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竹林軒出張所

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『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』(ドキュメンタリー)

戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946(2016年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

植民地政策に屈辱を感じる

b0189364_18130017.jpg 1945年、太平洋戦争が終わってから1年間の東京がどんなふうだったか、未公開映像や発掘映像を使って再現するというドキュメンタリー。
 現代人(山田孝之)が唐突に当時にタイムスリップするという趣向のドラマが混ぜられていて、当時の映像の中に合成ではめ込まれて使われたりしている。こういう演出が必要かどうかはともかく、山田孝之が良い味を出していてそれなりの効果は出ている。
 当時の状況は、まさに戦勝国(実質アメリカ)による占領下であり、しかもその(「進駐軍」という名の)占領軍の費用は日本が負担していた(国家財政の1/3に相当)ということで、事実上植民地状態である。東京はほとんど焼け野原で、焼け残った有力な建造物は「接収」という名で奪われ、占領軍の将校などに分け与えられる。その上、日本人が出入りできない場所が多数設けられるなど(東京租界)、多分に差別的である。植民地というものがどういうものか身をもって体験したのがあの時代である。
b0189364_18125501.jpg また女たちは兵隊(ほとんどが米兵)たちに取り入り、中には兵隊専用売春婦なるものも現れてくる。日本政府の国策として連合軍向け売春宿が経営されたこともこういう状況に拍車をかけていたわけだが、しかしそれを思うと、当時の日本政府にはまったく恐れ入る。なんでも普通の婦女子を米兵から守るための現実的な政策だったといういうことらしい。しかしこういったことは、当時の日本人(特に男たち)には屈辱的に映ったに違いない。
 一方で、当時の日本人は食うものもなく、いつも腹を空かせた状態と来ている。配給はままならず、どうしても闇市みたいなものに頼らざるを得ない。ただしこの闇市にしても当局が取り締まりの対象にしていたため、こういうところで商売をしていても突然すべてを没収されるというようなこともありうる(今の中国でもこういう状況があるようだが)。治安も悪く、平穏な現代日本とは大きな違いである。しかもこういった中で、占領軍に取り入って成り上がるヤクザ者も出てくるし、モラルハザードどころではない。貧しい社会というのは、力のあるものが力のないものをどこまでも収奪する弱肉強食の世界であることがよくわかる。
 タイトルの「東京ブラックホール」というのは、当時の東京がヒト、モノ、カネをブラックホールのように飲み込んでいったというところからつけられたものであるが、ちょっとスカしていてどうかと思う。戦後すぐの混乱期については、いろいろな本や映画で描かれており「今さら」感もあるが、「今」との隔たりの大きさにあらためて驚くという点で、ときどきこういう特集番組をやるのもありかなと思う。「今」の生活のありがたみがよくわかるというものだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『昭和史 戦後篇(本)』
竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本テレビとCIA(本)』
竹林軒出張所『ドイツ零年(映画)』

by chikurinken | 2017-10-08 07:12 | ドキュメンタリー
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