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竹林軒出張所

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2017年 05月 05日 ( 1 )

『椿三十郎』(映画)

椿三十郎(1962年・東宝、黒澤プロ)
監督:黒澤明
原作:山本周五郎
脚本:菊島隆三、小国英雄、黒澤明
音楽:佐藤勝
出演:三船敏郎、仲代達矢、小林桂樹、加山雄三、団令子、志村喬、藤原釜足、入江たか子、伊藤雄之助

『桑畑三十郎餘話』みたいな話だが
前のヤツよりデキが良い


b0189364_20305445.jpg 1961年作の『用心棒』の続編と言っても良い映画。話に直接的な繋がりはないが、痛快な主人公が共通で、今回はそれが山本周五郎の世界に乗り込んだというような話である。そのため、主人公の椿三十郎とその他の登場人物にはちょっと落差があって、そのあたりも独特のユーモアを生み出している。強いて言うなら山中貞雄の『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』(竹林軒出張所『山中貞雄のこと……追記』を参照)みたいな場違いさがあって、しかもその場違いな登場人物は前作から踏襲したものというもので、このあたり、黒澤映画らしからぬ上品なおかしみがあって良い。
 ストーリーは山周の話らしくしっかり構築されているため、『用心棒』と比べると、がっしりした骨格の存在を感じる。また、登場人物たちも前作以上に魅力的で、城代家老の伊藤雄之助が出たときなどは思わず吹き出してしまった。仲代達矢の室戸、奥方の入江たか子、未熟な若侍たちも造形がしっかりできている。黒澤映画の中ではもっとも完成度が高い1本と言える。
 内政で揺れるある藩を舞台に、例によって縦横無尽に動き回る超人的な浪人(三十郎)という構図である。しかもその浪人、善意で不遇の人々を助けようとするという具合で、ヒューマニズム溢れるお話である。難点は少々作りすぎの感があるという点。それに加えて、仲代達矢演じる室戸の扱いがなんだか最後まで納得いかずモヤモヤする。この室戸に対する三十郎の心情もモヤモヤした感じだったので、おそらくそれは製作者の意図通りなんだろうが、それにしてもなんだかイヤな感じが残る。実際この感覚は、30年以上前に一度見たときからずっと引きずっているわけで、要するに、理屈ではわかるが感性レベルで納得いかないというものなのだ。もちろん室戸と椿三十郎の関係がこの映画の目玉なんで省くわけにはいかないし、変えるわけにもいかないんだろうが、やはりなんかイヤなんである。映画を見終わった後にこういう感じを残されるというのはちょっと迷惑な話で、少なくとも最後はスッキリ終わらせてほしいところである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『用心棒(映画)』
竹林軒出張所『蜘蛛巣城(映画)』
竹林軒出張所『デルス・ウザーラ(映画)』
竹林軒出張所『上意討ち 拝領妻始末(映画)』
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』
竹林軒出張所『山中貞雄のこと……追記』

by chikurinken | 2017-05-05 20:30 | 映画