かっこいいスキヤキ
泉昌之著
扶桑社文庫
こんな本なんて買わなけりゃよかった 今から30年以上前、京都の一乗寺にある恵文社という本屋で(一部だけ)立ち読みしたマンガ『かっこいいスキヤキ』がなんと文庫になっていた。夜行列車に乗って駅弁を食べるときに最後まで大切にとっていたカツが実は玉ねぎカツでガックリし「旅なんて出なけりゃよかった」と思うというような話(「夜行」)で、バカバカしいネタを劇画調で描くという代物である。ネタもくだらないし、絵も何だか汚い。青林堂から出ていたため『ガロ』発のマンガだということが推測できたが、さすがにあまりにくだらないので当時は買わなかった。この本屋では、大友克洋や高野文子の本に初めて出会ったりして、結構変わったマンガも買っていたんだが、この本については買わなかった。
ところが先日、珍しく丸善で本を物色していたところ、この本が文庫化されているのを見つけ、懐かしさもあってつい衝動買いしてしまったのだった。「してしまった」と書いたのは今著しく後悔しているからである。つまらない本は買わないようにしている昨今、衝動買いで買ってしまうということはあまりなくなったが、これについては本当に「つい出来心で」買ってしまったのだった。それなりに面白いものもあり、懐かしさも感じたが、とっておくような類の本でもないし、馬鹿なことしたなーと思う。
それはともかく、内容はといえば短編マンガ集であり、先ほどの駅弁や、コンパでのスキヤキ肉についての態度とか、食に対する異常なまでのこだわりが表現されているものや、「プロレスの鬼」などというプロレス・ネタの暴走話などが並んでいる。食に対するこだわりは、この後『孤独のグルメ』に連なっている系統なのではないかと思う。ちなみに本書の著者の泉昌之というのは、泉晴紀と久住昌之のコンビ名で、『孤独のグルメ』の原作者が久住昌之である。この人のこだわりについても、個人的にはあまり面白いと思わないし、何より泉晴紀の絵が好きになれない。そういうわけで、ユニークだとは思いつつ、買わなきゃよかったという思いがずーっと残っているわけだ。ちょうど「夜行」の主人公と同じような心境なのだ。
★★★参考:
竹林軒出張所『孤独のグルメ Season4 (2)(ドラマ)』竹林軒出張所『聖☆おにいさん(映画)』