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竹林軒出張所

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2012年 07月 14日 ( 1 )

『あっこと僕らが生きた夏』(ドラマ)

あっこと僕らが生きた夏 前編、後編(2012年・NHK)
演出:福井充広
原作:有村千裕
脚本:谷口純一郎
出演:川島海荷、財前直見、光石研、宇梶剛士、尾美としのり、柳下大

b0189364_748011.jpg 高校野球は永らく見ていないのでどういう状況になっているかよく知らなかったのだが、2007年の大会で、大分県代表の楊志館高校が初出場でベスト8まで進んだことがあったという。予選からノーシードで勝ち進み結果的にこの大会で19連勝を達成したらしい。そしてその快進撃の裏に、1人の女子マネージャーの存在があった。といっても、ドラッカーの『マネジメント』を読んでチームを改革したわけではない。彼女が2年生のときに癌が見つかり、その後長く入院を余儀なくされ、一度は学校にもマネージャー業にも復帰するものの3年生の秋に結局死ぬという悲しい出来事があった。そして、楊志館高校が甲子園で活躍したのが、彼女が最初に入院した年だったというのだ。
 このドラマは、この実話を基にした話で、この辺の事情は、このマネージャー(あっこ)を励ますために部員たちが奮起したという描かれ方をしている。前編のストーリーがこういった感じで、まさしく『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』と似たストーリーで、これで終わっていたら、実話とは言えドラマとしてはありきたりでつまらない話になっていただろうと思う。だがこのドラマは、こういった陳腐なストーリーで終わっていなかった。
 後編になると、癌が再発し、自分の死に向き合わなければならなくなったあっこが、それを正面から受け止め、入院して治療を続けるよりも、野球部のマネージャーとして普通の高校生活を続けることを選択するという方向でドラマは展開していく。3年生になってチームを引っぱる立場になり地区大会に臨むが、結果は前年と違って成績は芳しくなく、かれらの夏はあっけなく終わっていくのだった。このあたりから、ドラマの主体は野球部の活躍から、あっこの人生へとシフトしていく。前編の中心だった野球部の活動が少しずつ後退するというような感じで、ストーリーの中でうまく処理されていた。
 原作は、あっここと大﨑耀子さんと楊志館野球部との関わりを描いたノンフィクションだということで、ドラマでも本人が書いた日記がところどころ出てきて、あっこの意識の持ち方が表現されている。日記をこうやって画面に出してそれを主人公が読み上げるというパターンは、演出としてありきたりではあるが、このドラマについては効果を上げているように思われた。生きることに前向きな彼女の姿勢が伝わってきて、18歳でよくこれだけの意識を持てるものだと感心した。短い生涯を駆け抜けた1人の少女の生き様がよく伝わってくるドラマで、2012年版の『愛と死をみつめて』とも言える。
★★★☆
by chikurinken | 2012-07-14 07:48 | ドラマ