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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 201 )

『3人家族』 (1)〜(13)(ドラマ)

3人家族 (1)〜(13)(1968年・木下恵介プロ、松竹、TBS)
演出:木下恵介、中川晴之助、川頭義郎、横堀幸司
脚本:山田太一
出演:竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、沢田雅美、三島雅夫、賀原夏子、中谷一郎、菅井きん、遠藤剛、川口恵子、矢島正明(ナレーション)

ザ・ホームドラマ!

b0189364_15514432.jpg 12年ぶりの『3人家族』。
 前回見たときの印象は以前書いたが(竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』を参照)、今回見てみて、改めてその面白さに感心。キャラクターがどれも魅力的で、いかにもホームドラマという優しさ、安心感がある。ド派手な事件はなく、単に2つの家族の日常が描かれるだけだが、しかし我々見る方の現実というのは概ねそういうものである。これこそがリアリティというものだ。ただ、偶然が多いのが少々難点で、主人公の男女の偶然の出会いはまだしも、それぞれの弟と妹が偶然出会うということになると、ちょっと無理がある。いくら双方の家族が横浜に住んでいるとしてもだ。ただこれがないとストーリーが成り立たなくなるので、致し方ないといえば致し方ないわけだが。
 それからナレーションがかなりしつこく入ってくるのが、今の感覚からいくと古臭く感じるが(NHKの朝のドラマではいまだにやっているが)、テレビ番組に対する視聴者の集中度が低いことから、意図的に入れたということらしい(竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』を参照)。ナレーションを担当するのは矢島正明で、これは『逃亡者』を意識してのことである(これも脚本家が語っている)。
 メインのプロットは、主人公の美男、雄一(竹脇無我)と美女、敬子(栗原小巻)の恋愛で、そこに男の仕事、女の結婚などが絡んでくる。同時に他の家族の生活も絡んできてそれがサブプロットになる。すべてが自然に展開するので、わざとらしさがまったくない。大変よくできたドラマである。雄一は、仕事でのし上がるために女と付き合ってなんかいられないなどとうそぶいているのだが、敬子の余りの美貌に心が揺れ動いてしまう。ま、相手が栗原小巻なら当然だろう。そのくらい栗原小巻が美しい。また演技も自然で素晴らしい。演技について言えば、どの出演者も一流で、演技していることを意識させられることが一切ない。あおい輝彦が演じる弟、健(たけし)がまた非常に魅力的な登場人部で、現在自宅浪人中だが、家事全般を引き受けていて、家族に対し食について小姑みたいに細かいことを言ったりするが、少々ボーッとしたところもあって、周囲を明るくする。画面に出てくるのが楽しみになるようなキャラクターで、栗原小巻の美貌とあわせてこのドラマの大きな魅力になっている。竹脇無我のクールさが、この弟と好対照をなしているのも良い取り合わせである。好対照と言えばもう一方の家族の妹、明子(沢田雅美)も敬子と対照的で、きわめて現実的な存在であり、コントラストが効いている。名優の三島雅夫、賀原夏子、菅井きんについては今さら言うまでもない。
 他にも画面に登場する、4本足テレビとか編み機とか魔法瓶とかの調度品が非常に懐かしい。電話が引けたと言って喜んでいるような情景も懐かしさを感じる。そういう懐かしさもあって、見ていて暖かい気持ちになるんだろうかとも思う。いつまでも見ていたくなるような優しいドラマである。
 せっかくなので、ストーリーを簡単にまとめておこうと思う。

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柴田家(3人家族)
父:耕作(三島雅夫)
長男:雄一(竹脇無我)
次男:健(あおい輝彦)

稲葉家(3人家族)
母:キク(賀原夏子)
長女:敬子(栗原小巻)
次女:明子(沢田雅美)

第1回
b0189364_15515268.jpg 商社の通信部勤務のサラリーマン、雄一が、電車の中で何度か美女、敬子に目を留める。雄一の弟は自宅浪人、父は定年間近であるが先日課長に就任という、男ばかりの3人家族。
 雄一は営業部への配転を希望、同時に会社の留学試験に受かって海外赴任するという夢がある。そのために日夜勉強の日々。ただしこの制度、独身が条件ということで雄一は「女なんか眼中にない」と自分に言い聞かすように言う。そんな雄一だが、ある日帰りに路上でまたまた敬子を見かけ、会釈を交わす。また別の日、出先のレストランでも顔を合わす。雄一は運命的なものを少し感じる。

第2回
 健が近所の祭り囃子に参加。同じく参加している元同級生の女の子(洋子)目当てである。雄一は、勉強を優先すべきですぐに辞めるよう叱る。兄は堅物で実力主義で、健はそのことを批判する。
 一方、敬子の家族。妹と母との3人暮らしであることがわかる。敬子も雄一のことが気になっている。雄一も敬子のことが忘れられない。

第3回
 霞ヶ関インフォメーションセンターに勤務する敬子に、強引に迫る男の客が現れる。写真家の沢野(中谷一郎)で、突然敬子を食事に誘う。
 健は結局、父の勧めで祭の宵夜に行く。その夜酔っ払って「洋子さーん」などと叫ぶ。翌日家政婦(菅井きん)が臨時で呼ばれる。この家政婦、少々出しゃばりで見舞いに来た洋子と健を取り持とうとするが、洋子の方はつれない。
 一方、沢野はたびたび敬子を誘う。夜、帰りの電車で雄一と敬子、再び顔を合わせる。

第4回
 雄一の家に旧友が彼女を連れてきて、婚約したと言う。「俺は今それどころではない」と自分に言い聞かせる雄一。
 例の家政婦が仕事でもないのにまた柴田家にやってくる。柴田家が気に入ったようだ。

第5回
 朝の満員電車で雄一と敬子が出会う。いきなり体が接するぐらい近くになり、軽く口を利く。ところが駅を出たとたん、雄一は気のないそぶりで敬子を残して去っていく。「女と付き合っていてはいけない」という考えのためだが、敬子はかなりムカッとする。

第6回
 雄一を忘れようとする敬子。一方、「付き合っていてはいけない」と思いつつ敬子のことが頭から離れない雄一。
 予備校の後期課程に申し込みに行った健が、同じく申し込みに行った明子と出会って、意気投合する。日曜日に江ノ島に行こうという話になる。同じ日、雄一は留学試験。

第7回
 健と明子のデートに、敬子もやってくる。健は敬子の美しさに参ってしまい、写真をとりまくる。明子は不機嫌。敬子は2人に気を利かせて、その場を去り、鎌倉の昔の友人に会いに行く。その友人から結婚、子育てで気が滅入っていると聞かされる。「よほどいい人じゃないと結婚しちゃダメ」などと言われる。

第8回
 柴田家に電話が引ける。
 健、江ノ島で撮った敬子の写真を兄に見せる。写真を見て驚く雄一。「誰だ、この人は」と言ったまま、外に出て行く。動揺を隠せない。

第9回
 引けた電話がやっと開通して、健はうれしい。父の職場、兄の職場に用もないのに電話をかけて、顰蹙を買う。その後、雄一が家にかけ直し、ついでを装って、敬子の名前や職場を聞き出す。
 その後、雄一が敬子の職場に「健の兄」として電話し、デートの約束を取り付ける。やっと2人でデート。喫茶店で会って食事し、同じ電車で帰る。言葉少なではあるが、心地よさを感じる2人。

第10回
 敬子はその後雄一をデートに誘うが、雄一は忙しいということで断る。一度は会わないことにした雄一だが、敬子の妹の明子からたきつけられるようにして、再び敬子を食事に誘う。その席で、今は結婚できないなどと語って敬子の反感を買う。
 沢野の元恋人が敬子の職場にやってきて、嫌がらせをする。その後、付き合っていた男2人とも(つまり雄一と沢野)失ったような気がして味気なさを感じる敬子。だが、沢野はその後も敬子の元にやってきた。

第11回
b0189364_15514862.jpg 健は、クリスマスにかこつけて洋子に告白するが体よく断られてしまう。その後、明子から自宅のクリスマス・パーティに誘われ、傷心の状態で赴く。兄の雄一も誘われたが、仕事の付き合いで行けない。敬子はガッカリする。一方で沢野から高価な花が敬子の元に届く。
 後で雄一は、健からその話を聞いて、心が動く。沢野は敬子に再び会いに来て、真剣に付き合いたいと言う。

第12回
 敬子が雄一をお茶に誘う。結婚について話をする。
 雄一、一次試験に合格する。

第13回
 二次試験の準備で勉強に邁進する雄一。敬子とも会わず。敬子の方は何だかモヤモヤする。そういう折に、13年前に失踪した敬子の父親が母親に会いに来る。母親は怒って追い返すが、敬子の職場にも顔を見に来る。敬子は結局会わず。

 続きは、また機会がありましたら。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2017-11-21 06:50 | ドラマ

『グッドバイ・ママ』(1)〜(11)(ドラマ)

グッドバイ・ママ (1)〜(11)(1976年・TBS)
演出:堀川敦厚他
脚本:市川森一、桃井章
出演:坂口良子、篠田三郎、平幹二朗、宇野重吉、北林谷栄、岡田裕介、大門正明、柴俊夫、渡辺篤史、中条静夫、伊東四朗、范文雀、下條アトム、岸部修三、風間杜夫

イタイ主人公に辟易

b0189364_18450751.jpg ジャニス・イアンの「Love is Blind」が流れるタイトルバックが印象的だった40年前のドラマ。タイトルバックは、母親役の坂口良子が娘役の女の子の手を引いて小田急線の踏切(小田急線梅ヶ丘駅近くだそうな)を通る場面をロングショットで捉えるというもの。僕は放送時このドラマをほとんど見ていないが、このシーンだけはかなりはっきりと憶えていた。もちろんテーマ音楽も。
 主人公は子連れの未婚の女性、あざみ(坂口良子)で、再生不良性貧血(ドラマでは「血液再生不全」と表現されている)のために余命半年の宣告を受ける。自分が死ぬ前に3歳の娘、のり(大岩紀)を何とかしなければならないと奔走する、という話。当初は主治医(平幹二朗)の勧めに従って養子に出すことを考えていたが、結局踏み切れず(このあたりはまだわかるが)、そのうち結婚相手を見つけ出しその男に娘を託そうということで、結構手当たり次第に周りの男にアプローチしていく。アプローチされた男たちは、あるいは地方に転居(同僚の2人、篠田三郎と大門正明)、あるいは破滅(近所の知り合い、岡田裕介と風間杜夫)、あるいは死亡(ご近所のヤクザ、柴俊夫)と結果的に人生ムチャクチャにされる。上司(中条静夫)などは、あざみが誘惑したせいで離婚の危機に陥ると来ている(その後どうなったかは描かれていない)。しかもお世話になっていた老夫妻(宇野重吉と北林谷栄)にまで、(結果的にだが)ひどい目に合わせ、博多に転居させることになる。周りの人間を(無意識にではあるだろうが)次々に不幸に陥れる主人公、あざみの行動にまったく共感できないため、途中から見るのがかなり苦痛になった。周りを不幸に陥れる女を描くことが脚本家の意図ではなく、おそらく「死に瀕してそれでも娘のことを思い何とかしようとする若い母親」というのがテーマではないかと思うが、結果的に稀代の悪女のドラマになってしまっている。そういうわけで、まったく見るに堪えないドラマだった(おかげで第1回を見てから最終回を見終わるまでに3年くらいかかった)。
b0189364_08520286.jpg 先ほども言ったようにタイトルバックが非常に印象的なドラマなんだが、面白かったのはそのパロディみたいな映像が最終回のエンディングロールで出てきた点である。あざみが死んで、のりを引き取ることになった男、ワタナベ(渡辺篤史)が、のりを連れて、タイトルバックと同じ踏切を通る(そしてそれをロングショットで追う)という、タイトルバックとかなり似たシーンが再現される。他の見所としては、宇野重吉と北林谷栄の名優老夫婦、范文雀の魅力、デビューしたばかりの風間杜夫などが挙げられる。范文雀については、『サインはV』のジュン・サンダースのイメージしかなかったんで昔からあまり「きれい」などという印象はなかったが、このドラマの彼女はおそろしく魅力的で、そりゃワタナベがその色香に迷うのも致し方ないというものだ。他に尾美としのりが第10話で子役で出ていたのも発見と言えるか。
b0189364_18470760.jpg このドラマでプロデューサーの堀川敦厚がジャニス・イアンの曲を採用したことから『岸辺のアルバム』でも「Will You Dance?」が使われることになったというのは、かつて山田太一が語っていた話だが(竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』を参照)、このドラマでは、そのジャニス・イアンの曲が随所に流される。驚いたのはジャニス・イアンが唄う「I Love You Best」が2回ほど流れたことで、そもそもこの歌は、南沙織に提供した歌(邦題「哀しい妖精」)であり(竹林軒『シンシア版「妾の半生涯」』を参照)、ジャニス・イアンのアルバムには収録されていない。ジャニス自体歌っていないんじゃないかと思っていたが、録音したものがどこかにあるのだろうか。一生懸命探してみたがわからずじまいで、結局は謎だけが残った。
★★★

参考:
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒『シンシア版「妾の半生涯」』
竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-11-19 07:35 | ドラマ

『冬のホンカン うちのホンカン-PART IV』(ドラマ)

日曜劇場 冬のホンカン うちのホンカン-PART IV-(1977年・北海道放送)
演出:小西康雄
脚本:倉本聰
出演:大滝秀治、八千草薫、仁科明子、室田日出男、笠智衆

「花嫁の父」もの……と来ればやはり笠智衆

b0189364_19101171.jpg 『うちのホンカン』シリーズ第4作目。
 主人公の「ホンカン」(大滝秀治)が娘(仁科明子)を嫁に出すその前日の1日の物語。主人公が住む支笏のホテルに有名作家(笠智衆)が現れ、翌日に娘を嫁にやる父親の心情を色紙に書いてホンカンに揮毫してくれるが、その作家が実は偽物だったという『玩具の神様』の前フリみたいなストーリーである。
 かつて実際にニセ倉本聰が出現したことがあったらしく、そのエピソードがベースになっていると思われるが、詐欺師が方々のホテルを泊まり歩いて作家になりすますにもかかわらず1日中部屋に閉じこもって原稿を書いているとか、自ら編集者を騙ってホテルに電話を入れるとか、そういったネタは『玩具の神様』とまったく同じ。『玩具の神様』が、この日曜劇場の焼き直しであることがわかる。
 日曜劇場は、1時間ドラマということもあり、ここで一度使ったネタを他で使い回すということが、他の作家でもちょくちょくあるように思われる。山田太一の場合もしかりで、そもそも日曜劇場がそういうお試し的な場として見られていた可能性もある。
 いずれにしても、『ホンカン』シリーズ、第2作、3作、4作とシリーズものにしてはなかなかの佳作が続いていると感じる。
1977年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『玩具の神様 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-11-17 07:08 | ドラマ

『植木等とのぼせもん』(1)〜(7)(ドラマ)

植木等とのぼせもん (1)〜(7)(2017年・NHK)
演出:西谷真一、榎戸崇泰
原作:小松政夫
脚本:向井康介
出演:山本耕史、志尊淳、山内圭哉、浜野謙太、武田玲奈、中島歩、でんでん、坂井真紀、富田靖子、山本彩、中川翔子、鈴木愛理、高橋和也、勝村政信、優香、伊東四朗

植木等、いい人過ぎ

b0189364_20385325.jpg 先頃放送された『トットてれび』の二番煎じみたいなどラマ。植木等とその周辺の人々を描いたもので、『トットてれび』同様、あちこちに当時の再現映像が出てくる。『シャボン玉ホリデー』でやった有名なコントまで再現している(今見るとまったく面白くないが)。
 ただ、このドラマは、再現だけに終始して内容がまったくなかった『トットてれび』と違って、ドラマとしての体裁はしっかりできているためそれなりに見ることができる。原作が、植木等の付き人だった小松政夫の小説(『のぼせもんやけん』)であるということもあるが、人間・植木等が等身大で描かれていて、その植木等がまた感動を呼ぶくらい非常にいい人なんである。小松政夫の目に映った植木はこういう人だったんだろうが、そういう意味でもまさに「等身大」の人物像と言うことができる。
b0189364_20385975.jpg 劇中で小松政夫を演じるのは、志尊淳というジャニーズ風の優男で、小松政夫には全然似ていないが、それなりにがんばって新人付き人を演じている。植木等やクレージーキャッツの面々も、山本耕史や山内圭哉(ハナ肇役)、浜野謙太(谷啓役)らが演じているが、ほとんどの役者については、僕は今回初めて見た。ただ全員雰囲気や声色を似せており、それらしい雰囲気を醸し出している。しかも谷啓役の浜野謙太という人は実際にトロンボーンを吹く人だそうな(谷啓はトロンボーン奏者として当時から非常に有名)。なかなかの徹底ぶりである。山本耕史は「スーダラ節」や「ハイそれまでよ」なんかも劇中で歌っているが、こちらも声色が非常に似ていて植木自身の歌と聞き分けできないほどである。
 小松政夫から見た当時のクレージー周辺を再現したというのがこのドラマで、小松政夫自身の人生がドラマの中心になっていくが、そういう視点がはっきりしているためドラマとして破綻がない。人に見せるドラマを作るのであれば、最低限このくらいのドラマを作ってほしいものだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『のぼせもんやけん、のぼせもんやけん2(本)』
竹林軒出張所『トットてれび (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ニッポン無責任時代(映画)』
竹林軒出張所『本日ただいま誕生(映画)』
竹林軒出張所『馬鹿まるだし(映画)』

by chikurinken | 2017-10-16 07:38 | ドラマ

『大河ドラマ 平清盛 総集編』(ドラマ)

大河ドラマ 平清盛 総集編(2012年・NHK)
演出:柴田岳志他
脚本:藤本有紀
出演:松山ケンイチ、玉木宏、松田翔太、深田恭子、伊東四朗、三上博史、井浦新

院政期の上皇同士の確執がミソ

b0189364_20052672.jpg NHKの大河ドラマなんぞはもう20年以上ろくに見ていないが、院政期の勉強のためと思い、『平清盛』の総集編を見てみた。放送時につまらんなーと思いつつたまに目にしていたが、少なくとも白河法皇、鳥羽法皇、崇徳上皇あたりの描写がなかなか良かったため、このあたりに興味を持ったわけである。
 ドラマ自体は、以前の印象と同じく、実につまらないもので、特筆すべき部分もない。そもそもこのドラマの根底になっている歴史観に疑問を感じる。たとえば清盛や義朝の口から「武士の世の中を作るのじゃ」などというセリフが語られるが、こういう考え方はきわめて現代風で到底あの時代の考え方とは思えないため、根本からリアリティを欠いているように思える。また運命論的なセリフも結構あって、「後の時代から見た歴史」観から抜け出ておらず、言ってみれば古いタイプの歴史ドラマである。
 演技も特筆すべきことはなく、しかも年相応のメークもないため、年老いた清盛と息子たちとの掛け合いがあっても、彼らが親子なんだか兄弟なんだかわからないようなシーンが多い。こうなってくると学芸会というそしりを受けることも免れまい。ただし美術面はなかなか優れており、セット(あるいはCGかも知れないが)や衣装は実に良くできていた。また院政期の勉強にはなったので、それだけで良しとする。でもやっぱり大河はつまらんという考えに変わりはない。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『平家物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『新・平家物語(映画)』
竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-10-15 07:04 | ドラマ

『本当と嘘とテキーラ』(ドラマ)

本当と嘘とテキーラ(2008年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:佐藤浩市、夏未エレナ、柄本明、樋口可南子、山崎努、塩見三省、戸田菜穂、益岡徹、六平直政

山田太一の教育論が反映されたドラマ

b0189364_06412175.jpg テレビ東京最後の山田ドラマ。同時に山田作品としては最後の花火みたいな作品でもある。翌年の『ありふれた奇跡』以降は迷走状態である。
 企業の研修や不祥事の後始末などのコンサルタント業を行っている男(佐藤浩市)は、常に本音を隠して顧客に接するよう指導している。合い言葉が「テキーラ」で、これを口にすると口角が上がって笑顔になるため、接客のキーワードとして常にこの言葉を意識するよう指導する。企業の不祥事についても、不都合な部分を隠し通して建前だけで通すのが彼のやり方である。
 そんな折、自分の娘の同級生が自殺し、それに娘が絡んでいることがわかってくる。娘や遺族との関わりの中で、本音を隠して建前だけで生きていく「テキーラ」主義で良いのかという疑問が沸いてくるという流れで話が進んでいく。
 このドラマも芸術祭参加作品であること(同時に受賞作品であること)を考えると、賞狙いの作品と言える。内容は娯楽性を持っていて面白い作品ではあるが、芸術指向が強いのは確かで、この頃の他の軽薄なドラマとは明らかに違う。テレビ東京の山田作品は概ねそういう傾向がある。ただしそのためかかなり力が入っている作品で、テレビ東京には今後もこういった重厚な作品に取り組んでほしいと感じる。松原信吾の演出も手堅くて良い。
 キャストは、今回は常連組で固められている。柄本明は、『せつない春』『小さな駅で降りる』と同じく、騒いで周囲に波風を立てるちょっと不気味な(その後好人物に好転する)存在を好演している。山崎努もテレビ東京版山田ドラマにはよく出てくるが、今回も(セリフは多いが)特別出演くらいの短めの登場。樋口可南子は、『小さな駅で降りる』と違い、これも周囲に波風を立てる存在。ひどく取り乱す演技が素晴らしい。夏未エレナという女優は今回初めて見たが、落ち着いた良い演技をしている。
 作者の主張が随所に出てくるのも、このドラマを良いものにする要因である。山田太一の教育論は、『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』でもわかるが、まったく押しつけがましくなく、しかも納得する部分が多いんだが、このドラマにも同様の主張が出てきて、ドラマに味を添えている(「学校での多少の問題は、子どもにとってむしろ乗り越えるべき課題になる」などというセリフが出てくる)。全体的に少々小ぶりではあるが、見る者をグイグイ引っぱっていくような部分は山田ドラマ健在と言えるもので、よくまとまった良いドラマと言える。
2008年日本民間放送連盟賞最優秀受賞、文化庁2008年度芸術祭優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-10-01 06:41 | ドラマ

『香港明星迷』(ドラマ)

香港明星迷(2002年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:薬師丸ひろ子、室井滋、山本未來、山崎努、イーキン・チェン、堺雅人、岡田眞澄、徳井優、クリステル・チアリ

山田ドラマらしく題材がユニーク

b0189364_08020920.jpg 『せつない春』『奈良へ行くまで』『小さな駅で降りる』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第4弾。これも放送時見たんだが、あまり良い印象を持っていなかったドラマである。今回見たら、それなりにインパクトのある作品で、やはり山田作品は侮れないと感じた次第。
 フランスの有名靴ブランドの日本支店で、営業部長をやっている女性(薬師丸ひろ子)が主人公。この主人公、イーキン・チェンという香港の歌手に入れ込んでおり、たびたび香港に行っている。ところが実は彼女自身、会社のマーケティング方針を変える(どうしても変わらなければ自ら新ブランドを立ち上げる)という野望を持っていて、そのために香港に渡ってあれこれと画策していたのだった。しかしこのことが明るみに出て、しかもこれは本社の意向に反することであり、両者の間に確執が生まれるというストーリー。他に、香港で知り合うイーキン・チェン・ファンの女性(山本未來、室井滋)との関係(友情や裏切り)もサブプロットになっており、プロットは重層的である。見た後もそれなりに心地よさが残る。
 キャストは山田ドラマとしては珍しい俳優が多い。常連の山崎努は特別出演扱いである。遣り手営業部長役の薬師丸ひろ子は当時38歳で、なかなか魅力的である。また1999年製作の『玩具の神様』ではチョイ役だった堺雅人は割合重要な役で出ている。このあたりから顔が売れるようになったのではないかと思われる。
 受賞歴もなく比較的地味な作品ではあるが、テレビ東京作の前3作にひけをとらない快作で、2時間飽きさせないのはさすがと言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-30 08:02 | ドラマ

『小さな駅で降りる』(ドラマ)

小さな駅で降りる(2000年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
音楽:久石譲
出演:中村雅俊、樋口可南子、堤真一、牧瀬里穂、奥貫薫、根岸季衣、柄本明、佐藤慶、山崎努、前田亜季

仕事が大変なら辞めたら?というメッセージが新鮮

b0189364_08132373.jpg 『せつない春』『奈良へ行くまで』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第3弾。これもテレビ東京らしくビジネスに関わる話で、テレビ東京製山田ドラマのひとつの特徴が確立されているようで大変よろしい。
 社長直属の新しい部署に起用され、仕事に忙殺される管理職(中村雅俊)とその部下(堤真一)の話。この部署、若社長が単独で行ったリストラの責任を負わされるなど、負の役割を負って社内でうとまわれはじめているだけでなく、立ち上がってから何の実績も上げていないため、メンバーたちは何とか実績を上げようと躍起になっている。そのために彼らは残業も厭わず、仕事に追われまくる日々を送っている。そこにこの2人の妻たち(樋口可南子、牧瀬里穂)が動き出し、彼らを激務から解放させるために仕事を辞めさせようと画策するという展開になっていく。過労で潰れるくらいならさっぱり辞めてしまえという山田太一のメッセージが強く打ち出されたドラマである。内容を考えると、逆にテレビ東京らしくないとも言えるか。
 もちろん現実的にそうは簡単に行かないもので、このドラマでもそのあたりで一悶着あるわけだが、会社人間にならずに人間らしく生きよう、「小さな駅で降り」たらどうだというメッセージは新鮮である。
 このドラマも放送時見ているが、内容についてはほとんど憶えていなかった。ただ、男が牛に追われまくるスペインの祭りの映像に対して、樋口可南子が「こういうことをやるのは男だけよねぇ」とコメントするシーンははっきりと明確に憶えていた。お説ごもっともで、このドラマのテーマにも重なる部分である。
2000年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-29 08:14 | ドラマ

『奈良へ行くまで』(ドラマ)

奈良へ行くまで(1998年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
音楽:本多俊之
出演:奥田瑛二、安田成美、村上弘明、佐藤慶、山崎努、石橋蓮司、篠井英介、石丸謙二郎、小倉一郎、平泉成

なぜ奈良なのかは最後までわからなかった

b0189364_18511052.jpg 『せつない春』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第2弾。これも経済のテレビ東京らしくビジネスに関わる話で、建設会社の談合をあぶり出した意欲作。副題に「夫が汚職に踏み切る時」というタイトルが付いていてセンセーショナルだが、結果的に見てられないほどの悲惨な状況には陥らない。建築談合については非常に面白い扱い方で、素材がはなはだ新鮮である。もっともそれだけで終わるとドラマとしては奥行きがない浅いものになってしまうが、そこはやはり山田太一、しっかり夫婦のあり方、友人との関係なども描かれて、重層的で奥行きを感じさせるものに仕上がっている。不倫を匂わせる『岸辺のアルバム』みたいな要素まで出てくるし、途中、夫が美人妻を自分の仕事のために妻に言い寄っている友人の元に行かせるなど、AVみたいなストーリー展開もあって(エロシーンはありません)、人間の関係性を描かせたら山田太一の右に出る者はないなとつい感じてしまう。ただし、なぜ最後に奈良が出てくるのかはわからない。なぜ奈良なのか、なぜタイトルにまで使われるのか、俳句みたいに直接関係のない別物を並べてそこに味を出したのではないかと推測するが、それでもなぜ奈良なのかはわからない。別に奈良でも良いし実のところそれほど気になるわけではないが、こういう使い方については随分思い切ったなーとは思う。
 今回見るのは二度目だが、内容についてはまったく憶えていなかった(この後のテレビ東京版山田ドラマ『小さな駅で降りる』『香港明星迷』『本当と嘘とテキーラ』については部分的に憶えている)。しかし内容はかなり濃密で決して侮れない作品である。なんと言っても、政治家役の山崎努、怪しいジャーナリスト役の石橋蓮司のタヌキぶりがすごい。タヌキぶりと言えば、主人公に汚職をそそのかす同僚役の佐藤慶は、これはもう放送史に残るような名演で、数ある佐藤慶出演作品の中でも屈指のタヌキキャラクターではないかと思う。また安田成美の美しさも群を抜いている。主人公のエリート同級生(村上弘明)が参ってしまうのも仕方がないという見事なキャスティングである。山田ドラマの常連が揃っている上、うまい役者が勢揃いしていて、ストーリーと言いキャスティングと言い、申し分のない贅沢なドラマである。
1997年度ギャラクシー賞奨励賞、1998年日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-28 06:50 | ドラマ

『せつない春』(ドラマ)

せつない春(1995年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:山崎努、清水美砂、杉本哲太、竹下景子、柄本明、萬田久子、益岡徹、久米明

テレビ東京製作だけど「山田ドラマ」
タイトル通りの「せつない」話


b0189364_18030296.jpg テレビ東京開局30周年記念ということで製作されたドラマ。テレビ東京の山田ドラマはこれが初ではないかと思うが、この後数年かけて5本製作されることになる。この当時、山田ドラマはかつてほど放送されず、山田太一自体がすでにちょっとした巨匠扱いで、だからと言って視聴率が稼げるというような存在でもなく、微妙な立場になりつつあったように記憶している。そういったわけで、山田ドラマといえば、芸術賞狙いで作られることが多くなっていたため、こういった記念番組でないとなかなかお目にかかることがなくなっていた。テレビ局と視聴者のレベルが著しく下がり始めるのもこの頃かなと思う。
 さて、製作局はテレビ東京ではあるが、ドラマの内容自体はやはり「山田ドラマ」なんであって、TBSやNHKの山田ドラマとほとんど変わらない。おそらく脚本家が多分に口を出しているせいであろうが、しかしそのために常に高水準が保たれることになる。「脚本:山田太一」というレベルではすでになく、「山田ドラマ」になってしまうという按配。しかもキャストも山田ドラマの常連が名を連ねているし、ますますどこの局で製作されたのかわからなくなる。
 山田作品で珍しいキャストといえば清水美砂や杉本哲太あたりだが、彼らがドラマの中で存在感を発揮しているのは、他の山田ドラマと共通である。この頃の清水美砂は非常に魅力的で、このドラマでもその魅力が発揮されている。清水美砂が演じるのは、足に障害を持つ女性だが、その障害のせいで恋愛を諦めかけていた彼女がなかなか素敵な男(杉本哲太)と出会うというなかなかさわやかなプロットが展開される。
 一方で、その父(山崎努)は、大企業で総会屋対策をやっていて、ヤクザ者と付き合ったり結構汚い仕事をやっている。その彼が、総会屋と手を切るという会社の方針のためにお払い箱になり、総会屋からも恨みを買うというような汚い話が同時進行で進む。なかなかよくできたプロットである。ただ偶然の要素がかなり強く、そのあたりが少々興ざめである。また、山崎努と竹下景子が(演技で)自暴自棄になるシーンも(竹下景子については似たようなシーンが『夏の一族』でもあったが)ちょっと湿っぽすぎて、いただけないかなという気がする(あくまでも個人の感想です)。しかし扱われるモチーフが企業の株主総会や総会屋で、テレビ東京らしい題材と言えば言える。こういうあたりでテレビ局側も特色を出しているのかも知れない。2時間を超えるドラマで、力を入れて作られていることもよく伝わってくる。内容も高い水準を保っており、実際にいろいろな賞を受賞している(実際、受賞にふさわしいドラマであると思う)。賞取り作家としての山田太一の面目躍如とも言えるのではないだろうか。
1995年度ギャラクシー賞奨励賞、1995年日本民間放送連盟賞ドラマ部門最優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-05 07:02 | ドラマ