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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2017年 10月 18日 ( 1 )

『大魔神』、『大魔神怒る』、『大魔神逆襲』(映画)

大魔神(1966年・大映)
監督:安田公義
特技監督:黒田義之
脚本:吉田哲郎
美術:内藤昭
音楽:伊福部昭
出演:高田美和、青山良彦、藤巻潤、五味龍太郎、島田竜三、遠藤辰雄、伊達三郎、出口静宏、二宮秀樹

b0189364_20552151.jpg下克上と大魔神

 『大魔神』シリーズ第1作。善政を敷いている為政者(守護大名か)がクーデターで追われ、命からがら逃げた若君と姫が、元近臣の力を借りて、再び政権を奪回しようとする、というのがメインのストーリー。お約束通り、下克上のクーデターで政権を取った一派は、悪政を敷き領民は苦しめられ、しかも村人の守り神である魔神像まで破壊しようとする。そういう具合に、善と悪の争いに魔神が絡んできて、最後はお決まりの勧善懲悪で、現人神として現れた魔神が大暴れするという話である。
 基本的に子ども向けの特撮映画ということで、細かいところがご都合主義だったりするんで、そのあたりがガッカリなんだが、脚本は割合よくできている。題材は面白いのに演出が今イチなんで、この映画なんかまさにリメイクにふさわしいと思うんだが、いまだにリメイクはない。特撮シーンは非常に良くできていて、建物を破壊しまくる大魔神にヒヤヒヤする(NGを出したら取り返しがつかない)。いずれにしても破壊シーンは特筆ものである。また美術も大映作品らしく豪華である。なお若殿を演じる二宮秀樹は、第3作の主人公、鶴吉も演じている。『マグマ大使』でちびっ子ロケット、ガムを演じている子役である。
★★★

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大魔神怒る(1966年・大映)
監督:三隅研次
特撮監督:黒田義之
脚本:吉田哲郎
美術:内藤昭
音楽:伊福部昭
出演:本郷功次郎、藤村志保、丸井太郎、内田朝雄、北城寿太郎、藤山浩二、上野山功一、神田隆、橋本力、平泉征

b0189364_20552758.jpg戦国時代と大魔神

 『大魔神』シリーズ第2作。全3作の中で一番地味と言える。今までたびたび見ているはずなのに、『十戒』ばりに湖が割れるシーン以外はまったく憶えていなかった。
 ある領国が隣の領国に侵略されるという、戦国時代にはよく起こったであろう話が題材になっている。ただひとつ違っていたのは、農民を大切にしていた為政者が滅ぼされ、悪政を敷く悪人が支配者になったということ。また例によって、村人の守り神である魔神を破壊するのである。やがて、何とか逃げ延びた侵略された側の若君が見つけ出され処刑……という算段になって、魔神様がお怒りになるという具合に話が進んでいく。前作と舞台や設定は違うが、根本的には同じで、ワンパターンの展開になる。日本の子どもは子ども時分からこういった「ワンパターン」に慣らされるので、ワンパターンドラマが流行ったのかも知れない……などと考えてしまう。ただこういった映画を見ると逆に、ワンパターンの良い面がわかることもある。この映画など、善が悪に虐げられるというストレスを観客に与えまくり、最後の最後に「スカッとジャパン」になるという典型的な復讐劇である。あまりに模範的で、観客は少々アホらしいと思いながらも、最後の最後には安心するわけだ。悪が栄えて映画が終わるとなると、見ている方はストレスを抱えたまま家路につかなければならなくなる。見る側の心の中で収束しないで終わってしまい、いつまでもモヤモヤが残ることになってしまう。
 キャストは、特撮映画としては珍しく、本郷功次郎や藤村志保などの一線級俳優が登場。また、大魔神俳優(大魔神の着ぐるみを着ている人)の橋本力も、一般の役で出ていたそうな(全然気が付かなかった)。また若かりし日の平泉征も結構重要な役で出ていた。平泉征は『なんたって18歳』がデビューかと思っていたので意外だった。
★★★

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大魔神逆襲(1966年・大映)
監督:森一生
特撮監督:黒田義之
脚本:吉田哲郎
美術:内藤昭、加藤茂、西岡善信
音楽:伊福部昭
出演:二宮秀樹、堀井晋次、飯塚真英、長友宗之、山下洵一郎、仲村隆、安部徹、名和宏、北林谷栄

b0189364_20553242.jpg拉致・強制労働と大魔神

 『大魔神』シリーズ第3作。3作中、プロットがもっともしっかりしているのがこれ。だが演出が雑で、ディテールがいい加減なので、ツッコミどころが多くなってしまった。実際、かつて劇場で見たときはあちこちで失笑が起こっていた。こういうふうにシニカルな見方をされてしまうのは、作品として残念な結果と言える。
 ストーリーは、硫黄を採掘するために隣の国から拉致され強制労働させられている木こりたちの話。その木こりたちを救おうと、木こりの子どもや弟達4人が、決死の覚悟で魔神の山を通って隣国まで向かうというのがメインのプロットである。この山越えの過程では、野を越え山を越え、崖まで上っていく。(見た目では)かなりの崖を子ども達が実際に登っており、今こんな撮影をしたら児童福祉法で引っかかるんじゃないかというような大変そうなロケである。どこでロケをしたかはよくわからないが、劔岳に似た山が映っていたのでもしかしたら立山あたりで撮影したのかも知れない。また、他にもいろいろなエピソードが盛り込まれ、冒険譚としてなかなかよくできている。残念なのは、さっきも言ったようにディテールが適当な点で、これが致命的になっている。美術も相変わらずすごいし、映像も美しい。特撮もよくできていて申し分ないのに、いい加減な演出のせいで台無しである。結果的に子ども向け映画でとどまってしまうのだ。
 主演の子どもは、第1作でちょい役で出た二宮秀樹(『マグマ大使』のガム役で有名)。他は、あまり知らない俳優ばかりだった。唯一の例外は、山の老婆を演じていた北林谷栄ぐらいか。このとき55歳だから老婆役にはまだ早いが、この人、若い頃から老婆になるまで老婆ばかりを演じている。そのため結果的に息の長い老婆女優になった。アニメ(トトロのお婆ちゃん)でも老婆を演じていたから、こうなると国宝クラスである。
 この『大魔神』シリーズで取り上げられているプロットのように、拉致され強制労働させられて虐げられる(あげくに殺される)などというような不快な事例、あるいは為政者が自分の私腹を肥やすために民衆を段圧するという事例は今でもあるわけで、そういう連中は、願わくば魔神様が現れて滅ぼしてほしいと思うが、なかなかそうは行かず、悪が栄えることがあるのも現実である。せめて、こういった映画を見てスカッとしたらいかがだろうか(スカッとできるかどうかわからないが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『大魔神甦る』
竹林軒出張所『ドラゴン怒りの鉄拳(映画)』

by chikurinken | 2017-10-18 07:00 | 映画