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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 175 )

『レ・ミゼラブル』(1)〜(4)(ドラマ)

レ・ミゼラブル (1)〜(4)(2000年・仏)
演出:ジョゼ・ダヤン
原作:ヴィクトル・ユーゴー
脚本:ディディエ・ドゥコワン
撮影:ウィリー・スタッセン
音楽:ジャン=クロード・プティ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ジョン・マルコヴィッチ、クリスチャン・クラヴィエ、ヴェロニカ・フェレ、シャルロット・ゲンズブール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、エンリコ・ロー・ヴェルソ、ジャンヌ・モロー

『レ・ミゼラブル』のほぼ完璧なドラマ化

b0189364_19100159.jpg ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』を約6時間のドラマにしたもの。『レ・ミゼラブル』は、これまでたびたび映画化やドラマ化、あげくはミュージカル化されているほどの名作だが、このドラマは決定版と言えるほどのできである。原作にもかなり忠実で、主役を演じたジェラール・ドパルデューが「時間の制約から原作の改変・短絡が避けられない映画化に対し、時間をかけて忠実に描写出来る長編ドラマのメリットを認め、プロデューサーも兼任した」(Wikipediaより)という作品である。原作の『レ・ミゼラブル』を堪能するにはこれ以上ないドラマである。
 このドラマ、非常に丁寧に作られている上、しかもキャストが素晴らしい。ジェラール・ドパルデューのジャン・ヴァルジャン、ジョン・マルコヴィッチのジャヴェール、ヴィルジニー・ルドワイヤンのコゼットは秀逸で、これ以外のキャストは考えられないと思わせるほどである。美術や衣装も素晴らしく、原作本を読む代わりに映像を見ることの利点を十分に感じることができる。
 このドラマ、各回1時間半×4回分で構成されているが、第1回は特にフランスの救いようのない下層社会が描かれ、そのひどさは見るに堪えないほどで、おかげで途中何度も中断を余儀なくされた。つまりそれくらいよくできたドラマということを言いたいわけだが、第2回以降も、ジャヴェールに追われるヴァルジャンの構図を中心に、それを取り巻く人々のさまざまな人生模様が絡んでくる。一方でフランス革命や7月革命が背景として描写されるなど、時代とそれに翻弄される人間の描写が素晴らしい。
 序盤は徹底したリアリズムで描かれていくが、真ん中にどっしりと置かれるのは理想主義的人間像で、それをジャン・バルジャンが体現していく。バルジャンとジャヴェールの絡みは、さしずめ性善説的な人間観と性悪説的な人間観のぶつかり合いのようにも見え、善であろうとするバルジャンと、悪の道にどっぷり嵌まり込んだテナルディエの絡みも、性善説と性悪説とのぶつかり合いのように見える。ドラマチックなストーリーでありながら、明解なテーマが随所に顔を覗かせる。見る者を引っ張り込んで離さないストーリー展開はさすがである。ただこのドラマ版、ちょっと偶然に頼りすぎな面があって(原作については詳しくは知らない)、そこら辺がちょっと引っかかるところではある。とは言えこれだけのドラマはちょっとやそっとでは作れないだろうし、優れたフランス文学を映像で堪能できるというのも、このような上質のドラマがあるゆえである。僕自身は、19世紀フランス文学の偉大さに触れたような気がしている。随所で流れるテーマ音楽もロマン派的で良い。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『原作と映画の間』
竹林軒出張所『隣の女(映画)』
竹林軒出張所『カミーユ・クローデル(映画)』

by chikurinken | 2017-04-19 07:09 | ドラマ

『さらば国分寺書店のオババ』(1)〜(10)(ラジオドラマ)

NHK-FMふたりの部屋
さらば国分寺書店のオババ (1)〜(10)
(1981年・NHK)
原作:椎名誠
脚本:津川泉
出演:伊武雅刀、佐々木允、武知杜代子

椎名誠と伊武雅刀の黄金タッグ

b0189364_19024079.jpg ここでラジオドラマを取り上げるのは珍しいが、かつてはよくラジオドラマなどというものを聞いたものである。僕自身も今と違って時間に余裕があったせいかも知れないが、そもそもラジオドラマ自体が今より多かったような気がする……そうでもないのかな。僕自身がラジオをよく聞いていたせいかも知れない。今回紹介する『さらば国分寺書店のオババ』は81年の放送時に聞いたもので、椎名誠が同作でエッセイストとしてデビューして2年後の放送である。そのため椎名誠もまだそれほどメジャーではなく、一部のマニアに受けていたというような時代である。僕自身もこの放送を聞いた時点ではまだ椎名作品を読んだことがなかったんだが、この放送のインパクトが強かったため、その後『本の雑誌』を買って読むようになった。あ、この『本の雑誌』というのは椎名誠が編集していた雑誌なのね。
 さて、この放送であるが、15分×全10回という代物で、月曜日から金曜日の夜11時頃に放送された。ドラマのほとんどの部分、つまり原作の地の文は伊武雅刀が読む……というか演じる。伊武雅刀も当時まだそれほどメジャーではなく、僕はこのドラマで初めて「いぶまさとう」という名前を聞いたのであった。そして、この伊武雅刀のナレーションがもう、すごくいい。椎名誠の初期のスーパーエッセイは、世の中のいろいろなことに怒ったり考察したりというものなんだが、その怒り具合の表現、妙ちきりんな考察の表現などが、これ以上ないくらいはまっている。「椎名役は伊武雅刀」という定番になっていたとしてもおかしくない。実際この後同じ枠で放送されたラジオドラマ『気分はだぼだぼソース 日本の異様な結婚式について』(椎名誠原作)でも伊武雅刀が怒って絶叫しており、僕なんぞ聞いていて大笑いしたのだった。
 このラジオドラマは『さらば国分寺書店のオババ』というタイトルになっているが、半分以上は『かつをぶしの時代なのだ』のネタである。もちろん『さらば国分寺書店のオババ』のネタも入っていて、それぞれが非常にうまくブレンドされていて、知らなければ原作は元々1冊の本なのではないかと勘違いするほどである。毎回最後に「オババの部屋」などというコーナーもあって、聴取者を楽しませる工夫もある。また第9回、第10回には椎名誠本人が登場し、伊武雅刀と対話するというスペシャル企画もあって、本来であれば音源をアーカイブしていてほしいほどの傑作であったわけだが、残念ながら現在この音源が発売されているなどということはまったくない。ところがそれがYouTubeに登場していたのである。投稿した方によると「掃除してたら懐かしいカセットテープが出てきました。」ということらしいが、ありがたきこと限りなしである。そういうわけでYouTube経由で、全10回分存分に堪能し尽くした。『日本の異様な結婚式について』の方ももう一回聞いてみたいが、現状ではYouTubeにはない。もっとも残っているかどうかもわからない。奇跡的に残っていて、それを奇跡的に公開してくれる人がいたらなーと思うが、たとえ登場したところですぐに当局が消したりするんだろう。著作権を主張するのは当然だと思うが、それなら別の形で提供しろよと思う。ブツはないくせに、俺のだから勝手に人に見せたらいけんよなどというのは少々虫が良すぎるのではないか。何らかの手段で音源を集めるなりして、有料でもかまわないから公開するのが筋ってもんじゃないかなと思う。元々無料で公開していた作品なんだからあんまりうるさいことを言うなとも思う。
 この間の『快刀乱麻』のケース(竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』を参照)もそうだったが、こういった草の根的、ゲリラ的な一般公開は(本当なら権利がないにしてもだ)、やはりインターネットの一番の魅力と言える。そしてそれがYouTubeの魅力でもある。(著作権の観点から考えると)不謹慎かも知れないが。
★★★★

参考:
YouTube『NHK-FM ふたりの部屋 さらば国分寺書店のオババ 1』
竹林軒出張所『かつをぶしの時代なのだ(本)』
竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』

by chikurinken | 2017-04-17 07:01 | ドラマ

『幕末グルメ ブシメシ!』(1)〜(6)(ドラマ)

幕末グルメ ブシメシ! (1)〜(6)(2017年・NHK)
演出:山内宗信、金澤友也、雫石瑞穂
原作:土山しげる
脚本:櫻井剛
出演:瀬戸康史、草刈正雄、田中圭、酒井若菜、三吉彩花、平田満、徳井優、クロちゃん

カラスミをわざわざまた煮てダメにしたようなドラマ

b0189364_06573560.jpg 『勤番グルメ ブシメシ!』というマンガが原作のドラマ。といっても内容は全然違うような……。原作は読んでいないが、基になっているネタが酒井伴四郎の日記だそうで(竹林軒出張所『幕末単身赴任 下級武士の食日記(本)』を参照)、原作にはまったくドラマチックな要素はなさそうである。
 ドラマでは、主人公の藩の殿さまが中間(下級武士)の恰好でお忍びで町に出て主人公と絡んだり、あるいは料理合戦をやったり、いかにもな筋立てになっている。あまりにやり過ぎでちょっとあほくさい感じさえするが、ドラマとしてはそれなりに面白く、きちんと成立している。
 主人公の名前は酒井伴四郎ではなく「酒田伴四郎」で、叔父貴は宇治田平三ではなく「宇治井平三」になっている。基本的な人間関係は原作に従っているが、かなりデフォルメした人物像になっている。原作とはまったく別物のドラマと考える方が良い。
 先ほども言ったようにそれなりに面白くできてはいるが、元々の酒井伴四郎の日記の内容がかなり興味深いものなので、取り立てて大げさなストーリーにせず、元の話を活かしたものにした方が良かったのではないかと感じながら見ていた。製作者側が、今の視聴者はこのくらい濃い味にしないと見向きもしないと思ったのか。薄味の上品なドラマも見てみたい昨今である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『江戸古地図の旅 〜江戸東京 迷宮の道しるべ〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『幕末単身赴任 下級武士の食日記(本)』

by chikurinken | 2017-04-15 06:58 | ドラマ

『母をたずねて三千里 完結版』(アニメ)

母をたずねて三千里 完結版(1976年・日本アニメーション)
演出:高畑勲
原作:エドモンド・デ・アミーチス
脚本:深沢一夫
場面設定・レイアウト:宮崎駿
キャラクターデザイン・作画監督:小田部羊一
音楽:坂田晃一
出演:松尾佳子、二階堂有希子、信沢三恵子、永井一郎、東美江(アニメーション)

「完結版」じゃなくて「簡潔版」でしょ

b0189364_19190304.jpg 1976年、『フランダースの犬』の後に放送された『カルピスまんが劇場』の1本。なお次の年に放送されたのは『あらいぐまラスカル』。
 監督は『アルプスの少女ハイジ』の高畑勲、場面設定・レイアウトに宮崎駿が参加している。絵のタッチは『ハイジ』に似ている。今回見たものは、元々52話だったものをなんと1時間半に凝縮しているものであるため、ダイジェストも良いところというような作品になっていて、あまりに端折っているため途中わかりにくい箇所も結構あった。もちろん全部あわせて20時間以上のものを1.5時間にするんだから重々承知ではあるが、ホントだったら全部見た方が良いんだろなーとは感じた。
 原作はエドモンド・デ・アミーチスという人のごく短い話だそうで、それを山あり谷ありの冒険談に仕上げたのはアニメスタッフの功績である。ストーリーは波瀾万丈で、もし最初の放送時に目にしていればきっと毎週見続けるだろうと思う。放送時、僕は『カルピスまんが劇場』を一切見ていないんだが、質の高い作品が揃っていて、これについては同時代に生きた者として大変もったいなかったと感じている。
 『カルピスまんが劇場』(今では『世界名作劇場』というらしい)は、その後、自分の子どもが小さいときに何本か再放送されたものを見せ、そのときに僕も一緒に見たため『ハイジ』と『ラスカル』は概ね見ており、『フランダースの犬』もちょっとだけ見ているが、この『母をたずねて三千里』はまったく見ていなかった。タイトルから内容を想像できるということもあるかも知れないが、他の作と比べると知名度が落ちるということも手伝ったような気がする。だが最近、このアニメの音楽担当が坂田晃一だったことを知ってから俄然関心が湧き、それで見ることにしたといういきさつである。とは言ってもさすがに52話全部見るというのはなかなか踏ん切りが付かず、そうこうしているうちにダイジェスト版があることを知ったため、この完結版に手を出したというわけ。
 音楽については、テーマ曲からしてフォルクローレ風にまとめられていて、南米の雰囲気が醸し出される。テーマ曲は、坂田晃一らしくリリカルで魅力的な曲調で、坂田の才能が遺憾なく発揮された見事な作品である。
 映像の方も南米大陸の壮大さ、美しさが表現されていて、大変魅力的。優しい人たちが(不自然でない形で)支援してくれたり、一方で冷たい人たちに主人公があしらわれたりするなど、ストーリーにダイナミズムがあって目が離せない。人の優しさをありがたく感じる良い話が目白押しで、『ハイジ』同様、派手さはあまりないが、心に染みいる良く練り上げられたストーリー。少年少女に見せたくなるようなアニメである。時間があれば通しで全部見たいところであるが、やはり踏ん切りが付かない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『さよならの夏 〜それはルフラン 頭の中で響くの〜』
竹林軒出張所『朝倉理恵ファンがいるかは知らんがやっぱり「ひとさし指」が出た』
竹林軒出張所『昨日、悲別で (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』

by chikurinken | 2017-04-13 07:18 | ドラマ

『タイガーマスクW』(アニメ)

タイガーマスクW(2016年・東映アニメーション)
演出:小村敏明
原作:梶原一騎、辻なおき
出演:八代拓、梅原裕一郎、三森すずこ(アニメーション)

b0189364_22215895.jpgこれも一種の懐かしグッズ

 夜中に『タイガーマスク』が復活していると聞いて、タイガーマスク世代である僕は早速見てみたのであった。
 主人公がナオトで、その恋人がルリコ。その上虎の穴が存在していて、ミスXという女性が虎の穴の代理人をやっているなど、前作との繋がりを示唆させる部分が多いのはポイントが高い。しかも僕が見始めた回ではなんと「覆面ワールドリーグ」などという大会が開催されていて、タイガーマスク世代にとっては感涙ものである。その上、ミスタークエスチョンまで出てきた日にゃ感動を通り越して苦笑である。もっともこんなことを書き連ねたところで、昔の『タイガーマスク』を見たことのない人にとってはちんぷんかんぷんだろうが、要するに旧『タイガーマスク』の設定およびキャラクターをかなり意識的に踏襲しているということである。何よりかつての『タイガーマスク』に登場していた、主人公伊達直人の弟分である高岡拳太郎(ケン高岡)が、そのまま老人化して出ていて、しかもタイガーマスクWを育てていたというのだから、まさにその後の『タイガーマスク』である。このケン高岡によって、昔のタイガーマスク周辺のあれやこれやの事情が語られたりするのも良い。
 とは言うものの、このアニメ、かつての『タイガーマスク』のような重さというか救いようのなさがまったくなく、全体を通して結構軽い。お笑い要素もあちこちにあり、しかも現在の新日本プロレスのキャラが出てきて、どこか新日本プロレスの宣伝材料みたいな臭いも漂う。それに(今でも存在している)虎の穴が主催する(のかよくわからないんだが)新しいプロレス団体GWMも、なんだか存在自体がエンタテインメント的で、一方で虎の穴は厳しい掟で縛られているなど暗い要素があるのに、その辺りがどうも整合性が取れていない。やっぱりあの50年前の世界を現在に持ち込もうとすることに無理があるんじゃないかという気がする。そうはいっても、我々旧世代が見ると、先ほど言ったような要素以外に、懐かしのレッドデスマスクやブラックバイソンがさりげなく登場したりするとちょっとテンションが上がるのである。そういう懐かしグッズと考えると良いかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『虎だ! お前は虎になるのだ!』
竹林軒出張所『ちびっ子レミと名犬カピ(映画)』
竹林軒出張所『追われる日々』

by chikurinken | 2017-04-11 06:28 | ドラマ

『やすらぎの郷』(1)〜(5)(ドラマ)

やすらぎの郷 (1)〜(5)(2017年・テレビ朝日)
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
脚本:倉本聰
出演:石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、八千草薫、藤竜也、ミッキー・カーチス

まだ5回だから何だが
すっかり枯れてしまっている


b0189364_19290211.jpg 倉本聰の新作ってことで少しばかり期待したが、本当に後ろ向きで枯れきっているという印象のドラマである。
 第5回目までに関してだが、セリフが説明的で、ナレーションも過剰である。しかも設定があまりにも不自然。短編小説とか1時間ドラマだったら耐えられるかも知れないが、これから約3カ月間も付き合うのはちょっと大変そうな気がする。ドラマの中に、先へ先へと進めるだけのダイナミズムがないため(1回あたり12〜13分のドラマだが)見続けるのも苦痛を感じる。
 もちろんまだ5回目だし、今後なんやかんやエピソードが入ってきていろいろと展開するんだろうが、そもそも舞台になっている、テレビ業界人だけが招待されるという(しかも入居者の費用がほとんどかからない)豪華老人ホームの設定があまりにリアリティがなさ過ぎで、その段階でもう見ていてアホらしくなる。なお付け加えると、入居者は(元大女優を含む)元大スターが多く(消息がわからなくなっていた大スターたちが実はここに住んでいたというようなことになっている)、そこにかつてシナリオライターだった主人公が新しく入居してくるというストーリーである。それから、ここにかつてのスターたちが入っていることは世間には完全に秘密にされているという嘘みたいな設定にもなっている(今後つじつまがあわなくなりそうな予感さえする)。
 こういう設定を聞くと、倉本聰の夢想をそのまま描いたのかとも思ってしまうが、こういう設定で話を進めるとなると、スターさんたちの過去の栄光が物語の中心にならざるを得ないような……つまり過去および懐かしさ中心に話を展開することになるんじゃないかと推測されるが、こういうふうに懐かしさが物語の中心に鎮座してしまうと、本当に精気が無い抜け殻のような枯れたドラマになるんじゃないかというふうに危惧する。今後精気が盛り込まれるかどうかがこのドラマの唯一の注目点だが、本当のところあまり関心が湧かない。
 キャストは超豪華だし、石坂浩二と浅丘ルリ子の共演なんかもう二度とないだろうから、それなりに見所もあるんだろうが、こんな枯れつくしたような作品が世間に受け入れられるのか、そのあたりは疑問である。「シルバータイムドラマ」などと名うっているんで年寄り向けなんだろうし、初回放送で視聴率が検討していたとか話を聞くが、個人的には大して興味が湧かず、これからも見続けるかどうかはわからない。
★★★

追記:
 ドラマでは登場人物の背景(出演作品とかその人のエピソードとか)がいろいろ出てきて(ほとんどはナレーションで説明される)、こうやって登場人物の背景を設定するのが倉本聰のシナリオ流儀らしく、つまりドラマに直接関係ない人物史を描き、それを随時使うというのが倉本流らしいんだが、これがもうとてもわざとらしくてうるさい感じがするのである。倉本作品を見ると、ときどき居心地の悪さを感じるんだが、おそらくこういうのが原因なんだろうな……ということに今回やっと気が付いた。物語の表に出てこない部分はないことにして良いんじゃないかと思うし、むしろそういう部分の処理の仕方が文学やドラマの醍醐味であり面白さではないかというのが僕の考え方である。

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-04-09 07:28 | ドラマ

『赤ひげ』(19)(ドラマ)

赤ひげ 第19回「ひとり」(1973年・NHK)
演出:中山三雄
原作:山本周五郎
脚本:倉本聰
出演:小林桂樹、あおい輝彦、仁科明子、黒沢年男、浜木綿子、小鹿敦、柳生博

落ち着きのある『赤ひげ』

b0189364_20364455.jpg 山本周五郎の『赤ひげ診療譚』のドラマ化作品。『赤ひげ』は過去何度も映画化、ドラマ化されているが、これは72年から73年にNHKで全49回に渡って放送されたドラマで、おそらく『赤ひげ』のドラマ化では最高のものと言えるのではないかと思う。「赤ひげ先生」に小林桂樹、「安本」にあおい輝彦という配役で、奇を衒ったところもなく端正に仕上げられたドラマである。小林桂樹の「赤ひげ先生」もなかなか良いものであるが、どことなく同時期に製作された映画(およびドラマ)『日本沈没』の田所博士を思い出させるような人物像であった。
 脚本は倉本聰だが、ドラマの内容自体は、時代劇でありながら結構現代風。「権利」などという言葉が出てきたりして、思わずツッコミを入れたくなるような部分があちこちにあるが、時代考証を脇に置いて純粋にドラマとして見れば、割合よくまとまっている。『赤ひげ』と言えば黒澤明の映画が思い出されるが、あの映画みたいに気恥ずかしい演出があるわけではないので、安心して見ていられる。
 なおこのNHK版『赤ひげ』だが、実はほとんど映像が残っておらず、唯一公式に残っていたのがこの第19回である。患者が求める限り医者は自分の生活より患者を最優先すべきというテーマの1本で、芸術祭に参加したせいかこの1本だけが残されている。他の作品が残っていないのは、当時カラービデオが貴重だったために消去して繰り返し使ったためだろうと推察されるが、ただ放送された映像を録画したものが一部で残っているらしいので、他の回もそのうち出回るかも知れない。この第19回についてはDVD化もされており、割合目に触れやすいんではないかと思う。
第5回テレビ大賞優秀番組賞、第28回芸術祭優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『それぞれの秋 (1)-(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2017-03-04 07:36 | ドラマ

『ラジカセ』(ドラマ)

ラジカセ(2016年・NHK津)
演出:桑野智宏
脚本:大野敏哉
出演:滝藤賢一、向鈴鳥、安藤玉恵、キムラ緑子

滝藤賢一が怪演……だが少しもの足りない

b0189364_7474489.jpg NHKローカル放送局で製作されたドラマの1本。こちらは「三重発地域ドラマ」と名うたれていて、製作はNHK津である。ちなみに演出はNHK名古屋所属の人。
 昭和家電を集めている内向的なオタク中年と子どもとの交流、そして彼らの人間再生の物語。昭和家電というモチーフが目新しいが、ストーリーは割合ありきたりで、概ね想定内である。主人公の昭和家電オタク中年を滝藤賢一が演じているが、『俺のダンディズム』を彷彿させる怪演で非常に良い。あちらのドラマもモノマニア的な要素があったんで、あの番組が滝藤抜擢の動機になったのかも知れないと想像したりする。結果的には、ほとんど滝藤賢一の魅力だけのドラマになってしまっている。
 登場する昭和家電もなかなか魅力的なものがあるが、やはりストーリーが予定調和的なのがどうしても気になる。1時間ドラマなんで仕方がない面はあるが、どうもこのNHKの地域発ドラマ、どれも予定調和的になってしまう。もう少し冒険しても良いんじゃないかと勝手な視聴者は考えてしまうのだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ラジカセのデザイン!(本)』
竹林軒出張所『あこがれの家電時代(本)』
竹林軒出張所『無垢の島(ドラマ)』
竹林軒出張所『命のあしあと(ドラマ)』
竹林軒出張所『“くたばれ” 坊っちゃん(ドラマ)』
竹林軒出張所『鯉昇れ、焦土の空へ(ドラマ)』
竹林軒出張所『帽子(ドラマ)』
竹林軒出張所『火の魚(ドラマ) 』
竹林軒出張所『俺のダンディズム (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム (4)〜(12)(ドラマ)』
by chikurinken | 2017-03-03 07:48 | ドラマ

『夕暮れて』(1)〜(6)(ドラマ)

夕暮れて (1)〜(6)(1983年・NHK)
演出:深町幸男、菅野高至
脚本:山田太一
音楽:山本直純
出演:岸恵子、佐藤慶、笠智衆、米倉斉加年、佐藤浩市、真野あずさ、島田紳助

中年男女の悪あがき

b0189364_20145033.jpg 山田太一の不倫三部作(『岸辺のアルバム』、『友だち』、本作)の1本。不倫三部作というのは僕が勝手につけたもので、しかも本作については不倫は未遂で終わっている。だがそれぞれの作品ごとにアプローチが違うため(それぞれ実行、未遂、意図なし)どれも面白く、見応えがある。このドラマも今回で見るのが3回目である(放送時、CSでの再放送時、今回)。
 本作は、人生も終盤にかかろうとする夫婦(岸恵子、佐藤慶)がそれぞれ、このまま年老いて良いのかと考え、夫は一人暮らしを始め、妻の方は元同級生(米倉斉加年)に誘われるまま不倫に走ろうとする。こう言ってしまうと行動が極端な感じがするかも知れないが、そこまでの過程は非常に自然で、誰でも同じような行動を起こすかも知れないと思わせる説得力がある。
 不倫の方は舅と息子(笠智衆、佐藤浩市)が気が付いて直前で阻止するわけだが(第5回)、そのシーンはきわめて印象的で最初に見たときからはっきりと記憶に残っていた。ただしその後の第6回に何があったかは、見たはずなのにあまり憶えていなかった。要するにこのまま終わってしまって良いのかという焦りが夫婦、不倫未遂相手によって吐露されるという流れになって、視聴者に問いかけが突きつけられることになる。登場人物達は結局元の状態に戻るわけだが、何よりもテーマが非常に明解で、しかも最後まで視聴者を引っぱるだけの緊張感と面白さがあるため、優れたドラマであるのは変わりない。
 キャストはどれも名優揃いで今さら言うまでもないが、米倉斉加年のセリフが少々いやらしく感じられ(このあたりは製作側の意図かも知れない)少し不快。演出も手堅いが、セット(特にアパート)が少し安っぽいのが難点と言えるか。前も書いたが、テーマ曲の「メモリーズ・オブ・ユー」が非常に印象的である。
テレビ大賞優秀番組賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
by chikurinken | 2017-02-11 07:13 | ドラマ

『友だち』(1)〜(6)(ドラマ)

友だち (1)〜(6)(1987年・NHK)
演出:深町幸男、一井久司
脚本:山田太一
出演:倍賞千恵子、河原崎長一郎、井川比佐志、菅井きん、うつみ宮土理、内海桂子、小松政夫、下條正巳

キャラが立ってる

b0189364_21521318.jpg 山田太一の不倫三部作(『岸辺のアルバム』、『夕暮れて』、本作)の1本。不倫三部作というのは僕が勝手につけたもので、しかも本作については不倫かどうかは怪しいところ。だがそれぞれの作品ごとにアプローチが違うため(それぞれ実行、未遂、意図なし)どれも面白く、見応えがある。このドラマは今回で見るのが3回目である(放送時、CSでの再放送時、今回)。
 既婚の中年男女(倍賞千恵子と河原崎長一郎)がふとしたきっかけ(この場合はバードウォッチングだが)で知り合って、家族に内緒で密会するようになるが、女の方が、肉体関係が一切ない状態で友だち関係を維持したいと主張するというあたりがこのドラマのミソで、他の不倫ドラマと大きく異なるところ。そこから双方の家族を巻き込んでいくというストーリーになる。
 考えようによってはちょっと無理があるような設定ではあるが、話の流れが自然でしかも登場人物が魅力的なので、不自然さはまったく感じない。主人公の女性が主張すること(日常の立場から離れて1人の女として見られたい、だからときどきよその男と会いたい、ただし家庭を壊すつもりはない、というもの)は、少し身勝手な感じもするが一応筋は通っている。もちろん筋は通っていても理屈通りに行かないのが人間で、その辺の葛藤がこのドラマのモチーフになる。
 こういう問いかけにはなかなか明確な回答が出せないため、ドラマは最後のあたりは少々うやむやな感じで終わるが、見応えのある力作であることは間違いない。何よりもキャスティングが非常に面白く、それぞれのキャラクターがリアルで個性的である。セリフも山田ドラマらしく大変味わいがある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』
by chikurinken | 2017-02-10 06:51 | ドラマ