ)』
竹林軒出張所『タクシー・サンバ (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

(ちなみに)謎めいた登場人物が周囲に波風を起こす山田ドラマ
竹林軒出張所『深夜にようこそ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『星ひとつの夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『五年目のひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『ナイフの行方(ドラマ)』

お節介が過ぎるタイプの山田ドラマ
竹林軒出張所『鳥帰る(ドラマ)』
竹林軒出張所『この冬の恋(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-07-08 07:24 | ドラマ

『よその歌 わたしの唄』(ドラマ)

よその歌 わたしの唄(2013年・フジテレビ)
演出:田島大輔
脚本:山田太一
出演:渡瀬恒彦、いしだあゆみ、柄本明、鳳蘭、小倉一郎、瀬戸康史、キムラ緑子、中越典子、山崎樹範、阿南健治

痛ましささえ感じる山田ドラマ

b0189364_20130292.jpg 退官した人類学の元大学教授(渡瀬恒彦)が、「1人カラオケ」している人たちをスカウトして合唱団を作ろうとするという話。と言っても、よくある映画みたいに、本格的な合唱団ができあがるというふうに話が進むわけではない。主人公がちょっと気まぐれでそう思ったという程度で、実際に何人かに声をかけて練習場に来てもらうんだが、全然合唱が行われる気配がないという按配。そこからストーリーが二転三転はするが、話にあまりリアリティがない上に、ドラマの進行がなんだかまどろっこしくて、全盛期の山田ドラマとは大分雰囲気が違う。エピソードもとってつけたようなものばかりで、ドラマにまったくのめり込めなかった。
 しかも最後の方に安っぽい回想形式が使われたりして、演出についてもかなり疑問符が付く。山田太一は演出にも結構口を出しているはずで、そのためこれまでどのドラマも一定の水準が保たれていたが、2010年代のドラマについては、脚本面でも演出面でも往年のキレがないと感じることが多い。そういう意味でもこのドラマは失望の部類に入る。少し痛ましささえ感じる。濡れ衣を着せられる大学教授というネタは、『家へおいでよ』の使い回しか。
 キャストはそれなりだが、いしだあゆみの老い方が痛ましい。彼女が歌うシーンがあるが、歌の方も「ブルーライトヨコハマ」の頃と比べるとかなり痛ましかった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『家へおいでよ (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キルトの家(ドラマ)』
竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-07-06 07:12 | ドラマ

『川は泣いている』(1)〜(4)(ドラマ)

シリーズ・街 川は泣いている (1)〜(4)(1990年・テレビ朝日)
演出:雨宮望
脚本:倉本聰
出演:東幹久、岩城滉一、横山めぐみ、いしだあゆみ、築山万有美、円浄順子、三木のり平、堀内孝雄、森本レオ

「泣いている川」とストーリーの本流には
関係があったのだろうか


b0189364_22484640.jpg 1990年にテレビ朝日で放送された倉本聰作の全4回のドラマ。テレビ朝日と倉本聰というと少し珍しい組み合わせのように感じる。それにテレビ朝日が「シリーズ・街」などというNHK風のタイトルを付けているのも奇異な感じがする。時代か?
 ストーリーの中心となるのは、葬儀屋の息子(東幹久)の青春ターニングポイントで、出会いと別れ、生と死などがテーマになる。途中『愛と死をみつめて』みたいな話も出てきて、いろいろなものがてんこ盛りされた、サービス精神溢れるドラマと言える。ただし取って付けたようなエピソードもありそのためにリアリティを少々欠いてしまった部分もある。
 堀内孝雄が伝説の歌手みたいな役で登場し、彼が劇中で歌う「川は泣いている」という歌がこのドラマのテーマ曲にもなっているが、この歌が演歌調で少々辛気くさい。エンドロールで流されるんだが、サスペンスドラマみたいな雰囲気を醸し出して(しまって)いる。ここだけ見ると、いかにも(かつての)テレビ朝日という感じになる。倉本ドラマとしては少し異色な演出と言える。
 主人公の独白がしきりに入る「北の国から」スタイルは倉本ドラマらしいが、このナレーションが必要以上に説明的であるためかなりうるさく感じる。ドラマの流れを少しぶちこわしている部分もある。説明のために入れているのであればセリフの半分以上は不要である。
 総じてそれなりのドラマという感じもするが、それでも昨今のドラマと比べると内容の密度、テーマ性などは段違いである。多少の古めかしさはあるものの、今見ても十分楽しめる作品である。
 なお「川は泣いている」というタイトルは、主人公の趣味であるカヌーとの関連だが(カヌーに乗っていると日本の川の破壊され具合が身にしみ、川が泣いていると感じるということ)、このテーマはストーリーとは直截結びつかず、なんのためのカヌーの設定かわからない。単に作者が川のことを主張したかっただけなのかと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』
竹林軒出張所『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『玩具の神様 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-07-04 06:47 | ドラマ