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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2017年 11月 29日 ( 1 )

『日中“密使外交”の全貌』(ドキュメンタリー)

日中“密使外交”の全貌 〜佐藤栄作の極秘交渉〜(2017年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

日中国交正常化の「裏」話

b0189364_18184717.jpg 1972年、発足したばかりの田中角栄政権が中華人民共和国との間で電撃的に日中国交正常化交渉を行い、日中共同声明で国交正常化を実現した。
 これまで田中角栄政権単独の業績だとばかり思われていたが、実はその前の佐藤栄作政権から正常化交渉は始まっており、ゴールに近づいていたが、佐藤栄作が首相を退任したため、後の政権に(事実上)引き継いだというのが真相だ、とするのがこのドキュメンタリー。考えてみれば発足して2カ月の政権が、ずっと難題だった外交交渉をいきなりまとめ上げるなどということはできるはずもなく、十分に納得できる話ではある。
 このドキュメンタリーでは、さまざまな手がかりを元に、その情報源を探り出し、当事者にインタビューを試みて、真相を探ろうとする。ちょっとしたミステリー風の構成になっており、スリリングである。
 で、判明した事実は、佐藤栄作首相が極秘裏に(党内に「親中華民国、反中華人民共和国」という政治家が多かったため)、江鬮真彦(えぐちまひこ)という中国政府要人とコネのある人間を香港に派遣し、大陸中国との交渉をすでにかなりの段階まで進めていたということである。実際、この江鬮氏の活動は、佐藤首相の親書を周恩来首相に送るというレベルにまで進んでいた。紆余曲折の末、中国政府もこれに応え、いよいよ正常化交渉が始まりそうという段階になって、佐藤が退陣を決めたため、次の政権担当予定者である福田赳夫にこの仕事を引き継いだというのが真相らしい。ところが次期政権を取ったのは福田ではなく田中角栄だったため、話が少々ややこしくなる。ただ田中派の人間も同じ時期に中国政府要人と会って交渉していたらしいので、中国側は実際のところさまざまなパイプを使って日本側との関係を模索していたというのが実情のようだ。財界が長年かけて中国との間にパイプを構築してきたのも周知の事実で、佐藤政権の活動もそういった関係改善活動の一つだったということになる。とは言うものの政権担当者が実際に動くことで、関係改善が一気に進展するということも十分想像が付くところである。そういった点で、佐藤政権の対中活動も評価に値すると見ることができる。
 結論はあまりセンセーショナルではないが、謎を探っていくという見せ方が非常にうまく、しかも妙にケレンに走ったりすることもなく、我々の取材の結果を見てくれという非常に正攻法な見せ方が印象的であった。2時間弱の番組だが、途中で飽きることもなく、ドキュメンタリー番組として非常に質が高いと感じた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『日中外交はこうして始まった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『家族と側近が語る周恩来 (3)(4)(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-11-29 07:18 | ドキュメンタリー