ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『“フェイクニュース”を阻止せよ』(ドキュメンタリー)

“フェイクニュース”を阻止せよ(2017年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

ネットが人の思考力を削いでいる現状

b0189364_21443067.jpg 昨年のアメリカ大統領選挙で、ライバル候補者を攻撃する「フェイクニュース」(ほとんどはクリントン候補に対するものだが)が出回り、トランプ候補の躍進に拍車をかけたらしい。実際のところ、インターネットが重要なメディアになっている今、真偽が怪しいニュースは多い。中でも「フェイクニュース」については内容がデタラメで、多くは特定の個人を攻撃するための材料にしか過ぎず、確信犯的で、大衆をある一定の方向に導こうとするデマゴーグ的な意図が見える。こういったもので騙される人がどの程度いるかわからないが……というのは、そもそもこういった類のニュースを信じる人は、こういったニュースを信じたいと思っている人じゃないかと感じているためである。しかしこの種類の人々に攻撃材料を与えるという点では由々しき問題であるため、こういった「情報」が実は嘘であることを示す情報も必要になってくる。
 今年フランスでも大統領選挙があり、極右勢力FN(人民戦線)の党首、ルペンが躍進するなどという現象が起こった。インターネットの普及とともに世界的に右翼が跋扈しているのはご承知の通りで、そのための推進力として、ライバルを攻撃するフェイクニュースの類が活用されるという状況が起こっているのだ。右翼連中は力を得るためには手段を選ばないというのか、あることないこと垂れ流し続ける。これも世界共通の現象である。
 さて、ここからが本題だが、フランスの大手新聞社は、フェイクニュースが嘘であることを積極的に暴いて、こういった攻撃が大統領選挙の結果に影響しないよう尽力しているらしい。で、このドキュメンタリーに登場する新聞社リベラシオンは、大統領選挙を前に、フェイクを暴き、その出所を突き止めるという業務を行っていたが、最終的にその出所がアメリカであることを知る。しかもそれが、先のアメリカ大統領選挙でも大量のフェイクニュースを流したトランプに近い人物であることが判明。アメリカ大統領選挙のロシアのケースと同じように、特定の国の選挙に他国が影響を及ぼせる状況が実現しているのがネット社会の現状ということである。こうして民主主義を守ることが難しくなっていることが明らかにされる……そういうドキュメンタリーである。
 なお内容は、『クローズアップ現代』で以前放送されたものと似ており、おそらく使い回しではないかと思う。使い回しだと引け目があるかも知れないが、こういった「啓蒙」番組は、地上波でも何度か放送したらどうだと感じる。大衆に周知させる価値が十分にある情報だと思う。また、世界的な右傾化の状況というのも、一度まとめてドキュメンタリーにしてほしいとも考えている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『E・トッドが語るトランプショック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドナルド・トランプのおかしな世界(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧(本)』

# by chikurinken | 2017-07-24 06:44 | ドキュメンタリー

『コン・ティキ』(映画)

コン・ティキ(2012年・英/スウェーデン/デンマーク/独)
監督:ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ
脚本:ペッテル・スカヴラン
出演:ポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲン、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、ヤーコブ・オフテブロ、トビアス・ザンテルマン

教養バラエティの延長みたいな映画

b0189364_08385903.jpg 1947年に南米ペルーからポリネシアまで筏(コン・ティキ号)で航海し、過去に南米からポリネシアへの人の移動が存在したことを「証明」したトール・ヘイエルダールのコン・ティキ号での冒険を描いた映画。
 伝記映画であるため、どうしても教育映画あるいは『知ってるつもり』などの教養バラエティみたいな内容になってしまう。また航海成功という結末がわかっていることもあり、スリルやサスペンスも中途半端である。致し方ないが。
 『太平洋ひとりぼっち』などでも同様たが、ある場所からある場所への移動をプロットの中心に据えてしまうと、その間に何が起こったかという話になってしまい、ともすれば退屈になりがちである。この映画も案の定、やはり見ていると飽きてくる。ただそれでもサメとの戦いや嵐のすさまじさなどが描かれていて、ハラハラドキドキの要素はある。また海洋の美しさも描かれているため、それなりに楽しめる内容にはなっている。ヘイエルダールの冒険を追体験できるのは確かである。とは言え、やはり教養のために見る映画になるかな。
 僕自身は、この映画のおかげでヘイエルダールやコン・ティキ号に興味を持ったため、先日、図書館で『コン・ティキ号探検記』を借りてきた。面白ければ全部読むかも知れないが、とりあえずは拾い読みのつもり。なおコン・ティキ号の顛末については、乗員が撮影したフィルムを基に作られた映画があるらしい。しかもアカデミー賞を受賞したという。こちらも少し興味のあるところだ。
★★★

補足:
 コン・ティキ号にはヘイエルダール以外に5人の乗員がいたが、映画ではこれがほとんど区別できなかった。見終わってからたった5人だったっけと感じたぐらいだ。外見に特徴のある俳優を選んでたら良かったのに。

参考:
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』
竹林軒出張所『ココ・シャネル 閉ざされた時代に自由の翼を(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-07-22 08:40 | 映画

『黄色いリボン』(映画)

黄色いリボン(1949年・米)
監督:ジョン・フォード
原作:ジェームズ・ワーナー・ベラ
脚本:フランク・ニュージェント、ローレンス・スターリングス
出演:ジョン・ウェイン、ジョーン・ドルー、ジョン・エイガー、ベン・ジョンソン、ミルドレッド・ナトウィック

b0189364_20342785.jpg悪いが達成感のみだった

 小学生のときに合唱で隣のクラスが歌っていた「あ〜のこ〜のきっいろいリボン」という歌のせいで、僕の記憶にしっかりと根を下ろしていたのがこの映画。といっても見るのはおそらく今回が初。もしかしたら深夜テレビで見たかなーという記憶もなくはないが、内容についてはまったく憶えていないので「初」と言っても間違いない。
 監督ジョン・フォード、主演ジョン・ウェインのテッパン西部劇で、退役を間近に控えた軍人が退役前にアメリカ人とインディアン(先住民)の戦闘に関わるというストーリー。スーパーヒーローによるできすぎな話であまり琴線に触れるところもないが、馬の疾走シーンや行軍シーンはジョン・フォード作品らしくそれなりに迫力がある。だが、このできすぎなストーリー自体がそもそも面白いのかという疑問は最後まで残る。結局のところ、有名な映画を見たという達成感以外何も残らなかった。多分ストーリーも早々に忘れることだろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『リオ・グランデの砦(映画)』
竹林軒出張所『タバコ・ロード(映画)』

# by chikurinken | 2017-07-20 07:34 | 映画

『大病人』(映画)

b0189364_21032163.jpg大病人(1993年・伊丹プロ)
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造
出演:三國連太郎、津川雅彦、宮本信子、木内みどり、高瀬春奈、熊谷真実、田中明夫、三谷昇、高橋長英

ドラマとしては薄っぺらだが
医療に対する問いかけは厳しい


 伊丹十三が医療の問題を問う野心作。『病院で死ぬということ』が参考文献として挙がっていたことからもわかるように、誰のための医療か、誰のための治療か、誰のための病院かという問題提起がこの映画の基調である。テーマ自体は、近藤誠が主張しているような内容で、今となってはそれほど珍しくないが、時代が93年であることを考えると、かなり先進的と言える。しかも医者が看護師に対して「看護婦のくせに医者が決めた治療方針に口を出すな」などという差別的な言動をしたりして、当時の医療の状況を適確に反映しているような気がする。ただこの映画では、看護師が「看護婦のくせに」という一言に烈火の如く怒り、結局医者が折れるという顛末になる。そういうディテールも面白いし「患者が医者に殺される」と言わんばかりの表現も面白い。
 とは言っても、伊丹映画らしく、ドラマ的な重厚さは欠けている。伊丹映画の多くにはサブプロットめいたものがないため、製作者が面白いと思っていることを紹介していくだけで終始してしまう傾向がある。こういう映画を「一本道」とでも名付けたら良いかも知れないが、どこかバラエティ番組的で、そういう部分が物足りなさに繋がる。この映画も例外ではないが、ただし死後の世界を表現した映像などが出てくるなど、見所が多いのも確か。登場人物が割合ステレオタイプなこともありドラマとしては物足りないが、バラエティとして見ればなかなか見所が多い。また演出にも破綻がないため、見て楽しんでいろいろ考えるための素材と考えればこれ以上のものはないかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『病院で死ぬということ(映画)』
竹林軒出張所『がん放置療法のすすめ(本)』
竹林軒出張所『どうせ死ぬなら「がん」がいい(本)』
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『マルタイの女(映画)』
竹林軒出張所『ミンボーの女(映画)』
竹林軒出張所『スーパーの女(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』

# by chikurinken | 2017-07-18 07:00 | 映画

『アンナ・カレーニナ』(映画)

アンナ・カレーニナ(1997年・英米)
監督:バーナード・ローズ
原作:レオ・トルストイ
脚本:バーナード・ローズ
音楽:ゲオルク・ショルティ
出演:ソフィー・マルソー、ショーン・ビーン、アルフレッド・モリナ、ミア・カーシュナー、ジェームズ・フォックス

『アンナ・カレーニナ』の決定版かも……

b0189364_22081212.jpg アメリカ製の『アンナ・カレーニナ』。そのためほとんどのシーンでは英語が話される。ただしところどころ(身分の低い人が語る場面など)ロシア語になる箇所がある。なぜだかわからない。ロシア語にするんなら全部ロシア語にしたら良いし、全編英語ならそれでも良いと思うが。
 主演はフランス人女優、ソフィー・マルソーで、ソフィーも英語をしゃべる。ソフィー・マルソーと言えば僕とも近い世代で、『ラ・ブーム』でデビューした頃もテレビで予告映像が流されていたりしたため、個人的には長い間興味の対象であった。ただ映画を見るのは今回が初めてである。若い頃はアイドル扱いであまりいい映画に出ていなかったため、僕の食指が動くような映画がなかったことが原因と思われる。この映画については、世評が割に高く、ソフィー・マルソーが演じるアンナ・カレーニナに興味があったため、今回見てみた。
 『アンナ・カレーニナ』は以前、ヴィヴィアン・リーが主演したもの(監督はジュリアン・デュヴィヴィエ)を見たが、あまり印象に残っていない。ストーリーも概ね忘れていて、ただの不倫話程度の記憶しかなかった。今回久々に『アンナ・カレーニナ』に接して、「ただの不倫話」ではないことは重々わかった。すまなかった、トルストイ。
 映画は、ロシアでロケが行われており、原作のイメージはかなり再現されているのではないかと思う。やたら登場人物が多いのはトルストイらしいが、メインのストーリーとあまり関係ないレヴィンとキティをさも主役であるような立ち位置に登場させていることには多少違和感を感じた。もっとも長編小説であれば、登場人物が多いことはむしろ有利に働くし、彼らの平凡な幸福が主題の柱であることは容易に想像できるんで、小説レベルではそれで良かったんだろうとは思う。逆に言えば、この映画、割合原作に忠実に作っていると言えるのかも知れない。
 ちょっとがっかりだったのは音楽で、チャイコフスキーやラフマニノフの音楽が全編使われていたこと。ロシアと言えばチャイコフスキーやラフマニノフというあまりにありきたりな発想がいただけない。恋愛で盛り上がるシーンが『悲愴』交響曲の第1楽章で、エンディング・ロールはヴァイオリン協奏曲と来る。月並みにも程があるってもんだ。ちなみに音楽担当は、指揮者のゲオルク・ショルティである。ショルティであることを考え合わせると、なるほどの選曲と言えなくもない。
 演出などは隅から隅まできっちり行われており、ソフィー・マルソーの演技もなかなか迫真的であった。ただ「アンナ・カレーニナ」という登場人物については、なんだか見通しが効かない。こういう行動をする人間がいても全然不自然ではないが、そうなっちゃいます?というような行動が多かったのも事実。でもまあ、全編通して退屈することなく見ることができるし、当時の風俗などもうまく再現されていて、よくできた映画と言えるんじゃないかと思う。『アンナ・カレーニナ』の決定版と言っても良いかも(他の映画をあまり見ていないので本当のところはよくわからないが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『トルストイの家出(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原作と映画の間』
竹林軒出張所『カラマーゾフの兄弟(映画)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年ドラマ版)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2017-07-16 07:07 | 映画

『秋の駅』(ドラマ)

秋の駅(1993年・フジテレビ、福島テレビ)
演出:河毛俊作
脚本:山田太一
出演:田中好子、布施博、益岡徹、村田雄浩、小倉久寛、金山一彦、大森博、中原ひとみ、丹阿弥谷津子、千秋実

ストーリーの使い回しか

b0189364_20354651.jpg 山田太一のドラマだが、随分小粒な印象がある。プロットも割合単純である。
 田舎の駅を舞台に、嫁が来ない男たちが、ちょっとマドンナ的な女性(離婚経験はあるが)にアプローチしていくという、『幸福駅周辺』みたいなストーリーである。もしかして山田センセイ、使い回しですかと聞きたくなるくらい、設定が似ている。また将来に絶望した老夫婦が死に場所を探すというストーリーも『冬構え』を思わせる。そういうわけで、このドラマについてはあまり目新しさがない。もちろん、ドラマには起伏がありそれなりにうまく作られているが、山田ドラマとしては少し肩すかしを食った印象。
 キャストも山田ドラマとしては比較的珍しいラインアップであるが、活躍している俳優ばかりで違和感はまったくない。また、どの役者もそつなく演技していて申し分ない。ただしキャストの方言(おそらく福島弁)が少し聞き取りづらく、セリフがわかりにくいという部分が難点であった。福島テレビの記念番組だったらしく、そのせいでリアルな福島方言をキャストに話させたのかも知れないが、聞き取れなければしようがない。そういう点も、僕にとってはマイナスポイントだった。期待が大きかっただけに失望感も大きかったが、山田ドラマらしくドラマのクオリティはそれなりに高い。
第19回放送文化基金賞優秀賞受賞作品、第30回ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『幸福駅周辺・上野駅周辺(本)』
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2017-07-14 07:35 | ドラマ

『夏の一族』(1)〜(3)(ドラマ)

夏の一族 (1)〜(3)(1995年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
出演:渡哲也、竹下景子、宮沢りえ、加藤治子、藤岡琢也、柄本明、永島敏行、大野雄一、森本レオ、柳沢慎吾

結局『冬の一族』はなかった

b0189364_20295294.jpg 山田太一の『一族』三部作(『春の一族』、『秋の一族』、『夏の一族』)の最後の作品。このドラマはこれまで3回くらい見ていて、何度見てもセリフのうまさに感心する。それに複数のプロットを巧みに組み合わせた重厚な構成にも感心する。山田太一の最高傑作の1本と言える。
 自動車会社の設計部門で長年設計に関わっていた中年男(渡哲也)が、ある日突然販売店に出向になった。名目的には出向ではあるが、実質的には肩たたきということで、それでも仕事にしがみついて、上司(藤岡琢也)のいじめにも負けずに真面目に取り組む……というのが1つのプロット。この男の家族は一見したところ割合平穏に過ごしているが、娘(宮沢りえ)は妻子持ちの男と付き合っているし、妻(竹下景子)は夫に多少不信感を持ちながら昔の恋人にしきりに誘われたりしていて、こちらも少々危ない感じ。さらにまた主人公がかかわる不登校の中学生、主人公を育てた血のつながりのない「姉」(加藤治子)などとの間にもサブプロットが発生して、かなりいろいろなストーリーが盛り込まれているが、これがまた実にうまいこと調和している。それぞれの人間関係に強い繋がりがあってそれが不自然ではないため、現実性があり、人間関係にリアルな安定感がある。そのためか構成に隙がないように感じる。
b0189364_20374490.jpg 先ほども少し触れたが、このドラマは特にセリフが優れていて、全3回のドラマのあちらこちらに名ゼリフが散らばっている。またそれぞれのキャラクターがもれなく非常に魅力的で、利害が絡んで嫌な面を見せたりしはするが、それでも人間らしさが出ていて、大変気持ちがよい。それぞれのキャストが良い仕事をしているのは今さら言うまでもない。
 ただ難がないわけではなく、特に第3回は、途中からオカルトが入って『異人たちとの夏』みたいになるのは、あくまでも嗜好の問題ではあるが、いただけないと思う。必然性があると言えばいえるし、これも「ブラザー軒」みたいな1つのエピソードと考えればよいのではあるが、そっち方向には持っていってほしくなかったと感じる。また第3回は、セリフで語るシーンが非常に多かった。ただそのセリフの内容にはインパクトがあるので、まったく飽きたりすることはないが、第1回、第2回がドラマとしてあまりによくできていたため、第3回はやや平凡な感じがしたのが残念。
 とは言うものの、これだけの作品は、いかに山田太一といえど、そう何作も書けるものではないと思う。『今朝の秋』同様、日本のテレビドラマの最高到達点と言えるような作品であることは間違いない。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『春の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『秋の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『異人たちとの夏(映画)』

# by chikurinken | 2017-07-12 07:29 | ドラマ

『秋の一族』(1)〜(3)(ドラマ)

秋の一族(1994年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
音楽:福井崚
出演:緒形拳、岸恵子、大鶴義丹、原田知世、川原和久、藤岡琢也、平田満

b0189364_20335371.jpg原田知世の代表作

 山田太一の『一族』三部作(『春の一族』、『秋の一族』、『夏の一族』)の1本。3本の中では一番地味と言えるか。過去2回見ているが、内容をほとんど覚えていなかった。だが逆に何度見ても楽しめて良いとも言える。
 かつてみずからの自立のために夫(緒形拳)と中学生の子どもを置いて出ていった中年女性(岸恵子)が、仕事先のシンガポールから日本に戻ってきて、彼らに再会するというところから話が始まる。このあたり2001年作の『再会』を彷彿させる展開である。同時にその息子夫婦(大鶴義丹、原田知世)周辺に起こる事件と、元家族の関係が話の中心部分になる。結果的にいろいろなことが、端から見ると逆説的に映ったりして、世の中ってのはわからないなというような話になる。派手さはないが、人間がよく描かれており、またとぼけた楽しい会話も散りばめられているし、何より魅力的なキャラクターたちは山田ドラマの面目躍如である。
b0189364_20340027.jpg 中でも原田知世が演じる美保が、ちょっと「不思議ちゃん」であるが非常にキュートである。原田知世が素晴らしい演技をしていて、彼女の代表作と言える作品、それがこのドラマである。思えば原田知世、素材は素晴らしいのに大した映画に恵まれなかった、女優としては少々寂しい存在である。しかしこのドラマを見ると、やはり素晴らしいポテンシャルを秘めていることが分かる。また藤岡琢也、平田満らの脇役が面白い存在感を放っているのも山田ドラマならではである。派手さはあまりないが、山田太一の職人芸が存分に発揮された佳作と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『春の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『再会(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『サヨナラCOLOR(映画)』

# by chikurinken | 2017-07-10 07:33 | ドラマ

『春の一族』(1)〜(3)(ドラマ)

春の一族 (1)〜(3)(1993年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
音楽:福井崚
出演:緒形拳、十朱幸代、国生さゆり、中島唱子、浅野忠信、藤岡琢也、丘みつ子、天宮良、江戸家猫八、内海桂子、江口ともみ

お節介なキャラが巻き起こす波風

b0189364_20250369.jpg NHKの土曜ドラマの枠で放送された山田太一脚本のドラマ。演出は山田作品でお馴染みの深町幸男、出演も緒形拳、藤岡琢也、『ふぞろい』の中島唱子と常連組が中心。十朱幸代は珍しい感じがするが『あめりか物語』に出演経験あり。国生さゆりは、山田作品はこの1本だけだが、なかなか快演。浅野忠信は本格デビュー間もない頃で、不登校の高校生役。
 ストーリーは、よそよそしい他人同士が集まる環境に、1人の男が入っていって波風を立てていくという、山田ドラマでは割とよくあるパターンである。またその男が謎めいていて、しかも実は元々は相当な実力者だったというのも、山田ドラマの鉄板ネタである。山田ドラマにしては割合ありきたりなネタではあるが、もちろんドラマとしてはまったくありきたりではない。また登場人物たちが抱えているものも多様であるため、見ていても決してワンパターンというような印象は起こらない。毎度ながらよくできたドラマと感じるし、笑ったりいらだったりしながらドラマにのめり込んでしまう。
b0189364_20245839.jpg 東京、本郷にあるある古いアパートに、中年男、中井(緒形拳)が入居するところから話が始まる。このアパートには何人か住人がいるが、当然のごとく顔を合わせても話をしたりすることはない。登場人物たちが語るように「東京のアパートってそういうもの」だ。だが中井は積極的に他人に関わろうとし、考えようによってはお節介が過ぎるんだが、おかげで周囲に波風が立っていくというように展開していく。
 1回1時間半で全3話構成。第3話でかなりのどんでん返しがあるが、ストーリーの軸が変わることはない。そういう点でも、安定感があるよくできたストーリーである。この後タイトルに「一族」がつく作品が同じ枠で2本放送されるんで(『秋の一族』、『夏の一族』)この作品も放送当時評判が良かったことが推測される。どれも秀作ドラマだが「一族」というタイトルには少々違和感がある。個人的には『夏の一族』が一番のお奨めである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『秋の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『春の惑星(ドラマ)』
竹林軒出張所『タクシー・サンバ (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

(ちなみに)謎めいた登場人物が周囲に波風を起こす山田ドラマ
竹林軒出張所『深夜にようこそ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『星ひとつの夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『五年目のひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『ナイフの行方(ドラマ)』

お節介が過ぎるタイプの山田ドラマ
竹林軒出張所『鳥帰る(ドラマ)』
竹林軒出張所『この冬の恋(ドラマ)』

# by chikurinken | 2017-07-08 07:24 | ドラマ

『よその歌 わたしの唄』(ドラマ)

よその歌 わたしの唄(2013年・フジテレビ)
演出:田島大輔
脚本:山田太一
出演:渡瀬恒彦、いしだあゆみ、柄本明、鳳蘭、小倉一郎、瀬戸康史、キムラ緑子、中越典子、山崎樹範、阿南健治

痛ましささえ感じる山田ドラマ

b0189364_20130292.jpg 退官した人類学の元大学教授(渡瀬恒彦)が、「1人カラオケ」している人たちをスカウトして合唱団を作ろうとするという話。と言っても、よくある映画みたいに、本格的な合唱団ができあがるというふうに話が進むわけではない。主人公がちょっと気まぐれでそう思ったという程度で、実際に何人かに声をかけて練習場に来てもらうんだが、全然合唱が行われる気配がないという按配。そこからストーリーが二転三転はするが、話にあまりリアリティがない上に、ドラマの進行がなんだかまどろっこしくて、全盛期の山田ドラマとは大分雰囲気が違う。エピソードもとってつけたようなものばかりで、ドラマにまったくのめり込めなかった。
 しかも最後の方に安っぽい回想形式が使われたりして、演出についてもかなり疑問符が付く。山田太一は演出にも結構口を出しているはずで、そのためこれまでどのドラマも一定の水準が保たれていたが、2010年代のドラマについては、脚本面でも演出面でも往年のキレがないと感じることが多い。そういう意味でもこのドラマは失望の部類に入る。少し痛ましささえ感じる。濡れ衣を着せられる大学教授というネタは、『家へおいでよ』の使い回しか。
 キャストはそれなりだが、いしだあゆみの老い方が痛ましい。彼女が歌うシーンがあるが、歌の方も「ブルーライトヨコハマ」の頃と比べるとかなり痛ましかった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『家へおいでよ (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キルトの家(ドラマ)』
竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』

# by chikurinken | 2017-07-06 07:12 | ドラマ

『川は泣いている』(1)〜(4)(ドラマ)

シリーズ・街 川は泣いている (1)〜(4)(1990年・テレビ朝日)
演出:雨宮望
脚本:倉本聰
出演:東幹久、岩城滉一、横山めぐみ、いしだあゆみ、築山万有美、円浄順子、三木のり平、堀内孝雄、森本レオ

「泣いている川」とストーリー自体には
関係があったのだろうか


b0189364_22484640.jpg 1990年にテレビ朝日で放送された倉本聰作の全4回のドラマ。テレビ朝日と倉本聰というと少し珍しい組み合わせのように感じる。それにテレビ朝日が「シリーズ・街」などというNHK風のタイトルを付けているのも奇異な感じがする。時代か?
 ストーリーの中心となるのは、葬儀屋の息子(東幹久)の青春ターニングポイントで、出会いと別れ、生と死などがテーマになる。途中『愛と死をみつめて』みたいな話も出てきて、いろいろなものがてんこ盛りされた、サービス精神溢れるドラマと言える。ただし取って付けたようなエピソードもありそのためにリアリティを少々欠いてしまった部分もある。
 堀内孝雄が伝説の歌手みたいな役で登場し、彼が劇中で歌う「川は泣いている」という歌がこのドラマのテーマ曲にもなっているが、この歌が演歌調で少々辛気くさい。エンドロールで流されるんだが、サスペンスドラマみたいな雰囲気を醸し出して(しまって)いる。ここだけ見ると、いかにも(かつての)テレビ朝日という感じになる。倉本ドラマとしては少し異色な演出と言える。
 主人公の独白がしきりに入る「北の国から」スタイルは倉本ドラマらしいが、このナレーションが必要以上に説明的であるためかなりうるさく感じる。ドラマの流れを少しぶちこわしている部分もある。説明のために入れているのであればセリフの半分以上は不要である。
 総じてそれなりのドラマという感じもするが、それでも昨今のドラマと比べると内容の密度、テーマ性などは段違いである。多少の古めかしさはあるものの、今見ても十分楽しめる作品である。
 なお「川は泣いている」というタイトルは、主人公の趣味であるカヌーとの関連だが(カヌーに乗っていると日本の川の破壊され具合が身にしみ、川が泣いていると感じるということ)、このテーマはストーリーとは直截結びつかず、なんのためのカヌーの設定かわからない。単に作者が川のことを主張したかっただけなのかと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』
竹林軒出張所『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『玩具の神様 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2017-07-04 06:47 | ドラマ

『娘と私の部屋』(本)

b0189364_17592713.jpg娘と私の部屋
佐藤愛子著
集英社文庫

実に軽ーいエッセイ

 『九十歳。何がめでたい』で今話題の佐藤愛子が40年前に書いた実に軽ーいエッセイ。僕が高校生くらいのときに読んだもので、当時結構人気が出ていた作品である。元々、雑誌『ノンノ』に連載していたものらしく、その後マンガ化もされ、ドラマ化もされた。ドラマでは確か河内桃子が佐藤愛子役を演じていた。
 このエッセイに出てくる「ママ」(つまり著者)は大変な豪傑おばさんで、気に食わないことがあったら、かなりはっきりしかも大きな声でその旨を述べるらしい。娘の前では特に……らしい。ただ言っていることは概ね正論で、ごもっともであるため、どちらかと言えば読んでいて痛快ではある。ただしこんな人が近くにいたら疲れるのは目に見えている。
 当初雑誌連載だったこともあり、当時の世相が反映されているが、なにぶんその対象が今となっては古い。『イレブンPM』のテーマミュージックを娘と歌い合うとか殿さまキングスがどうだとか、今読むと若干の懐かしさもあるが、今の若い人が読んだらよくわからないだろうと思う。こういう楽しい本は気軽に読み継がれてほしいところだが、時代性の濃いものは時代を超えていかないんだろうねェ。
 僕が今回読んだのは集英社文庫版だが、解説を書いているのが今公恵という人で、この人、なんと佐藤愛子の秘書で、佐藤家に出入りしていた人だという。したがって著者とも「娘」の方とも非常に親しい間柄であり、第三者的に見た佐藤家の風景が紹介されていたりして、非常に新鮮。解説にこういう人選をした集英社に拍手パチパチである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『わたしの渡世日記 (上)(本)』
竹林軒出張所『子どもはみんな問題児。(本)』
竹林軒出張所『快楽なくして何が人生(本)』
竹林軒出張所『かつをぶしの時代なのだ(本)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』
竹林軒出張所『さわの文具店(本)』
竹林軒出張所『山手線内回りのゲリラ(本)』

# by chikurinken | 2017-07-02 06:59 |

『なんて素敵にジャパネスク』(本)

b0189364_19284277.jpgなんて素敵にジャパネスク
氷室冴子著
集英社コバルト文庫

平安時代が舞台という
異色の少女小説


 コバルト・ブックスの本、つまり少女向けの(今風に言うなら)ライト・ノベルなんであまり期待していなかったが、予想外に面白かった。
 著者は今は亡き氷室冴子。35年ほど前『本の雑誌』で絶賛されていたことから、当時学生だった僕も『クララ白書』や『アグネス白書』を読んでみたが、やはりオッサンには少々物足りない。面白さはあるが、どうも世界観が違いすぎていてあまり感情移入できなかった。この『なんて素敵にジャパネスク』は、その後に発表された作品で、といっても1984年とかなんでかなり前の話ではあるが、僕は本作についてはタイトル以外まったく知らなかった。タイトルを知っていたのはドラマ化されたためで、僕自身は見てはいないが当時それなりに話題になったのではないかという記憶がある。
 で、この作品、少女向けエンタテイメント小説なんだが、舞台が平安時代、主人公が内大臣の娘という異色な設定。主人公は奔放でちょっとじゃじゃ馬。幼なじみと結婚することが決まるが、平安貴族の習慣などをさりげなく(もないが)紹介しながら、話が進められていく。序盤は、ありきたりで面白いのかどうかわからないような、やはりオジにはきついかと感じるようなストーリーであったが、徐々に話が動いていって、スパイ小説みたいな要素も出てきた。また、仲間のスパイの男が実は……というような展開になって、女子好みと言えるようなストーリー展開になっていく。よくできていると思うが、最後は続編がありそうな展開で終わる。事実続編はある、というか、この作品、シリーズ化されて、その後何冊か出てくる。このことから、著者も割合お気に入りの作品だったことが窺われる。氷室冴子の代表作と言って良いんじゃないかと感じる。平安の風俗がわかるという点で古文の勉強にもなるんで、中高生には特に良いと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日出処の天子 第1巻、第2巻(本)』
竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版(1)〜(10)(本)』
竹林軒出張所『日本人なら知っておきたい日本文学(本)』

# by chikurinken | 2017-06-30 07:28 |

『まちがったっていいじゃないか』(本)

まちがったっていいじゃないか
森毅著
ちくま文庫

楽して楽しんで生きたっていいじゃないか

b0189364_19161600.jpg 数学者、森毅が中学生向けに語った人生論。初出はわからないが、中学生新聞か中○時代かと推測する。
 「楽して楽しんで生きたらええやん」というのが本書の基調になっていて、森センセイらしく、常識にとらわれず斜に構えて社会を見た感じが心地良い。と言っても僕自身が若い頃、著者のややシニカルな見方に多少影響を受けているわけで、心地良く感じるのも当然と言えば当然。ただおかげで、人生のあちこちで大変な目に遭ってきた。もちろん長い目で見れば、それで良かったと思うが。
 この本にも、他の著書と同様、森哲学のエッセンスが凝縮されているため、中学生向けと言ってもまったく侮れない。常識にとらわれているせいで窮屈な思いをしている多くの人々にとっては座右の書になるのではないかと思う。
 解説は赤木かん子って人が書いているが、文体が気色悪い。たとえば「んでね、別に中学生だって読んでかまわないわけ。」などという文章が出てきて、最初から最後までこんな感じで、少し小馬鹿にされているような気もする。なにが「んでね」じゃ!と思う。この文庫版が1988年刊行だから、時代と言ってしまえば時代なのかも知れないが、この本の巻末に出てくる文章としてまったくそぐわないと感じる。こちらが常識にとらわれてはいけないとは思うが、気分が悪くなる文章なのでここに書いておく。森毅の文章も話し言葉に近いが、こういった気分の悪さを感じさせる部分は…少なくとも僕にとっては…一切ない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『数学受験術指南(本)』
竹林軒出張所『一刀斎、最後の戯言(本)』

# by chikurinken | 2017-06-28 07:15 |

『顔ニモマケズ』(本)

顔ニモマケズ
どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語

水野敬也著
文響社

いろいろ語るのが難しい本だが
要は何かを感じて…ということだと解釈する


b0189364_18372151.jpg 恋愛体育教師・水野愛也こと水野敬也(竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』を参照)のインタビュー本。インタビューの対象となる人は、見た目が普通と著しく異なる9人の人たち。先天的な病気のせいで顔が著しく歪んだ男性、片目がない男性、大きなアザが顔にある男性、髪の毛をはじめとする体毛が抜けた女性など。それぞれの方々の写真も掲載している。
 かなり異形の人もいるので、最初見ると少々ギョッとしたりする。まあしかし、何度も見ているうちにだんだんと慣れていった。多少違っていても慣れてしまえばどうということはないものだなと感じた。
 顔にコンプレックスを持つ日本人は多いが、見た目がかなり異質なこの人たちはどのようなコンプレックスを抱えているのだろう、どのような差別を受けてきたのだろう、自分の中でコンプレックスをどのように処理しているのだろうなどという、通常であれば訊きにくいことを直球勝負で訊いていくのが、このインタビュー。話し手の方も率直に回答していて、それによるとどの人も、見た目が人と違うことについて前向きに捉えている。これまで結構嫌な思いもしただろうと傍目には思うが、彼らの話によると実際はそうでもないらしい。この人たち、話を聞くと、結構周りの人にも恵まれている。たとえば眼球内の腫瘍のせいで片目を失った泉川氏の場合、

 高校生のとき、ひげを伸ばしていた時期があったんですけど、電車の中で前に座った男の子がこちらを指さして隣にいる母親に言ったんです。
 「あのおじちゃん、目がないよ」
 そのとき一緒にいた友だちが爆笑しまして。「お前、おじちゃんって言われとるぞ」と。僕としても「目じゃなくてそっちかい」という気持ちになりました。
(本書59ページ)


というような経験があったらしい。
 また話し手のほぼ全員、人生が割合うまいこと行っている人で、だからこそこういう本にも登場したんだろうが、したがって悲壮感はあまりない。見た目が違っているからといっても、悩み自体はそこいらの人々と同じだと言う。
 この本の主眼は、彼らの言葉から勇気をもらって、問題を乗り越える方法を学んでくれというものであり、確かに彼らの話からいろいろ学ぶところはある。つらいことがあったら、それは乗り越えるべき試練だと捉えるなどという人もいて、人間がでかいと感じる。経験が人を大きくするんだなと改めて思った次第。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』

# by chikurinken | 2017-06-27 07:36 |